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2013年10月 9日 (水)

ベートーヴェン 交響曲第9番 ウェルザー=メスト指揮

Yasukuni2013102

この一本の橋が渡り、向こう側に結ばれる麗しくも美しい庭園は、靖国神社の一番奥にある日本庭園であります。

清々しい、澄んだ雰囲気。

周辺国家はかまびすしいけれど、この静的な佇まいを乱そうとすることは別問題で、もっと違う場所で正々堂々と論じて欲しい。
 あれこれ言われるまえに、わたしたち日本人は、一番平和を愛し、秩序も保ち、周りを配慮して知的に存在してますからもうお構いなく。

そして、日本人ほど、ベートーヴェンの第9を愛している国民はおりません。
「歓喜」、喜びをことほぐ気持ちと、それへの感謝を、1年の結びと新年への橋渡しという意味合いに結び付けて、年末に第9を聴く。

12月の後半に、日本でいったい何回、第9演奏会があるのだろうか?
少なくとも60~70、いやそれ以上あるかもしれない。
節目として、あらたな気持ちを喚起する音楽として、これほど日本人に相応しい音楽はないです。

そしてベートーヴェンの最後の曲であり、偉大な交響曲のマイルストーンとして、その後も「9」という数字を乗り越えられなかった作曲家が何人もいることなども、「憂愁の美」的な観念として、われわれが最も好むものでもあります。

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  ベートーヴェン 交響曲第9番

    S:ミーシャ・ブルッガコーズマン  Ms:ケリー・オコナー
    T:フランク・ロパルド         Bs:ルネ・パペ

  フランツ・ウェルザー=メスト指揮 クリーヴランド管弦楽団
                       クリーヴランド合唱団

                (2007.1@セヴァランスホール クリーヴランド)


本格シーズンを前にしての第9。
なんだかとっても新鮮。

寒くもないし、イルミネーションもないし、だいいち、この秋は異常に暑いときた。
季節外れと思うことが、そもそも日本人的だ。

ただ単に、ベートーヴェンの交響曲第9番なのであり、ひとつの音楽として、構えることなく聴けばいいのだ。
どうしても、襟を正して、3つの15分もかかる楽章をキッチリと聴き、終楽章を折り目正しく迎えるの図になってしまう、この悲しいサガ。

そんな思いとは裏腹に、普通にひとつのコンサートとして、ベートーヴェンの交響曲のひとつを構えることなくサラリと演奏してしまったライブ録音が、このW=メスト盤。

アメリカの楽壇が、第9の位置づけをどのようにしているかは不明なれど、もしかしたら、この演奏の日付からして、1月のニューイヤー的なオメデタ音楽として捉えているかもしれないけれど、メストの指揮は、そんなことはお構いなく、サラサラとしてスムーズなものだ。

この指揮者は、リンツ出身のオーストリアの指揮者だけど、やはりドイツ人と違う。
同じオーストリアのインスブルック出身のスゥイトナーを現代的な感覚にしたような感じだと思ってます。
きびきびと小気味よく、重厚さとは無縁で、妙にあっさり、でも歌心満載・・・・みたいな。
一聴、無愛想だけど、オペラにおいては無類のバランス感覚とシャープさ、歌のツボをしっかり押さえて、完璧な存在感を示します。

 その音楽性において、ドイツ風のティーレマン、オーストリア風のW=メストということで双璧の独墺指揮者たちと思います。
さらに述べれば、ワーグナーはティーレマン、R・シュトラウスとモーツァルトはメストであります。

緻密なアンサンブルとヨーロピアンなサウンドのクリーヴランドとの相性抜群なメスト。
そのこともよくわかります。
このCDでも、分厚いアンサンブルとともに、ヴァイオリン群のきめ細やかさ、木管のウッディな響き、それとともシャープな金管とエッジの効いた低弦。
素晴らしいオケと実感します。
セル→ブーレーズ→マゼール→ドホナーニ→メスト。
そんな指揮者の系譜からして、このサウンドは育まれてきたものと実感できる、この第9のCD。
終楽章のコーダでは、スピード感あふれる現代的なテキパキ解釈によって、無類の盛り上がりを見せてくれます。
もちろん、3楽章の緩やかな歌や、スケルツォの軽やかさ、深刻ぶらない1楽章など、とてもナイスで、従来の「第9」にございます的な格調と重厚あふれる演奏とは、一味ふた味異なる演奏にございます。

歌手たちは、欧米の混合。でも妙にアメリカンしてる気がする。
メットもそうだけど、歌の世界は、アメリカのどこか開放的なヌケてる感がいつもある。
言語によるものだろうか?
わたくしにはよくわかりませんが、日本人がドイツ語を一生懸命歌う方が、よりドイツ的に感じたりもします・・・。

ウェルザー=メストとクリーヴランドの音源がもっと増えますこと、願ってます。

さて、今日、10月9日でもって、番号シリーズはお終い。
気がついてた方は気がついてらした。
そうでない方は、いまもってわからない。
不思議なシリーズは、「第9」でもって終わり。

9のあとは続けにくいし、特定の作曲家にぶれてしまう。
そして、これ以上続けて死にたくないから。

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コメント

すごろくゲーム、1回とまれ。STARTまでもどれ、とび級あり。今は、振り出しのスタートに戻って、なおかつ1回とまれ。の状態。
1から始まったら、9まであり。人生すごろくゲームだから、1から戻れば、いい。。初心に帰って 1から、始めましょう。。
***

僕の住んでいる富山県にも、毎年第9.ある。地元の寄せ集めの、コーラスで。。東京交響楽団が来ています。
今、来てほしい指揮者は、サントゥ=マティアス・ロウヴァリ(Santtu-Matias Rouvali)に振って欲しいの。1985年生まれ、フィンランドの指揮者。

2012年5月、ニールセンのVn協奏曲、急遽、演奏中止になって。フィンランディアとシベリウスの SYM No.1だけのコンサート。日本デビューなのに。すごく新鮮だったから。また2014年10月に、東京交響楽団に定期でデビュー。。もっと、良い演奏あるのだろうけど、何か異常に感動したの。。この年の自分の聴いた1位になってるんです。全ての演奏会、押しのけて。。

この人に、いずれ、12月の富山 に、第9、で来て欲しい。
フィンランドの タンペレ・フィルに居る。検索すると、ドキュメント番組にも出くわします。
もっと、いい指揮者いるけど、好きだな。。

すごろくゲームで、早く前へ飛び出したいな。。。9は、とりあえず終着点。最初に戻って、1 から始まり。いいでしょ。そんなことも。前向きに振り返られるもん。

投稿: すごろくゲームTantris | 2013年10月11日 (金) 08時46分

すごろくゲームTantris さん、こんにちは。
今度はタントリスときましたね。いいですね。
とりあえず、9で打ち止めにしました。
あとあとに、いろんな継続企画を控えてるもので・・・。

それはそうと、ロウヴァリ君、知りませんでした。
そして良さげな、伸びそうな青年をご紹介いただきました。
少し検索して、その指揮姿を拝見。
少年のようで、優しい女性的な面立ちだけど、その指揮ぶりは音符が指揮棒に張り付いてるような才気煥発ぶり。
なかなかです。細川俊夫のCDも出てるようですね。

是非とも、富山の地で第9、実現して欲しいですね。
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2013年10月12日 (土) 07時20分

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