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2014年10月 2日 (木)

ブリテン 「真夏の夜の夢」 ハイティンク指揮


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真夏の夕暮れの東京タワー。

ついこの前までの暑い夏は、涼しい秋にとってかわりました。

冬から春も劇的だけど、夏から秋も、いつのまにか風が変わってしまい、朝晩に急に季節が進行したことを痛感します。

懐かしいな、夏。

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    ブリテン 歌劇「真夏の夜の夢」

 オベロン :ジェイムス・バウマン   ティターニア:イレアナ・コトルバス
 パック   :ダミエン・ナッシュ     テセウス :リーヴェ・ヴィッサー
 ヒッポリタ :クレイエ・パウエル     ライサンダー:ライランド・デイヴィス
 ディミトリアス:デイル・ディージング ハーミア:シンシア・ブキャナン
 ヘレナ  :フェリシティ・ロット       ボトム:クルト・アッペルグレン
 クィンス :ロバート・ブリソン        フルート:パトリック・パワー
 スナッグ :アンドリュー・ギャラガー スナウト:アドリアン・トンプソン
 スターヴリング:ドナルド・ベル
 妖精:蜘蛛の巣、豆の花、からしの種、我・・・・ボーイ・ソプラノ

        演出:サー・ピーター・ホール

     ベルナルト・ハイティンク指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団

                        
                         (81.@グラインドボーン)

   
シェイクスピア原作の「真夏の夜の夢」。
「真夏」とありますが、本来のこの物語の季節は、夏至の頃。

そして、夏もすっかり終わった秋のいま、こうして記事にしてます。
というか、真夏に鑑賞してたのに、今頃の記事。
最近の週末は、忙しくて、以前のようにオペラ記事を書く時間がないのです。

音楽での、「真夏の夜の夢」の代表作は、メンデルスゾーンの同名の劇音楽でありましょう。
あと、古くは、パーセルの「妖精の女王」で、原作から半世紀後。
そして、英国からは、ずっと下って、ブリテンのこちらのオペラとなります。
あと、変わったところでは、コルンゴルトがメンデルスゾーンの作品を映画様にオマージュした同名の劇作品もあります。

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ブリテンのオペラは、1960年の作品。
そして、原作のシェイクスピアの戯曲は、1596年。
ほぼ400年を経て、ブリテンと朋友のピアーズは、原作にほぼ忠実に従い、幻想・ロマン・笑い・風刺・夫婦愛といった妖精を介した人間のドラマが、楽しく美しくここに描かれることとなりました。

保守的な作風だったブリテンですから、1960年という年の作品にしては、メロディも豊かで、とても聴きやすいオペラで、しかも全3幕、2時間30分という長さながら、ドラマの運びと、巧みな音楽とで、楽しみつつ、あっという間に終わってしまう。

過去に2度記事にしてますが、簡単な、あらすじ・・・。

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妖精の王オベロンと妃のティターニアが、愛しい少年をめぐって喧嘩をして、頭にきたオベロンは、遊び心で、寝て起きて最初に見た人に恋してしまうという薬草を、妖精パックに探しにいかせる。

 人間の男女4人が、それぞれ、たがいに違う相手と出てきて、恋の悩みをぶつけ合う。

それを観察するオベロンは、気を効かせて、うまく恋が成就するように、パックに、かの惚れ薬を塗るように命じるが、そそかっしいパックは、違う相手の瞼に塗ってしまい、本来の恋人希望でない女性に起こされた彼は、彼女をひと目で好きになってしまう。

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 一方、森には、演芸の出し物を練習しにきた職人たち数人。

かたわらでは、妃ティターニアが休みにつくが、パックは職人のひとりを誘い出して、その姿をロバにしてしまう。

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 翌朝、目を覚ました妃は、ロバを見て、即、恋に落ちる。

妖精たちもまじえて、平和かつ滑稽な情景が続くが、一方、ひとりの女性を巡り、大げんかとなった4人の男女の喧騒もすさまじい。

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 パックに、ひと違いをしたことに、激怒して、お仕置きをするオベロン。

パックは、4人をばらばらに呼び出し、ふたたび、惚れ薬を処方。 

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さらに、妃の魔法も解き、妖精の王夫妻と4人は、仲直りの美しい朝を迎える。

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そして、その晩は、領主の婚礼。

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合わせて、4人の祝福も同時に行い、宴の出し物は、職人たちの抱腹絶倒の寸劇。

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やがて、劇も終わり、皆が去ったあと、妖精夫妻も仲良く歌い、最後に一人になったパックが狂言回しとして、舞台の幕を締める。


