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2013年8月 2日 (金)

武満徹 「鳥は星形の庭に降りる」 尾高忠明指揮

Jyokenji

茅ヶ崎にある浄見寺というところの前庭。

波のように美しく手入れされた石庭でした。

以前の画像ですが、こちらは、大岡越前守忠相の菩提のあるところです。

春は桜がとても美しいです。

これが日本の庭と一概に呼ぶことはできませんが、京都の龍安寺の枯山水の石庭は、海外から見た、「日本の庭」というイメージのひとつの典型かもしれません。

われわれ日本人でも、老若男女、これに静謐で寡黙で禁欲的な禅的世界を感じ取ることができます。

Takemitsu_orion_odaka

  武満 徹  「鳥は星形の庭に降りる」 (1977)

    尾高 忠明 指揮 BBCウェールズ交響楽団

                (1995.11 @スワンシー)


ねこを挟んで、何気に庭園シリーズをやっておりますこと、お気づきでしたか。

優しく抒情的で気品のある英国、原色の色彩感と色気とエキゾシズムのスペイン。
そして静的で多くを語らずモノクロームながら深みのある日本。

それぞれですが、それぞれに美しく、音楽が表現できることの素晴らしさをいまさらに感じます。

武満徹(1930~96)が亡くなって、もう17年が経ちます。

日本人の演奏家の手を離れて、海外演奏家によるタケミツもいまや全然普通になりました。
コンサート・レパートリーとしても、大変に重要な位置を占めるようにもなりました。

これまでに、コンサートで武満作品はいくつも聴き、普通にその初演作にも接し、ステージに上がる武満さんを、この目で見たりもしておりました。
無念なことに、どの曲の初演に立ち会ったか、いまはよく覚えてないところがまずいところですが、ただひとつ、P・ゼルキンを筆頭としたアンサンブル・タッシと小澤征爾による「カトレーン」はよく覚えてます。

今日の「鳥は星形の庭に降りる」は、サンフランシスコ初演なのですが、その日本初演を聴いたような気もするという、はなはだに失礼な記憶しかありません・・・・。

音源では、小澤さんと尾高さんのふたつを持ってます。

今日の尾高さんは、BBCのオーケストラの知的でフレキシブルな側面を感じさせる整然とした演奏です。

この曲はともかく美しい。
作曲者が見た夢を音楽にした。
それは、星の形をした庭に、鳥の群れが下降していき、そこに降り立つというもの。
星の形=5を音楽に例えれば、5つの黒鍵があり、その音列を逆に下降させるという手法でもって曲を作ったといいます。
素人にはよくわかりませんが、そうすることで、少しの不安定感とともに東洋的な神秘感、そしてなによりも、鳥たちを客観的に見つめる人間の孤独感と平安も感じさせる気がします。
オーボエが、鳥の舞のような動きを示し、活躍しますが、最後のひと鳴きは、ついに庭に舞い降りるときの終息感が全音階的な和音でもって語られるとき、日本ならではの結びの、帰結の美が強く感じられます。

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コメント

武満さんたちの世代といえば、調性と無調のあわいにある、さまざまな旋法をつかって美しい響きを生み出しました。さいきん亡くなったデュティーユなんかも・・・。
旋法なんて、グレゴリオ聖歌をはじめ、中世にはごくあたりまえのものだったんでしょうけれど、長調と短調が普及した現代人の耳には、スリーコード(機能和声)で割り切れない、はじまりも終わりもない、のっぺりしたものに聞こえるのかもしれません。だからこそ、その帰結は美しい。
現代音楽にはいろんな理論があり、作家たちにも共通の問題意識があった。でも聴く側にとっては、そんなの関係ない。変にむずかしく考えず、「渋いドビュッシー」ていどに、気楽にきけばいいのでしょう。

投稿: もちだ | 2013年8月 3日 (土) 19時36分

もちださん、こんばんは。
武満音楽は、思えば、幅がひろく、ソングスのようにポップスの領域にも触れているものや、映画音楽のように耳当たりいいものもあります。
本来の領域でも、難しいことをやっていそうで、確かに、作者の言葉や評論家の言葉を経ると、小難しく感じますが、シンプルで音の濃淡だけを味わうことで楽しめるものもありますね。

語弊があるかもしれませんが、作られた現代音楽としてあるべき音楽と、われわれが聴いて、ほどよい現代の音楽との間には乖離がありすぎると思います。
どちらも、現代の音楽なのですが。

投稿: yokochan | 2013年8月 3日 (土) 23時21分

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