« ブリテン 「誕生日のお祝い」 | トップページ | バイロイト音楽祭2013スタート »

2013年7月25日 (木)

チャイコフスキー ピアノ協奏曲第2番 ポストニコワ

Tokyotower201307

このところ、すっきりしない天気が続く首都圏。

雨・晴れ・曇・豪雨が混在する日々。

気温は、7月始めの猛暑がウソみたいに下がったけれど、湿度が高くムッシムシ。

東京タワーも、どこか煙っていてすっきりしません。

Tchaikovsky_pianocncert23

 チャイコフスキー ピアノ協奏曲第2番 ト長調 op.75

    Pf:ヴィクトリア・ポストニコワ

  ゲンナジ・ロジェストヴェンスキー指揮 ウィーン交響楽団

                    (1982.10 @ゾフィエンザール、ウィーン)


なにげに、没後120年のチャイコフスキー(1840~1893)。

なんだかんだで、チャイコフスキーが好き。

気がつくと、チャイコフスキーは始終聴いてるし、もはやその交響曲は、それらがないと禁断症状が出て生きていけない。
わたしの中では、その存在はブルックナーやマーラー以上だし、ワーグナー以下って感じ。
もちろん、マーラーの方が好きですよ。
でも、チャイコフスキーにはカッコいいオーケストラ曲があるし、協奏曲があるし、バレエも、歌曲も、そして何よりもオペラがある。

聴かせる壺、泣かせるツボを先天的なまでに心得ている、憎らしいまでの作曲家。

でも、有名曲とそうでない曲の落差が激しすぎる。

ピアノ協奏曲は、第1番があまりにも有名で、のこりの2番、3番があまりにも無名。
交響曲の4~6番と、1~3番との差など比較にならないくらい。

1879年に作曲開始後、10日あまりで第1楽章を完成、のこりのふたつの楽章を含めた完成は、しばらく間があいて、1880年の5月となりました。
1番の献呈で、演奏不能との因縁のついた、ニコライ・ルビンシュテインに再度捧げられ、今回ばかりはルビンシュテインも受けたものの、この曲を演奏することはあたわず、病に伏せってしまい急死。
初演は、ルビンシュテインの死後、1881年にニューヨークにて、マデライネ・シラーのピアノで行われたものの、チャイコフスキーはいろんな演奏者から、この曲が冗長にすぎるとの指摘を受け、弟子のジロティに自ら公認する形で、短縮と改訂を認めた。
その版も当然に存在するが、今現在は、チャイコフスキーのオリジナルを重んじることになっていて、ごく稀に、演奏・録音される場合は原典版にて行われるようになっております。

確かに長い!

このCDは、当然にオリジナル・バージョンですが、
1楽章:(24'40")、2楽章:(16'58")、3楽章(8'08") 合計約50分の長尺協奏曲です。

このCDは、購入後18年くらいになりますが、今回でまともに聴いたのは3回目です。

それほどまでに印象の薄い2番と3番。

でもね、最近のわたくしは、チャイコフスキーをすっかり見直してまして、そのマイナー作品にも目を向けて、オペラや歌曲なども楽しむようになりました。
そんな耳で聴く、2番は、果たして、とても美しくダイナミックな曲で、決して饒舌じゃない寒い国の作曲家が、思いきり自分の言葉で、訛りを効かせながら恥ずかしげもなくその思いを吐露した作品に聴こえるのでした。

一度聴いたら忘れられない、バレエ音楽の厳かな出だしのような第1楽章は、大協奏曲の始まりを予見させます元気一杯の提示部のあと、メロディックでうた心に満ちた場面にかわり、なかなかに詩的で甘いチャイコフスキーならではの展開になります。
ピアノの技巧は、1番にもましてすごいものがありまして、1番の模倣風な場所も散見されますが、ちょっと表面的な感じです。
そして、とても大仰で、見栄を切るような場面もあり、それはまさに、オペラの劇的な場面すら思い起こすことができます。

そう、この曲のこの時期は、交響曲第4番や「エウゲニ・オネーギン」のあと、「オルレアンの少女」を同時に作曲中なのです。

華やかな1楽章のあとは、ビューティフルな第2楽章。
チェロとヴァイオリンのかなり長い独奏で始まり、この楽章中、ふたりのソロの活躍は目を見張るものがあります。
ピアノ協奏曲なのに、彼らがいい役を与えられていて、すっかり見せ場を奪われてしまうピアノソロなのですが、そんなお立場はともかく、聴くわたくしたちは、その抒情的で夢見るようなふたつの弦楽器の絡み合いに陶然となってしまうのです。
こんなピアノ協奏曲はほかにないのではないかしら?
ピアノソロの登場は、4分近くしてから。
でもその始まりは、まってましたとばかりの歌いぶりですよ。
白鳥の湖の王子とオデットの踊りを思わせる歌謡性とファンタジックな美しさです。
全編、この楽章、そんな感じです。
ピアノに合いの手を打つ木管も夢見心地だし、弦が徐々に5番の2楽章のように熱く盛り上がってゆくさまもたまりません。

