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2014年8月30日 (土)

神奈川フィルハーモニー第301回定期演奏会 小泉和裕指揮

Colleto

日も短くなりました。

しかも、雲におおわれた8月最後の週末の金曜日。

みなとみらいホールへ、急ぎましたよ。

Kanaphill20140829

 神奈川フィルハーモニー第301回定期。

 小泉和裕 特別客演指揮者就任披露演奏会。

  グラズノフ      バレエ音楽「四季」

  チャイコフスキー  交響曲第6番 ロ短調 「悲愴」

   小泉 和裕 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団

          (2014.8.29 @みなとみらいホール)


300回を超えた1回目の定期は、ロシアもの。

ちなみに、続いて、次回はアメリカ、そして英国、ドイツ、北欧と、次々に各国ものをプログラミングしてくる、実に考え抜かれた神奈川フィルの演目です。

涼しさと雨模様の続く首都圏ですが、まさか、そんな気候を想定してはなかったでしょう。
真夏のロシアもの。

クールなリリシズムと、メロディアスな旋律の数々に、ホールをあとにした聴き手は、しっとりした気分に満たされました。

ドイツ系のイメージが強いけれど、以外にもロシアものが得意な小泉さん。
いまや重鎮となった小泉さんの、心強い特別客演指揮者への就任です。

驚いたのは、グラズノフのバレエ曲を暗譜で、完全掌握して振っていたこと。
1~2分のディヴェルティスマンの総集結したようなアラベスク的な音楽の連続。
CDのトラックも、35分の曲で、19もあります。
この曲が好きな小泉さんは、しばしば演奏会で取り上げているそうです。

わたしの所有する唯一の1枚アンセルメ盤は、これまで、ぼんやり聴いていたのみで、このたびは、演奏会の前に、しっかり聴きこみ、小品の連続だけど、全体構成がしっかりとしていて、モティーフも含め統一感がある立派な作品だと思いなおしました。

そして迎えたコンサート。
あっという間の35分間。
あらためて、こんなに楽しい、美しい旋律満載のバレエ曲集であるのだと実感。
今回の演奏は、バレエの舞台を彷彿とさせ、踊りたくなるようなオーケストラピット内のものとしてでなく、完全にオーケストラピースとして、ある意味、4つの連続したシンフォニックな作品としてとらえられるものでした。

冬から始まり、秋に終わるロシアの四季感。
日本人なら間違いなく春から。
そして、日本人が季節への情緒を込めるのも、春と、そして秋。
面白いものです。

最後の秋に、冬のモティーフが、するりと入り込んでくるのが、この演奏会ではとてもよくわかりましたし、もっと言うと、春でも夏でも、幻想的ななかにも、ふっと冬のイメージが浮かんでくるように思えました。
 そんな風に、この曲をよく掌握し、ロシアの風土の香りを滲ませようとしたのが小泉さんの解釈でしょうか。
 加えて、さすがは神奈川フィルです。
石田コンマスを始め、小宮さんも帰ってきて、鉄壁の弦楽陣と若い顔ぶれとベテランの方々のマイルドな木管、柔らかくブリリアントな金管、壮麗なまでの打楽器群。
神奈川フィルの美音が炸裂しました。

この日の会場の聴衆のほとんどが初聴きかもしれないグラズノフでしたが、この素敵な曲の魅力にみなさま気づかれ、魅了されたのではないでしょうか。
「くるみ割り人形」をも彷彿とさせる「四季」でした。
そして、その「くるみ割り」も、いずれは全曲を神奈フィルで、取り上げて欲しいものですね。

後半は、超名曲の「悲愴」。

柳瀬さんの抜けたあとは大きくて、ヴィオラ主席は、毎回客演でしのぐなか、この日のこの曲はちょっと厳しいかな、と思ってましたが、でもよく鳴ってましたね。
冒頭から緊張感を維持しながら開始することができました。
 ほんとうに、いい旋律だなと、うっとりしつつ、しかし、どこか抑え気味の長い1楽章でした。
続く2楽章も、同じような感じで、単調な5拍子。
休憩時に飲んだワインがいまさら自分の耳にまで効いてきたのだろうか?

ところが、3楽章、猛然とスイッチが入ったようで、すさまじい推進力を発揮。
オーケストラも大爆発。
炸裂する打楽器、海老反るように力一杯弾く石田コンマスについてゆく皆さん。
見て、聴いて、大興奮のわたくしたち!

