チャイコフスキー 交響曲第4番 ヤンソンス指揮
横浜中華街の「関帝廟」。
關聖帝君という、三国時代の武将を中心に諸々祀っているそうですが、不勉強なわたくしには、それ以上ご説明できません。
ただひとつ、日本のそれもそうですが、あれこれ盛り過ぎだろ、ということ・・・。
門をくぐり本殿は、このとおり、シンメトリーな中華なお姿。
しかも、屋根の上の細工物は、技巧のかぎりを尽した微細な彫刻物が。
ちょいとアップにしてみましょうかね。
一部ガラス細工のようですが、本場で造ってもらったようです。
なんだかんだ言いがちですが、かの地はピンキリということでしょう。
練達の職人芸がしっかりとあるんですねぇ。
チャイコフスキー 交響曲第4番 ヘ短調
マリス・ヤンソンス指揮 バイエルン放送交響楽団
(2005.11.10@ヘラクレスザール、ミュンヘン)
チャイコフスキー(1840~1893)の交響曲シリーズ。
よくみたら没後120年という地味アニヴァーサリーじゃね。
第4番は、1878年、作者37歳の作品。
交響曲に加え、白鳥の湖、オペラ3つを完成させ、ロシア音楽界の期待の若手として注目を浴びていたチャイコフスキーですが、よくあるように、その実態は生活的に困窮していて、日々苦しいばかり。
そのチャイコフスキーを、このとき救ったのが有名なメック夫人との交流。
ナジェージュダ・フロロフスカヤあらため、ナジェージュダ・フォン・メックさんは、16歳で交通省の役人のカルルの妻となり、子沢山の家計貧乏の生活に明け暮れておりました。
しかし、夫婦でチャレンジした民間鉄道への事業転換が大当たりして、ロシアや近隣へも不動産を持つほどの財をなすほどになるのでした。
しかし、旦那カルルは45歳の夫人を残して他界。
商才あったメック夫人は、すべてを継承し、商売は順調、しかし心には寒風が吹く寂しい日々。
それを救ったのが、かねて幼少時代に親しんだピアノと音楽。
そして売り出し中のチャイコフスキーの音楽の素晴らしさにも着目し、しかもその彼が困っている・・・・。施しと取られる本人の意志を憂慮しつつも、多額の援助を申し出るのでありました。
これがチャイコフスキーとメック夫人、14年間続く手紙だけの交際の始まりでした。
そのメック夫人に献呈した感謝のしるしが、交響曲第4番。
援助の見返りを、素晴らしい音楽創作と孤児や弱者への再援助へと惜しまなかったチャイコフスキーの真面目さと優しさ。
でも夫を亡くした熟女は、チャイコフスキーへの本当の愛を伝えつつも、相方の反応は薄く、控えざるを得なかった。
これもまたいじらしい史実であります。
受ける側が、違う方向に心がありつつの、ところがビックリ若い女性と結婚して、即破綻。
まぁ、そんなことは気にせずに、チャイコフスキーの音楽はいつ聴いても、心に迫り、鼓舞するものばかりなんですからね。
この交響曲は、夫人にあてた手紙で、それぞれの楽章に注釈があります。
①運命の旋律! これが中間部のメランコリックな雰囲気に浸っていても、人間を現実に戻してしまう。
②仕事に疲労困憊。夜中に過去を想う。
③酒を飲んだときのとりとめない観念。
④生きるには素朴な喜びが必要。どんなに苦しくても、その存在を認め、悲しみを克服するために生き続ける・・・・・。
なんだかいいこと言うねぇ~
④楽章のむちゃくちゃぶりは、わたくしには酒を飲んだ勢いに過ぎないと思えるのですが。
そして次の日にはもう後悔してしまうってヤツ。
でもまた、①楽章から、また始めるんだな、人間ってのは・・・・。
ヤンソンスとバイエルンのライブは、4~6番が揃ってます。
気質的に、若い頃から4番が得意だったヤンソンス。