 登場人物が多くて、一見、ばたばた騒ぎに見えるけれど、舞台や映像に接すれば、その思いは霧消してしまいます。

 3幕の滑稽な劇中劇も、1幕で行われる職人たちの練習風景と巧みに結びついていて、もやもやが晴れるし、なによりも、全体に巧みなライトモティーフの使用による効果があふれ出てます。
 1幕と3幕は、それぞれ夢想的な前奏曲から始まり、そこから次々に、その幕の出来事も含めて音楽が派生して、大きくドラマを築いて行くさまが聴きこむとよくわかる。
さらに、中間の第2幕は、長大なパッサカリア形式ともとれるそうです。
 そう、全体をシンフォニックに捉えることも可能なオペラなのです。

 また、原作に妖精たちとして、少年がたくさん出てくることも、ブリテンの好む素材でありましたでしょう。
オペラでも、妖精たち=少年合唱は、3つの幕でそれぞれに大活躍で、古雅なまでのコーラスを披露して、3つの幕を結びつける効果も生んでいるように思われます。

あと、狂言回しのパックちゃんですが、語りに重点を置いたシュプレヒティンメのような存在で、歌いません。
わたしの持つデイヴィス盤では青年が、観劇した舞台では女性が、そしてこちらの映像のハイティンク盤では少年が、これまた、まったく達者に機敏に演じております。

ブリテンのオペラ16作中、10番めのものですが、このオペラよりあと、旋律的なオペラに別れを告げ、東洋風な音楽も取り入れ、よりミステリアスでユニークな、ある意味感覚的な音楽の方向へと向かうのでした。

 さて、グラインドボーン時代、1980年代のハイティンクは、ロンドンフィルの指揮者という立場でもって、オペラを本格的に指揮し始めた頃で、必死にレパートリーの開拓に努めていた頃。
モーツァルトのダ・ポンテオペラや、ストラヴィンスキー、ブリテンなどの名演をこうして残してくれました。
いずれもふくよかで、穏健な解釈ながら、音楽はときに生真面目すぎたりもしましたね。
でも、シンフォニックなアプローチが、ブリテンには、ピタリと決まって、とてもスッキリしてます。
カーテンコールに出てくるその姿も、頭は一緒ですが、まだ50代だから、とても若い。
グラインドボーンのあと、デイヴィスの後を受けて、コヴェントガーデンの音楽監督となり、オペラ指揮者としての立場も完成させることになるハイティンクでした。

歌手では、お馴染みのコトルバスが素晴らしいですね。
バウマンのオベロンも見栄えもよく、完璧な歌です。

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そして、4人の人間の恋人たちの素晴らしさ。
とりわけ、若きロットとR・ディヴィス。

 最後に、演出は、ピーター・ホール。
王立シェイクスピア劇団やナショナル・シアターの監督をつとめたピーター・ホールは、劇や映画に加え、オペラ演出でもかなりの舞台を残しております。
英国で、数々実績をあげていたホールに、バイロイトが声をかけたのは、シェロー&ブーレーズの革新的な「リング」のあと。

 ショルティとともに、バイロイトに乗り込み、それまでの「フレンチ・リング」に対し、「ブリテッシュ・リング」と呼ばれたのが1983年のこと。
このブリテンの映像の頃は、もう構想・準備に入っていたものと思われます。
 具象的で、ロマンティックだったバイロイトの「リング」は、ある意味賛否両論で、前が凄すぎたのと、ショルティが、劇場の音響にうまく自分の想いを合わすことができず、1年で降板してしまったことが気の毒な評価となってしまいました。

 ですが、その後を受けたペーター・シュナイダーの指揮が素晴らしくて、歌手もベーレンスを中心に安定して、このプロダクションは成功裏に終了することとなりました。
こちらの映像は残されませんでしたが、ほんのちょっとだけ、ビデオで持ってますよ。

話が飛んでしまいましたが、ホールの造りだす舞台はとても美しくて、あらゆる人の想像の中に出てくるものと同じ感じでもって展開するので、幻想と現実の狭間をただようこの舞台を理想的な演出として評価してもいいと思います。
 リングでは、「リアルなメルヘン」と評されましたが、ここでも、まさにそう。
ある意味、原作に忠実であることの美しさです。
 もちろん、解釈により生まれる美しさや、刺激を否定するものでなく、大いに双方を受け入れたい心情に変わりはありません。

いまや、いろんな演出や演奏が登場していると思われますが、ひとつのスタンダートとして大切な映像に演奏だと思います。

それにしても、ブリテンのオペラのエンディングは、急転直下かっこいい

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「妖精さんのしでかす出来事は、いつでも、ありまぁす

by パックさん



 
過去記事

 「デイヴィス&ロンドン響」

 「名古屋二期会公演 阪 哲朗 指揮」
  

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