« 神奈川フィル 来シーズンプログラム発表 | トップページ | ボロディン 「だったん人の踊り」 小澤征爾指揮 »

2013年11月 2日 (土)

グリエール バレエ組曲「赤いけし」 ダウンズ指揮

Tokyotower_201309

薄暮の東京タワーが、これもまた美しい。

冬バージョンのライトアップになる前です。

これから寒くなって空気が澄んでくると、もっときれいになってくる。

Gliere_red_poppy_2

  グリエール バレエ組曲「赤いけし」

   サー・エドワード・ダウンズ BBCフィルハーモニック
     
                       (1992.11@マンチェスター)


ロシアの世紀末作曲家、レインゴルト・グリエール(1875~1956)、検索すると、その濃すぎる顔と、お胸の勲章は、CCCP、ソビエト連邦の刻印を付けております。

そう、グリエールさんは、ロシア末期の濃厚時代を経て、まさに体制下を生きた本格派なのです。

ロシア革命は1917年。
グリエールはそのとき、42歳の壮年期で、ロシア五人組に続く、ロシア近代派ともいうべき存在として、ロマンティックなラフマニノフやスクリャービン(前期)らとともに並ぶ存在だった。

革命の前と後を、検証すべき立場にはありませんし、それほど聴いてませんが、グリエールさん、前もあとも、あんまり関係ないように思います。

ここで、以前の記事をそのまま引用しときます。

 

ウクライナ出身の作曲家で、その生没年を見ると、スクリャービン、ラフマニノフ、シェーンベルク、シュレーカーなどと同世代で、後期ロマン派の最終地点にあった人のひとりと年譜上は認識されます。

>キエフ生まれで、プロテスタント系、モスクワで勉楽し、タネーエフなどに学んだ後に、ドイツ・ベルリンに留学。
帰国後、作曲活動とともに後進の指導をおこない、プロコフィエフやハチャトリアンもその教え子の中に見出せます。

その間、ロシアはソヴィエト連邦となり、グリエールは国の中枢を担う音楽家となったが、そうした経緯もあって、いま、その姿や音楽の大半は目に耳に届きにくいものとなってます。

ソ連邦後は、その音楽が赤系とみなされたりしたことも、その一因だったかもしれません<

グリエールのロマンティックな音楽だけを聴いてれば、体制のことなどは、まったく感知することができません。

だがしかし、バレエやオペラ、管弦楽といったジャンルでは、その主題が、体制のそれ風になっていることが、演奏機会の喪失や誤解を生んでいると思います。

「赤いけし」は、1927年、革命10周年で書かれたバレエ作品で、作者はもう、ソヴィエトの重鎮として胸そらして君臨してた時分です。

全曲版は聴いたことがないのですが、組曲版のこのダウンズ盤を聴くにつれ、その音楽は、ロシア同時代のラフマニノフやスクリャービンはおろか、チャイコフスキーやグラズノフ、タネーエフを思わせる、豊かなロシアン・ロマンティック・サウンドを感じさせます。

このバレエの要旨は、正直、その頃のものありありで、まさに赤いです。

物語の舞台は、中国なので、作曲した、そのころの世界史は、日本がアジアの名主として台頭し、中華民国の後ろ盾になり、ソ連は南下を続け、共産化を推し進めていく時分。

そんな歴史背景を念頭に、バレエの筋は・・・・「中国の港町の娘、タオ・ファと、その港に寄港した、ソ連兵というか、ソ連船の船長との悲しい恋の物語」なのです。
「赤いけし」は、当時の平和の象徴、まさに、赤だからかつてのかの国、いまや、Chinaですが・・・・。

その「赤いケシ」は、ポピーと英訳されてますが、「ケシ」は、アヘンの原材ともなるとされ、ヤバイ植物だけど、広範に「ケシ」は、暖色系の花「ポピー」でもあります。

よくわからないけど、赤いケシは、そんな当時の世界風潮をあたまにおいて、この濃密な音楽を聴くことで、ますます、赤く怪しげに光るのでした。

組曲版は6曲。
クーリーの踊り、情景と踊り、中国の踊り、フェニックス、スロー・ワルツ、ロシア水兵の踊り。

チャイニーズ・ムード満載、絵に描いたようなエキゾシズムと、ロシアン世紀末の融合する濃厚なサウンドも、わたしのような後期ロマン派男には魅惑の音色でしかない。

ヴァイオリンソロを伴うフェニックスなんて、とろけそうよ!

