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2013年5月19日 (日)

ヴェルディ 「エルナーニ」 ムーティ指揮

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お天気がずっとよかった連休のいつもの山の上。

大磯方面を望むの図。

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湘南平も見えます。

小学校の遠足や授業で何度も行きましたが、大人になってからは行ってないな。

高麗山、泡垂山ともに歴史ある場所ですが、戦中は平塚に軍事工場が多くあり、空襲も多かったことから高射砲が据えられたそうな。
いまは、愛の南京錠の場所として有名。

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海方面に目を転じれば、大磯ロングビーチと遠く江の島、三浦半島。

気温も上がり、ぼやけちゃってますが。

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     ヴェルディ   「エルナーニ」

 エルナーニ:プラシド・ドミンゴ  ドン・カルロ:レナート・ブルゾン
 シルヴァ:ニコライ・ギャウロウ  エルヴィーラ:ミレルラ・フレーニ
 ジョヴァンナ:ジョランタ・ミキエリ ドン・リッカルド:ジャンフランコ・マンガノッティ
 ヤーゴ:アルフレート・ジョコモッティ

  リッカルド・ムーティ指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団
                  ミラノ・スカラ座合唱団
        合唱指揮:ロマーノ・ガンドルフィ
        演出:ルカ・ロンコーニ

                       (1982.12@ミラノ、スカラ座)


ヴェルディのオペラ5作目は、ヴィクトル・ユーゴーの戯曲「エルナーニ」に基づくもの。
これまで連続してメレッリのもと、スカラ座でのオペラ製作を行って、成功とブッファの失敗を重ねてきたヴェルディは、同オペラ座でのマンネリ化を避けたいとも考えていて、かねてより若いヴェルディの才能に目をつけていたフェニーチェ劇場が新作製作を打診してきたとき、ヴェルディは渡りに船の心境だった。
 作品と台本作者選択と作曲をセットにして提案したのも他の競争相手の提案とはことなるところで、報酬の受け取り方も異例の提案を行ったヴェルディ。
親譲りの商才と後年評価されることになります。
ともあれ、いくつもの候補から「エルナーニ」を選び出し、台本作者も今後長く付き合っていくこととなるピアーヴェに決定。
作曲の最終工程を詰める傍ら、「ロンバルディア人」をオープン演目に上演し、1943年3月、「エルナーニ」はヴェネチアのフェニーチェ座で初演され、歌手の不出来はあったものの、聴衆はヴェルディの熱い音楽に大興奮し、「エルナーニ」は人気オペラとして、またたく間にイタリア全国に広まったといいます。
われらがヴェルディ、ますます好調!

今回も史劇なので、その時代背景を少しお勉強。

物語は、16世紀中ごろのスペイン。
ヨーロッパ諸王国の血筋を集約したようなサラブレッド的存在だった、このオペラでいうところの「ドン・カルロ」、すなわちスペイン王カルロス1世(1500~1558)。
主人公エルナーニは、アラゴンの貴族の出自とされますが、アラゴン王国は、確かに、カルロス1世時代に、傘下入りされて、スペイン王国入りしておりますので、父親の敵がカルロス1世ということもありえるわけです。
 このカルロス1世は、同時にブルゴーニュ、ナポリ、シチリア、アメリカなどの広大な領地を傘下に収めたが、さらに、1519年には、ハプスブルク家の領地、そして神聖ローマ帝国皇帝に選出されることで、巨大な領地の主となり、カール5世を引き継ぐことになります。
 それが、このオペラの3幕の出来事で、超強大な権力を得たドン・カルロ(カール5世)は、このオペラではその権力におごることなく、その場で謀反人たちに恩赦を繰り出すこととなります。
 晩年、引退後は、そのスペイン系の地位を息子フェリペ2世に、ハプスブルク・神聖ローマ帝国系を弟フェルディナント1世に引き継ぎます。
その彼らが、さらにその引き継いだ王国を最強のものにしていくこととなりますが、ことにスペインはカール5世とその息子フェリペ時代、「太陽の沈まぬ国」として栄華を極めつくすこととなります。

第1幕 アラゴンの山中、ルイ・ゴメス・デ・シルヴァの居城から離れた場所

今は、山賊の首領、かつては父親がドン・カルロに破れてしまったアラゴンの貴族エルナーニ。山賊たちは、酒を飲んだり、賭けをしたり、武器を磨いたりしている。
エルナーニは、シルヴァの城にあって、その叔父に結婚を迫られている恋人エルヴィーラのことを思い、アリアを歌います。
そんなに愛してるなら、その城に今から行って彼女を救いにいこうじゃないか、と山賊たちにうながされ、一同は揚々と城へと向かう。

2場は、そのシルヴァの居城のエルヴィーラの部屋。
彼女もエルナーニのことを思い、彼がここから連れ出してくれることを願って歌う。
待女たちが、結婚のお祝いをたくさん持ち込んでも浮かぬ彼女を気の毒に思って退出する。
そこへ、乳母ジョヴァンナの手引きで、お忍びで入り込んできたのが、ドン・カルロ。

