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2014年8月14日 (木)

ヴェルディ レクイエム アバド指揮

Kanda_church_a

都会のど真ん中に静かに佇むマリアさま。

カトリック神田教会。
1874年、明治7年創設の歴史あるこの教会は、維新後、禁教令が解かれ、すぐさま布教の足がかりとして築かれたものです。
フランシスコ・ザビエルに捧げられ、ザビエル教会ともされてます。

いまある、この堅牢な聖堂は、昭和3年のもので、国の有形文化財。

Kanda_church_c

聖堂内部は、撮影禁止ですが、ほんのちょっとだけ。

ステンドグラスを反映した光りが、とても美しく、静かな空間がそこにありました。

一度、こちらのパイプオルガンや、聖堂コンサートを聴いてみたく思ってます。

 8月の今頃は、毎年、ヴェルディのレクイエムを聴いております。

典礼的には、死者のためのミサ曲ですから、カトリック系の音楽となりますが、これほどの作品になると、カトリックもプロテスタントもないです。
ですが、教会で演奏するとなると、円柱にかたどられたロマネスク様式のカトリック教会の方が、相応しく思います。

Verdi_requiem_abbado_bpo

   ヴェルディ  レクイエム

     S:アンジェラ・ゲオルギュー  Ms:ダニエッラ・バルチェローナ

     T:ロベルト・アラーニャ     Bs:ジュリアン・コンスタンティノフ

   クラウディオ・アバド指揮 ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
                   スウェーデン放送合唱団
                   エリック・エリクソン室内合唱団
                   オルフェオン・ドノスティアーラ合唱団

                 (2001.1.25,27 @ベルリン)


ことしの、ヴェルデイのレクイエムを弔いの念を持って、アバド盤を聴くことになるとは。

EMIに数枚残されたアバドの録音のうちのひとつですが、このライブ録音には、いつかの側面があります。

①アバド3回目の録音。
79・80年ミラノスカラ座、91年ウィーンフィル、2001年ベルリンフィルと、ほぼ10年おきに、その時の手兵で持ってレコーディングして、世に問うてきた、アバドの勝負曲であること。
その間にも、ロンドン響とも60年代から演奏してますし、なんといっても、わたくしたち日本人にとって忘れ得ないのは、81年のスカラ座との来日で、ソプラノを変えて2公演指揮してくれました。
このふたつは、わたくしの放送音源の中でもお宝のひとつとなってます。

②2013年は、生誕200年でしたが、2001年は、没後100年のヴェルディ。
ジルヴェスターでは、「ヴェルディナイト」を指揮。
そして1月に、このレクイエムで、さらにイースター祭では「ファルスタッフ」を上演。
アバドが、ヴェルディを集中的に取り上げた最後の機会となってしまいました。
 ベルリンの次のステージ、ルツェルンでのヴェルレクを夢見ていたのですが、それは叶わぬものとなってしまいました。

③病からの復帰。前年に胃癌となり、大半の演奏会をキャンセルして治療に専念し、復帰し、秋には、すっかり痩せ細って日本のわれわれの前にあらわれたアバド。
執念の「トリスタン」については、これまで何度も書いてきました。

その翌年1月のヴェルディ「レクイエム」が演奏されたのは、1月27日。
ヴェルディ100回目の命日、その日でした。

そして、今年、その演奏の14年後、期しくも、同じ1月の20日にアバドは旅立ってしまいました。

病を克服したことで、アバドの演奏は、透徹感にくわえ、壮絶なまでの音楽への集中と自己の命を削った代償としてのような燃焼度の高い、神々しい演奏を作り上げるようになった。

そして、そこに、感じたのは、アバドの若返り。

テンポもゆったりとなり、悠然たる巨匠風の大演奏となると思いきや、マーラーやブルックナーでは、快速テンポをとりつつ、覇気とオケ奏者を奮い立たせる気合にあふれた演奏を繰り広げるようになりました。
ですから、よけいに、ルツェルン時代のヴェルレクがどのようになったか、想像だけでも、泣けてきます。

 こちら、ベルリンフィル・ライブでのアバドは、もの凄い集中力と統率力でもって、ソロと合唱をも、ベルリンフィルの持つ輝かしい音色のもとに、引きつけてしまっている。
ピリピリとした緊張感は、これまでの2盤以上。
全員が、アバドの指揮棒のもとに帰依している感じ。

 ライブで、これだけ、精度が高く、迫真に富み、ダイナミックで、歌にもあふれ、美しい演奏って、絶対にあり得ないと思う。

ただ、ほんとうの贅沢だけど、注文をつけさせていただければ、EMIのキンキンとした録音が、どうにも気にいらない。
 そして、EMIになった要因かもしれない、ゲオルギューとアラーニャが、アバドの明るい禁欲的世界からすると異質で、歌にのめり込みすぎ。
それ自体は、素晴らしい歌唱なのですが・・・・。
 バスのブルガリアのコンスタンティノフも、声の揺れがどこか不安を感じさせ、どうしてもギャウロウのピシッと1本筋の通った歌声を聴きなれている身しては、ミスキャストの感は否めない。
バルチェローナは、まったくすばらしい。