じっくりと取り組みつつ、アゴーギグ豊かに、ときおり立ち止ったように振りかえってみせたり。
でも、終楽章コーダの疾風怒涛ぶりには、誰しも度肝を抜かれチャイます。
早い、激しい、おいしい。
この曲はこれでいいのでしょう。
1986年、ムラヴィンスキーの来日が病気で不可能になり、同行のヤンソンスが大半を指揮したレニングラード・フィルとの公演。
ヤンソンスは、ショスタコーヴィチの5番とチャイコフスキーの4番という、とてつもない情熱プログラムを指揮した。
NHKFMで放送されたその演奏は、まさに爆演と呼ぶに相応しい凄まじいもので、いまでもわたくしの愛聴CDRです。
このバイエルン盤をさらに若くしたストレートな演奏でありました。
そして、こんな画像作ってみました。
神奈川フィル監修の「神奈川フィルの名曲案内」。
早ければ明日あたりから、順次、全国書店に並びます。
ありそうでなかったオーケストラ監修の本。
是非、お手に取ってみてください。
わたくしもほんの微力ながら遠巻きにお手伝いしました。
どうしてもお手に入りにくい場合はご案内申し上げます。
コメントやメールでお知らせください。
そして、このご本を手に、首都圏の方は神奈川フィルに会いに横浜までいらっしゃってください
| 固定リンク
コメント
昭和60年から平成2年まで関内馬車道で働いていた折、焼失した関帝廟の再建活動に遭遇しました。中華街で日頃不仲な台湾系と大陸系が関帝廟については協力し、無事にこれが竣工したと認識しています。
また、ヤンソンスは、現存指揮者中屈指の実力者と認識しており、大好きです。
投稿: faurebrahms | 2013年5月29日 (水) 05時31分
今晩は。関帝廟に祀られている三国時代の中国の武将というのは、関羽のことですね。青竜偃月刀という必殺武器を持ち、赤兎馬という一日に千里を駆けると言われた名馬に乗っていた勇将ですね。三国志は、三国時代、つまり中国大陸が3つの国に割れていた時代、乱世のお話です。1800年ほど前でしょうか。生死を共にすることを誓った劉備・関羽・張飛の英雄3人と忠誠心の篤い趙雲、天才軍師・諸葛孔明といった人たちが大活躍します。日本でも江戸時代から多くの人に読まれており、近年は漫画やアニメ、TVゲームにまでなっています。私も三国志や三国時代の中国史は大好きです。一度ハマると一生ぬけられないという点ではワーグナーのリングやバッハのカンタータに匹敵するものがあるかもしれません。かくいう私も一生三国志から抜けられなくなった人間です(笑)。
faurebrahms様のヤンソンスは現代屈指の実力派指揮者というご意見には全く同意です。ムラ閣下の代役としてレニングラードを指揮したチャイコ4番とタコ5番は是非聴いてみたいです。CDかDVDにならないものでしょうか…
チャイコの交響曲全曲鑑賞は私もやろうと思っております。1~3番は豪華華麗なカラヤン指揮ベルリンフィルで、4,6番はムラ閣下、5番はメータでいこうと思います。
投稿: 越後のオックス | 2013年5月29日 (水) 17時40分
チャイコの4番、好きです。特に1楽章。好きです。何度聴いてもトキメキます。涙止まらず。カラヤンの強引な演奏も好きです。デュトワのオシャレなきれいごとの演奏も好きです。ゲルギエフの「ワイルドだぜー」という前宣伝とは違ったフツー過ぎる個性のない演奏も好きです。マゼールの無茶な演奏もバーンスタインのやり過ぎな演奏も全部好きです。
この曲は演奏家を感じさせない。音楽が聞こえます。好きなんです。1楽章を聴くと泣けます。2楽章を聴くとずっとひたっていたくなります。3楽章を聴いてすこし元気になります。4楽章の大騒ぎの中での絶望感も好きです。
