ベートーヴェン 交響曲第1番 マリナー指揮
東京駅にオープンした新しい施設、グランルーフ。
八重洲口のふたつのビル、ノースタワーとサウスタワーをベデストリアンデッキで結び、テント状のルーフを設置。
地下から3階までの細長い商業施設だど、このデッキのある2階はモバイルショップのみで、主に通路としての実用と緑も配置した癒しっぽいスペース。
地下が各地から集まった飲食店で、そちらがメインかも。
このミストも舞う緑化壁面はなかなか気持ちいいものです。
ただ、そこに配置された透明なアクリルの椅子は雨が降るとびしょぬれに。
左手が八重洲側、右手のビルは線路を挟んで丸ビルです。
子供のときから、東京駅が起点だったし、いまもそうだけど、ここ数年でどんだけ進化したろうか。
そしてまだ進行中なところがすごいものだ。
そして、なんでも新しいものは新鮮でいいのだ。
ベートーヴェン 交響曲第1番 ハ長調 op21
サー・ネヴィル・マリナー指揮
アカデミー・オブ・セント・マーティン・イン・ザ・フィールズ
(1970.9 @ロンドン)
10月1日、秋の本格的な音楽シーズンの開始にも相応しいベートーヴェンの1番。
このところ、コテコテの重厚長大系に染まっていたので、これはまたなんと爽快で軽やかな音楽に聴こえることでしょうか。
この第1交響曲が作曲されたのは1800年、ベートーヴェンが29~30歳のとき。
先週まで、聴いてきたR・シュトラウスやストラヴィンスキーのほぼ100年前ということになります。
この100年の隔たりを長いと聴くか、短いと聴くか。
わたしには、ベートーヴェンゆえに、それは短いと感じます。
ベートーヴェンからほんの少し遡って、この第1交響曲が範としたハイドンとその100年の経過は、それは極めて大きいと思えます。
それだけ、ロマン派の端を発したベートーヴェンの革新性は大きく、この1番においても古典的な佇まいは掲げつつも、ロマンの香りも漂っているし、メヌエットの3拍子はスケルツォのそれに近かったりします。
9曲の交響曲の中では、いちばんコンパクトでこじんまりと地味なものだから、コンサートでも前半にちょろちょろとやって、後半のメインの刺身のツマみたいになっちゃって、その日のメイン曲が終了すると印象が薄くなっちゃう。
そんな可哀そうな1番。
だけど、完全調和のハ長調は、曇りも陰りもなく、このジャケットにあるベートーヴェンの不機嫌な皺もありませぬ。
ところが、そんな物静かに微笑む1番を、演奏会のトリに持ってきて堂々たる交響曲に仕立てあげた演奏をわたくしたちは聴いております。
6年前の神奈川県立音楽堂における、H・M・シュナイト指揮する神奈川フィルの堂々たる、でも明るい演奏である。
ブリテンのシンプルシンフォニー、ストラヴィンスキーのプルチネルラ、そしてベートーヴェンと、まるでクラシック音楽の150年を俯瞰し、この1番を大トリにもってきて、これがザ・ベートーヴェンだとばかりに聴かせてくれた。
もうあんな演奏を出来る人とコンビは、世界のどこにもない、絶滅危惧種級のものでありました。
でも、今宵のサー・ネヴィル・マリナーの演奏はドイツの伝統云々とはまた別次元にあって、ベートーヴェンのやる気満々の心意気と早春賦をも易々と導きだした気分よろしき桂演なのでありました。
マリナーの指揮キャリア初期の1970年、デッカに「四季」や「水上の音楽」を録音して、ヒットを飛ばしていた頃の「さわやかマリナー」そのものであります。
軽めのオケ、あっさりぎみの味付けも疲れた頭と耳に心地いい。
フィリップスへのベートーヴェン・シリーズはこの後10年以上かかって完結しますが、後年のものほど構えが大きくなり、オーケストラの響きも多様化していきます。
そんなマリナーのベートーヴェンが、わたくしは大好きであります。
過去記事
「シュナイト指揮 神奈川フィルハーモニー演奏会」
「マリナー&アカデミー ベートーヴェン 第9」
「マリナー&アカデミー ベートーヴェン エロイカ」
「マリナー&アカデミー ベートーヴェン 田園」
「マリナー&NHK ベートーヴェン 第7」
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コメント
この1番、2番は、たしかハイドン、モーツァルトに続く「交響曲」シリーズの1枚だったように記憶しています。マリナーがシンフォニーを録り始めた最初の3枚じゃなかったでしょうか。
私は、ベートーヴェンは聴く機会がなかったのですが、モーツァルトの「ハフナー」にとても鮮烈な印象があります。
出そうで出ない、マリナーのベト全・・・ハイティンクの旧録は韓国ユニバが足元見る高値で出してくれましたが、こっちはタワーあたりで「ちゃんと」出してくれませんかねぇ。
投稿: 親父りゅう | 2013年10月 1日 (火) 23時19分
親父りゅうさん、こんにちは。
70年の録音ですから、まさにご指摘のとおり、マリナーの本格シンフォニーの1枚です。
当時は、レコ芸の大先生たちにぼろくそでした。
マリナー好きになってそこそこですが、マリナーのベートーヴェン全集は首鶴です。
長きにわたる録音ですから、最初期のこちらと最後期の第9、7あたりとは様相が違います。
4番と7番がどうしても手に入りません。
4番は、CD化の経緯すら怪しいまぼろし級です。
せっかくの待ちにまったハイティンクLPOがあのとおりで、どうも購入の意欲がわきません。
せめてマリナーの方は、ちゃんと出して欲しいですね!
投稿: yokochan | 2013年10月 2日 (水) 23時18分