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2013年7月28日 (日)

ワーグナー 「ニーベルングの指環」② バイロイト2013


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誰か~、リヒャルトだよう~、もう~

続けて、27日上演の「ワルキューレ」までを視聴完了。

  「ラインの黄金」

 ウォータン:ウォルフガンク・コッホ  ドンナー:オレクサンドル・プシニアク
 フロー:ローター・オディニウス    ローゲ:ノルベルト・エルンスト
 フリッカ:クラウディア・マーンケ    フライア:エリザベト・シュトリッド
 エルダ:ナディーヌ・ヴァイスマン   アルベリヒ:マルティン・ウィンクラー
 ミーメ:ブルクハルト・ウルリヒ     ファゾルト:ギュンター・グロイスベック
 ファフナー:ゾリン・コリヴァン     ウォークリンデ:ミレッラ・ハーゲン
 ウェルグンデ:ユリア・ルーティグリアノ 
 フロースヒルデ:オッカ・フォン・デァ・ダムラウ

  「ワルキューレ」

 ジークムント:ヨハン・ボータ     ジークリンデ:アニヤ・カンペ
 フンディング:フランク・ヨーゼフ・ゼーリヒ ウォータン:ウォルフガンク・コッホ
 フリッカ:クラウディア・マーンケ   ブリュンヒルデ:キャスリン・フォスター
 ゲルヒルデ:アリソン・オークス    オルトリンデ:ダーラ・ホッブス
 ワルトラウテ:クラウディア・マーンケ シュヴァルトライテ:ナディーヌ・ヴァイスマン
 ヘルムヴィーゲ:クリスティアーネ・コール ジークルーネ:ユリア・ルーティグリアノ
 グリムゲルデ:ジェネヴィエーヌ・キング  
 ロスワイセ:アレクサンドラ・ペーターザマー

 

    キリル・ペトレンコ指揮  バイロイト祝祭管弦楽団

      演出:フランク・カストルフ

        舞台装置:アレクサンダー・デニュク  

        衣装:アドリアーナ・ブラーガ・ベレツキ

        照明ライナー・カスパール

             (2013.7.26、27 @バイロイト)


演出はいまのところ想像するのみですが、音楽の方はとても充実している。

ロシアのオムスク生まれの41歳のキリル・ペトレンコの指揮が、思った以上に素晴らしい。

早くから早熟の才能を発揮し、寒い当地でピアニストとして頭角を現したが、音楽一家だった家族とともに体制崩壊後、18歳でオーストリアに移住。
以来、劇場からの叩き上げで修行して実践を積んでゆき、カペルマイスターとして名を成すようになり、ウィーンのフォルクスオーパーの指揮者に抜擢。
その後、マイニンゲンの音楽監督、ベルリン・コーミッシュオーパーの音楽監督を務め、さらに今年2013年9月からは、K・ナガノの後を継いで、バイエルン国立歌劇場の音楽監督に就任するという出世街道まっしぐらの指揮者。
各劇場、オーケストラからもひっぱりだこで、ベルリンフィルの常連にもなって、いまや、ラトルの後任候補として名まえも上がるくらいになったペトレンコさん。

Petorenko

CDでは、スークの管弦楽曲を数枚持つのみで、ワーグナーを聴くのはこれが初。

しかし、若さに似合わず、豊富な劇場体験からくる落ち着きと、すぐれたバランス感覚にあふれた音楽造りに驚く。
きっと動きの激しい舞台上の歌手たち、その声を覆い隠すような鳴らし方は一切しない。

それでいて、音それぞれは生き生きとしていて、フレッシュな若さと、不思議なまでの落ち着きに満ちている。
舞台にライトモティーフがあらわすモティーフがないのだろうけれど、そこは妙な説得力を出さずに、音楽的にスコアを鳴らしきることに撤しているようで、シンフォニックでもある。

実は、このペトレンコの見事な指揮があるからこそ、軽々しい演出が中和されたのではなかろうかと思ったりもしてる。

ティーレマンのような重厚さや、ある意味強引なまでのドイツ的な説得力はここにはないけれど、ワーグナーの音楽の精彩と力強さが充分に表出されているように思った。

定評ある歌手たちと、あらたに登場した歌手たちが混在する今回のキャストも穴がなく、聴いていて、まさかあの舞台でいろんなこと演技しながら歌っているとは思えないくらいに巧いもんだ。
かつての目や背中で演技するような深淵な芸当は遠ざかり、いまはすべてリアルが伴う演技をこなさなくてはならない歌手たち。
オーケストラが巧くなったように、オペラ歌手たちも、歌って踊って演技ができなくてはならないのだ。

