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2013年7月11日 (木)

R・シュトラウス アカペラ合唱集 パルクマン指揮

Kitte

東京駅の日本郵便の商業施設「KITTE」の本日のエントランス。

オープン以来、久々に覗いてみました。

オープン時のどうしようもない混雑ぶりからすると、ずっと楽になりましたが、それでも、立地の良さと、暑さしのぎのためか、お客さんの出入りはひっきりなしで、いまのところ大盛況といっていいかもしれませんね。

よくよく見ると、音楽好きのわたしとしては、この贅沢空間は、ヨーロッパの桟敷を備えた劇場空間のように感じられます。

ザルツブルクのフェルゼンライトシューレみたいに思いました。

そのザルツブルクでの音楽祭ももうじき開幕。

ロンドン、バイロイト、ミュンヘン、ザルツブルクと、ネットでの情報収集と視聴で、忙しくなるのも、ここ数年の夏の過ごし方です。

ザルツブルクのHPでは、いろんな予告動画が楽しめますよ。

http://www.salzburgerfestspiele.at/

Strauss_a_cappella_cho

 R・シュトラウス 無伴奏合唱曲集

     1.「ふたつの歌」 OP34

                 「夕べ」

          「讃歌」

     2.「ドイツモテット」 OP62

       3.「化粧室の中の女神」

      4.「ダフネの木によせて」

   シュテファン・パルクマン指揮 デンマーク国立放送合唱団

                           (1993.5.17 @コペンハーゲン)


R・シュトラウス(1864~1948)にも合唱曲があるんですね。
しかも、アカペラ。

アカペラコーラスというと、透明感と静謐、濁りない清潔感などを思い浮かべますが、そのあたりの音楽の志向は、まさにR・シュトラウスの得意とするところ。
いずれの曲も、地中海的な、曇りひとつない、ブルー系の明晰な響きにあふれたすてきな音楽ばかりなのでした。

シラーの詩に付けられた「ふたつの歌」は、1897年の作品。
1894年頃から10余年くらい、シュトラウスは歌曲の10年間とも呼べるように、数々の歌曲と合唱曲を集中的に書いております。
もちろん、壮年期のシュトラウスは、いまにその名を成すこととなった数々の交響詩などの華やかなオーケストラ作品を、その間にしっかり作曲していて、作品の規模的には、それらのオーケストラ曲の狭間に、歌曲をものしたような感にもなりますが。
 この作品34の連作は、「ツァラトゥストラ」と「ドン・キホーテ」の狭間に書かれてます。
この時期特有の、豊麗サウンドが、無伴奏合唱からでもしっかり聴きとることができて、一瞬、ツァラトゥストラの静かな場面や、ドン・キホーテの人生回顧のようなしみじみ場面を思わせる歌も続出します。
誰がどう聴いても、R・シュトラウスなところが、憎めないところで、どこまでも明朗快活だった作者の、その音楽そのものであるところに、大いなる安心感を覚えるのでした。

「ドイツ・モテット」は、18分を要する大曲。
1913年の作。詩はリッケルト。
町人貴族、アリアドネ、祝典序曲/ヨゼフ物語、アルペン、影のない女
これらに挟まれた位置関係。
新古典風の懐古調から、豊麗・大規模後期ロマンティックサウンドへの橋渡し的な位置。
16の分断されたパートと、7人のソロ、併せて23のパートからなる、規模の大きいアカペラコーラス。
しかも、そのレンジは、微細なピアニシモから強大なフォルティシモまで、広大なものがあり、その精緻かつ緻密な響きと、大きな響きでも透明感を失わないシュトラウスならではの音楽造りに、心震える感銘と、甘味なる快感を覚えることになります。
いくつもに分かれて進行する各パートに、各声部のソロたちが、ときにオペラの一場面のように、または神妙なる宗教曲のように、美しく絡みあいながら耳に溶けあっていくさまは本当に素晴らしいものがあります。
暑さを忘れて、清涼感を覚え、いつまでも浸っていたくなります。

「化粧室の中の女神」は、同じくリッケルトの詩によるもの。
「トイレの神様」じゃぁありませんよ。
つたないわたくしのこの詩の解釈では、化粧室でパフやアクセサリーやらなんやら、いろいろ施して、自分の前にたった女性こそ女神・・・・、そんな内容に思われます。
解説によれば、ばらの騎士3幕の女装、アリアドネのプロローグの大女優のごたごた、などに通じるようなことを書かれてますが・・・・。
1935年の作品。当初は、バスによるソロ歌曲だったが、8つのパートによる合唱曲に改編。1952年、作者没後に、クレメンス・クラウスがウィーンのオペラハウスの合唱団で初演しております。

最後の「ダフネの木によせて」は、自身のオペラ「ダフネ」(1937)のモティーフを使った幻想作品のようなもの。
詩は、本編オペラと同じく、ヨーゼフ・グレゴール。
「ダフネ」はギリシア神話に基づくオペラで、神様に強引なまでに愛され、幼馴染の無垢な青年を殺されてしまい、人生を儚み、自分は木となってしまう・・という物語。
シュトラウスならではの、神話の大活劇的な要素もありつつ、晩年の諦念や澄み切った心境などが反映された、透明感にも欠けていない名作。
そのダフネが、最後に、木に変容しながら歌う絶対絶美のモノローグ。
そのあたりの旋律を中心にした、ダフネ讃歌です。
9つのパートを持つ、ダブルコーラスに、少年合唱の組み合わせ。
この曲の、清朗な響きも、実に美しい。
エーゲの島々の白い壁と青い海と空。
それをすら音楽で思い起こさせるシュトラウスの天才の筆致。

暑さに麻痺した、今週のわたくしに、一服の清涼剤となりました。

このCDは、合唱はやはり北欧、と思わせるデンマークの団体によるものです。
この音源、もう3年くらい聴き続けてます。
ようやく記事にすることができました。
対訳があれば、もっと理解が増すでしょうね。

みなさん、暑中お見舞い申し上げます。
そして、まだ雨降る地域の皆さまにも、この清朗サウンドをお届けいたしたい。   

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