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2013年12月20日 (金)

ベルク ヴァイオリン協奏曲 ファウスト&アバド

Yodobashi_church

静謐な雰囲気のこのツリーは、新宿区百人町の淀橋教会です。

大久保の駅から見える、独特の屋根の建物がこちら。

プロテスタント系で、オルガンや器楽コンサートもよく催されてますが、まだ聴いたことはありません。

数年前、叔父の葬儀はここで行われまして、その叔父は、御殿場にありますこちらの教会の美しい共同墓地に眠っております。

Berg_faust_abbado

       ベルク  ヴァイオリン協奏曲

            Vn:イザベル・ファウスト

      クラウディオ・アバド指揮 オーケストラ・モーツァルト

               (2010.12@マンツォーニ劇場、ボローニャ)


わたくしの3大ヴァイオリン協奏曲、トリは、ベルク(1885~1935)です。

3つの作品を年代別に並べてみます。

 ベルク    (1885~1935)    1935年

 バーバー  (1910~1981)    1940年

 コルンゴルト(1897~1957)    1945年


音楽の歴史の流れの中では、いうまでもなく、ベルク→コルンゴルト→バーバー。

マーラー後の、ツェムリンスキーを師とする、新ウィーン楽派にあったベルクは、一番保守的であったかもしれないし、緻密な作風をオペラの領域に持ち込んでいまに生きる劇的な音楽を残した。

その次に来たコルンゴルトは、神童の才を発揮したが、そちらの作風は、あふれるロマンティシズムで、回顧調。十二音などの最先端とはまったく違う調性音楽。

そして、アメリカにあって、これまた保守クラシカル路線を貫いたバーバー。

こうしてみれば、音楽の新しさ、といっては語弊がありますが、耳への斬新さでは、作曲名年代を遡って、すっかり逆になり、コルンゴルト→バーバー→ベルクがMAXとなります。

以前の記事から引用して、この曲について振り返ってみたいと思います。

>1935年、オペラ「ルル」の作曲中、ヴァイオリニストのクラスナーから協奏曲作曲の依嘱を受け、そして、その2カ月後のアルマ・マーラーとグロピウスの娘マノンの19歳の死がきっかけで、生まれた協奏曲。

「ある天使の思い出に」と題されたこの曲がベルク自身の白鳥の歌となりました。

そんな思いで聴くこのヴァイオリン協奏曲には、もうひとつ、バッハの名前も重なります。
2部構成の第2楽章で、バッハのカンタータ第60番「おお永遠よ、汝おそろしき言葉よ」からのコラールがそのまま引用されていて、ヴァイオリンや木管で再現されると、そのあまりの美しさと崇高さにわたしは卒倒してしまいそうになる。

「主よみ心にかなうのなら、このいましめを解いてくださいわがイエスがきます。お休みなさい、おお世界よ。わたしは天にある家に戻ります・・・・・・・」

第1楽章では、ケルンテン地方の民謡「一羽の鳥がすももの木の上でわたしを起こす・・・」が主要なモティーフとなっていて、晩年、といっても40代中年の恋や、若き日々、夏の別荘で働いていた女性との恋なども織り込まれているとされます。

こうしてみると、可愛がっていたマノンの死への想いばかりでなく、明らかに自身の生涯への決裂と追憶の想いが、この協奏曲にあったとされるのであります。

その二重写しのレクイエムとしてのベルクのヴァイオリン協奏曲の甘味さと、バッハへの回帰と傾倒を示した終末浄化思想は、この曲の魅力をまるで、オペラのような雄弁さでもって伝えてやまないものと思います<

この曲の最後の浄化された澄み切った世界には、ほんとうに心動かされます。
ケルンテンの民謡と、いろいろと姿を変えたバッハのコラールのモティーフ、それぞれが交互に回想と諦念のようにあらわれて、天に昇るかのような和音にて平安を得たかのように終結。
いつも、息をするのもはばかれるほどに、集中して、感動して聴いてします。

アバドの声掛けで録音された、イザベル・ファストとのベルク。
生々しい録音も手伝って、実感と共感の伴った真摯なイザベルのヴァイオリンが、耳にどんどん入ってきます。
音楽との少しの距離感が、この人らしいところなのか。
彼女のバッハを聴いてみたいと思いました。

