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2013年3月31日 (日)

バッハ ヨハネ受難曲 リヒター指揮

Shinobazu_3

春が来て、冬に戻って、また春が来て。

何度も繰り返し、満開の桜も散りあぐねてます。

贅沢なもので、ずっと桜の満開を見てると、どこにもかしこにもあって意外と飽いてしまいかねません。
桜は、短く咲いて、パッと散ったほうが刹那的で美しいのです。

ほんと、贅沢なハナシですが。

Bach_johannes_richter

    バッハ   ヨハネ受難曲 BVW245

  エヴァンゲリスト、アリア:エルンスト・ヘフリガー 
  イエス:ヘルマン・プライ     下女、アリア:イヴリン・リアー
  アルト:ヘルタ・テッパー     ペテロ、ピラト:キート・エンゲン

   カール・リヒター指揮 ミュンヘン・バッハ管弦楽団
                  ミュンヘン・バッハ合唱団

                 (1964.2 @ミュンヘン・ヘラクレスザール)


3月最後の日曜日、今日は、復活祭・イースターです。
キリストの磔刑後、3日後にして復活した日、キリスト教社会では、その間禁じていたお肉や乳製品をありがたく頂戴するそうです。

音楽の方では、受難節からバッハの受難曲や、ワーグナーの「パルシファル」の上演が行われ、ザルツブルクではカラヤンが始めた、イースター音楽祭が行われております。
今年から、ティーレマンが引き継ぎ、ベルリンフィルから、ドレスデン・シュターツカペレへとそのホストオケも変わりました。
一方のラトルとベルリンフィルは、バーデン・バーデンに場所を移して、そちらで第1回のイースター音楽祭を行っております。
 これはまた複雑なことにございますが、カラヤン・アバド・ベルリンフィル・ザルツブルクということで、数々の音源とともに、永く親しんできただけに、とても寂しい思いがあります。

それはともかく、もう少し早く聴くべきでしたが、この時期にパルシファルとともに、バッハの受難曲を聴くことは、年間の節目のひとつとして、そして人生のひとふしとして、さらに春の到来を受けとめるものとして大事なイベントです。

「マタイ受難曲」と「ヨハネ受難曲」、バッハのふたつの受難曲。
マタイは、よく無人島に持ってゆく音楽作品の最右翼とされますが、ヨハネもセットにして持ち込んでいただきたい至芸品のひとつだと思います。

マタイの静に対し、ヨハネの動。
レシタティーヴォやアリアを中心とするマタイに対し、合唱=群衆の扱いが大きいヨハネ。
福音士家も、かなり劇的な歌い回しが多い。
長さはマタイより短いけれど、ヨハネは、ゲッセマネのおける捕縛から、審問、判決、磔刑、死と埋葬までを一気に描ききっていて、その劇的な流れには逆らえず、冒頭の暗欝な重苦しい合唱を聴いたら最後まで聴かざるをえない流れの強さをもっています。

時には残酷にシャウトする群衆や、冷静でありながらも福音に没頭し、言葉に感情を載せるエヴァンゲリスト。真摯で心篤いコラールの数々。
 これらの場面のはざまにある珠玉のアリアたちも、マタイのそれと同様に素晴らしいです。

捕縛のあと、師に従いゆかんと、決心込めて歌うソプラノのアリアでは軽やかなフルートがからみつくようにして美しい。
さらに、その後には、イエスとともにあったことを否定してしまうペテロ。
否認のあとに鳴く鶏。外へ出て激しく泣くぺテロとそのアリアはテノールで痛切なものです。
(この場面と、イエス死後の幕が裂け地が割れ・・の箇所は、マタイ福音書から引用されております)
ペテロの否認の場面は、マタイの方にこそ人間の悲しみがしみじみと出ておりますが、激しく後悔し慟哭するこちらのヨハネの場面も感動的なものです。

 
「こと果たされし」、十字架上のイエスの最後の言葉をうけてのち、ヴィオラ・ダ・ガンバを伴ったアルトのアリアは、沈痛で寂寥感あふれる涙さそうアリアです。
イエスがこと切れ、天変地異が起きたあと、ソプラノのアリアはオーボエとフルートを伴い、涙にくれつつも、きたる栄光を歌いますが、この曲も楚々とした中に哀しみが込められていてわたしは好きです。

最後の合唱「憩え、安らけく」も涙さそう、哀しみと、深い情感にあふれた名品です。
そして、安らぎへと導かれたあと、最終コラールでは天上での出会いを期待し、イエスの栄光を讃えるのです。

歴史的な名演ともいえるリヒター盤。
これまで何度聴いたことでしょうか。
そのマタイとともに、わたしにとって絶対的な存在の音盤です。
古楽演奏が主体となった今でも、これほどまでに厳しく、容赦なくわたしたち聴き手に迫る力を持っているのはリヒター盤のみ。
 一方、リヒターのあとを継いだ、ハンス・マルティン・シュナイトの日本での演奏も聴いていて、そちらはシュナイトさんならではの、優しい祈りと包容力にあふれた名演でした。
どちらも素晴らしい、忘れ難いヨハネです。

今回聴いて、録音が古びて感じたのと、今少しの透明感が欲しく感じたのも事実で、古楽器による演奏に耳がだんだんと慣らされていることを思いましたがいかに。

ヘフリガーとテッパーは、もう完全完璧です。
プライの暖かな声もイエスに相応しかった。

それにしても、今日の関東は寒いです。
雨もときおり強く降ったりして、地面は桜色になりつつあります。

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部屋から見た公園桜。

電線が邪魔ですが・・・・。ともかく寒いです。

過去記事

 「ヘレヴェッヘ盤」

 「シュナイト指揮コーロ・ヌオーヴォ演奏会」

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コメント

yokochanさん、昨夜NHKで佐村河内さんの番組みました。yokochanさんのブログも出てましたね。感動しました!

投稿: ぶよたろう | 2013年4月 1日 (月) 13時45分

佐村河内さんのNHK特集、見ました。
泣きました。。。

投稿: モナコ命 | 2013年4月 1日 (月) 22時34分

ぶよたろうさん、こんばんは。
ご覧になられましたか。
今回は何もないと思ってましたら、ブログでの出演となりました。
これも、被災地への佐村河内さんの思いゆえです。
弱者へ寄せる、あの方の同情と愛は、どんなに尊厳を寄せても尽せぬ本物の感情です!!
わたしも感動しました!

投稿: yokochan | 2013年4月 1日 (月) 22時44分

モナコ命さん、こんばんは。
昨日の日曜日は私もずっと泣きっぱなしでした。
佐村河内さんで泣き、そのあと、ドラマ「母へ」で泣き、今日は朝からまぶたが腫れまくりでした・・・・。
心を揺るがす佐村河内音楽、おからだを考えると申しわけなのですが、もっともっと体感したいですね。

投稿: yokochan | 2013年4月 1日 (月) 22時49分

とても魅力的な記事でした。
また遊びに来ます!!

投稿: 就活の送付状 | 2013年6月 7日 (金) 09時52分

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昨日と今日で全曲を聴きました。 リヒターのすごい気迫と、頭の中をえぐられるような求心力みたいなもんに久しぶりに触れました。 [続きを読む]

受信: 2013年3月31日 (日) 17時41分

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