そして、もしかしたら小泉さんは、終楽章にそのピークをもってきていたのではないかと思えた切実たるラスト。
2度にわたるピークも、これでもかというばかりの感動の高まりを見せつけてくれました。

深刻になるほどの悲劇性はない、クールでスタイリッシュな悲愴だったけれど、曲が進むにつて、集中力の増してゆく、充実した演奏でありました。
こうした定番の名曲を、安定感豊かに、そして曲のよさをじっくり体感させてくれる新たなコンビのスタートがうれしかったのです。

そして、神奈川フィルのチャイコフスキーは、やっぱりいいね。
今シーズンは、川瀬さんの指揮で、あと2番と5番がアリマス!

終演後は、思いのほか明るく、軽い足取りで、居酒屋へ。

Imogura201408

楽団からお二人のご参加をいただき、今宵の演奏のこと、オーケストラ界のこと、フクロウのこと(?)などなど、楽し時間を過ごしました。

こんなの食べました。

12

オープン・ザ・フタ。
黒豚セイロ蒸し~

荒ぶるメンバー数人は、さらに次のお店を目指して野毛に進攻!

Noge

もう朝も近い、雨の野毛。

明るくなった横浜を走る京浜東北線に乗って爆睡するのでした。

みなさま、お世話になりました。
そして、お疲れさまでした。

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コメント

今晩は。演奏会観劇お疲れ様でした。グラズノフとはシブい選曲ですね!日本でこういうマイナーかもしれないけど、立派な曲が演奏されるようになったのは素晴らしいことです。私はグラズノフの四季はアシュケナージ指揮ロイヤルフィルの演奏を持っています。くるみ割り人形全曲とカップリングされた素敵なアルバムです。でもグラズノフでしっかり聴いているのは四季ぐらいのもんです。ポリャンスキーと尾高さんが指揮した交響曲全集(ヴァイオリン協奏曲やカンタータ付き!)という素晴らしいアルバムを持っているのですが、ほとんど未聴です。情けない!
今は主治医の許可を頂いて一時帰宅中です。躁うつ病というのは鬱状態の時気力がわかず、そう状態の時は喧嘩っ早くなったり怒りっぽくなったりする非常に難しい精神病です。百人に一人の確率で発症するのだそうです。なんて病気になっちまったんだと思います。3日に病院に戻り、4日か5日に主治医、家族、私の3者面談を行い、退院か、もう少し入院生活を頑張るかを決めるのだそうです。苦しい病気ですね。アムフォルタス王の苦しみもお子様レベルじゃないかと思うほどです(笑)。パルシファルに助けを求めたいです(笑)。ブログ主様と辻邦生先生を尊崇する同志・Shushi様が私の心の支えになって下さっています。入院患者さんや病院の職員の皆さんが私に本当に良くしてくださっています。音楽・文学・歴史・アニメ(笑)・友人・家族…多くのものに支えられて生きています。本当に感謝です。

投稿: 越後のオックス | 2014年9月 1日 (月) 22時18分

越後のオックスさん、こんにちは。
お加減はいかがでしょうか。
気を揉んだり、ふがいなく思うこともあるでしょうが、ゆったりとした感情でもって、おおらかにお過ごしいただければと思ってます。
大好きな音楽は、絶対に必須ですからね。
わたしも、毎日、あれこれ大変なことが起きますが、その都度、音楽に逃げ込んで救われたりもしてますから。

グラズノフの交響曲は、まだ全制覇してませんが、徐々に聴いてます。ヤルヴィと、FM録音などからです。
チャイコフスキーに劣らず、バレエとシンフォニックとの交わりが、とても麗しく、地味なだけで多く聴かれないのが残念だと思ってます。

投稿: yokochan | 2014年9月 3日 (水) 22時29分

さまよえるクラヲタ人様
こんにちは。度々、申し訳ございません。
もうお聴きになられているかもしれませんが、グラズノフのピアノ・ソナタ1・2番、ピアノ協奏曲1・2番は本当に胸がえぐられるような美しさでおすすめです。ヤルヴィは録音がありませんが、未完成の交響曲9番(他の作曲家の編ですが。セレブリエールが録音してます)も良いです。
来年は生誕150年のメモリアルなので実演が増えると嬉しいですね。度々、失礼致しました。

投稿: ヴィッテルスバッハ | 2014年9月 4日 (木) 07時44分

ヴィッテルスバッハさん、こんにちは。
グラズノフにまつわる情報、ありがとうございます。
ご案内のソナタも協奏曲も、いまだ未聴であります。
こちらを拝読したら、もう、無性に聴きたくてしょうがありません。
さっそく、音源入手に動きます!
そして、来年は、グラズノフイヤーなんですね。
神奈フィルで、交響曲を取り上げてくれるとよいのですが。

投稿: yokochan | 2014年9月 6日 (土) 14時26分

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