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2013年10月13日 (日)

ヴェルディ 「アッティラ」 ガルデッリ指揮

Hanayashiki

セピアに加工してみました。

いかにも似合う、浅草の花やしき。

子供の頃に行ったか行かなかったか?

あれは、豊島園だったか?不明。

でもよく覚えてるのは、横浜ドリームランド。

最盛期のダイエーが買収したりしたけど、もうないです・・・。

昭和は遠くにあり、でも近くに感じます。

Verdi_attila

   ヴェルディ  歌劇「アッティラ」

 アッティラ:ルッジェーロ・ライモンディ  エツィオ:シェリル・ミルンズ
 フォレスト:カルロ・ベルゴンツィ      オダベッラ:クリスティーナ・ドイテコム
 ウルディーノ:リッカルド・カッシネッリ  レオーネ:ジュール・バスタン

   ランベルト・ガルデッリ指揮 ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
                     アンブロジアン・シンガーズ
                     合唱指揮:ジョン・マッカーシー
                       
                      (1974.9 @ロンドン)


ヴェルディのオペラ第9作は、1846年32歳の作品「アッティラ」。

前作が「アルツィラ」で、混同してしまいそうですが、アルツィラがインカを物語の場にして、なんでやねん?的な荒唐無稽ぶりだったのに、半年後の本作は、舞台をイタリアに戻し、5世紀のフン族の襲来を物語にして、イタリア魂を鼓舞する内容となった。

ナポリとの契約によりアルツィラでは、当地の習慣や劇場のやり口が面白い物でなく、ヴェルディには後味が悪いものとなったが、今度はフィレンツェからの仕事。
ドイツのツァハリアス・ヴェルナーの戯曲「フン族の王アッティラ」という素材が大いに気に入ったヴェルディは、原作のドイツから見たイタリア侵略みたいな内容を、真逆にして、フン族を侵攻を受けるイタリアと反攻、というふうに愛国路線に変えて、ピアーヴェに、そののちに、愛国路線はお手の物のおなじみソレーラに台本作成依頼をした。

しかし、やっつけ的に仕上げられた台本が気にいらないヴェルディは、再びピアーヴェに以来。
ようやく思い通りに仕上がった台本に、いつものハイペースで作曲に取りかかったものの、リューマチによる痛みが激しく、仕事は思うようにはかどらない。
初演の予定を延ばしながら、3月に完成。
素材を大いに気に入って、大いに力を混入したこのオペラは、初日はごく普通の反応。
しかし、二日目には、聴衆の「イタリア、愛!」を大いに刺激して、爆発的な成功をおさめ、熱狂に包まれたとあります。

愛国路線は、これまで何作かあったけれど、なにが聴衆を熱くさせたか。

物語は、フン族の王アッティラがイタリアに圧倒的な武力で侵攻するが、イタリア側は、屈したと思わせながらも、殺された領主の娘がアッティラと結婚したと見せかけ、敵王を殺し、父の敵をとる・・・・というもの。

この中で、フン族側と交渉したローマの将軍が、アッティラに対し、「世界はお前が取ってもいいが、イタリアは自分に残せ」と持ちかける。
このアリアが直接的に聴衆の心に訴えかけたのであります。

このあとヴェルディは、医師の勧めもあり、しばしの活動休止をすることとなります。

音楽は、蛮族とも言われるフン族の気質も思わせる、なかなかに煽情的で激しいダイナミズムに満ちてます。
同時に、ヴェルディならではの、どこまでも伸びやかな歌、また歌。
澄んだ秋空を見ながら、次々にあらわれる美しいアリアを聴いていたら、心が晴れ晴れとしてきました。

物語の背景

ユーラシア遊牧民としてのフン族(モンゴル系との説も強い)は、4世紀半ばごろから、ヨーロッパへ移住し、強力な騎馬部隊を率いて略奪と侵略をしながら強大なフン帝国を築き、アッティラ王の治世に南下を極め、イタリアに侵攻した。
登場人物として、アッティラに殺された領主の娘がオダベッラ、その娘の恋人でイタリア反乱軍のフォレスト、ローマの将軍エツィオが主要な存在。

