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2014年7月16日 (水)

マゼールを偲んで マーラー 交響曲第4番 マゼール指揮

Maazel_berlin_rso
                   (ベルリン・ドイツ響のHPより)

マゼールの訃報に驚いた14日の月曜日。

ボストン響との珍しい顔合わせによる来日のキャンセルや、PMFへもキャンセル。

4~5月は、いかにもマゼールらしく、世界を股にかけた活躍スケジュールが組まれていました。

ボストンでの来日プログラム、フィルハーモニアとのマーラー・チクルスの完成、ベルリンフィルへの客演などなど・・・・。
そのすべてが中止となり、そして、マゼールさんの死を持って、悲しみの訃報が届くこととなりました。

マゼールほどに、世界中のオーケストラを指揮し、それぞれの国に有力なポストを持った指揮者は、絶対といっていいほどにおりません。
日本も愛してくれたので、日本のオケへの客演も多かったですから、ロシア以外のオケは、世界中ほとんど指揮していたのではないでしょうか(きっとロシア・ソ連もあるんでしょうね)。

その歴任ポストを、列挙すると。

ベルリン放送交響楽団、ベルリン・ドイツ・オペラ、クリーヴランド管弦楽団、フィルハーモニア管弦楽団(准)、フランス国立管弦楽団、ウィーン国立歌劇場、ピッツバーグ交響楽団、
バイエルン放送交響楽団、トスカニーニ・フィル、ミラノスカラ座(准)、ニューヨーク・フィルハーモニック、ミュンヘン・フィルハーモニー

ということになります。

繰り返しますが、こんな指揮者、絶対いなかったし、これからも出てこないのでしょうね。

ロシアやハンガリー系の血を引きつつ、パリに生まれ、アメリカに育ち、米国籍を持ち、ドイツ、イタリアに学び住む。
コスモポリタンな国際的な知識人といっていい。

そんな複雑な多彩な背景が、そもそもの神童的な天才肌と、あいまって、その紡ぎ出す音楽を、ユニークかつ大胆不敵なものにしていった・・・・。
そう思います。
強い自信と、ゆるぎない音楽への信念は、ときに、アクの強さや、我がままぶりも発揮して、わたしのような穏健な音楽や演奏家を好む聴き手からは、ちょっと鼻もちならない指揮者に捉えられていたことも事実です。

Maazel_klenperer
                     (フィルハーモニア管のHPより)

積極的なマゼールの聴き手ではありませんでしたが、いま、こうして、亡くなってしまうと、その空白が、とても大きく感じます。
 わたくしが、音楽を聴きだしてからというもの、マゼールは、つねに、私たち音楽の聴き手の視野の中におりましたし、世界のトップをひた走る大演奏家でした。
いつも、どこかで、どこかのオーケストラで、あの鋭い眼光を光らせていたのに、いまや、それが、この世にないとは。。。。

アバドの死は、とてつもなく大きなものを、それこそ、わたくしの人生そのものに関わるものをすら残しました。

マゼールの死は、わたくしにとって、そのような大きなものではなかったのですが、でも、何かが喪失してしまった・・・、そのような、言葉に言い尽くせない、悲しみと不安感をジワジワと与えられているような気がしてなりません。

いつもどこかに的な人がいなくなってしまった喪失感とともに、80代演奏家は、わたくしのそこそこ長い音楽生活を導いてきてくれた方々ばかりと実感。
 自分の親世代でもあり、巨匠と呼ばれる、まだ現存する演奏家たちの世代であります。
そうした方々が、もしかしたら・・・、という、どうしようもない不安です。

古い時代のマゼールばかりとなりますが、何回か、マゼールの演奏を聴いて、この才人指揮者を偲びたいと思います。

Mahler_sym4_maazel_3

  マーラー  交響曲第4番 ニ長調

     S:ヘザー・ハーパー

  ロリン・マゼール指揮 ベルリン放送交響楽団

                   (1969)


フィルハーモニア管との新しいマーラー・チクルスが、最後の3つを残して未完に終わってしまいましたが、マゼールのマーラー全集は、ウィーンフィルと、ニューヨーク・フィルとで2回の録音が残されました。

それ以外にも、単発でいくつかありますが、マーラー指揮者としてのマゼールの初盤は、コンサートホールレーベルの第4交響曲です。

最初の手兵、ベルリン放送交響楽団(現ベルリン・ドイツ交響楽団)との録音です。

会員制の頒布組織のコンサートホール・レーベルは、無名の演奏家の録音に混じって、メジャー級の演奏家の最新録音が、60~70年代当初、かなりありました。
そんななかのひとりが、マゼールだったのです。

Mahler_sym4_maazel_brso

中学時代、会員となり、そこそこレコードを集めましたが、新譜として出てきた、このマゼールのマーラーは、そもそもマーラー自体が不明のひとで、怖くて手がでませんでした。
CD時代に、一瞬復活したその頒布組織に再加入し、手にいれたのが、こちらです。

悪名高い、しょぼい録音のこのレーベルですが、マゼールの指揮のものは、いずれも例外的のまともで、このマーラーの録音も悪くはないです。

そして、演奏は、あの頃、すなわち30代後半から40代のマゼールの思いきりのよさと、意外なまでのまっとうさ。
この両極端のおりなす、不思議な面白さに満ちております。

