R・シュトラウス 「4つの最後の歌」 ローテンベルガー
今年も、大晦日を迎えることになりました。
と思って、去年の記事みたら、おんなじ出だしだった。
でもほかに書きようがない今日。
今年も、ほぼ毎日、たくさん音楽を聴きました。
何度も書きますが、ワーグナー、ヴェルディ、ブリテンのアニヴァーサーリーだったから、大忙し。
かなりの分量を占めてます。
それから、佐村河内守さんのコンサートに2度行けました。
CDで聴くのと、全然違う空気感と、聴者全体の一体感。
素晴らしい体験でした。
しかし、台風のおかげで、ピアノソナタの初演には立ち会うことができませんでした。
そのCDは、ただいま格闘中で、近く記事にできると思います。
そして、なんといっても、今年一番の喜びは、神奈川フィルの新公益法人化が決定したこと。
オーケストラと楽団のみなさま、関係者のご努力の賜物ですし、われわれリスナーの熱い思いも後押ししての成果だったと思います。
ともかく、うれしー。
加えて、神奈川フィル監修の本も発刊。
ちょっとだけ、お手伝いできたことも、今年の喜びのひとつとなりました。
というわけで、来年も、神奈川フィルを思いきり楽しめそうで、なによりなのです。
R・シュトラウス 「最後の4つの歌」
S:アンネリーゼ・ローテンベルガー
アンドレ・プレヴィン指揮 ロンドン交響楽団
(1974.12 @アビーロード・スタジオ、ロンドン)
毎年、この日に聴くことにしてます。
シュトラウス、絶美の音楽。
1864年生まれ、1949年没。
来年、生誕150年、没後65年のシュトラウス。
死の前年、1948年、人生のすべてを達観し、作曲された、黄昏に満ちた素晴らしい4つのオーケストラつきの歌曲。
ヘッセの詩による「春」、「9月」、「眠りにつくとき」、アイフェンドルフの詩による「夕映えに」。
85歳のシュトラウス、達観したとはいえ、まだまだ若々しく、朗らかな心情を失ってなかったから、これで最後とは思ってはいなかったのですが、ミューザを司る神は、もうシュトラウスに、最後のオペラを作る余力を残さなかったので、いくつかの歌曲を除けば、この曲集が事実上、シュトラウスのまとまった最終作といえます。
ともかく美しい。
数日前に、ブリテンのオペラでも触れましたが、人間は、美しい物を常に求め、心に留めておきます。
音楽における、「美」という言葉があれば、きっと、シュトラウスの「最後の4つの歌」こそ、相応しいものと思えます。
それが、シュトラウスの場合、人によっては、人工的な美と捉えられても、わたくしはいっこうに構わないのです。
ともかく美しいものは、美しい。
これまで、幾種類の演奏をライブも含めて聴いてきたことでしょうか。
初めて、この曲を聴いて、知ったのは、75年のウィーン音楽祭のライブ。
エリザベス・ハーウッドのソプラノ、シュタインとウィーン交響楽団のFMライブでした。
もう亡くなってしまた英国の名歌手は、カラヤンのボエームのムゼッタでデビューした美声の持ち主でした。
ウィーンのオケの、独特の管楽器の音色も、この曲にぴったりで、カセットテープに残して聴きまくりました。
そして、近時では、松田奈緒美さんの歌、シュナイト&神奈川フィルの超絶的な名演奏。
言葉を失うほどの美しさと、襟を正したくなるほどの厳しい音の選び方。
美の裏腹にあった、極度の緊張感が、快感を呼ぶ、素晴らしい演奏でした。
前置きが長くなりましたが、今年の「最後の4つの歌」は、ドイツの名花、アンネリーゼ・ローテンベルガーとアンドレ・プレヴィンの共演盤。
高校の時に発売されたものの、すぐに廃盤になって久しかったもので、ずっと探していたし、待ちわびていた1枚。
精度高い完璧な歌唱や、オーケストラを聴きなれた、いまの耳からすると、ややぬるく感じるし、ローテンベルガーの声にも陰りがうかがえる。
少しあとの、ルチア・ポップと同様に、誰にも愛されるチャーミングな声と、その愛らしい人柄が偲ばれるローテンベルガーの歌声は、それでも、さすがに往年の美しい高音を聴かせてくれます。
もともと低い方は苦しかったけれど、ドイツ語の美感を感じさせる、とても味わいに富んだ歌いぶりは、聴いていて涙が出そうになりました。
プレヴィンの指揮も、美に奉仕してます。
ソフィスティケイトされすぎなところも、このころの、ロンドン響とのコンビならでは。
何度聴いても、いつ聴いても、「夕映えに」の最後の場面は涙がでます。
赤く染まった夕空が、藍色に変わりつつあり、そこに鳥がかなたに羽ばたいて、やがて見えなくなって、景色もぼやけてゆく・・・・・。
はるかな、静かな、平安よ