Raimondi


 5世紀中ごろイタリア アクイレイア

プロローグ

アクイレイアの街を占拠したアッティラに率いられた兵たちの勇壮な合唱。
オーディンの名をあげ略奪行為の気勢をあげる。
(オーディンとは、すなわち全能神・戦いの神ウォータン)
そこへ捕虜をして引かれた女性たち。部下のウルディーノが王への貢物というが、ひとり目立って荒々しいのがオダベッラ。
イタリアの女は祖国を守る、自分の武器を返して欲しいとし、アッティラは彼女を気にいって、自分の剣をとらせる。
オダベッラは密かに、父の敵打ちを誓う。
このときの、オダベッラの登場がすさまじい!2オクターヴに及ぶ声域を一気に上下しなくてはならない難曲中の難曲の歌なのだから!

そのあと、ローマの将軍エツィオが登場。彼は、アッティラに「世界はおまえのものに、イタリアを自分のものに残して欲しい、それであれば協力しようと持ちかける。
このときの、エツィオのバリトンの歌もなかなに聴きもの。
アッティラは、そうした卑劣な考えが気にくわない、裏切り者とののしり、むしろローマを壊滅させると言い放ち、エツィオも自分の隊に帰ると憤然として席をける。

嵐の夜、やがてそれも晴れてくる。(このあたりのヴェルディの筆の冴えは素晴らしい)
神への祈りの合唱。そこへ舟でフォレストが登場し、オダベッラを讃えて美しいアリアを歌い、やがて祖国の美しさを歌う愛国歌となり、合唱も唱和し大いに盛り上がる。

第1幕

第1場 アッティラの陣営近くの森

オダベッラが亡き父への思いと、恋人フォレストへの気持ちを歌いあげる。
そのあと、フォレストがやってくるが、最初は、オダベッラがアッティラのところにいるのが裏切り行為だとしてなじるが、彼女は、やがて復讐するためにこうしてそばにいるの、となだめ、やがて二人は許し合い、熱い二重唱となる。

第2場 アッティラの天幕

ある夜、アッティラのは夢にうなされる。ひとりの老人があらわれ、お前は神の国ローマへの入城は許されない、と宣言したのだ。
それでも、部下ウルディーノの慰めもあり、気を取り直して、ローマへの進軍の決心をするが、そこへ神への祈りの合唱が響いてくる。
外を行進するのは、白衣のローマ司教レオーネに率いられた行列。
その姿は夢にでてきた老人と同じ。
しかも、神の領域に入るべからずの言葉に、アッティラは戦慄を覚え、思わず神の前に跪く。
これを見た行列ないにいたオダベッラとフォレストは、いずれくる勝利を確信する。

第2幕

第1幕 エツィオの陣営


エツィオは、かつてのローマの繁栄と美しさに思いをはせ、目もさめるようなアリアを歌う。
この歌はともかく素晴らしい。当時の聴衆も酔いうっとりしたに違いない。
しかし、ローマ教皇サイドは、アッティラと休戦協定を結んでしまったとの報に憤然とする。

そこへ、フン族から、宴席への招待が舞い込む。
そこに姿を紛らわしていたフォレストがひとりのこり、宴の最中にアッティラを亡きものにしようという計画を持ちかけ、エツィオも喜んで賛同する。

第2場 アッティラの陣営

エツィオを含むローマの隊長たちも居並ぶ宴席では、ソロモン風の巫女の合唱や、アマゾネスの踊りなどで歓待している。
空の雲が怪しく赤くそまり、人々はアッティラに異国の人間たちと席をともにするのはいかがなものかと忠告するも、アッティラは介さない。
エツィオは、またしても一緒にくまないか、との持ちかけをするも、断るアッティラ。
 オダベッラに、アッティラの杯に毒を仕込んだことを打ち明けるフォレスト。

