ブリテン オペラを作ろう「小さな煙突そうじ」
東京ゲートブリッジを走行中。
下は海です。
東京湾、江東区若洲と中央防波堤埋立地を結ぶ、長さ2.6km、高さ870mの橋。
高いところは、あんまり好きじゃないから、少しわなわなしながらハンドルを握ってましたよ。
右側は歩道にもなっていて、歩けるっていうから恐ろしいじゃありませんか。
きっと、わたくし、ちびってしまいますよ。
ブリテン オペラを作ろう「小さな煙突そうじ」
サム(煙突そうじの少年):デイヴィッド・ヘミングス
ロワン(子供たちのメイド):ジェニファー・ヴィヴィアン
ミス・コヴァット(家政婦):ナンシー・トマス
子供たち
ジュリエット・ブルック:エイプリル・カンテロ
ケイ・ブルック:メイケル・イングラム
ソフィー・ブルック:マリリン・ベイカー ジョン・クロム:ロビン・フェアファースト
ティナ・クロム:ケイブリエル・ソスキン ヒュー・クロム:リン・ヴォーン
ブラック・ボブ(煙突そうじの親方)、トム(馭者):トレヴァー・アンソニー
クレム(煙突そうじの助手)、アルフレッド(園丁):ピーター・ピアーズ
ベンジャミン・ブリテン指揮 イギリス・オペラ・グループ管弦楽団
アリンズ学校聖歌隊
(1955)
16作あるブリテンのオペラの6番目の作品。
純なる心から、無垢なる子供たちを愛したブリテン。
子供たちへの音楽もいくつか残してます。
有名どころでは、「青少年のための音楽入門」、「セント・ニコラス」などがありますが、オペラでは今日のこちら。
1949年の作で、ブリテンは36歳。
台本は、「青少年」の楽器解説のナレーター台本を書いたエリック・クロージャー。
3つの幕からなる、劇+オペラ編で、最初のふたつは、ドラマ仕立て。
3幕目が、オペラ仕立てとなっていて、当CDも当然に第3幕のオペラ部分のみの収録です。
主人公のサムと子供たちの一部は、ボーイ・ソプラノ。
あとは、大人の歌手たち。
オーケストラではなく、弦楽四重奏とピアノと打楽器が伴奏。
ともかくユニークです。
そして、子供たちのものですから、音楽の内容も平易です。
オペラの本筋に入る前に、この題材の背景を。
主人公である「小さな煙突そうじ」サムは、まだ年端もいかない少年。
彼は、農業を営む父親が怪我をしてしまい、そのため仕事ができなくなって食べることができなくなり、可哀そうにも煙突掃除業者に売られてしまうのだ。
少年を煙突掃除の重労働に架すことは、ヨーロッパでは人身売買も伴って行われていたことだったが、ことにイギリスでは、社会的弱者の典型として、少年の煙突掃除人と娼婦がよく引き合いに出される時代があった。
それが、いわゆる産業革命の18~19世紀という時代に符合します。
ディケンズのオリヴァー・ツィストもそうした時代。
1788年、8歳以下の少年を煙突掃除に従事させることを取り締まる法律改正さえ行われた。
このオペラは、1810年の物語ですから、あきらかな法律違反を摘発するような内容でもあります。
ブリテンは、同性愛主義者であったことで、なにかと色眼鏡で見る向きもありますが、そんなことで、ブリテンの本質を見誤ってはいけません。
先にふれたように、子供たちへの優しい視線や、少年が登場する作品が多いのは、社会的弱者に対する愛情であり、それは子供ばかりでなく、社会から孤立してしまう人々への優しい目線でもあります。
名作「ピーター・グライムズ」や「ビリー・バッド」はその典型であります。
同時にそれは、人間が憎み合うこと=戦争への極端な拒絶反応へともつながります。
平和主義者としてのブリテンは、弱者への慈しみもその基盤としてあるわけです。
生涯貫いた、そんなブリテンの想いを頭に置きながら、このシンプルなオペラを聴くことで、妙な偏見はなくなり、偉大な作曲家としてのブリテンの存在が浮き彫りになるものと思います。
第1幕 (劇)
パワージー夫人の客間で、夫人は集まった子供たちに、祖母から聞いた物語を話してきかせ、子供たちは、これを題材にオペラを作ろうということになる。
第2幕 (劇中劇)
オペラの準備は整い、指揮者は、子供たちはおろか、客席の人々にも、次の3幕でのオペラ篇で挿入されている合唱の練習を強要し、実際の客席と舞台は一体化して、オペラへの期待に膨らむ。
第3幕 (オペラ) CD本編
1810年。観客全員をふくめた合唱で、煙突そうじの悲哀を込め、歌う。
やがて、少年サムが煙突掃除の親方と職人に、こづかれながらあらわれる。
ほとんど泣いているサム。
容赦ない親方たちに、仕事の発注元であるお屋敷の意地悪な家政婦バゴットも加わって、サムは無理無理に煙突に内側から登ることになる。
唯一、子供たちのメイドのロワンは、大いに同情し、涙ぐむが手の出しようがない。
ひとり煙突内で怖くて泣いてしまうサム。
その声を聴きつけたのが、屋敷の子供たちと、休みに泊りにきていた親戚の子供たち。
みなで、サムを救いだし、おもちゃ箱にかくまう。
そこにロワンも加わり、サムの気の毒な境遇を聴き、彼を家に帰してあげようということになる。
サムが消えて、怒りまくる職人と家政婦が外へ探しにいった隙に、サムをお風呂にいれて、着替えもさせ、食事もあたえ、すっかり元気になったサム。
翌日、サムの家を知る従姉妹たちの馬車でこっそり返そうという計画が決定。
子供たちは、その計画で大いに盛り上がる。
家政婦が、あらわれてはヒヤヒヤする場面も何度か。
翌日、気持ちいい朝。
いよいよ旅立ち。感謝のサムに、皆は名残惜しそうに別れを告げる。
大きなトランクに隠れ、御者たちが、その重さに、何度もカバンを開けるだ、家政婦が登場するだの、またもやヒヤヒヤの連続ですが、無事、馬車は旅立つ。
それを見送る、子供たちの明るいギャロップ風の歌で幕となります。
幕
あ~、よかった。
純粋な子供たちなら、きっとこの子供たちだけの救出劇に、ハラハラ、一喜一憂したことでありましょう。
いまの子供たちも、そうであって欲しいと痛切に思います。
優しい目線のブリテンの音楽に、大人も、ついつい思いは優しくなります。
ブリテンのオペラ、ブログでの全制覇まで、あと4つ。
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