シュレーカー ある大歌劇のための前奏曲 シナイスキー
銀座ミキモトの、恒例のツリー。
その足元には、今年はリングのオブジェ。
頭が入りそう。
シュレーカー ある大歌劇のための前奏曲
ヴァシリー・シナイスキー指揮 BBCフィルハーモニック
(2000.10 @マンチェスター)
久しぶりのフランツ・シュレーカー(1874~1934)。
でも、こうしてブログで取り上げるのは、しばらくぶりだけど、日常的にちょこちょこ聴いてます。
あらためて、そのプロフィールを過去記事から引用しておきます。
これも何度もやってますが、シュレーカーの人となりを知っていただきたいから。
>ユダヤ系オーストリアの作曲家。
自らリブレットを創作し、台本も書き、作曲するという、かつてのワーグナーのような目覚ましい才能で、10作(うち1つは未完)のオペラを残している。
指揮者としても、シェーンベルクの「グレの歌」を初演したりして、作曲家・指揮者・教育者として、世紀末を生きた実力家。
ドイツオペラ界を席巻する人気を誇ったものの、ナチス政権によって、ベルリンの要職を失い、失意とともに、脳梗塞を起こしてしまい56歳で亡くなってしまう。
その後すっかり忘れ去られてしまったシュレーカー。
マーラーの大ブレイクの影に、同時代人としても、まだまだこのうような作曲家がたくさんいます。
しかし、いずれも交響曲作家でなく、劇音楽を中心としていたところがいまだ一般的な人気を勝ちえないところだろうか。<
という、シュレーカーさん。
亡命をすることはなかったのですが、次々に追い込まれ、心臓の疾患で亡くなりました。
その音楽は、退廃的でもなく、シェーンベルクの初期作と同じような、甘味で濃密な表現主義的な世界にも通じ、かつマーラーのような、複雑な顔を持っています。
強烈な個性は持ち合わせておりませんが、しびれるような官能性と、その半面のシャープなほどの冷淡なそっけなさ、そして掴みがたい旋律線。
それらの味わいが、一度好きになると、やめられなくなる。
いくつも聴いてくると、その音楽のパターンが自分の中で整理されてくる。
そして、常習性を持って、聴くようになる。
毎夜、ブログのために、音楽を聴きます。
その作業が終ったあとに、寝るまでにツマミ聴きする音楽たちのひとつがシュレーカーやコルンゴルトなんです。
さて、シャンドスが出したシナイスキー指揮によるシュレーカーの管弦楽作品の2枚目。
その中から、「ある大歌劇のための前奏曲」。
ほかの収録曲も、とても魅力的なのですが、既出であったり、また、改めて取り上げたかったりもしますので、ご案内は、ここでは割愛しました。
この曲は、シュレーカー最後の作品です。
1920年初演の「音楽箱と王女」の時から芽生えた、「メムノン」という題材のオペラ化。
しかし、構想を持ちつつも、その後の指揮活動や、いくつものオペラの作曲で、本格的に手が付けられない。
1933年に、したためていた素材から、この大前奏曲をとりあえず、生み出した。
前奏曲とはいいつつも、実に24分の大作で、思い描いたオペラ本編のエッセンスの集結なのでありましょう。
これを編んだあと、ナチスの脅威も迫り、翌年にはシュレーカーは亡くなってしまいます。
エジプト神話に素材を求め、半神のメムノンと、それを探し求める女性・・・・、というようなドラマのようです。
音楽は、エキゾテッィクで、まがまがしい雰囲気で始まり、その後に、シュレーカーらしい、甘味で後ろ髪ひかれる旋律も交錯してきます。
冒険的なファンファーレ風な場面もありますし、夜のしじまを感じさせる、これまたシュレーカーならでは怜悧な音楽も響きます。
このような、とりとめのなさの連続が、不思議なほどに、耳に麗しく響いてくる。
でも何十回も聴いてるけど、どこか遠くで鳴ってる音楽。
それがまたシュレーカーなのであります。
壮大な素材、完成していたら、どんなオペラになっていたことでしょうか!
シナイスキーとBBCフィルの明快な演奏。
ムントとウィーントーンキュンストラとのナクソス盤よりも、バリっとはっきりしてました。
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コメント
シュレーカーは、バブル期の若杉弘指揮のマーラー・チクルスの組み合わせの一部にありましたね。
プフィッツナーとブルックナーを組み合わせたのも、若杉弘でしたね。
じゃー、ケント・ナガノ、ハンブルグに行ったら、シュレーカーのオーケストラ作品・オペラ作品、取り上げるかな?
ここで、取り上げているCDのワシリー・シナイスキー、今随分、出世したね。。。
投稿: 今日は、普通人 | 2013年12月14日 (土) 18時10分
普通の方、毎度ありがとうございます。
若杉さんの、プログラミングは、ほんとうにひねりが効いていて、刺激的でもありました。
ブルックナーは、あとはメシアンでしたね。
シュレーカーといえば、あと、大野和士。
飯守体制の新国で、なにかやって欲しいです。
ザルツブルクで、「烙印」を上演したナガノさんも、お得意ですから、ほかの作品もきっと取り上げてくれそうですね。
あとツェムリンスキーです。
投稿: yokochan | 2013年12月16日 (月) 00時01分