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2014年2月 8日 (土)

ベートーヴェン 交響曲第4番 アバド指揮

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ずいぶんと、ソフトフォーカスな画像ですいません。

ベルリンフィル芸術監督就任時の音楽の友社の誌面から拝領しました。

就任披露の初定期のメインプロは、マーラーの1番。
加えて、現代曲もまじえるところがアバドならでは。

カラヤン時代には、現代作品は客演指揮者の仕事で、それでもカラヤンはペンデレツキを指揮した記録もあります。

こんなぼやけた写真とは、大違いの、シャープで明快な演奏を繰り広げたのが、アバドとベルリン・フィルです。

就任後、くすぶり出したアバドへの不満も、当然にありました。

カラヤンと違って当然で、マーラーや新ウィーン楽派ばっかり。
華々しい録音活動は、おりからの音楽業界不況の流れで、ライブへと取ってかわり、その数も大幅に減りました。
 カラヤンが、「やる」と言ったことが、録音も含めて、すべていいなりになった時代は幕が降りたのです。

スタジオ録音があると思えば、花形ソリストのバックで協奏曲ばかり。
指揮者は、リハーサルでは無口で、おざなりのことしか語らない。
そんな楽員の言葉もメディアには出てきたりして、わたくしはやきもきしたものです。

アバドのベルリン時代は、カラヤンの亡霊と戦ったのが、その任期の1/3ぐらい。
その後が、アバドの音楽を浸透させる端境期で、賛否両論読んだ時期。
最後の1/3が、お互いが認め合い、慈しみあい、やがてオーケストラがアバドを完全に愛してしまった時期で、病後の時期にも重なります。

そんな3つの季節に大別できるような気がします。

その後にも、卒業したルツェルン時代のアバドとベルリンフィルは、相思相愛のたぐいまれなコンビとして、年一度のランデブーを、昨年まで、わたしたちファンに見せてくれました。

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 ベートーヴェン 交響曲第4番 変ロ長調

    クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

                (1993.5 ベルリン・ライブ放送音源)
                (1999.2 ベルリン・DG音源)
                (2001.2 ローマ・映像、DG音源)


わたしの持つアバド&ベルリンフィルの、ベートーヴェンの4番の音源は、この3つ。

7番とともに、アバドに最も資質のあった番号が4番だと思ってます。

以前に、数種ある録音の比較をしてみたのが第7交響曲でしたが、アバドのベートーヴェンは、ベーレンライター版の出版と、それを果敢に取り入れたことで、次々に変化していきました。
最初のものが96年のザルツブルクライブの第9ですが、あれが発売されたときは、アバドの版の選択に際し、またアバドが多くを把握してないのではないかとの疑念を抱かれ、けんけんがくがくとなったものです。

しかし、アバドはめげずに、ベルリンフィルで、新しい校訂版にこだわり、それをこの伝統あるオーケストラに植えつけたのでした。

その試みが、いつ頃からだったのかということが、とても気になり、音源で4番に限り、探索してみたのです。
 7番のときに、聴いた93年のライブには、さしたる変化は感じなかったのですが、いまじっくりと、同じ演奏会の4番を聴いて、その後のふたつのDG音源を聴いてみて、この3つの印象は、これらと、ウィーン時代のものとの違いほどの大差はないように感じました。

演奏時間が、その演奏の評価を決めるものではないのですが、参考タイムを。

   Ⅰ   Ⅱ   Ⅲ   Ⅳ   TTL
 ウィーンpo(87)  12'14  10'22    5'44   7'36  35'46
 ベルリンpo(93)  12'06  10'02   5'45   6'59  34'52
 ベルリンpo(99)  11'34   9'48   5'54   6'39  33'54
 ベルリンpo(2001)  11'08   9'13   5'45   6'44  32'56

(ウィーンフィル・サントリーホールライブ)

