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2014年1月11日 (土)

マーラー 「さすらう若人の歌」 F=ディースカウ

Tokyo_st

もう松は取れてしまいましたが、東京駅の丸の内側にあった賀正リース。

かなり大きくて見栄えのするものでした。

いつも思うのですが、街を飾ったこうしたシーズン用品は、終わったら捨ててしまうのでしょうかね?
お飾りなら、納めるということもあるでしょうが、クリスマス系はとくに。

え?何故って、捨てるなら、もったいないから、欲しいから。

新年の名曲シリーズ。
今年は、各ジャンルごとに聴いてきましたが、最後は、歌曲部門。
さすがに、音楽史、現代部門には、万人の名曲というのは難しいもので、今回で終了となります。

Mahler_fd

    マーラー  歌曲集「さすらう若人の歌」

        ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ

      ラファエル・クーベリック指揮 バイエルン放送交響楽団

                     (1968.12 @ミュンヘン)


マーラーは、ブームではなく、もう完全に音楽界に定着したわけですが、歌曲の方は、その数も限定されているに限らず、交響曲に比して、必ずしも多く聴かれているわけではありません。
いずれの歌曲も、交響曲と密接なつながりを持ち、歌詞があることで、マーラー独特の厭世感と楽天的な明るさ、そしてドイツの風物に根差した自然観といったものが、より色濃く出ております。

一番聴きやすいのが、「さすらう若人の歌」で、わたくしも、これを一番先によく聴くようになりました。
交響曲第1番と、ほぼ併行するように書かれ、その旋律も共通していることからです。

いまでは、むしろ、この歌曲集は、あまり聴かなくなって、「リュッケルトの詩による歌曲集」を好むようになりました。
「亡き子を偲ぶ歌」は、あまりに宿命的で暗いけど、トリスタン的な世界が好き。
「子供の不思議な角笛」は、楽しくてバラエティ豊か。

で、「さすらう若人」は、若書きにもよるが、ちょっと稚拙。
しかも、この曲は、角笛民謡にも影響を受けつつの自作の詩。
それがよく読むとまた極端に情けない若人なのだから。

 1.君が嫁ぐ日

 僕の恋人が嫁ぐ日は、悲しい日。僕は自分の部屋に引きこもってしまうんですよ。
鳥さんに、もう歌わないでくれと言ってしまう。

 2.露しげき朝の野辺に

 鳥さんも、野の花も、世の中素晴らしいよ、と歌いかけて、元気になる僕ちゃん。
でも、僕はもう知っちゃてる。
僕の花は咲かないんだ、と、いきなりマイナス・オーラに・・・。

 3.僕の胸には燃える剣が

 僕の胸の中には、喜びと苦しみを、ずたずたにする剣があるんだ。
ブロンドの彼女を見ることすら苦しいよ。
だから棺桶に身を横たえてしまえば、もう見なくてすむね。

 4.君の青い瞳

 青い瞳が、僕を遠い地へと愛と悩みを手に旅立たせてしまった。
誰も別れを言ってくれなかった。
あっ、菩提樹が立っている。
そのもとで、身を横たえよう、はらはらと雪と花が舞い落ちてくる。
こうして、すべて忘れてしまおう。気分が楽になったわ。

ちょっと、茶化してしまいましたが、こんな哀しい若人。
しっかりせい、と言いたいところだが、若き日の、マーラーの一面である、その心の一端なのでありましょう。
ヨハンナ・リヒターというソプラノ歌手に恋して、ふられたマーラーの心情も映しこまれているともされます。

1と2の曲に、交響曲第1番の旋律が共通しております。
4の、最後、菩提樹のくだりでの、安住の地を得たかのような、安堵と諦念の入り混じったような場面は、とても素晴らしいと思います。

そのような千変万化の心情を、言葉ひとつひとつに託して、巧みに歌いこむことに関しては、フィッシャー・ディースカウは、名人芸級の歌手でした。
プライの青年的な微笑ましいくらいの歌唱とともに、F=ディースカウの知的で考え抜かれた歌唱も大好きであります。
明るく、ハリのある声と明晰な発声によるドイツ語は、安心感と寛ぎをわたくしに与えてくれます。

多くの録音と共演者のある同曲ですが、オーケストラは、クーベリックとバイエルンの明るい音色と、どことなくボヘミアの自然を感じさせる演奏は、これが一番かもです。
 

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コメント

日経ビジネス購読者の私としては、もうギブアップします。白旗です。
日経ビジネス
特集号
THE 100
2014日本の主役

佐村河内守が選ばれていてショック!
クラヲタさん佐村河内守好きなんでしたね・・・・・
日経崇拝者でアンチ佐村河内守の私はどうすりゃいいの・・・・
もう抗うの ヤ メ タ(T^T)