かくも深く夕映えのなかに
私たちはなんとさすらいに疲れたことだろう
これがあるいは死なのだろうか
(夕映えに、より)
新年を迎えるにあたって、死への旅路を感じさせるなんて・・・、と思われるむきもございましょう。
わたくしは、毎年、年の最後には、こうして「終り」という、観念を大切に思いたいと思ってます。
そして、また始まるのですから。
あと数時間後には、またあらたにご挨拶もうしあげたく存じます。
本年も、ご照覧、ありがとうございました。
2007「シュティンメ&パッパーノ」
2008「ステューダー&シノーポリ」
2009「ポップ&テンシュテット」
2010「フレミング&ティーレマン」
2011「デラ・カーザ&ベーム」
2012「マッティラ&アバド」
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コメント
明けましておめでとうございます。
R・シュトラウスの歌曲に開眼したのは高校時代に買ったシュワルツコップ、セル、LSOのLPでした。見開き対訳つきの豪華盤でした。中でも「morgen」には感動し毎夜聴いて涙?していました。その後ご紹介のローテンベルガー、プレヴィン、LSOのLPも購入し「最後の四つの歌」の素晴らしさを知りました。この頃もプレヴィンは、素敵なレコーディングをしていました。LPを処分した後の後悔ときたら! やっとCDがあることを知り、私も購入しました。
投稿: ornellaia | 2014年1月 1日 (水) 13時27分
四つの最後の歌。
グンドラ・ヤノヴィッツのソプラノ カラヤン指揮で持っています。随分前に買った輸入盤で、国内盤の選曲と全然違います。
誰かの演奏で、生演奏を聴いている記憶があるのですが、どうしても思い出せません。在京オーケストラの演奏には違いがないのです。NHKではないです。
四つのうち、最後の1曲だけは、書いた詩が違うのですよね。
全体を構成する曲目の中で、最後の1曲の作詞が違う作品が他にもありますね。
四つの最後の歌での、「夕映えに」を歌い出す時、作詞の変化があるので、気持ちの入れ替えが、難しいともいわれますよね。
好きな曲です。最近、聞いていませんね。思い出しました。ありがとうございます。久しぶりに聞きたいですね。。
投稿: T.T | 2014年1月 2日 (木) 15時31分
ornellaiaさん、こんにちは、そして、あけましておめでとうございます。
シュヴァルツコップとセルのシュトラウスは、必聴の誰もが通る道ですね。
そして、こちらのローテンベルガー盤をレコードでお持ちだったのですね。
ひさしぶりの復活に、心躍り、即、購入でした。
懐かしいですね。
EMI時代のプレヴィンは、いま聴いても、いい演奏ばかりでした。廃盤が多く、残念ですね。
ことしもよろしくお願いたします。
投稿: yokochan | 2014年1月 2日 (木) 18時17分
T.Tさん、こんにちは。
この曲は、異常に好きでして、もう何十種類の音盤を揃えました。
ライブでも、かなり聴いてますが、声が届かないケースも多く、この曲は、CCで聴くのが一番に思います。
ホルンソロ、ヴァイオリンソロ、ともに、この曲集の美しい聴かせどころでありますね。
是非、ゆっくり、お聴きください。
投稿: yokochan | 2014年1月 2日 (木) 18時29分
ここしばらく「最後の四つの歌」聴き比べをしました。自慢させてください。シュワルツコップ/セル、ヤノヴィッツ/カラヤン、ローテンベルガー/プレヴィン、ノーマン/マズ―ア、オジェ―/プレヴィン、テ・カナワ/ショルティ、ポップ/トーマス、ロット/ヤルヴィ、ヘンドリックス/サヴァリッシュ、フレミング/エッシェンバッハ、ステューダー/シノーポリ、シュテンメ/パッパーノ、フレミング/ティーレマン、ラーソン/ボイド、ケニー/フリッチュ、森/大勝を持っています。名盤の影に隠れたお勧めは、趣は全く異なりますがヘンドリックスとロットです。サヴァリッシュの薫陶を得た前者、素敵ですよ。
投稿: ornellaia | 2014年1月 6日 (月) 12時07分
ornellaiaさん、こんにちは。
これはまた、ずいぶんとたくさんお持ちですね!
未聴の演奏もいくつもあります。
ヘンドリックスとロットが、その未聴のなかの2つですが、俄然興味がわいてきました。
シュトラウス・イヤーの今年、是非にも聴いてみようと思います。
ありがとうございました。
投稿: yokochan | 2014年1月 7日 (火) 22時41分