合唱は、技量も音への集中度も完璧。
そう、この完璧度合いも、全体のバランスを考えるとどうかなと思ってしまう、そんな贅沢すぎる自分。

歌と知性にあふれ、病後の異常なまでの集中力を感じさせる演奏なのですが、オケ・独唱・合唱が、高性能ながら、どこか個性が違いすぎる、そんなアバド3度目のヴェルレクでした。

でも、アバド好きとしては、これもこれ。
ベルリンフィルの超絶高性能ぶりと、カラヤンになかった歌心と透明感には、ほとほと感心してしまいます。

アバドのヴェルレクなら、やはり、スカラ座。
無垢な清らかさと、すべて全員が同じ方向を希求している真の美しさ。

過去記事 ヴェルディ「レクイエム」

「アバド&ミラノ・スカラ座」

「バーンスタイン&ロンドン響」

「ジュリーニ&フィルハーモニア」

「リヒター&ミュンヘン・フィル」

「シュナイト&ザールブリュッヘン放送響」

「アバド&ウィーン・フィル」

「バルビローリ&ニューフィルハーモニア」

「カラヤン&ベルリン・フィル」

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コメント

昭和3年に建てられた聖堂…私の父親が昭和3年生まれ同い年です。 昭和一ケタ生まれらしく頑固な親父様ですが年々嵩が小さくなり足元もおぼつかない昨今。老いる事の現実を突きつけられ、自分のこれからを考えてしまいます。
しかしながら広島は大変な惨事となり将来のある子供たちも沢山犠牲となってしまいました。
このレクイエムを届けられたならどんなに…

PS…三浦大輔さま、5連勝ですね。嬉しいです。

投稿: ONE ON ONE | 2014年8月22日 (金) 20時53分

ONE ON ONEさん、こんにちは。
広島の自然災害、伝わってくる情報を見るにつけ、心が痛みます。容赦ない自然の猛威に、なすすべもなく、追悼の念をいだくことしかできないのが虚しいです。

わたくしの亡父も、昭和3年生まれです。
元気な60代に亡くなってますが、いまもし健在ならと思うと、どんな老人になっているだろうかと思った、このお盆でした。
しっかりお元気に、おられること、お祈りしておりますね。

そうそう、番長、最高ですね!

投稿: yokochan | 2014年8月23日 (土) 10時26分

 日本や世界に悲惨なことが多い今日この頃、悲しい日にはモーツアルトのレクイエムか、ヴエルディのレクイエムのCDを聞きます。
  ヴェルディはアバドのミラノ・スカラ座との録音かこのベルリン・フィルとの録音のどちらかです。どちらも名演なのですが、ミラノ・スカラ座の全体の雰囲気が好きで、ベルリン・フィルとの録音は音色が好きです。
  ただし、どちらも「怒りの日」のところで、感情が悲しみから何か別のものに浮遊し、冷静に聞けません。どうも、その辺が、自分ではもどかしいところです。どんな風に聞いたらいいのか、アドバイス頂けませんか? 厚かましいお願いですいませんが、なんといってもこの曲のアバドはすごいなとは感じています。

投稿: 新潟のbeaver | 2014年8月28日 (木) 22時57分

新潟のbeaverさん、こんにちは。
アバドのヴェルディ「レクイエム」は、わたくしにとっても絶対的な存在でして、なによりもスカラ座との演奏が一番です。
81年の来日公演を逃したのは痛かったですが、最後のベルリン盤も含めて、アバドのこの曲の解釈は、ほぼ一貫していると思います。
それは、突出してしまいがちな「怒りの日」を、本来、歌とリリシズムが支配するこの曲の全体の中に自然な存在として配置していることかと思います。
 わたしの好きなもうひとつ、カラヤン盤などは、いくつか訪れる怒りの日に、それぞれピークを持っていってますし、トスカニーニは厳しいまでに激烈。
バーンスタインは怒涛のよう。

それらに比して、アバドは振りかぶるような激しさは抑えぎみかと。
ワタクシは、この場面にことさら注目しないように、ヴェルディの流麗な歌を引き立てる、ダイナミズムのスパイスのように思って聴くようにしてます。
 もちろん、若い頃は、大音量で、この場面ばかりをガンガン聴いたものですが・・・。

アドバイスになってませんね。
ともかく、怒りの日もあってのヴェルレクですから、全体を大切に聴いてます。

投稿: yokochan | 2014年8月31日 (日) 11時02分

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