あくまで自分の手で仕留めたい気の強いオダベッラは、王に注進して、毒が仕込まれていることを話す。
驚きと感謝のアッティラのもとに、自分がやったと決然と申し出るフォレスト。
そのフォレストの処分を、自ら申し出るオダベッラに、アッティラは結婚を申しでる。
復讐を誓う、オダベッラ、フォレスト、エツィオの三者とアッティラと合唱による壮大アンサンブルは、興奮を呼び覚ます鮮やかなもの。

第3幕  アッティラの陣営近くの森

フォレストはウルディーノから、アッティラとオダベッラの結婚式の知らせを受ける。
今度こその裏切り行為に、憎むべき挙式、オダベッラと歌う。
そこへ、エツィオがやってきて、ローマ軍の反乱の準備は整ったと話す。
驚いたことに、オダベッラが抜け出してきて、フォレストにことのなりゆきを必死に弁明する。
さらにそこへ、当のアッティラが出てきて、そこに3人のイタリア人を認め、裏切り者と怒りまくる。
そこに響く、ローマ軍の挙兵の声。
不意をついて、オダベッラはアッティラを短剣で刺し貫き、父よ、今こそと叫び、驚いたアッティラは、オダベッラ、お前が・・・・と息たえる。

                     幕

あらすじ項目でも、ちょこちょこ書きましたが、このオペラでも、各場に登場人物それぞれ対等に、素晴らしいアリアが与えられ、耳のご馳走のようにして楽しませてくれます。

正直、オダベッラのものは、技巧に走り過ぎ、単調のそしりをまぬがれないが、目の覚めるようなバリトンのアリア(エツィオ)は素晴らしい。
それとテノールに与えられた歌も、甘いばかりでない、ヒロイックな雰囲気もそなわってきた。
ただ、肝心のアッティラの性格づけがあいまいで、夢と現実にさいなまされるという設定自体と、ローマへの強硬ぶりへの展開がよくわからない。
その不可思議ぶりも、このバスの主役の歌にもあらわれているようで、甘過ぎの歌は魅力なれど、強烈な個性が欲しいところだった。

それは、ライモンディの美声によるところのイメージにもよるとおも思います。
これはこれで立派な歌唱で、70年代は、このひととギャウロウをおいて、ヴェルディをこんなふうに歌える歌手はいなかった。
ミルンズの豊麗な声が大好きなわたくしですから、ここでの、「ローマよ」、と歌うミルンズの歌声にはしびれます。
ベルゴンツィの折り目正しい歌にも感銘を受けます。
もう90歳を越えてるだろうベルゴンツィ翁、いやな報がずっと参りませぬように!
 あと、当時の技巧派ドラマティコの第一人者ドイテコムの登場の場面のすさまじさ。
抒情的な面は不満なれど、真っすぐの直情的なまでの声はすばらしい。

誉めっぱなしだけど、最後は、初期から中期にかけて、模範的なまでのヴェルディ演奏を残してくれたガルデッリ。
ロンドンのオケから、鮮やかカンタービレを引き出してます。

初出当時から、ずっと聴きたかったアッティラのこのレコードはCDでも2枚組で、2時間に満たないコンパクトなオペラは、ちょい聴きするのにもちょうどいい。

ヴェルディは、休息のあと、いよいよ「マクベス」となり、中期作品の森へと踏み込むわけです。

懐かしいジャケットと、浅草、花やしきの加工前の画像を。

Attila

初出の「アッティラ」のジャケット。

ラファエッロの絵画から。

アッティラがローマ司教に出会い、慄くさま。

Hanayashiki_a

花やしき。

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コメント

もの凄くお久しぶりですが、毎回ちゃんと拝読いたしております。 

花やしき、懐かしいです。 
近くだったので友人と普通に遊びに行くところでした。 
当時は入園料もなかった頃です。 

横浜ドリームランドは年に一度家族4人で出かけた思い出の場所です。 
大船からモノレールに乗ったことも、園内でラクダさんに乗ったこともあるのですが、分かってくださる方がいらっしゃらなくて。。。 