3楽章は、前のふたつの長大さからするとあっけない長さで、その内容も軽め。
民族風、リズミカルな元気一杯の曲ですが、1番と同じような雰囲気でも、この2番の場合は、前のふたつの楽章とのバランス感があまりに悪い。
当時は受けなくても、いまだったら、長い終楽章がしっかりついていても、しっかり受容されるんじゃないかな。
でも、そこそこ煌びやかで、活力満点のこの終楽章は、1番のその部分とまるでそっくりではありますが、聴いてて興奮を呼びます。
演奏会だったら、ブラボー間違いなしですよ。

未完の3番は、また次の機会に。

この録音時は、まだソビエトが存在していて、ポストニコワも旦那のロジェストヴェンスキーも厳しい管理下のもと、西側のポストでロシア音楽の親善大使のような役割を担いつつ、かつ西側の音楽を演奏する喜びに燃えていた。

ギレリスぐらいしか聴いたことない2番ですが、ポストニコワの超絶技巧と、曖昧さのない明確なタッチによる壮麗なピアノはとても素晴らしいです。
今風ではないけれど、いま思えば、これもロシア風なのかも。
ロジェヴェンさんの機敏な指揮もいいです。
なによりも、ウィーンの甘い管楽器をうまく鳴らしていて、オケもまったく無縁のロシアの音楽を指揮者の委ねる感があって、ソロもオケも、指揮者のもとにある、っていう感じの演奏に思いました。

ロジェヴェンは、いっときウィーン響の首席指揮者を務めていて、FM放送でもドイツ音楽とロシア・ソ連の音楽を数々聴いたものです。
このコンビによるショスタコの交響曲などはいまや珍品でしょう。
ロジェストヴェンスキーは、その前のポストBBC響では、ロシア物とイギリスもの(ディーリアスまでも!)を巧みに指揮してましたから、ほんとうに器用でオールマイティな指揮者なのですね。
長老級になったロジェヴェンさん、そろそろ日本にも帰ってきて欲しいものです。

そして、この曲は、われらが神奈川フィルで是非にも聴いてみたいデス!


 

|

« ブリテン 「誕生日のお祝い」 | トップページ | バイロイト音楽祭2013スタート »

コメント

ポストニコワとロジェストヴェンスキーは、小生の新婚旅行でパリに行った際、シャンゼリゼ劇場でフランス国立管でブゾーニのピアノ協奏曲(このコンサート前後にエラートに録音しています)を聴いた腐れ縁です。
で、チャイコフスキーはかなり好きですが、確かに有名曲とそうでない曲の落差が激しすぎ、ピアノ協奏曲2番も結構トライはしたのですが、未だに好きとは言えません。

投稿: faurebrahms | 2013年7月25日 (木) 23時57分

ひっさしぶりにこちらにコメントを。
東京タワー、先週見に行った時(月島でもんじゃ食べた後です)は
ドラえもんイリュミネーションで、
これまた乙なものでございましたよ!

にしても。2番とは渋過ぎ。
たしか手持ちにCDがあったと思うのですが、
全然記憶にあらず。
ラック、見直して聴いてみます!

投稿: minamina | 2013年7月26日 (金) 00時47分

2番はけっこう好きな曲です。技巧的に過ぎる部分もあるし、長過ぎもしますがそれもまた魅力。ギレリスとマゼールが組んだ名演で好きになったのですがカット版なのが残念です。オリジナルではプレトニョフとフェドセーエフ組を所有、これも良かったという記憶があります。

投稿: kaz-kka | 2013年7月26日 (金) 01時05分

faurebrahmsさん、こんばんは。
いつもありがとうございます。
ブゾーニのピアノ協奏曲とはまた、レアな演目をお聴きになられましたね。
このご夫婦は、こんな風な曲を真剣に取り組む風情がありまして、この曲もまさにそのたぐいかもしれません。
今回、記事にあたって、4回も聴きました。
2楽章のピアノのソロ以外の場面が一番印象に残るというチグハグぶりが、かえって愛すべき存在に思ってます。

投稿: yokochan | 2013年7月26日 (金) 22時54分

minaminaさん、こんばんは。
東京タワーはいいですねぇ。
スカイツリーに負けず劣らず、風情という点でははるかに勝ってます。
この公園で一杯やりながら愛でてみたいのですが、ここは蚊がやたらと多いのですよ・・・・。

そしてこの曲、久々に真剣に聴いて、名曲になれない由縁、でも草場の影で美しく存在する姿、その双方を確認いたしました。
チャイコはいいです!