以前とりあげた、「イリヤ・ムーロメッツ」と同じく、むせかえるような、なまめかしくも、悩ましい音楽は、わたしの五感にぴたりときます。

シャンドスにグリエールの録音をたくさん残したダウンズさんは、こうした大規模サウンドとオペラがお得意。
いい感じです。
併録は、初期臭プンプン、チャイコフスキー風の第1交響曲ですぞ。

|

« 神奈川フィル 来シーズンプログラム発表 | トップページ | ボロディン 「だったん人の踊り」 小澤征爾指揮 »

コメント

エドワード・ダウンズだから、この投稿に入ってきました。

奥さんって、ロイヤル・バレエ団のダンサーだったはず。

2人とも、スイスに渡って、尊厳死の道を選んだんですよね。

2人とも、結局、病魔を断ち切るために、安楽死団体に助けられて、自殺へと、たどり着いたのでしょう。

けし、その<赤いけし>、栽培がご法度のけし。それともOK!のけし。多分、普通に植えていい’けし’だったんでしょうね。
’ヒゲナシ’(けし科の一年草)のことを本来、指すそうですが。。


けしの花のように美しい、まやかしのソビエト国家。より平等で公正な社会の実現とその粛清。

観賞用の けし。

本当は、人の心を まやかす大麻のような公正な社会の実現だったりして。。。

安楽死したいなら、スイスに行け。というけど。。これも、吸い寄せられるような”けしの花”(虞美人草)。


エドワード・ダウンズ夫妻も、余命が限られ、自分の心を、’四面楚歌’同然に追い込んだから、スイスで夫婦2人で自殺。’けしの花=虞美人草’のように、美しく死にたくなったの。かしら。
***さ、話が暗くて、読みにくい文章から一転 ***

ケーシー高峰、の医学漫談、いいよね。
けし高峰、じゃないもん。

けど、面白い漫談だから、吸い寄せられるんだよね。

けしの花。のようには、なってないけど。

笑っていれば、いいんだもん。

漫談、行く価値はあるよ。横浜で観られるでしょ。。

TVやラジオの顔とは、一味違うよ。ちゃんとした興行だよ。。

けーしー高峰。吸い寄せられないから、ケーシー高峰。

投稿: けしの花の魅力に吸い寄せられない、けーしー(高峰) | 2013年11月 3日 (日) 07時47分

けしの花の魅力に吸い寄せられない、けーしー(高峰)さん、
またまた、すさまじいタイトルでお出ましいただきました。

ダウンズさんの最後のことは聴き知ってましたが、彼のダイナミックな音楽とは裏腹の、いや、やはり劇的な、というべきなラストだったのですね。

でも、彼の音楽を聴くときにのあくまでサブ情報であり、これからも頭に置かずに聴いていきたいです。

ダウンズさんは、江藤俊哉さんが、海外オケと協奏曲をメジャー録音したさいの指揮者でした。70年頃だったと思います。

ケーシー高峰が出てくるとはまた驚き。
あのブツブツおじさんは、そうですね、ちゃんとした医学知識もあってばかにできないのですよね。

いやはや、毎度変幻自在のコメント、恐れ入ります。

投稿: yokochan | 2013年11月 4日 (月) 01時23分

こんばんは。私はナクソス盤による全曲を所有しています。
藤圭子の歌にありますね。(笑)
ソ連が中国と共に社会主義国家の血が騒ぐのか踊るためでなく劇型バレエなのな。前衛音楽が普及した頃なのか中国音楽に仕立てた技法になるし・・・。
全曲盤からの感想なので違った聴こえ方になってきます。

投稿: eyes_1975 | 2013年11月 5日 (火) 21時45分

eyes_1975さん、こんにちは。
あら、そういえば、赤く咲くのはケシの花・・・って歌ってましたね。
ソ連も中国も、赤ですが、いまは、中国だけってのが歴史の流れを感じますね。
この音楽には、おっしゃるように中ソ相携えてみたいな意向もあったんでしょうね。
メロディアスで楽しめました。
全曲盤はいかがでしょう!

投稿: yokocan | 2013年11月 9日 (土) 13時50分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: グリエール バレエ組曲「赤いけし」 ダウンズ指揮:

« 神奈川フィル 来シーズンプログラム発表 | トップページ | ボロディン 「だったん人の踊り」 小澤征爾指揮 »