こうして見ると、ウィーン時代と、ベルリン時代との間で感じる大きな違い。

ブライトコプフ版が87年と93年。
ベーレンライター版が、残りふたつ。
終楽章のテンポは、ウィーンとベルリンで版の違いとは異なるイメージ。
アバドの意志の現れ。

・大らかで、抒情も感じさせるウィーン盤、ティンパニの音も柔らかで緩め。

・深々としたマスとしてのオケの威力を感じさせる93年ライブ、旺盛な推進力、たっぷり鳴ってます。

・急緩の落差をくっきり引き出し、いくぶん性急すぎるくらいに感じる99年。

・抜群のリズム感、歯切れよく、一方でアバドらしい流麗さも。充実の01年。

ウィーン流儀に傾いた感のあるアバドのウィーンのベートーヴェンは、ベームやバーンスタインとともに、そしてクリムトのジャケットの思い出も加わり、とても大好きです。
87年の来日で行われた全曲チクルスは、FM放送されまして、いい状態で録音することができて、いまもCDR化して、万全の状態で聴くことが出来てます。

Abbado_rome

ベルリンに行ってからの変化は、実はとても大きかったのではないかと、いまにして思います。
ベーレンライター出版前にも関わらず、キッレキレで、力強いベートーヴェンは、4番の優しいイメージも持ちながら、作者の隆々とした強い意欲を感じさえる演奏です。

それを、版の裏付けも伴って進化させたのが、残りのふたつ。
ことに2001年の演奏、さらに同じ映像は、透徹の微笑みと力感あふれる至高の名演となりました。
嬉々として音楽に打ち込む、マエストロの姿を見ていて泣けてきました。

参照までに、第7第9も、聴き比べをしております。

Abbado_rome2

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コメント

今晩は、よこちゃん様。 アバドの演奏に詳しくもない私がコメントするのもおこがましいのですが、一般的に日本人ってブランドに弱いので、カラヤンと聞いたら何でも良し的なきらいはありますよね。私は今ひとつカラヤン氏のやり過ぎ感が鼻について好きではないのです。貴殿が愛してやまないアバド氏の演奏を遅らばせながら聴きまくろうかと思っております。先立つもの(お金さま)を調達せねば。積立貯金の通帳とにらめっこしてますよ

投稿: ONE ON ONE | 2014年2月 8日 (土) 18時26分

ベートーベンの4番ですね。ナマケ者の私はベートーベンの2番と4番を熱心に聴いていないんですよ。それ以外の曲は自分で演奏経験があるせいもあるのですが、とにかくこちらの4番を楽しんでいません。同じ偶数番号でも6番と8番は熱心に、それこそ熱中し狂乱し絶叫して楽しんでいるのに。
さまよえる様のブログにご紹介の作品には私が「後で聴いて見ます」と書き込みながら「あー。。この曲は生涯きくチャンスがないんだろうなー」と思われる曲が多数あります。まあ、マイノリティーの高い曲(たとえばブラウンフェルスの「鳥たち」というオペラとか)ならそれでもいいのかもしれませんが、ベートーベンの交響曲となると話は別ですよね。
はい、ナマケ者なのです。自分の経験の少ない曲をちゃんと聴けないんです。小学生レベルかもしれません。2番4番は聴いていてもすぐに飽きちゃうし、聴いてる間に別のことを考えてしまいます。
いかん^^;
ブログを読んでいると、さまよえる様の4番への強い思い入れや深い洞察力,鑑賞時の感動の息遣いさえも感じられます。
反省します。今夜はアバドのウィーンフィルで4番を聴きます。(レコードを持っていたりするんです^^;)まだ青年だった私が「若手指揮者」と紹介されたあのアバドの演奏で聞いてみます。今夜は演奏中に別のことを考えないようにします。

投稿: モナコ命 | 2014年2月 8日 (土) 19時01分

アバドとベルリンフィルの2000年から2001年にかけてのベートーヴェンツィクルスの映像は今、DVDの4枚組がたったの3000円程で手に入るんですよね。一昔前なら音だけのCDでも安いと思うような値段ですが(というか実際同じ演奏のCDよりも安い)…。
ブルーレイなら8000円になってしまいますが、再生装置の貧弱さを考えるとDVDで十分か…。