そして、2度目となるアバドの指揮。
大編成ではないモーツァルト管を指揮して、突き刺さるような集中力と、奏者に寄り添うような機敏さ、そして前にもまして透明感にあふれていて、かつ歌うベルクという、アバドならではの名演でありました。

1度目のブラッヒャー盤も、マーラー・チェンバーというフルオケでないオーケストラでもって、親密な雰囲気と鋭さを兼ね備えたベルクを造り上げておりました。

わたくしには、もうひとつ、実は、こちらの方が一番と思っているテイクが、ムローヴァをソロに迎えてのベルリンフィルライブのFM録音。
こちらが、ムローヴァの異様なまでの緊張感と、アバドのライブならではの即興感あふれる燃え方でもって極めて素晴らしい演奏なのです。
そして、やはりベルリンフィルという高性能のオケには、若いオケは敵わない。
独特の色もあり、コクと艶ともに、ベルクの音楽にぴったりなのです。
ファウスト盤と、このムローヴァ盤では、演奏時間が3分も違います。
遅くなっております。
このあたりは、アバドの行き着いた境地の裏返しとも言えるかもしれません。

ついでに、アバドではありませんが、録音を残さなかったカラヤンが、ピエール・アモイヤルをソロに迎えたライブも大切に持ってまして、そちらのオーケストラの濃厚さとビューティフルぶりは、ちょっと堪らないものです。

※こちらのジャケットの少女の横顔、気になりますね。
クリムトの「エレーネのポートレイト」という作品で、晩年に娶った極めて若い女性とのことであります。
まったく、あのオヤジったら!

Klimt_herene

ベルク ヴァイオリン協奏曲の過去記事

 「シェリング&クーベリック」

 「ブラッヒャー&アバド」

 「渡辺玲子&シノーポリ」

 「パイネマン&ケンペ」

 「ズッカーマン&ブーレーズ」

Yodobashi_church2

ブルー系のカラーは、クールで熱いベルクの音楽にぴったり合います。

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コメント

こんばんは。

ありきたりではありますが、私は同曲を、有名なウェーベルン指揮での録音でしか聴いておりませんで…

yokochan様の記事を読ませて頂き、あらためて、もう少し鮮明な録音(笑)で聴くべきかなあ…と思わせて頂きました

ただ、未だに手元に残している数少ない一枚、古びた音と相俟って、何かしら、自分自身の昔の思い出とも重なる愛着盤ではございます

投稿: Booty☆KETSU oh! ダンス | 2013年12月20日 (金) 23時42分

Booty☆KETSU oh! ダンスさん、こんばんは。

この曲も異常に好きなものですから、いつも同じようなことばかり書いて、たくさん記事にしてしまってます。

鮮明な録音で是非、と強く申し上げたいところですが、古い録音や、レコードのノイズで聴きなれると、そこにこそノスタルジーや、わが思いが乗り移ってしまうのですね。

音への思いというのは、万人それぞれですが、いつまでも、大切にしていたいですね。

投稿: yokochan | 2013年12月21日 (土) 00時14分

本当にこの曲大好きです。ズーカーマンとブーレーズによる録音をよく聴いておりますが、このファウストとアバドの録音も聴きたくてしょうがありません。 ベルグの作品の中でも最高峰ではないかと思います。ただ30年以上聴いていながら、今ひとつこちらの理解を超えているようで、いつも不思議な気分になりながら聞いております。それにしても、素晴らしい曲だと思いますので、このCDを購入して聞き込みたいと思います。

投稿: 新潟のbeaver | 2013年12月21日 (土) 21時18分

人間、遺言を書いてもすぐには死なせてあたりませんよね。

逝きたくても、胃瘻をして’生かされてしまうご年配の人も多いですね。管(くだ)を入れても。いつ遺言だったか判らなくなるくらいにさせられて。

*****
このヴァイオリン協奏曲、難しい演奏技術の版 とそうでない版 があるのではなかったでしょうか。

実演に接したのは、F・P=ツィンマーマン4回、クリスティアン・テツラフ1回、アンネ・ゾフィー=ムター1回、レオニダス・カヴァコス1回です。
ヴァイオリン協奏曲では、自分の中で多い部類です。(なぜか、各々個別の4大協奏曲より多い)
*****