投稿: 水谷マリ | 2014年1月12日 (日) 20時03分

こんにちは。FDとクーベリックのさすらう若人の歌、音源を持っていたはずなのですが、ガサツ者なのでなかなか出てきません。手元にあった、ハーゲゴールとマズア、それにデルネシュとショルティのCDで数年ぶりにこの歌曲集を聴いてみました。同時期に書かれた巨人と同じ旋律が随所に出てきますね。ブログ主様、この主人公を茶化しちゃいけません(笑)。しっかりせいと仰りたくなる気持ちはわかりますが(笑)。巨人同様、初々しくて美しい曲ですね。マーラーは巨人のことをどこかでウェルテル交響曲と呼んでいたそうですが、今、そのゲーテのウェルテルにはまっております。大学時代に読んだときは「どこにでもありそうな牧歌的悲劇じゃねーの」ぐらいにしか思わなかったのですが、今読むと「この作品が自分のために書かれたものだと思うことがない人がいたらその人は不幸な人だ」というゲーテの言葉が身に染みてきます。人妻に実らぬ恋をして悲観して自殺する主人公ウェルテル。若人の歌の主人公とある意味そっくりです。実はマリナー指揮のシューベルトの4番の記事で書かせていただいた、心理の先生に告白しました。お医者さんや心理の先生と患者さんの恋は実るものではありません。医療というサービスを提供する人とお金を払って受ける人という一種の契約関係ですから。それは先生も私も百も承知です。でも気持ちは伝えておきたかったのです。「貴殿の手紙を三回しっかり読みました。気持ちはきちんと伝わりましたよ。主治医の先生と今の心理の先生のご指示に従って頑張ってね」という返事がありました。ツェムリンスキーがアルマさんを好きだったのはあまりにも有名ですが、アルマがマーラーと結婚することになったとき、ツェムさんはアルマが自分のために書いてくれた手紙だか詩だかを一生宝物にしようと思ったらしいですね。私の場合先生が私の駄文を三回読んでくれたというのが大切な財産になりそうです。

投稿: 越後のオックス | 2014年1月13日 (月) 11時03分

yokochanさん

 遅くなりましたが明けましておめでとう御座います。今年も宜しくお願いします。
 このCD持ってます。昔(25年前)カセットで売っていた頃たしかミュンヘンで買って、それも聴いていました。フルトヴェングラーとの録音の方が有名ですが、やっぱり良い録音で聴いた方が楽しいです。巨人と入っていて、通して両方聴くととても気分良いですね。歌詞を読むと、当然ですがドイツ語っぽくて、いろんな想像の世界へ行けますしね。これがフランス語やイタリア語だったら全く解らない!!

投稿: 安倍禮爾 | 2014年1月14日 (火) 17時59分

水谷マリさん、こんにちは。
ご返信遅れてしまいました。

日経ビジネス見ましたよ。

一昨年来、日本中に知れ渡った佐村河内さんの存在と、その音楽。
今年は、また大作が期待されます。
その期待値でもっての、エントリーでもあるかと思いますし、日本から海外へという年にもなりますでしょうから。

まだこちらで、記事にしていない巨大なピアノ作品と格闘中です。
言葉が紡ぐことができるようになりましたらUP予定です。
すいません、こちらのことばかりで。

投稿: yokochan | 2014年1月15日 (水) 20時19分

越後のオックスさん、こんにちは。
ご返信、遅れました、申し訳ありません。

ちょっと茶化してしまいましたが、でも、こんな図々しいオヤジになった自分も、そんな多感な時期があったのですから、反省してます。
恥ずかしくなるようなこと、たくさんありましたから。

マーラーの本質的なところかもしれませんね、この自作の詩。
これを思い、10番の、アルムシ!という叫びを考えると、純なるマーラーの思いに、涙が出そうになります。

そして、心理の先生のこと。
優しくて、思いの豊かな方なのですね。
そんな先生に巡り合えて良かった。
忘れたい思い出は、わたくしもありますが、決して、そんな風にならない、美しい思い出になりますね。
拝読して、わたくしもちょっと、胸が暖かくなりました。

投稿: yokochan | 2014年1月15日 (水) 20時31分

安倍禮爾さん、こちらこそ、本年も、どうぞよろしくお願いいたします。

あるようでない、1番との組み合わせ。
いい音源をお持ちですね。
FDは、後年いくつか録音してますが、この演奏が一番に思います。
あと、F・プライとハイティンクも捨てがたいです。

ドイツ語には、ロマンがありますね。
イタリア語はリアルすぎますし、フランス語は雰囲気にすぎます。
でも、日本人の耳には、どちらも音楽的です(笑)

投稿: yokochan | 2014年1月15日 (水) 20時42分

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