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2013年5月 5日 (日)

ヴォーン・ウィリアムズ トマス・タリスの主題による変奏曲 ワーズワース指揮

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お天気に恵まれ、いつもの郷里の山の上も、晴々とほんとうに気持のいい1日でした。

早朝登れば、人も少なく、海と山の絶景をひとり占め。

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世界遺産、富士山は残念ながら雲に隠れてまして、頭の部分だけ。

子供も頃は、自宅の自室からも頭の部分が見えて、夕日に染まるその光景を見ながら、ディーリアスをはじめとする英国音楽や、ワーグナー、ことに「ウォータンの告別」などを聴いていたものです。
 いまは、自宅前の山、すなわち、いつも登るこの山の木々も伸びたのか、部屋からはまったく見えなくなってしまいました。

新緑の眩しさをたっぷり浴びて、リフレッシュできた1日。

今夜は、そんな深呼吸したくなるような爽やかな英国音楽を。


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  ヴォーン・ウィリアムズ  タリスの主題による変奏曲

                  ノーフォーク・ラプソディ

                  揚げひばり

                  グリースリーヴスの主題による変奏曲

                  「富める人とラザロ」の5つの異版
                  
                  
 
 

                  交響的印象「沼拓地方にて」

    バリー・ワーズワース指揮 ニュー・クィーズ・ホール管弦楽団

                    (1992.10 @ロンドン、ウォルサムストウ)


ヴォーン・ウィリアムズの管弦楽作品の音盤は数々持ってますが、なかでもそのほとんどが聴けるお気に入りの1枚。

もう少し活躍してもいいと思うワーズワースは、次々に亡くなってしまった英国指揮者のなかで、正統派の期待の存在。

ニュー・クィーンズ・ホール管弦楽団は、1895年にヘンリー・ウッドによって設立されたオーケストラをその由来とし、1992年に再編されたもの。
設立時代のロンドンで使用されていた楽器や奏法を用いるというコンセプトのもとに再スタートし、このCDがその第一弾であった。

その後の録音は、ワーグナーがあったような記憶もある程度だが、まだ年数回のコンサートは継続している様子。
バロックや古典~ロマン派あたりまでの古楽器系、さらには現代楽器によるピリオド奏法。
それらの流儀を20世紀初頭の音楽に合わせて、楽器・奏法ともに解決しようというやり方であったわけです。
 ちょっと中途半端だし、現代楽器と100年前の楽器の違いはそれほどに大きいのか?という疑問もあって、やはりそのあたりが、このオーケストラの意義が地味に消滅ぎみなところなのでしょう。

でも、わたくしは、この1枚がとても好きです。

緩やかで、穏やかな表情が綾なす英国の田園風景を偲ばせるようなヴォーン・ウィリアムズの音楽。
少しピッチが低めで、落ち着いて、むしろくすんで聴こえるようなこのオーケストラの響きは極めて魅力的な反面、「揚げひばり」のような、どこまでも高く羽ばたくような軽やかさ、飛翔感は少なめ。

テューダー王朝時代の作曲家、トマス・タリスの詩編の一節からなる幻想曲は、教会の礼拝を模した二重合奏となっていて、その古風でどこか寂しい哀感をたたえた曲調は、まさにこうした渋めなオケの音色でこそぴったりきます。
古酒をしみじみと味わう感があります。

有名なるグリーンス・リーヴスもくすんだ秋景色のようで、とても美しく、儚いのです。

英国の湿地帯を思い描くことのできる「沼拓地方にて」も、民謡採取に向かうことのなる、ヴォーン・ウィリアムズの心情のはかられる、渋いけれど、郷愁誘う名曲・名演でした。

ボールト、バルビローリ、トムソン、ハンドリーと、RVWの管弦楽作品の音盤は名盤に事欠きません。

さぁ、今宵はゆったりと眠れそうです。

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コメント

 今晩は。トマス・タリス幻想曲は手持ちの音源は、アンドリュー・デイヴィス指揮BBC響のみです。恥ずかしい…ブログ主様はRVWの交響曲全集をアンドリュー盤以外は全部持っておられるそうですが、私の手持ちのRVW全集はアンドリューのものだけです。9曲の交響曲とヨブをはじめとするかなりの数の管弦楽曲が入っています。でも、このところずっとプレーヤーに入ることがなかったですね。RVW全集は。後期の交響曲なんかにとっつきにくい曲がありますが、決して嫌いな作曲家ではありませんのでまたじっくり全曲を聴いてみたいと思います。
 最近私をはるかにしのぐ辻邦生先生の信徒、Shushi様とネット上でコンタクトをとることが出来ました。紳士的で教養があって実にいい方ですね。私みたいにストーリーや登場人物をポンコロポンコロ忘れたりしておられませんし。辻先生は実力の割に過小評価されている大作家だと思うのですが、同氏に「メンデルスゾーンがマタイを復活上演させる前のバッハと今の辻先生は似ていると思います。メンデルスゾーンのような目利きが出てきて辻先生を『再発見』してくれるといいのですが」とコメントしましたら氏は、「卓見です」という主旨のことをくださいました。高校時代からの愛読者としては嬉しい限りです。ちなみに不良文学少年の私に辻先生の「雲の宴」を薦めてくれたのはもう会えなくなってしまった「あの」恩師。神様が神様を私に紹介してくれたようなものですね(笑)。「おい越後のオックス、司書教諭の先生から聞いたぞ。雲の宴、読んでるんだって?面白いだろ?」あの時の弾けるような恩師の笑顔と、生まれて初めて接した辻先生の、バッハの音楽のような端正で堅牢な文体を私は生涯忘れません。

投稿: 越後のオックス | 2013年5月 8日 (水) 20時46分

越後のオックスさん、こんにちは。
お返し、遅くなりました。
RVWは年中聴いてますが、いまのこの時期にぴったりくるのが管弦楽作品の数々です。
サー・アンドリューは、秋にBBCとやってきて、ロンドン交響曲を演奏してくれるみたいです。
ところが共演が、日本のヴァイオリン奏者(神尾)で、チケットがバカ高い。モーツァルトの協奏曲をやるだけなのに。どうかしてると思います。
ですから、わたしは聴きにいきません。悔しいです。

話かわって、辻さんのご本ですね。
以前より、お話してますように、文学に疎いワタクシですから、いまだに辻文学にはふれずじまいです。
Shushさんも、相当にご造詣が深い方とお見受けしておりました。素晴らしい交歓ができましてなによりですね。
ほんとうに嬉しいです。
そしてそのような恩師がいらっしゃることに、とても羨ましく存じます。
思えば、そのような出会いや教えは、わたしの場合まったくございませんでしたから。
>バッハの音楽のような端正で堅牢な文体<
素晴らしいですね。いま、諸所多忙で、本を読むこともままならず、音楽視聴にしか手が回りません。
いつか、そこまでおっしゃる辻文学の世界に入ろうかと思います。

投稿: yokochan | 2013年5月10日 (金) 23時02分

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