今から演奏家不明のSPレコードで聴きます。おじさんは家族の冷たい手、じゃなかった冷たい目に耐えながら「おとうさん、音ウルサイ」という罵詈雑言にもめげずに4番を聴いて、ひとりさめざめと泣きたいと思います。
投稿: モナコ命 | 2013年5月29日 (水) 22時17分
faurebrahmsさん、こんにちは。
いつもお教えいただくばかりで恐縮です。
消失の再建だったのですね、どうりでぴかぴかでした。
そして中・台のエピソードもうれしいものです。
最近のヤンソンスは疲れ気味に思えますがどうでしょう。
若い頃の方が面白かったのは確かですが、働きすぎなのかもしれません。
投稿: yokochan | 2013年5月30日 (木) 00時50分
越後のオックスさん、こんにちは。
なるほど三国志の方ですか。
境内に赤い顔のいかつい像がありました。
そのあたりにまったく疎いものですから、またひとつ教えていただきました。
三国志読破は、老後の楽しみにとっておきましょう。
しかし、面白そうですね。
ヤンソンス若き日の演奏はNHKにテープが残っていれば音盤化するかもしれませんね。
サントリーホールの演奏で、カセットのCD起こしですが、音は極上に素晴らしいです。
わたしのチャイコはあと2曲。
普通じゃなくっぽく行きます(笑)
投稿: yokochan | 2013年5月30日 (木) 00時56分
モナコ命さん、こんにちは。
おじさんは大変なのです。
うるさい口撃は、もう卒業しまして、どのような曲ももうヘッドホンじゃないと許されない虫けらのようなお父さんになり下がってしまいました・・・・。
でも、だからゆえに萌え燃えのチャイコの4番と5番が大好きです。
カラヤンやバーンスタインいいですね。
ゲルギーもたしかに顔と不釣り合いな演奏。
デュトワは聴いたことがないのですが、ビューティフルなんでしょうねぇ。
このヤンソンスは、終楽章のコーダの激っぷりが聴きものでした。
この曲は、5番とともに時おり激しく聴きたくなります!
お父さん頑張ってください!
投稿: yokochan | 2013年5月30日 (木) 01時02分
さまよえる様クラスの活躍をしている方も、家庭における評価は私と同様なのですね。強い共感を覚えます^^;
強面レスラーの佐々木健介と蝶野正洋は近所に住んでいるのだそうです。お二人とも恐妻家、、、夜遅く奥さんに「こら!アイスを買ってこい!」と命じられた佐々木健介氏が夜中の2時に近所のコンビニでアイスを買いに行ったら、アイスを買い終わっている蝶野正洋氏に会い、ハっと気がついた。瞬時におかれている立場を理解してお互いに深くうなずき合ったというエピソードを聴いたことがあります。私はそのTV番組を見て、誰はばかることなく大きな声をあげて泣きました。
チャイコフスキーを聴いて、今夜も泣きたいと思います。さまよえる様にならってヘッドホンにします。ただ、私って子供の頃にやらかした中耳炎のために、ヘッドホンを連続5分以上聴くと、耳がおかしくなるんですよ。。
あああ!私の楽園はどこにあるのか!
投稿: モナコ命 | 2013年5月30日 (木) 17時34分
モナコ命さん。
お互い様の、哀しみの共感にございますな・・・・。
同じく哀しみのレスラーたち。ほろりとさせる逸話じゃございませぬか。
世のオヤジたちが、コンビニの姉ちゃんたちに、優しく手を差し伸べられてお釣りを渡されたら、グッぐっときてしまうのですね、これが。
ヘッドホン聴きがままならぬとのこと。
いたみいります、ご察しいたします。
骨伝導イヤホンなるものはいかがでございましょうか。
楽園探しに一度お調べください。
投稿: yokochan | 2013年5月31日 (金) 00時33分