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2013年5月21日 (火)

ヴェルディ 「諸国民の讃歌」 パヴァロッティ&レヴァイン

Jibasans

水色のカーネーション。

調べてみたら青色カーネーションは、ムーンダストとよばれる遺伝子組み換えで生まれた品種で、サントリーフラワーズと豪グロリジン社の共同開発とありました。

そちらは、もっと濃いパープルがかったものなので、この水色は単に色水を吸わせたものではないかと推定。

しかし、ムーンダストの方の花言葉は素敵なものです。

「永遠の幸福」だそうな。

Pavarotti_plus

  ヴェルディ  「諸国民の歌」

      ルチアーノ・パヴァロッティ

   ジェイムズ・レヴァイン指揮 フィルハーモニア管弦楽団/合唱団

                       (1995.6 @ロンドン)


今日はヴェルディの番で、こちらも、ちょっとひとひねり。

1862年、ロンドンでの万国博覧会の記念コンサートに演奏する行進曲を、ロンドンの万博当局は、英仏独伊の4ヶ国の作曲家に委嘱しました。
イタリアは、ロッシーニに依頼が来たのですが、高齢を理由に断り、代わりにヴェルディに話がきたものであります。

オペラ一筋で、こうした音楽とは無縁だったヴェルディは、当時20歳のボイート(のちの、オテロ、ファルスタッフの台本作者、メフィストフェーレの作曲者)の詩を見出し、テノールソロと合唱のための讃歌を作り上げました。

愛妻ジョセッピーナとロンドン見物もかねて、渡英し、さて演奏会の準備に、というところで、当局より横やりが入り、記念コンサートでは演奏できない、という結論を出されてしまった。
表向きの理由は、当初の依頼が、行進曲などの管弦楽作品であったから、というものだったものの、実際は、コンサートの指揮をつとめるイタリア人コスタの画策によるものでありました。彼は、作曲家でもあった自分がイタリアの代表に選ばれなかったことを、いつまでも根に持っていたのでありました。
マスコミの巻き込み、ちょっとした騒ぎになったものの、ヴェルディは夫婦でロンドンを楽しみ、結局のところ、別な機会に、ロンドン初演されこととなり、これには聴衆も熱狂して、大成功を勝ち取ることのなるのであります。
さすがのヴェルディです。

その熱狂の理由は、この曲を聴くとわかります。

「諸国民の讃歌」とあるように、この曲には、英国「Got save the Queen」、仏国「ラ・マルセイエーズ」、伊国「イタリアの兄弟たち」の3つが、そのクライマックスから終結部にかけて繰り返し、お互いに掛け合うように登場するのです。いずれも現在の国歌です。
これを聴いたロンドンの聴衆が、最後の輝かしいフィナーレに熱狂しないわけがありません。
しかも、ヴェルディのイタリアは、この曲の1年前に祖国統一を勝ち得たばかり。

14分くらいの曲です。
最初は、地球の美しい光景よ、と賛美を呼び掛けるものの、戦争の惨状を嘆かわしく歌い描写する場面に入ります。
そのあと、一筋の光が差すように、テノールソロが主に平和を取り戻せたことを感謝し、同胞の愛を神々しく歌います。むしろ、わたくしこの場面が素晴らしいと思う。
で、次に来るのが、諸国の歌となるわけです。

最終場面は、この後に書かれる「アイーダ」の勇壮な合唱との類似性も感じます。
さらに、詩の中で、イタリアの番では「ああ、我が祖国よ~Oh patoria mia」と、何度も歌うところが肝だと思います。
ヴェルディの真の心情ではないでしょうか。
「アイーダ」でも、ヒロインのアリアがその思いそのものです。

トスカニーニは、戦中にアメリカでこの曲を演奏したときに、「Oh patoria mia tradita」と、語尾に「裏切り」という言葉を加えましことは有名です。
裏切りの我が祖国よ、という歌は、ファッショに走る故国イタリアへのトスカニーニの思いだったのでした。
加えて、トスカニーニは、アメリカ国歌までも追加したりもしてます。
youtubeにあるようなので、興味ある方は探してみてください。

今回の演奏は、目の覚めるようなパヴァロッティの朗々たる歌声が気持ちいい、レヴァイン盤で。
こういう曲は録音がよくないといけませんね。これはバッチリです。

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コメント

おお^^この曲も聴いたことがないぞ^^
楽しいパバロッティおじさんのテナーとなれば
是非とも聴いてみたい!うーむ!今度CDを買います。

投稿: モナコ命 | 2013年5月22日 (水) 22時16分

モナコ命さん、こんばんは。
わたしも、ついこの間まで知らぬ未知曲でした。

しかし、なかなかナイスな曲。
パヴァさんあってのところもありますが、ワーグナーの荒唐無稽アメリカ100年よりは、より実感ある曲でした。
是非!

投稿: yokochan | 2013年5月22日 (水) 22時56分

最近、イタリアのオケと合唱団がこの曲を録音したというので、散々苦労して二種類入手したのですが、いずれも

「楽譜をなぞっているだけ」
「速すぎる」
「テノール・ソロの歌い方が臭い」

といった欠点ばかりでした。
イギリスのために書かれたかたという事情もあってオケや合唱団が張り切ったこともあるでしょうが、このレヴァイン&パヴァロッティ盤の巧さには脱帽するばかりです。

ちなみに、解説書に載っていた対訳が気に入らなかったので、独自に翻訳を作ってみました。
もっとも私はイタリア語を習ったことがないので、英訳テキストを基に重訳を作成し、ニュアンスがつかみにくいところはイタリア語辞書を使って調べました。

https://www.youtube.com/watch?v=QyPqa2OvqSE
https://www.youtube.com/watch?v=7k255QidlZg

「翻訳のここがおかしい」といったコメントが寄せられることを期待しているのですが、いかがでしょうか。

投稿: 田辺治久 | 2015年4月26日 (日) 11時32分

田辺治久さま、こんにちは。
コメントならびに、素晴らしいリンクをありがとうございました。
そして、ご返信遅くなってしまいました。
休日に、じっくりと拝見・視聴いたしました。

まず、実に見事な翻訳ですね。
この曲をさほど熟知しているわけじゃありませんし、当盤とトスカニーニしか知らない人間ですが、こうして、そのふたつを対訳を交えて聴きますと、心底感動できました。
 昨今の不穏な世界情勢を見るにつけ、同じ人間同士が、かくも、なぜ、いがみあうのか、イデオロギーや政治は、なにも解決できないけど、音楽は、一時でも出来るかもしれないと、ヴェルディの真っすぐな音楽と、見事な翻訳とで、思うことができました。

「主よ、そなたは、大地に輝きし露、花々、雨、そして愛の香油を撒かれた・・・」のくだりは、素晴らしく詩的かつ、感動的でした。
ご意見など、する立場にありません。
アーカイブの作成に、心より感謝と、御礼を申し上げます。

久しぶりに、パヴァロッティの耳あらわれるイタリアの歌魂を聴きました。

そして、トスカニーニのアメリカ篇は、ちょっとやりすぎかな、と思ったりもしてます(笑)
このたびは、ご案内、ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2015年4月29日 (水) 19時53分

この曲、トスカニーニの盤も在ったでしょうか。この曲と『聖歌四篇』はヴェルディの隠れた逸品として、必聴かと存じます。このレヴァイン&パヴァロッティ盤が外盤でまだ現役なら良いのですが、また検索かけてみます。

投稿: 覆面吾郎 | 2019年11月27日 (水) 10時18分

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