震災の年、ルノー・カプソンのVnは、震災の後遺症(原発事故が海外では’あんなに騒いでいる’のに日本では情報統制が行き届いていたのがいよいよ情報コントロールが耐え切れなくなるのが時間の問題になっていた、ゆっくりと止め処もなく継続する傷口が、ジワッと開き始めた直後の)D.Harding指揮新日本フィル。中止になりましたよね。

余談、原発事故報道は’隠していることが多いことに気付いて日本のニュース見ないで、海外だけを見て聞いて。案の定、海外の報道が正しかった。ところもあった、あの時期。。

******
この曲は、やはり指揮者に恵まれる必要のある典型的な作品です。また、その指揮者のプログラミングの主張にも委ねられますよね。
後半の曲目が、”ブラ1””ブルックナー9番””べト3””ハルサイ”など。

投稿: ”ある天使の思い出に”書きあげたら、自分も逝っちゃった人 | 2013年12月22日 (日) 10時37分

新潟のbeaverさん、こんばんは。

ベルクの協奏曲のファンの方のコメントです。

ベルクの音楽は、さほど多くはないですが、この曲はふたつのオペラと並ぶ最高作だと思います。

わたしも、永らく聴いておりますので、隅々まで知悉しておりますが、たしかにそれでも、全貌を理解したと、いつも思い難い思いがあります。
十二音だからでしょうか・・・

投稿: yokochan | 2013年12月23日 (月) 22時33分

”ある天使の思い出に”書きあげたら、自分も逝っちゃった人 さん。

いつも、コメントありがとうございます。

まず、お願いがあります。
毎度、記事に応じて面白いハンドルネームをお考えいただいてますが、ぼちぼち、簡明なものに統一いただきたく存じます。
と申しますのも、迷惑コメントも多くて、自動削除しても、まだたくさん出てまいります。
そんな中に紛れないためにも、です。

それと出来ればのお願いは、記事に即したコメントでお願いいたしたく、いろいろ飛んでしまうと、わたくしも時間が限られておりますので、辛いのでございます。

コメント頂戴しておいて、さしでがましいお願いで申し訳ございません。

さてさて、ベルクですが、たくさん実演をお聴きになられてますね。
わたくしは、2回ぐらいしかないのです。

組み合わせもいろいろ微妙な楽しみがありますね。
わたしの聴いた面白いのは、ニールセンの3番なんてのもありました。
個人的には、ブル9なんかがいいですね!
ありがとうございました。

投稿: yokochan | 2013年12月23日 (月) 22時56分

変わったハンドルネームの人です。
T.Tに統一しますね。
話が飛躍しやすくてすみません。

投稿: T.T | 2013年12月24日 (火) 09時29分

T.Tさん、ありがとうございます!

投稿: yokochan | 2013年12月25日 (水) 23時46分

2回しか投稿していないのに丁寧なコメントありがとうございます。yokochanの造詣の深さにいつもびっくりしながら読ませて頂いています。Abbadoは80年代始めのモーツァルトの40番や41番の交響曲や、「春の祭典」そしてビゼーの「アルルの女」などが私にとっては原点なのでこの年末に聞き直しております。また1992年だったと思うのですがAbbadoとムローバァのブラームスのバイオリンコンチェルトをサントリーホールで聴きました。CDになった演奏ですが、初めてのabbadoの指揮を経験して心震えました。同日のブラームスの交響曲2番の名演も記憶に残っています。二人のベルグ協奏曲なんて私には想像できませんでした。機会があれば是非聞いてみたいと思います。

投稿: 新潟のbeaver | 2013年12月29日 (日) 22時14分

新潟のbeaverさん、こんにちは。
80年代前半のアバドは、ほんとうに輝いていて、素晴らしかったですね。
ずっと、アバドを聴いてきて、その頃まさに、各筋での評価も花丸に開花。
うれしい時期でしたね。
ムローヴァとの来日公演は、あのときはテレビ観劇。
活気あふれるブラームスはよかったです。
実演を聴かれたよし、うらやましいですね。
ベルクは、なんとかライブCDを発売して欲しいものです。
その頃の、ロ短調ミサやマタイも、です!

投稿: yokochan | 2013年12月30日 (月) 13時18分

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