ブラームス ホルン三重奏曲 ティンシャル・スーク
緑のシャワーは定期的に浴びないといけません。
精神的にも、自分の体にも。
もみじの緑を通した日の光はとりわけ美しいのであります。
ブラームス ホルン三重奏曲 変ホ長調 op40
ホルン:ズデニェク・ティルシャル
ヴァイオリン:ヨゼフ・スーク
ピアノ:ヤン・パネンカ
(1976.9 @プラハ)
ブラームス32歳の傑作で、1865年の作。
ともかく、かくも渋い音楽を32歳にて書いてしまうブラームス。
そして、誰も思いつかない、めずらしの編成による室内楽。
ホルンとピアノはともかく、ホルンとヴァイオリンっていうとこが。
ホルンを自身もたしなみ、そしてご存知のとおり、交響曲や協奏曲では、その聴かせどころがたっぷりあるのがブラームスの作品。
ホルン協奏曲やソナタがないのが不思議なくらいですが、このトリオ1曲でもって、その願望がほぼ満たされるくらいに、素晴らしい作品なのです。
高校生のときに、この曲をFMの午後のリサイタルで聴き、録音もし、親しんでましたが、結局レコードで買うことはなくて、大学時代は、コロンビアから出ていたスークトリオを中心とする盤を、レコード店で、その美しいジャケットとともに、憧れをもって眺めていたものでした。
当時は、大らかかつ、伸びやかな第1楽章と、狩猟にかけ行くようなカッコいいホルンの活躍が爽快な終楽章。これらばかりに耳が行っていたと思います。
長じて、CD時代になって、いよいよ購入したこの曲。
ずっと時代を経たいまは、もちろん牧歌的で哀愁も感じさせる1楽章がいちばんすきですが、ブラームスが母の死をも思いつつ書いたとされる、3楽章のアダージョが、極めて心に沁みる存在となってきました。
ヴァイオリンとホルンが、連綿と、かつ淡々と哀しい思いをおし伏せたかのような旋律をそれぞれに奏で、ピアノがそれらを優しく囲むようにして着いてゆく。
中間部では、その想いが、一瞬高まることが2度ありますが、それも束の間で収まり、音たちは、ここでは多くの場合、寡黙であります。
ほんとに、渋い音楽。
ヴァルブホルンでなく、ナチュラルホルンを前提にして書かれただけあって、よけいに華やかさが減じられてます。
その渋さを、絹ごしの美しさでもって包みこんで、しっとり感を与えたような演奏が、チェコの音楽家たちの、この盤であります。
同質の音色に、志しももった人たち。
ピアノトリオの方も、さらに素晴らしいです。
こうした音楽や演奏を聴くと、ヨーロッパの美しさと、懐の深さを感じます。
そして、懐かしの、このジャケット。
| 固定リンク
コメント