投稿: yokochan | 2013年7月26日 (金) 22時58分

kaz-kkaさん、こんばんは。
コメントどうもありがとうございます。

そうなんですよね、わたしの初聴きのギレリスはいま思えばカット版でして、こちらの原典版は長いですが、チャイコフスキーの抒情がしっかり捉えられているように思えました。
今回、音源を調べましたら、結構出てるんですね。
そんな中では、プレトニョフ盤が一番良さそうです。
いずれ聴いてみたいと思ってます。

投稿: yokochan | 2013年7月26日 (金) 23時03分

わたし、初期交響曲同様、このピアノ協奏曲第2番も大好きなんですよ。LP時代にオリジナル版のイーゴリ・ジューコフ、ロジェストヴェンスキー=モスクワ放響盤を愛聴していまして、CD時代になってからギレリスやチェルカスキーでジロティ版を聴いて最大の聴きどころがなくなっていたのでおったまげた記憶があります(笑)

その第2楽章だけでなく、第1楽章もブロックごとに次々と場面が入れ替わっていくような構成が独特で、中間の長大なカデンツァともどもチャイコフスキーとしてもかなりの意欲作だったのではないかという気がしています。

一昨年でしたか、上原彩子が都響定期で弾いてくれまして、矢部、古川両主席のソロが悶絶ものでありました。CDではピーター・ドノホー盤が、ナイジェル・ケネディとスティーヴン・イッサーリスがソロを弾いているという隠れ悶絶盤。

いずれまたどこかのオケに取り上げてもらいたいものです。

投稿: 白夜 | 2013年7月27日 (土) 23時39分

白夜さん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
いやぁ、これだけP協2番をお好きな方を初めて知りました!

ジューコフのレコードは、レコ芸の新世界レーベルの広告で見た記憶がございます。
いまならぜひ聴いてみたい音盤ですね。
ギレリスは、意外とつまらなかった思いがありますが、今回のCDはやはり2楽章が素晴らしかった。
で、ケネディとイッサーリスとくればそれは是非にも聴いてみたいものです。
コンサートでも、名コンマスと名チェロ主席がいれば、絶対に映える曲ですね。
いやぁ、おもしろい曲です。

投稿: yokochan | 2013年7月29日 (月) 00時45分

30cmレコードで、2番を持っています。石丸電気の輸入盤で購入していました。発売になったのは、結構遅かったはず。。。
CD時代になって、1番・3番のカプリングを持っています。
典型的なスローテンポ。時代的な演奏。今でも、好きです。
ないもん、こんなグランドスタイル、、。

チャイコの一番なら、ホルへ・ボレットのピアノ、探しているんだ。。バブル期1回やってきて、ラフマニノフの3番やってた時。

ところで、ポストニコワに興味もあったが、タチアナ・ニコライエワに興味のウエイトがあったね。1989/90年ごろ。

チャイコ、グランドスタイルの大時代的な演奏が聴きたいです。。。。

投稿: T.T | 2013年7月29日 (月) 15時12分

T.Tさん、こちらにもありがとうございます。
レコード時代は、ギレリスのものを一瞬持ってましたが、さっぱり面白くなくて放置。
若い頃2番は、さっぱり面白くなかったです。

いまは、チャイコフスキーも多面的に聴けるようになったので、この曲も見直したりしてます。
ボレットの1番は、デュトワとのものでしたか・
廉価盤にもなりましたが廃盤なのでしょうか。
あのスタイルはいいですね。
あと、アラウとデイヴィス盤も、ことに録音がよかったので、ハマった時期がありました。

大時代的な演奏、チャイコフスキーの場合は全然OK、お似合いですね。
レコード時代にすり減るほどに聴いたニキタ・マガロフの演奏が懐かしいです。

投稿: yokochan | 2013年7月30日 (火) 23時13分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/151893/57863836

この記事へのトラックバック一覧です: チャイコフスキー ピアノ協奏曲第2番 ポストニコワ:

« ブリテン 「誕生日のお祝い」 | トップページ | バイロイト音楽祭2013スタート »