少し軽めのコッホのウォータンは、ギラギラしてた「ラインの黄金」とうってかわって、悩み多く愛情いっぱいのウォータンに転じていたし、新登場のイギリスのブリュンヒルデ、フォスターも力強く、そして女性的な魅力もあり、輝きある声がいい。
画像には毎度困ったものだが声は最高に素晴らしいボータのジークムントと、ロンドンと掛け持ちでジークリンデを歌っているカンペもいい。
 個性的な、ラインゴールドのアメリカ村の面々も、いずれもよかった。
私的には、ウォークリンデと、これから鳥の声を歌うミレッラ・ハーゲンに歌も容姿も注目。

 しかし、無理な話だけど、往年のワーグナー歌手たちに比べると、全般に軽々しいことこのうえなし。
これもまた時代。
能のような舞台であってこそ映える神々しい歌いぶり。

いまの展開の早いすべてが同時進行のドラマのような舞台では、そんな声は不釣り合い。

回り舞台を駆使して、派手ハデな舞台を次々に展開していた様子の「ラインの黄金」

「ワルキューレ」では、どうも時代がさかのぼったような感じがします。

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フンディングのおうちは、西部アメリカの裕福な農家か。

ついにここでは剣が登場し、妙に似合う。

W2

旦那は槍もってのご帰還。

しいたげられてるジークリンデは、お昼は別なバイトでもしてるんでしょうか。

W3

木造のハウスは、ラインの黄金の時の薄っぺらなアメリカ村とは違い、質実がそこにあり、生活感もある。

前作のときの、神々の馬鹿らしい世界と比べた、人間界の木質感をあらわしたかったのか。

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そして、あの浅薄だったウォータンが哲学者のような風貌にチェンジ。

金髪の親分のオカミサンのようなフリッカもなぜか、時代をさかのぼってしまったかのように、もしかしたらワーグナーの同時代か?
後ろにある内燃機も気になる。

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誰やねん? 

はい、これはどうみてもマルクスだろうというウォータン。

何の心変わりか不明のウォータンだし、時代は60年代から、100年も遡ってしまった感じ。

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逃避行のジークムントとジークリンデはト書き通りには見えます。

主婦みたいなカーディガン姿が痛々しい。

W7_2

なんだか、いろんな衣装のワルキューレたちは、アメリカン。

W9

ローゲの炎もショボイ雰囲気で、ボヤみたい。

ディズニーのウエスタンランドみたい。

ウォータンは髭を刈ってしまい、槍ももって、さすらう気まんまん。

さっぱり、理解不能の「ワルキューレ」。

単独感のあるワルキューレだけど、これだけ前作との乖離があるのも珍しい。

ウォータンやフリッカが同一人物であることが画像からは理解でできない。

 というわけで、4部作を不統一に、ばらばらに、アメリカの資本主義虚と実を描こうとするのだろうか。

ここまできて、面白いけど、けっして面白くないと、思うようになってきた。

なにも「リング」でそんなこと表現しなくたって・・・・。

「ラインの黄金」のあとには、おそらく演出に向けての激しいブーイングと、演奏家に向けてのブラボーが交錯したが、「ワルキューレ」では、ブラボー先行。
そんなに先鋭ではなかった雰囲気だし、なによりも演奏が充実していたからかもしれない。

ロンドンのプロムスでは、ほぼ重なるように、バレンボイムとベルリンの「リング」コンサート形式上演中。
こちらも、ネット視聴を録音をしながら聴いておりますが、いまのところジークフリートまで。
リングを知り尽くしたバレンボイムの自信にあふれた堂々たる解釈が聴けます。
しかし、バレンボイムさん、興奮して勇み足も多く、急速なアクセルなどで、オケが乱れたり歌手がびっくりのところも見受けられます。
ペトレンコとバレンボイム、指揮者の実績からすると雲泥の違いなのに、面白いものです。