バチカンのラファエッロの間でアッティラ聞いてみたいです♪

投稿: moli | 2013年10月14日 (月) 15時27分

moliさん、こんにちは、お久しぶりです。
ご覧いただいてらしたとのこと、とても嬉しいです。

花やしき、懐かしい雰囲気に撮れたので、思わずセピアにしちゃいました。
いま、静かなブームのようですね。

ドリームランドをわかるかた、ここにも発見。
モノレールままだ健在せすが、園はなくなり、ホテルも変貌しました。
わたしの思い出は、あの微動だにしない衛兵さんです。
子供心に、ほんと不思議でした。
それと、昔ですから、テレビで始まったアニメ「怪物くん」のキャンペーンをやっていたことも・・・

ラファエロ展は行きそびれましたが、本場で見てみたいものですね。
ヴェルディが与えた、アッティラの歌も、とても素晴らしいです!
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2013年10月14日 (月) 22時05分

度々すいません… 

今も健在のモノレールではなく、観音様の下の方の壁にへばりついていたような、園にあっという間に到着できた子の方です。 

こんなおバカなコメント、非公開にできたらいいのに(;д;)

投稿: moli | 2013年10月15日 (火) 07時49分

moliさん、ご丁寧にありがとうございます。

わたくしも勘違い。
あのへばりついた専用モノレールですよね。
ありましたありました。
あのレトロな乗り場を覚えてます。
それから、実家から帰るときの抜け道で、ドリームランド前を通るのですが、まだレールが残っているところにも、いまだに遭遇してます。

おかげさまで、いろんな思い出がよみがえってきました!

投稿: yokochan | 2013年10月15日 (火) 17時58分

今晩は、よこちゃん様。
懐かしいです。
「横浜ドリームランド」 叔母が当時(35年位前)鎌倉に住んでおりまして宿を願い妹や従姉妹と転がりこみ、あっちゃこっちゃ遊ばせてもらいました。
絶叫系マシンもいっぱい乗りましたっす。アルバムを開いてウルウルしちょりますですよ。若かったなぁ…
日曜日のNHKサンデースポーツに高橋大輔選手特集があり、佐村河内さん出演されてましたね。 高橋選手と固い握手。守さん、楽しそうでしたが色んな場所に駆り出れて体調はいかがなのでしょうか?守さんのご様子を知る事が出来て嬉しい反面、無理をなさらないで欲しいと思わずにはいられません。。。

投稿: ONE ON ONE | 2013年10月15日 (火) 20時44分

ONE ON ONEさん、どうもこんばんは。
鎌倉からでしたら、ドリームランドは近かったですね。
わたくしは、小心で、高いとこ苦手なので、バイキングが死ぬほどいやでしたよう。

あと大船といえば、フラワーランドも、思い出の地です。

高橋選手の選択は正しいですね。
あの曲が、世界に流れる、それを想うとドキドキします。
佐村河内さん、ご自身での自己コントロールと奥様のケアが行き届いてますので、心配ないと思いますよ。
強いお方です、見習わなくちゃなりません。

投稿: yokochan | 2013年10月16日 (水) 22時15分

この『アッティラ』も、後にムーティ指揮のEMI盤が現れ、このオペラの音盤未購入のファンには、迷う所でしたがこの世界初録音盤の価値は、不変でありましょう。尤も、各レーベルのM&Aに統合で、EMIもフィリップスも消えてしまいましたが‥。視覚面で満たされるDVDディスクも素晴らしいですが、音楽を耳から骨の髄まで堪能するには、ある程度のオーディオ装置でかけるCDやLPの意義と価値も、素晴らしいものがございます。

投稿: 覆面吾郎 | 2022年1月20日 (木) 02時40分

数年前、スカラ座のオープニングがシャイーの指揮でアッティラでした。
時代を置き換え戦時の物語に読みかえたものですが、その演奏は極めて素晴らしいものがありました。
しかし、ガルデッリの存在は、いま思えばほんと偉大でした。
アッティラは、ハンガリーでも再録音していた記憶があります。

投稿: yokochan | 2022年1月26日 (水) 08時49分

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