カルウォヴィチ ヴァイオリン協奏曲 バリノワ&コンドラシン
東京駅丸の内口にオープンした商業施設「KITTE」。
旧東京中央郵便局の建物を、その意匠のままに活かし、さらに郵便事業窓口は従来の場所に残しつつ、6階以上の上階を高層オフィスビルとして再スタート。
とのこと。
オープン数日後に、ちら見してきましたが、人の多さに辟易とし、そしてもうしばらくして人が減ってゆっくり味わえたとしても、わたくしには、あんまり魅力ある場所には思えませなんだ。
こんな一等地で、ご覧のような贅沢空間。
建築上の制限や容積の授受などがあったのか。
この空間に不安を感じる。
みんな多くの人が、せせこましい自分空間に息苦しく生きているのに、日本でも超トップクラスの贅沢立地をこんな風に使うなんて。
各回廊は、人だらけで、回遊性を犠牲にして、年寄りにあまりに優しくない。
おまけに、なんだかよくわからんアート展示もやたらとあって。
高額な賃料を払えるテナントは、どこにもあるようなものばかり。
賃料レヴェルを格安にして、全国の物産館を終結するとか、中小の面白いテナントにチャンスを与えるような開発をして欲しかった。
まあ、素人が遠吠えしてもしょうがないですけどね。つまらん。
カルウォヴィチ ヴァイオリン協奏曲 イ長調
Vn:ガリナ・バリノワ
キリル・コンドラシン指揮 ソビエト国立フィルハモニー
(1955 モスクワ)
こちらは、実に面白い、というか、実に素敵な作曲家。
ミチェスラフ・カルウォヴィチ(1876~1909)は、ポーランド、ヴィリニュスに生まれたポーランド後期ロマン派・世紀末の作曲家。
少し後輩のシマノフスキとともに、ポーランドの新たな音楽の流れをつくる会派に属し、世紀末ムードを愛する故国ポーランドに導きいれ、いくつかの交響詩や管弦楽作品を残した。
しかし、無情にも登山愛好家でもあったカルウォヴィチは、雪山登山中に雪崩にあって33歳の若い命を散らしてしまう。
残された音楽は、いままた、マーラーが普遍的になったように、同時代の優れた音楽がクローズアップされ、私淑したR・シュトラウスやワーグナーの流れの中にも捉えられるようになり、密かなブームになっているのです。
作品数はさほど多くはありませぬが、例によってナクソスやシャンドスで聴けるようになってます。
今宵のヴァイオリン協奏曲は、1902年の作曲で、ポーランド的な民族臭よりも、ロマン派末期、まるでブルッフのような馥郁たるロマンと熱っぽい情熱を感じる音楽に聴こえました。
そう、このヴァイリン協奏曲においては濃厚後期ロマン派というよるは、少し若め、実際20代の青年の作であるからして、初々しくて素直、あざとさもないブルー系の爽やか系協奏曲なのですよ。
最大の魅力は、いましがた述べたような爽やかなロマンティシズムあふれる第2楽章。
ほぼ、ブルッフのヴァイオリン協奏曲ですよ。
わたしには、ブルッフと初期R・シュトラウス、そしてコルンゴルトの間に位置するようなヴァイオリン協奏曲に聴こえました。
ほんと、素敵な音楽なのですから!