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彼は、側室として共にこないか、と強引に誘うが、彼女はいいえ困りますと押し問答。
さらにそこへ、隠し戸からエルナーニ登場。
エルナーニは、ドン・カルロの正体を見抜き、父の敵として決闘を挑もうとするが、エルヴァーラが必死にとどめる。と、さらにまたそこへ、城の主、シルヴァが登場。
結婚しようとしている相手の部屋に、見知らぬ男がふたり。
口あんぐり、ショックのシルヴァは悲しい胸のうちを歌う。
しかし、名誉を傷つけられたとした彼は、二人に外へ出るように命じ兵士を呼ぶ。
そこへやってきたのが、王の従者、リッカルド。
ドン・カルロが王であることに驚き、陳謝するシルヴァ。
王は、ひとまずエルナーニは自分の配下のように振る舞い、下がらせ、自分は城に一夜泊めて欲しいとシルヴァに言う。

第2幕 シルヴァの居城

シルヴァとエルヴィーラの婚礼の日。城の人々たちは浮足立って喜ばしく歌います。
そこへ、修道士に変装したエルナーニがやってくるが、シルヴァは問答のすえ、来るものは拒まずとして城へ入れてやる。
エルヴィーラのもとに来たエルナーニは、この結婚をなじるが、自分はエルナーニを愛していて、もしあの叔父と一緒になるならば、このナイフで自決するまでと、強い決意を見せるので、二人は熱く抱き合う。
これを見たシルヴァは怒りまくり、エルナーニを殺そうとするが、今度はそこへ王の軍勢がなだれ込んでくる。盗賊(謀反人)エルナーニを追ってきたのだ。
シルヴァは、いったん迎えた客人でもあるエルナーニを引き渡すのは名誉がたたないとして、かれを秘密の部屋に案内し匿う。
王ドン・カルロが飛んできて、ヤツはどこへ行った?と攻め立てるが、シルヴァは知らない、どこなりと探して下さいというので、王の配下たちは城中探すも見当たらない。
ならばと、エルヴィーラを人質のようにして連れ去ってしまう。
 隠し部屋からエルナーニを出して、今の顛末を語るシルヴァに、怒り心中のエルナーニは、いまは一緒に力を合わせ王に立ち向かおう。助けてくれたお礼に、角笛を渡し、これが鳴り渡るとき、自分は喜んで死ぬであろうと、男としてシルヴァに命をさし出すことを誓う。

第3幕 ドイツ、アーヘン カール大帝の墓所のある聖堂

大帝亡きあと、皇帝選出選挙の報を待ちつつ、一方で謀反の動きあることへの怒りを若き日々を思いながら歌い、墓所へ降りていく。
王暗殺を企てる謀反人一行、すなわちエルナーニとシルヴァと男たちがやってきて、実行犯選出のくじ引きをして、エルナーニが選ばれるが、シルヴァは自分が替わりたい、角笛も返すからと申し出るが、エルナーニは男としてそれは受け入れない。
男たちは勇壮に国を憂いて力強い合唱を歌う。
 その時、3発の号砲がドン・カルロの皇帝選出を報じ、当のドン・カルロが墓所より出てくるので、一同はカール大帝が蘇ったかと驚く。
しかし、自分こそカール5聖である宣言し、やってきた部下たちに謀反人たちの捕縛を命じる。地位あるものは斬首、それ以外は監獄とするが、盗賊であるエルナーニが、自分はかつての貴族であり、ドン・ジョヴァンニが本名であり斬首を命じて欲しいと申し出て、ドン・カルロ(カール5聖)も応じる。
そこへエルヴィーラが飛び込んできて、彼らの命乞いを必死に行う。

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ドン・カルロは、しばしの沈黙ののち、カール大帝の高徳と仁慈を思い、謀反人たちをこの場で恩赦に処すことを宣言。
一同は、ドン・カルロの決断を褒め称え、エルナーニはさらに貴族復帰とエルヴィーラとの結婚までも許され、一同喜びに沸く。
ただひとり、蚊帳の外は・・・・シルヴァ。

第4幕 アラゴン、サラゴッツァにあるエルナーニの居城



今宵は、エルナーニとエルヴィーラの婚礼の宴。人々は仮面舞踏会に興じている。
そこには、黒装束仮面もいて不気味な雰囲気を出している。

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若い二人はバルコニーで、ようやくたどり着いた愛の成就を歌い合うが、そこに角笛の音が遠く響く。
青ざめるエルナーニの急変に不審に思うエルヴァーラだが、エルナーニはなんでもないから薬を取ってきてほしいと彼女を下がらせる。
そこへ黒装束のシルヴァが登場して、角笛の約束の履行、すなわちエルナーニの死を迫り短剣か毒薬かと示す。
戻ってきたエルヴァーラは驚き、シルヴァに彼の助命を懇願するが、シルヴァは徹底的に拒む。
ついに、エルナーニはその場で短刀で自決し、苦しい息で、エルヴィーラに天国で待っている、自分のことを忘れないで欲しいと歌ってこと切れ、エルヴィーラはそこへ泣き伏せる。
シルヴァは、復讐の神がいまこそ舞い降りたのだと勝利宣言をする。