それとも素直に音だけのCDを買った方が良いのでしょうか…。
舞台作品じゃないんだから音だけで十分と思いつつ、映像の方が安いとなると目移りしてしまう貧乏性な私です。大病を乗り越えたばかりのアバドの指揮姿はちょっとした見物なのではなかろうか、と。

投稿: あかがね | 2014年2月 8日 (土) 21時39分

 お早うございます。アバドのベートーヴェンはCDできちんと聴いたのはウィーンフィルの第2番と3番と5番、それにベルリンフィルを指揮した1番と2番だけです。でもウィーン盤とベルリン盤では全く違う演奏なので驚きました。ベルリン盤は、80年代から台頭してきた時代楽器派の演奏からもかなりいろいろなことを学んだ演奏ですね。勉強家のアバドらしいです。でも昔からの彼の演奏の最大の魅力である優しさや歌心もちっとも失われていないのはさすがです。最近DGのベートーヴェンマスターワークス51枚組を買いました。アバドのベルリン盤はそれに入っていました。この全集は本当に豪華ですね。指揮者だけでもカラヤン、レニー、アバド、クライバー、ガーティナー、チョンさん、ティーレマンらの演奏が楽しめます。ケンプとフルニエとシェリングの大公には本当にアバドの交響曲なみに感動しました。

投稿: 越後のオックス | 2014年2月 9日 (日) 11時46分

ONE ON ONEさん、こんにちは。
こうしたことを機に、アバドの音楽に親しんでいただける、これはまた嬉しいですね。
アバドがいなくなってしまったことは、とても寂しいですが、こうしてアバドの音楽を共感できることが、とてもうれしいです。

投稿: yokochan | 2014年2月 9日 (日) 20時50分

モナコ命さん、こんにちは。
2番、4番を苦手だとは、ちょっと驚きでした(笑)
でもそれが、ご自身で演奏されてまかった、ということが前提なことをお聞きして、なるほどとも思いました。

わたしなんぞ、なにも取りえがないので、雑食系ですから、いろんなものに手を出しすぎるのでしょうね。

かつてと違い、ここ数年で、古典派・初期ロマン派の演奏方は、いろんな解釈があらわれてますので、ひとりの演奏家でも新旧録音が驚くほど異なることが多いです。
やめられませんね、音楽ライフ。

投稿: yokochan | 2014年2月 9日 (日) 21時05分

あかがねさん、こんにちは。
DVDも、CDと同じく、再発時には驚くほど安くなってしまいますね。
よろこんでいいのか、悲しんでいいのかわかりませんが・・・。

アバドのベートーヴェン。
映像をお薦めします。
病気を克服したアバドの決死の姿と、オーケストラの指揮者への熱い信頼が、見てとれるからです。

投稿: yokochan | 2014年2月 9日 (日) 21時15分

越後のオックスさん、こんにちは。

今回あらためて何度も聴き直しましたが、ウィーンとベルリンはまったく異なりました。
ベーレンライター出版前でもそうでした。
そして完成形のローマでのライブは、完璧な出来栄えを再認識することとなりました。

しかし、51枚のCDセットは、すごい充実ぶりですね。
往年の演奏を聴くことも、やはり耳のご馳走であるとともに、永遠に色あせない音楽のすごさも感じますね。

投稿: yokochan | 2014年2月 9日 (日) 21時36分

ご無沙汰しております。
こんぐら掲示板等で何度かやりとりさせて頂いた者です。
私も最近マエストロのベートーヴェン交響曲第4番を聴く回数が増えました。2013年のルツェルンイースター祭で同曲が取り上げられたものがラジオ放送されたためです。
夏の音楽祭の時と比べてお元気そうな様子が音源から伝わってきます。
よろしかったらお譲りしますので、記載したアドレスにメール下さい。

投稿: まーくん | 2014年3月 4日 (火) 03時07分

まーくんさん、こんばんは。
コメント、どうもありがとうございます。
ユーコさんの、こんぐらでも、お世話になりました。
覚えております。

とても嬉しく、暖かいお申し出。
早速、ご返信させていただきました。

つくづくも、アバドを、心から偲びたいと思います。

投稿: yokochan | 2014年3月 4日 (火) 23時44分

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