ブラームス クラリネット三重奏曲 シア・キング
晩秋、まっさなか、というより、今日は寒かった。
ほんの1か月前は、異常な夏日で、半袖でもよかったのに、カーディガンやコートの出番がいきなりやってきた。
北海道では雪も降りました。
秋はどこへ。
もう秋は去ってしまい、紅葉も秋の名残を楽しむ昨今の気象になったのでしょう。
こんなきれいな落葉が楽しめればいいですが、葉の色も淡く薄くなってきたように感じる。
こちらは、もうだいぶ前の盛岡のお城のそばの公園で。
ほんと、美しい。
ブラームス クラリネット三重奏曲 イ短調 OP114
クラリネット:シア・キング
チェロ :カリーネ・ゲオルギアン
ピアノ :クリフォード・ベンソン
(1983.1 @バルナバ教会 ロンドン)
ブラームス晩年のクラリネット三部作。
「クラリネット三重奏曲」、「クラリネット五重奏曲」、「クラリネット・ソナタ」。
作品番号では、114、115、120です。
いずれも、ブラームス晩年ならではで、1891~97年の作品。
3つの創作が並んだのは、ひとえに、天才的かつ美音を誇った、クラリネット奏者、クラウス・ミュールフェルトがあってのもの。
58歳になったブラームスが知り合ったミュールフェルトのクラリネットの音色と技量。
大いに感化を受けて、生みだした3つの作品群。
晩年ということもあり、そして華やかさよりは、質実を伴った、内面的な人声のような渋い楽器クラリネットの捉え方。
そして、いかにブラームスがミュールフェルトの吹くクラリネットに短期的に魅せられていたかということが、この時期を近接して書かれた作品たちを聴くことによってわかる。
ウィーンのウラッハや、その後のプリンツ、シュミードルなどが受け継いだウィーンの伝統もまた裏打ちされたブラームスかもしれません。
まだ100年ちょっとですから、斬新で、世紀末的な演奏が生まれることも期待できます。
4つのバランス配分のとれた楽章からなります。
どの楽章も、クラリネットを主体に、チェロとピアノが渋すぎるほどに着き従い、浮ついたところが一切ありません。
憂愁と生真面目な硬さ、これが魅力。
いかにもブラームス風な、深刻かつ切羽詰まったような第1楽章のあと、五重奏曲の甘さにも通じるような、伸びやかかつ、どこか切ない雰囲気も感じさせるようなアダージョの2楽章が続きます。
ここでは、クラリネットは主部旋律を奏でるとともに、チェロやピアノが美しく歌う背景を巧みに、そして渋く演じます。
このある意味、三位一体の共演は、秋の日の夕暮れように、淡い赤い色のグラデュエーションで、ほんとうにうっとりと美しいのです。
残りの、時として寂しく、快活な楽章たちも捨てがたいのですが、いまひとつの個性不足。
イギリス主体の3人の組み合わせによるトリオは、わたくしには、申し分のないものでした。
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コメント
私本人は府中市に住んでいません。ハンドルネームを作って、紅葉丘 を検索したら、本当にその地名があるのだって。
知りませんでした。
リヒャルト・ミュールフェルト、初めて知りました。立派なお墓ですね。インターネット上の写真を見たら。
クラリネット五重奏曲だけ、実演は接しました。リチャード・ストルツマンのクラリネット、東京カルテット。阪神大震災直後のころの、演奏会なら。
ブラームス、、、黄昏時か、適度に木枯しが吹いている時に、聴いているかも。。
投稿: 紅葉丘のクラリネット吹き | 2013年11月10日 (日) 06時58分
紅葉丘のクラリネット吹きさん・・・・、これまた詩情あふれるお名前です。
いままでのなかで、一番気に入りました。
桜ケ丘とか美しが丘はありますが、紅葉丘は少ないのですね。
ミュールフェルトの功績は、ブラームスにクラリネット3部作を書かせたところが、いまのわれわれにとって讃えるべきところでしょうか。
五重奏曲もシテュエーションによっては、泣きたくなる曲です。
いまどき、ブラームスはお似合いです。
投稿: yokochan | 2013年11月12日 (火) 22時56分
クラヲタ様の選別眼を信じ、このシア・キングのCDをHMVで購入しました。期待通り、しっとりした素晴らしい演奏で、併録の五重奏も美しい演奏でした。いつも、良いものをご紹介頂き、ありがとうございます。
投稿: faurebrahms | 2013年11月20日 (水) 00時06分
faurebrahmsさん、こんにちは。
気に入っていただきまして、ほんとうによかったです。
イギリス系の木管奏者って好きなのです。
この人や、エマ・ジョンソンも好きです。
投稿: yokochan | 2013年11月22日 (金) 09時17分