               

正直言って、前作にも増して、荒唐無稽な物語。
王様が、ちょろちょろとしすぎるし、3人の老若から求愛されたエルヴィーラって、どんなに美人なんだろうか?
長編小説なら、もっと緻密な構成が組み立てれるところ、オペラだと限られた長さに、いろいろと盛り込まなくてはならないので、どうしても無理が出てしまう。
後期のヴェルディなら、もっと求心的なドラマを仕立てるところでありましょう。

しかし、初期のオペラの魅力は、次から次へと繰り出される歌また歌の宝庫。
素晴らしい旋律があふれだすように、奔流となって聴き手に届きます。
それを素直に受け取るのが正しい聴き方で、ドラマの中身はこの際よしとしましょう。

それでも、前作、「ロンバルディア人」から大きな進歩は、ヴェルディならではの激しい情熱がまともに音楽に反映され、強烈なリズムを伴ったダイナミックな音楽が展開され、舞台で接したら身も心も打ち込んでしまいそうな劇的興奮を呼び覚ますところ。
 さらに、登場人物たちが、それぞれ個性を主張しあっているところ。
ソプラノ、テノール、バリトン、バス。それぞれの声域の主役たちが競い合う声の饗宴も、あとメゾが加われば、ヴェルディのこれからの常套方程式となります。
 また、「ナブッコ」以来の、聴衆の愛国心鼓舞作戦も、ちゃんと力強い合唱を入れて組み込まれおります。

今回の音源は、リッカルド・ムーティがアバドがまだ音楽監督時代のスカラ座のオープニングに登場した記念碑的ライブ。
まだ充分に若かったムーティのたぎるような情熱と、強靱なカンタービレ。
これを受けて立つスカラ座オケの素晴らしさ。
純正イタリア人にしか出せない響きに思いました。
知的で整然とした音がおのずと音楽を語り出し歌い始めるアバド、それとはまったく違った本能的とも言えるむき出しのムーティ。どちらのヴェルディも好きです。
円熟を深めるムーティのまだ若い頃の名演のひとつだと思います。

わたしにとって、ヴェルディに夢中になっていた頃のお馴染みの歌手たちは、文句のつけようがありません。

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ことに、フレーニとギャウロウは最高です。
いろんな顔を持った役柄を歌いださなくてはならないシルヴァ役のギャウロウは特に!
ブルソンが、4人の中では、声が美しいものの地味に終始している感はありです。

ヴェルディ・オペラ、ブログ全制覇まであと10作。
 

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コメント

こちらの演奏、例によって私はLPで所有&鑑賞しています。なんという素敵なレコードでしょう!
キャストを見て最初は「お!ドミンゴ先生、フレーニ嬢!いいじゃん!」と思いましたが、ご指摘のようにギャウロフのシルヴァ役が泣けるのです。。
ブルゾン!と思いましたが、ま、フツー!って思ってしまいました。
エルナーニのアリアはモナコのアリア集での名唱を忘れることができず、誰が歌っても不満が残ってしまいます。

投稿: モナコ命 | 2013年5月20日 (月) 23時35分

モナコ命さん、こんばんは。
さすが、レコード鑑賞派ですね。
ギャウロウは、なにを歌ってもほんとに素晴らしい歌手ですね。
もったいないくらいの美声と渋さの共存。
かつて、バイロイトからウォータンのお誘いがあったそうです。
そうですね、デル・モナコにもこのアリアありましたね。
あとで聴いてみましょう。
しかし、ドミンゴは、ドミンゴだらけで、みんなおんなじに聴こえてしまうという弊害がありましたよね。。。。

投稿: yokochan | 2013年5月21日 (火) 22時19分

デル-モナコ現にイギリスDeccaに、自分をタイトル-ロールにして、このオペラの全曲録音をして欲しいと申し出たものの、アリアをリサイタル盤に録音するなら良いけど、全曲録音はセールス的にキツいので、受け入れて貰えなかった‥と書いてあったのを見た事が、ありました。シミオナートもトマの『ミニョン』を自分を主役での全曲録音を懇願されたものの、やはり同様の理由で駄目だったらしいです。

投稿: 覆面吾郎 | 2019年5月28日 (火) 08時48分

デル・モナコの強い声は、いま思えば、あらゆるヒーローを全曲盤で残して欲しかったものですが、シミオナートも含めて、そのようなエピソードがあったのですね。
ほんと、もったいない!

投稿: yokochan | 2019年5月30日 (木) 08時04分

欲と言うものは、限りないですね(笑)。
愚生もDeccaがデル-モナコにシミオナートを押さえていたんだから、サン・サーンスの『サンソンとダリラ』全曲録音してくれなかったんかいな‥と、悔しかったです。提携していたRCAに抜粋だけ収録したので、見送ったのかもしれません。

投稿: 覆面吾郎 | 2019年6月 1日 (土) 08時00分

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