バッハ 「イタリア協奏曲」 ブレンデル
先日の、台風一過の、混じり気ない夕焼け。
このあと、空はもっともっとドラマティックに染まっていくのでした。
この澄んだ空気は美しい。
この日は、横浜で佐村河内守さんの、ピアノソナタの初演があったのですが、電車が完全ストップしてしまい、わたくしはチケットをふいにしてしまいました。
もっと計画的に行動すべきでしたが、家でもなすことがありましたので、これはもうやむなしです。
無情な思いにあふれた心境も、この空を見て、癒されました。
バッハ イタリア協奏曲
アルフレート・ブレンデル
(1976.5 ロンドン)
バッハの作品をピアノで弾く場合、大事なのは透明感とタッチの明晰さ。
それは、どこまでも高く、澄んだ秋空のよう。
弾むリズムと裏腹に、孤独や寂しさも感じるほどに、バッハの鍵盤作品を、ことにピアノで聴く場合にいろんな思いが深くなる。
リヒターやヴァルヒャのチェンバロ一辺倒だったわたくしに、ピアノによるバッハの素晴らしさを教えてくれた1枚が、このブレンデル盤。
真摯でかっちりとした枠組みを持ちつつも、どこか微笑みも感じさせる優しいピアノ。
このジャケットから想起できる、そう、いかにもここからピアノの音色が立ち上ってくる感じを受ける、そんなブレンデルのバッハ。
一音一音が、明確でありながら、詩的なニュアンスもあって、古典とロマンの間を巧みに行き来するバッハは、このうえなく魅力的だった。
いまでもその思いは変わりません。
快活な、イタリア協奏曲は、多面的でコンチェルト的な様相を呈しつつ、両端楽章の鮮やかさとともに、第2楽章では、清楚で無垢なる世界を楚々と語ってみせるブレンデルのピアノ。
本当に素晴らしいバッハです。
この音盤には、あと、背すじの伸びる神々しいコラール前奏曲や、泣けるほどに美しい「半音階幻想曲とフーガ」も収録されております。
ワーグナーのあとのバッハ。
これもまたいいものです。
そして、アナログ最全盛期のフィリップス録音がまた素晴らしい!
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コメント
これは私の愛聴盤の一枚です
演奏、録音、選曲の三拍子揃ったもので、グールドのとは違った意味での名盤かと思います。
特にコラール前奏曲が素晴らしいですね
録音は故長岡鉄男氏も推薦していたもので、芳醇な響きのピアノらしいピアノ?に魅了されます
投稿: パスピエ | 2013年9月19日 (木) 15時37分
パスピエさん、こんばんは。
やはり、そうでらっしゃいますね。
いえ、そうだと思ってこの記事を書きました。
演奏・録音・選曲の三拍子。
そして、わたしには、この生真面目なジャケット。
レコード時代の最高の果実ですね!
死ぬまでに、ちゃんとした装置で、ちゃんと聴いてみたいと思う1枚です。
投稿: yokochan | 2013年9月20日 (金) 00時23分
こんにちは。
前回にこちらの内容を拝読させていただいた後、
すぐに求めさせていただきました。
とても美しく聴かせていただいています。
特に先週から、
心痛めることを見聞きしましたので
なぐさめとなっております。
バッハはいいですね。
人間社会を超越した世界に陶酔できます。
佐村河内守氏の先日の初演演奏会は、
来場できずに残念なことでしたね。
会場見渡しても、空席が目立ちましたので、
どれほどの方が
お天気をうらめしく思ったことでしょう!
23日の豊洲でのコンサート、
あの感動を再び体験したい~
でもなぜその日~!?
・・・揺れております。
投稿: いるか | 2013年10月 7日 (月) 11時09分
いるかさん、こんにちは。
いま思うと、コンサートに生きなかった恨みもあって、その腹立たしさと無情を、バッハの音楽に求め、癒された感はあります。
ブレンデルのこちらのバッハは、大学時代からレコードで親しんできた懐かしい演奏です。
これからも大事にしていきたい1枚です。
それとピアノソナタの演奏会、13日のオペラシティ、23日の豊洲と、いずれも行けそうにありません。
こちらの方は、CDを購入して、静かに楽しもうと思ってます。
投稿: yokochan | 2013年10月 8日 (火) 07時13分