まっとうなことでいえば、この4番の持つ平和的・天国的なほのぼのムードが、いかんなく味わえますし、旋律を、ひとつひとつ、いとおしむようね優しい歌わせ方が、若々しさを感じさせます。

一方の、われわれが抱いてしまうマゼール節も、ちょろちょろ出てきます。
フレーズの一節一節に、微妙な変化が付けられていて、指揮棒を巧みに、ちょいちょいと操るマゼールのあの姿が目に浮かんでくるんです。
1楽章と2楽章に、それが顕著ですが、マーラーの音楽と、巧みに呼応しあって、ごくごく自然な感じです。
 そして、感動的な3楽章。
オケが、ことに金管が、危うくて、当時の演奏や録音シテュエーションを偲ばせますが、後年のウィーン盤よりもマゼールらしいかもしれません。

このレーベルには、マゼールが再録しなかったものも含めて貴重な音源があります。
このさい、しっかり復刻していただきたいと思います。
「ハイドンの92・103」「モーツァルト25・29」「眠りの森の美女 抜粋」「火の鳥全曲」「ブルックナー3番」

そして、わたくしの初マゼールは、テレビですが、万博の年のベルリン・ドイツ・オペラ来日の放送。
「ローエングリン」をピットで指揮する姿を今でも覚えてます。
初ワグナーでもありまして、ワーグナー熱をここから帯びることにもなりました。

その後に、ベルリン放送響との来日の、やはりテレビ放送。
豊田さんがコンマスで、指揮棒を持たず、変幻自在の指揮ぶりのマゼールは、そのまえの、ローエングリンの人とは思えないくらいに別人でした。
ベートーヴェンの8番と「ティル」が、むちゃくちゃ面白い演奏でしたね。

あらためまして、ロリン・マゼールさんの、魂が、安らかならんこと、お祈りいたします。

Maazel_nypo
                           (ニューヨークフィル)

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コメント

マゼールさんの訃報、悲しいですね。「自分の親世代」の「巨匠」と呼ばれた方々のおひとりです。少年の頃から今に至る音楽の旅へ誘っていただいた方々のおひとりです。大事な案内人をまた失ってしまいました。マゼールさんとの初めての出会いはテレビを通じてでした。ベルリン放響を振っている姿にくぎ付けになりました。楽譜のすべてを理解しているオーラが、視線、指と手、表情から発散されていました。しかも暗譜で!ベートーヴェン8番が生き生きと演奏されていたこと、今でも思い起こすことができます。

投稿: ornellaia | 2014年7月17日 (木) 10時40分

  ボストン・シンフォニーのチケットを何とか購入していた新潟のbeaverです。マゼールのキャンセルの報にいやな予感を感じていました。そんなに簡単にキャンセルする指揮者だとは思っていなかったものですから。
  思えば、やはり長い年月、お世話になりました。変な言い方かもしれませんが、マーラーの5番がウイーン・フィルとどんな風に響くのかCDで教えてくれた指揮者でした。また、クリーブランドとの「英雄の生涯」はこんなにスタイリッシュでありながら、音が空疎に流れないのはすごいと時々聞いていました。初出の時はレコード・アカデミー賞をとった名盤でした。
  実演では、一度だけ、バイエルン放送交響楽団と来演した90年代初め頃のコンサートに接しました。ブラームスノ交響曲の1番と2番という超弩級のプログラムで音楽の印象はブログ主さんと同じ感じでした。
  とにかく、一癖ありながら、ここまで聞かせてくれた大指揮者の逝去の報に接し、また時が移っていく感慨にとらわれております。
  心からご冥福をお祈り申し上げます。

投稿: 新潟のbeaver | 2014年7月17日 (木) 22時13分

ornellaia さん、こんにちは。
われわれ音楽好きの導き手のひとりが、こうしてまた去っていってしまいました。
とても寂しいですね。

マゼールは常に、暗譜で指揮をする人でした。
そして、指揮棒なしは、あのときのベルリン放送響との来日のときだけではなかったでしょうか。
レコ芸の写真が脳裏にしみついていることもありますが、わたしも、鮮明に覚えてます。
今宵も、マゼールを偲ぼうかと思ってます。

投稿: yokochan | 2014年7月18日 (金) 10時19分

新潟のbeaverさん、こんにちは。
ひとり、またひとりと、去っていきますね。
ずっと元気に活躍しそうだったマゼールさんだけに、驚きも禁じえません。
でも、ボストンとの来日が流れたあたりから、もう伏せっていたのですね。

ウィーンフィルとのマーラー5番は、実演に接しましたが、驚くほどに美しく、かつグロテスクで、スピード感もある内容ぎっしりの演奏でした。
いつも、いろんな顔を見せてくれたマゼール。
これから、音源もたくさんまとめられるでしょうね。

N響への客演のテレビ放送が月末にあるようです。
ニューイヤーコンサートなども、もう一度見てみたいですね。
ともかく、いろんな顔を持った名指揮者でした。
合掌です。。。
コメントどうもありがとうございました。

投稿: yokochan | 2014年7月18日 (金) 10時34分

こんにちわ!
ロリン・マゼールはとにかく恰好よい指揮ぶりで、そう暗譜で指揮する姿にも感動してました。おそらくは譜面から読み取る感性は音楽的要素のみならず、時には哲学的にあるいは数学的にとらえているのではないかと思えるほどの情報をオケを通して表現していたとも感じます。二人といない唯一の指揮者でしたね。

投稿: miyasama | 2016年4月22日 (金) 21時49分

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