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2013年10月13日 (日)

ロマンティックチェロ 迫本章子チェロリサイタル

Sakomoto

コンサート開始前の厳かな佇まい。

チェロとピアノ、神奈川フィルのチェロ奏者、迫本章子さんと、神奈川フィルの前副指揮者、伊藤翔さんとのコンサートに行ってきました。

Sakomotoitou

 ロマンティックチェロ Vol 10.

 ボッケリーニ    チェロ・ソナタ イ長調

 ベートーヴェン   チェロ・ソナタ第3番 イ長調

 フォーレ       「 シチリアーノ」

 オッフェンバック  「海辺で夢見る人」

 ブルッフ       「コル・ニドライ」

 ポッパー       「タランテラ」

  〃          「セレナーデ」 ~ アンコール

 サン=サーンス   「白鳥」     ~    〃

         チェロ: 迫本 章子

         ピアノ: 伊藤 翔

                     (2013.10.12 @ラリール 文京区)


気ごころのしれたどうしの演奏者と、ソロや室内楽に最適の響きのいいホール。
そこに集まったのも、迫本さんの親しい方々と、神奈川フィルを通じておなじみの人びと。
家族的な雰囲気が醸し出された素敵なコンサートでした。

秋に聴くチェロの調べ。
ということとで、会場の下調べをしたら、地下鉄丸ノ内線茗荷谷駅を降りて、筑波大や区の施設のある公園を抜けていく行程。
ところがこのとんでもない暑さ。
ひと汗かきましたが、気持ちいい緑を見ながら到着した親密感溢れるホールと、暑さをねぎらう迫本さんのお言葉と、冒頭の爽やかなボッケリーニの音楽に、すぐさま気分はほぐれ、暑さも忘れ解放されました。

そのあとの本格的な音楽としてのベートーヴェン。
チェロもピアノも、やはり本日随一、音楽の強さ・太さ・内包力の豊かさなどをヒシヒシと感じます。
聴きなじんだ名曲ですが、最前列でチェロの松脂が飛ぶぐらい、ピアノのキーへの指タッチがカチカチと聴こえるくらい、そんなリアルな臨場感も存分に楽しめるなんて、お家でCDをい聴くのと大違いでした。
生真面目だけど、ベートーヴェンの大らかな一面もよく感じさせてくれた、そんな迫本さんのソロ。
音楽の力というか意欲が強過ぎて、疲れてしまう中期のベートーヴェンなのですが、3楽章冒頭の短い静かな序奏では、ほっと一息。
このあたりの機微がとてもよかったです。
伊藤さんのピアノも、サポート力抜群、導く指揮者としての立場から、しっかり支える。
お二人の意外なほどの力強いベートーヴェンでした。

後半は、バラエティ豊かな演目。
編曲ものでなく、今回は、すべてがチェロオリジナルの曲を選びました、とのお話もいただきました。
フォーレの「シチリアーノ」もチェロオリジナルとは知らなかった。
逆に、フルートで聴きなれてしまった耳には、まさに目からウロコの新鮮さでしたね。

フランス風の柔らかなな響きは、次のオッフェンバックの未知曲、「海辺で夢見る人」に引き継がれました。
迫本さんの解説では、チェロ奏者だったオッフェンバック(私もチェロ協奏曲をこのブログで取り上げました)のこの曲は、楽譜はあるけど音源もなく情報もない、邦題もご自身でこのような感じということで訳した、とのことでした。
じつは、この日一番のお気に入りの曲と演奏。
確かに、地中海を思わせるような明るさと、柔らかな寄せて帰る波を思わせるピアノの背景にのって、さながらオペラのアリアのように好ましく歌いあげるチェロは、その邦題にぴったりのものでした。
わたし好みの素敵な曲をご紹介いただきました。
オペラのひとふしを感じさせるオッフェンバックの音楽、とても気にいりました。

そのあとに、ドイツへ飛んで、後期ロマンティックなブルッフ。
オーケストラ盤は聴いていたが、ピアノ伴奏版はあまり聴いたことがなかったけれど、甘さも感じる大らかな歌は、ピアノ伴奏の方が、チェロの良さが引き立つ気がします。
ユダヤの聖歌が、ことのほか暖かく、旋律の魅力を引きな出すような美しい演奏でした。
ピアノの中間部のアルペッジョも煌めくように美しかった。

チェロ作品をたくさん残したポッパーさん。
暗譜で、それこそ音楽に没頭したかのように弾いてらした迫本さん。
タランテラの無窮動的、リズミカルな音楽をしっかりモノにされていて、会場はついにその華やかなチェロの爆発に、雰囲気は最高潮となり、掛け声も飛んでました。
聴くひとの心を押し上げ、気分を高めてしまう舞曲ならではの効能もたっぷりの演奏でした。

アンコールは、ちょっと哀愁を帯びた同じポッパーのセレナーデと、美演だった白鳥。

これだけバラエティ豊かなプログラムをまとめるのは、ソロもピアノも大変だと実感しました。
指揮者とオケの関係と、ソリストと判奏者の関係。
その両方をあれこれ思いながら聴いたコンサート。
そして、聴いてる私は、神奈川フィルを愛する応援団。

神奈川フィルをキーにして、こうしてコアたる楽員さんたちの演奏にも親しむ。
器楽・室内楽も合わせて楽しめることとなり、音楽を受容する幅も広がります。

迫本さんの女性的でありながら、思わぬ情熱とバリバリの技巧。
サポートに徹しつつも、リードもおこたらず、細やかなピアノの伊藤翔クン。

終演後、飲み物がふるまわれ、迷わず、さわやかな白ワインを頂戴しました。

演奏されたお二人にご挨拶して、緑の公園を抜けて気分よく駅まで歩きました。

楽しかった!

追)伊藤翔さん、お髭もたくわえて、たくましくシャープな雰囲気に変貌。
でも、お話すると、いつもの柔和な翔クンでした!
今後の活躍も、応援しますよ!

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