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コメント

キリル・ぺトレンコ、うーん、あんまり好きじゃない。ミュンヘンに行くこと。バイロイトは、「あっ、そう。」というインターネット聴取です。

ぺトレンコが、ミュンヘン・デビューは、2009年4月9日初日のJenufa。E・M=ウエストブロック、D・ポラスキ、S・マルギータ。拍手喝采を大きくさらって、紙面を賑わしたのは、Stewa役のS・マルギータ。ぺトレンコのミュンヘンでビューが好感を以って、ミュンヘンに行く試金石になったとはいえ。
あの時、ゲネラルパウゼを二幕でぎりぎりの線でやるから好きでなかった。

次の日の、Parsifal。K・ナガノ指揮より話題だったとしてもね。

自分のその初日、前日は、ZurichのP・ジョルダン指揮のR・ウイルソンのRevivalの’黄昏’。

ぺトレンコ、これからこれから。。。。。。。。ミュンヘンでは、影のない女次第。。そのあと、おそらくあり得るマイスタジンガーの新演出。。
ミュンヘンの現在の劇場になって、50年ぶりのこの2演目同時上演ではないのでしょう。。。

ぺトレンコ、手厳しいけど、まだまだ。似た歳のP・ジョルダンのほうが、よっぽどいい。

すみません。本音です。

投稿: T.T | 2013年7月29日 (月) 14時51分

T.Tさん、こんばんは。
まいどありがとうございます。
う~ん、厳しいですねぇ。
わたしは、オペラでは初ペトレンコ。
先行している、ヴァシリーの方といっとき勘違いしましたが、スークのCDで、後期ロマン派の濃厚音楽をすっきり聴かせる才覚に気に入りました。
ベルリンフィルでは、シュテファンという、これもまた渋めのオペラ作曲家の作品を取り上げてまして、タダものでないという印象が先行しております。
ティーレマンばかりのワーグナーに新鮮さを吹きこんで欲しいというひいき目の記事となっておりますこと、お許しください(笑)。

しかし、ミュンヘンでの活躍はいかになりますでしょうか。
ほうとうは。Kナガノにもう少しいて欲しかったところですが・・・・。

投稿: yokochan | 2013年7月30日 (火) 23時06分

ペトレンコとバレンボイム。ペトレンコ氏の名前は初めて知りました。ベテランよりも新人(?)の方が落ち着いた演奏をするというのは興味があります。ペトレンコ氏、さまよえる様の履歴紹介からも、かなりの苦労人の様子です。オペラ指揮者はリハーサルから何まで全部立ち会うんですよね。しかも練習のピアノ伴奏もしなければならない。自分でやってみると分かるのですが、オペラの伴奏を演奏することがいかに大変か!ということ。たとえそれがバイオリンパートであっても、交響曲の2曲分以上の労力なのです。ましてピアノ伴奏となると、これはもう!本当に想像を絶する労力なのです。しかも歌手達の歌い方にひとつひとつ注意や注文をつけていくんですよね。
大変すぎる。。。それにオペラ歌手ってかなり自由な人が多い。スケジュール通りにきてくれないから、同じ練習を複数回やらなきゃなんですよね。それを仕事として毎日何年も!
エライ!ペトレンコ!君は本当の苦労人だ!尊敬するよ・・演奏会で会ったらペトレンコの名前を連呼します(またおやじギャグです^^;)
そんな苦労をしての演奏なのに!なんです!この演出は!
ぶち壊しってこのことをいうんでしょうね;;

投稿: モナコ命 | 2013年7月31日 (水) 21時48分

モナコ命さん、こんばんは。
ペトレンコと、だいそれたことに、大バレンボイムを比較してしまったわたくしです。
ピアニストからスタートして。、鍵盤の世界におさまりきれないオーケストラを手にして、ついにワーグナー指揮者になったバレンボイム。
スタート地点の大きな違いをとやかく言ってもしょうがないのですが、思えば、そんなふたりのワーグナーを連日聴くことができる現在のわれわれは恵まれてますね

若手の有望指揮者が、このところ輩出するなか、オペラのピットから叩き上げてきた人に、私的には大いに期待したいところなのです。
「ペトレンコーッ」
叫びたくなる名まえですねぇ(笑)

ちなみに、ペトさん、今回の演出家氏と、しっかり対話して、自分の思いも伝えつつ演奏に挑んでいるそうです。
たいしたもんですね!

投稿: yokochan | 2013年8月 2日 (金) 00時32分

Really appreciate you sharing this blog article. Much obliged.

投稿: maillot adidas | 2013年8月26日 (月) 14時34分

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