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2013年3月23日 (土)

エルガー 交響曲第3番 A・デイヴィス指揮

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麻布十番の隠れ家的なバーにて。

アイラ系が好きなワタクシ。

ボウモア系のデュワ・ラトレイ社のウィスキー。

ヨード系の味と香りは好き嫌いがあると思いますが、わたしは大好き。

スモーキーで、潮の香りまで感じます。

英国音楽には、やはりウィスキーでございます。

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エルガー 交響曲第3番 ハ短調 (アンソニー・ペイン補筆完成版)

    アンドリュー・デイヴィス指揮 BBC交響楽団

                  (1997.10 ロンドン BBCスタジオ)


エルガーには完成された交響曲は2曲しかありません。

マーラーの10番と同様に、作者の死後残されたスケッチからその全曲を補筆して完成させたのが、エルガーの3番。

作者の死による未完作品を完成させ、音楽界とわたしたち聴き手に認知されているのは、「モーツァルトのレクイエム」、「マーラーの10番」、「プッチーニのトゥーランドット」、そしてこの「エルガーの3番」がそれらの代表格でしょうか。
「ブルックナーの9番」はこれからブレイク予感。

この曲の経緯は、何度も書いた過去記事からコピー。

「BBCの委嘱で書き始めた3番目の交響曲、3楽章までのスケッチのみを残してエルガー(1857~1934)は、亡くなってしまう。
死期を悟った作曲者は、スケッチを破棄するように頼んだが、そのスケッチは大切に大英図書館に保管されたが、エルガーの娘カーリスをはじめととする遺族は故人の意思を尊重することで封印を望んだ。
1990年、BBCは交響曲の補完をアンソニー・ペインに依頼、同時に遺族の了解を得るべく交渉を重ね、1997年にまず録音が、翌98年には初演が、うずれもA・ディヴィスの指揮によって行なわれた。
一口に言えば、簡単な経緯だが、スケッチのみから60分の4楽章の大曲を作りあげることは、並大抵のものではなかったろう。
スケッチがあるといっても総譜はごく一部、スケッチを結び合わせて、かつエルガー・テイストを漂わせなくてはならない。さらに終楽章は、ほとんどがペインの創作となるため、エルガーの他の作品からの引用で補わなくてはならない。エンディングにエルガーの常套として、冒頭の旋律が回顧される、なるほどの場面もある。」

最初は、オリジナルじゃないという思いから、眉つばだった。
それはマーラーの10番と同じ。
その思いが宿ると、なかなか払拭できないのが音楽ファンで、「所詮、スケッチしかないのだから、第三者の手が入ることで純粋性が失われる・・・」などと思いこんでいたのです。
しかし哀しいかな、いや喜ばしいかな、クラヲタ的には、なんとしても「次の番号」を聴きたくなるんです。
一部の楽章や断片じゃすまない、聴いたことにはならない。
そしていつしか、新たなその作曲家の作品の出現に、喜び、進んで聴くようになったのです。
マーラー10番より先に、エルガー3番の受容はありました。

ナクソスのP・ダニエルのCDを、日々何度も何度も聴き続けました。
その後に、LSOレーベルのサー・コリン、初演者のA・デイヴィスと聴き、チェリスト兼指揮者のワトキンス&都響でライブ、さらに尾高&札響のCDとライブも体験しました。
気がつけば、ヒコックス以外は、3番の録音はすべてコンプリートしました。

いまや「エルガー・テイスト」という概念を通り越して、自分の中では「エルガーの3番」としてしっかり認知しております。
好きな作曲家の新たな作品が、死後、忽然と登場する。
ファンとしてこんなに興味深く嬉しいことはありません。
そんな前向きな気持ちで聴くのがファンだと思います。
自作の部分が少なく、まして終楽章はほとんどないという状況においてもなお、この作品は、今後とも自主独歩を続け、マーラー10番と並ぶ存在意義を持つようになるのだと思います。
 その方棒をしっかり担いでいるのが、尾高忠明さん。
レコーディングでは、札響を指揮してまもなく出る1番、いずれ行われるであろう2番とともに、3曲のレコーディングを行う世界的な存在になります。
その全霊を傾けた演奏は、もしかしたら、今日のA・デイヴィスの初演まもない録音のこの音盤より上をゆくものかもしれません。

事実、まだこなれてないオケの雰囲気を比較すると、札響のあのキタラホールの重厚でかつクールな音色に尾高さんの熱さが加わったCDの方が上と判断できます。

本日は、初演者のパイオニア精神を大いに評価し、かつBBCの機能性と柔軟性を讃えたいと思います。
A・デイヴィスは、いまや亡きトムソン、ハンドレー、ヒコックスのあとを継ぐ英国音楽演奏の心強いアニキ。日本のオケにも客演して欲しいものです。

交響曲第3番 過去記事

  「尾高忠明指揮 札幌交響楽団のコンサート」
 「コリン・デイヴィス指揮 ロンドン交響楽団のCD」
 尾高忠明指揮 札幌交響楽団のCD
 「
ワトキンス指揮 東京都交響楽団のコンサート」


Ueno

こちらは、昨日の上野、不忍池。

東京は早くも満開です。

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コメント

yokochanさん

 そうでしたか、エルガーの交響曲第3番、そういう事情があったのですか。全く知りませんでした。マーラーの10番、ブルックナーの9番、そしてエルガーの3番。ちゃんと聴く価値のあるものですね。
 この種のものは私もシューベルトの未完成の完成版、ベートーヴェンの10番とかいうのも持ってますが、何ですかねえ、ヘンな感じです。ピアノ譜からワインガルトナーがオーケストレーションしたという「グムンデン・ガスタイン交響曲」というのも買って聴きましたが、何かねえ。またチャイコフスキーの第7番なんてのも買って聴いたんですけど、これも、何かねえ。
 エルガーの3番、チャンスを見つけて聴いてみようと思います。有難う御座居ました。

投稿: 安倍禮爾 | 2013年3月25日 (月) 13時22分

安倍禮爾さん、こんばんは。
著作権切れとともになしたBBCの動きは、いまとなってはファンにとってありがたい出来事でした。

私も本分にありますように、最初は眉つばでしたが、聴き進めるうちに、完全に受け止め納得するようになりました。

ベートーヴェン10番、未完成完成版、チャイコ7番・・・・ありましたよね。
たしかに、何だかな~の世界でして、それらと比べると雲泥の差の完璧なレヴェルにあるエルガーと、先達のまーらー10番の存在です。
是非、お聴きいただければと存じます。

投稿: yokochan | 2013年3月25日 (月) 21時06分

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