プロムス2013~ロト&ル・シエクルのハルサイ
ぴかぴかで、原色すぎて、陰りもくそもなく、まがまがしい、そんな多重塔。
成田山新勝寺の三重の塔でありました。
リュリ 「町人貴族」~序曲と舞曲
ラモー 「優雅なインドの国々」~舞曲
ドリーヴ 「コッペリア」 抜粋
マスネ 「ル・シッド」 バレエ音楽
ストラヴィンスキー 「春の祭典」
フランソワ=クザヴィエ・ロト指揮 レ・シエクル
(2013.7.14@RAH ロンドン)
今年のPromsの演目の多彩な面白さは、この夏の音楽祭随一だと思います。
もちろん、バイロイトのアニヴァーサリーが、わたしには第一ですが、プロムスでもワーグナー・ヴェルディ・ブリテン・チャイコフスキーがふんだんに聴くことができます。
前半戦で、いきなり面白いコンサートがありましたので、ここにご案内しときます。
1971年パリ生まれのロトが、自身で2003年に創設した「レ・シエクル」というマルチオーケストラ。
当然に、いわゆるピリオド楽器と奏法による古楽オーケストラなのですが、驚きは古楽の演目ばかりでなく、20世紀のストラヴィンスキーまでも鮮やかに演奏してしまうという驚異の団体。
それを統率する、ロトさんは、ロスバウト、ブール、コルト、ギーレン、カンブルランと続いた南西ドイツ放送響のポストにもあるお方。
これでおわかりのとおり、古楽から現代音楽までを、難なくものにしてしまうオールマイティな指揮者なのであります。
こちらのプロムスでの演目でも、リュリやラモーから、ストラヴィンスキーまで300年のフランスにまつわる舞踏音楽の歴史を、文字通り完璧に自分のものととして再現しております。
画像では、指揮棒の前身の、大きな杖を持って指揮する姿が写されてまして、この放送音源でも、コツンコツンというリズミカルな指揮音が盛大に収録されております。
リュリも、有名になったラモーも、やたらと鮮烈で興奮を呼び覚ますとんでもなくスンバらしいものでした。
そんな、ロトさんと手兵が、ドリーヴやマスネでは、香り高いエレガントなロマンティックなおフランス音楽を奏でたかと思うと、最後には、とんでもなく鋭敏・俊敏なハルサイを聴かせようとは思いもよらないことでした。
いったい、この軽々しく、強弱のメリハリも鮮やかで、次々と予想だにしない仕掛けが満載のハルサイをここに予測しようか。
マゼールのような原色を施したようなどぎつさとアクの強さはありません。
驚きの連続ではありますが、どこまでも軽やかで、見通しは豊かで、シリアス感はゼロで、楽しいハルサイなんです。
こんなに、ひょいひょいとやられちゃったら、もうなんも言えません。
このコンビのフランスもの、南西ドイツとのマーラーやシュトラウスなど、音源はもう数々出ているようですし、来日公演も済んでいるようなので、これからますます聴いていきたい面白い存在であります。
プロムスのストリーム放送は、期限がありますので、お早めに。
http://www.bbc.co.uk/proms/whats-on/2013/july-14/14556
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コメント
えらい。こういう。えらい!バロック以前の音楽から現代作品までちゃんとしてる、こういう人!えらい!
実際に演奏してみるとそれがいかに不可能な作業であるかを痛感します。バイオリンの演奏法を取り上げても、バロック以前と現代では全く違いすぎるくらい違うのです。楽器の語法、演奏効果のノウハウ、ダイナミックスの作り方、音色のコントロール、(たとえばビブラートをどうするのか)についてもすべてプロとして知り尽くした上での演奏と思います。
えらい。。。できない。。
ロト様のような逸材が毎年欠かさず出現する当たりがヨーロッパ音楽会のすその広さ、層の厚さ、伝統の深さを感じたりするのです。
投稿: モナコ命 | 2013年7月27日 (土) 22時42分
モナコ命さん、こんばんは。
わたしも、この演奏を聴いたときに、心地よい興奮とともに、欧州には敵わないなという強い思いにとらわれました。
リュリやラモーは、古楽専門家のように鮮烈に、ロマン派の作曲家にはピリオドを弱めて適度なヴィブラートで、ストラヴィンスキーはドラマティックに。
そんな風に一夜で聴かせるには、ご指摘のような高度な素養と技術が必要ですね。
楽器も変えているでしょうし。
古楽から現代までをこなす演奏家の登場は、時代の必然として受け止めてます。
ラトルあたりから始まった流れだと思います。
そして、ミンコフスキ、ヘンゲルブロック、ロトあたりが御三家でしょうか。
投稿: yokochan | 2013年7月27日 (土) 23時14分