決然とした第1楽章と、ヴァイオリンの名技性も活かした、これまたブルッフ級の素敵な3楽章。
ともかく大らかな歌が大事なカルウォヴィチの協奏曲。
1852~1961年(たぶん)の生年没歴のガリーナ・バリソワはサンクトペテルブルク生まれで、のちにパリで、ロン・ティボーに学ぶなどして、ヨーロッパ系としても名を残しましたが、いまはほとんど知られぬ存在となっております。
共産圏音楽家として、レーニン賞を受賞したりしてますし、リヒテルとの共演もあったりして、未知の国ソ連では、なかなかの存在だったようです。
コンドラシンとの50年代の共演によるこのカルウォヴィチ。
当時は政治的にも共産圏として、ソ連配下のポーランドとしての作曲家。
そんなことは、この演奏を聴く限りわかりませんが、美しい2楽章を東西の隔てなく活動した二人の音楽は、そんなことは関係なく純なる眼差しで演奏していることがよくわかります。
カルウォヴィチの交響作品は、いずれまた取り上げたいと思います。
この作曲、そしてポーランド作曲家への愛情あふれる数々の記事は、ブログ仲間のnaopingさんのサイトを是非ともご覧ください。
そして、美人なバリノワさん。
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コメント
あれまぁ、珍しいヴァイオリン協奏曲シリーズ、yokochanさんの新たな一面みせてもらいましたね。このあと、何が飛び出すか楽しみです。そういえば、フランスにはヴァイオリン協奏曲、ロマン派は数多くあれ、近代現代はめぼしいものがないですね。
追記;うちの会社、何を考えているのか、よう分かりません。yokochanさんのおっしゃること、頷首です。
投稿: IANIS | 2013年4月 6日 (土) 18時11分
っつーことで、出てきました。
私もこの協奏曲もちろん大好きですが、この盤は持ってないです。
というか、見たの初めてです。こんな昔にコンドラシンが振ってたなんて・・・これ欲しいです。
掘り起こせば掘り起こすほど、いろんな作曲家が出てくるポーランドはホントにステキで不思議な国です。
投稿: naoping | 2013年4月 6日 (土) 19時04分
今晩は。知られざるヴァイオリン協奏曲シリーズですか!ブログ主様の守備範囲の広さと、視野の広さにはいつものことながら脱帽です。J・ウィリアムズ、映画音楽は沢山聴いていますし、もともとクラシック畑の作曲家だということも知っていましたが、彼のクラシック系の作品は全く聴いたことがないのです。カルウォヴィチという作曲家は名前さえ知りませんでした。シマノフスキは中学時代から名前は知っていますがいまだに全く聴いたことがないです。
以前IANIS様から薦めていただいた墺太利の大作家ローベルト・ムージルの「士官候補生テルレスの青春」という作品文庫本で買いました。ムージルの代表作の大長編「特性のない男」もネットの古書店で何とか全6巻を入手して読んでいます。難しいけど面白いです。ブログ主様といいIANIS様といい、常連の皆さんといい、視野が広くてインテリジェンスの高い方ばかりでいつものことではありますが、「オレって本当にまだ青いよなぁ」と思ってしまいます。
投稿: 越後のオックス | 2013年4月 6日 (土) 23時06分
IANISさん、まいどです。
ヴァイオリン協奏曲シリーズは、ここでひとまず終わりますが、ピアノもふくめて、またやってみたい企画です。
たしかに、フランス近代にはピアノも含めて、あまりないですね。
コンサートでは画一的に、名曲ばかりの協奏曲ですが、こうしたものも是非にやって欲しいところです。
神奈川フィルでは、今年、ブリテンのヴァイオリン協奏曲をやりますので楽しみです。
そして、御社のこと、辛辣しぎましたね・・・。
投稿: yokochan | 2013年4月 7日 (日) 10時52分
naopingさん、こんにちは。
naopingさんのブログで、ポーランド音楽を数々教えていただきました。
おかげさまで、いまは、ルジツキが気になる存在です。
この盤は、以前に、こちらのバナー左上にある「曝演堂」さんで購入したものですが、いまのリストには載ってなかったので、もしかしたら入手は難しいかもしれません。
たしかに、コンドラシンは貴重ですね。
こちらの女流さんのヴァイオリンも素晴らしいものでした。
投稿: yokochan | 2013年4月 7日 (日) 11時18分
越後のオックスさん、こんにちは。
J・ウィリアムズは、なかなかの本格音楽でした。
そして、シマノフスキは世紀末ムードプンプンの実に素敵な作曲家でして、ラトルがよく取り上げてます。
それとカルウォヴィチは、管弦楽作品に魅力的なものが多くて、これからどんどん聴こうと思ってます。
こんな風に、視野が広がっていくのは、わたしの場合は、単に長年クラヲタをやっているにすぎない結果ですから、そんなに大それたことじゃありませんよ。
わたしこそ、ほかの方々の見識の広さに、いつも驚かされ教えられております。
越後のオックスさんの文学好きには、わたしなど足元にも及びません!
投稿: yokochan | 2013年4月 7日 (日) 11時25分