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2014年10月13日 (月)

R・シュトラウス 「アラベラ」 首都オペラ公演

Kenminn

ふたつの幕間に、白と赤、いただきました。

ことに、白ワインは、この日の出し物、R・ストラウスの甘味な音楽にぴったりのお味でした。
県民ホールにある、フレンチレストラン「英一番館」のラベルが貼ってありましたよ。

横浜を中心に活動する首都オペラの公演、「アラベラ」を観劇してきました。

ピットには、毎年、神奈川フィルが入ります。

Kenminn1

こんな感じ。

舞台には、旅行鞄が並んでまして、ホテル住まいの伯爵一家を表現してます。

生誕150年のR・シュトラウスですが、日本でのオペラ上演は、新国のアリアドネとアラベラ再演、あらかわのアリアドネぐらいしか見当たらず寂しいものでしたが、そんななかで、横浜での「アラベラ」は、画期的な上演でありました。

Arabella

   アラベラ:津山 惠         マンドリーカ:月野 進
   ズデンカ:山口 佳子        マッテオ:内山 省吾
   ヴァルトナー伯爵:佐藤 泰弘  アデライーデ:佐伯 葉子
   エレメール:浅野 和馬       ドミニク:御野  鋼
   ラモラル:宇田川 慎介       フィアカーミッリ:石井 実香
   カルタ占い:前坂 美希       ホテルのボーイ:柳亭 雅幸
   ヴェルコ:北芝  潤          デューラ:北上 龍郎
   ヤンケル:吉田 宣俊

  中橋 健太郎左衛門 指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
                   首都オペラ合唱団

                演出:佐藤 美晴

                    (2014.10.11@神奈川県民ホール)


舞台観劇は、これで2度目。
映像・音源もそこそこ持ってますが、忘れ得ないのは、テレビで見た、バイエルン国立歌劇場の来日公演。
サヴァリッシュの指揮で、ルチア・ポップとヴァイクルのコンビの舞台は、演奏の素晴らしさとともに、具象的な装置に心理描写も豊かな演出でもって、理想的なイメージで脳裡に残り続けてます。
 具象的なリアル演出も健在ながら、筋の読み替えや、抽象化、人物たちの動きの多弁化など、あらゆるスタイルが混在するオペラ界であります。

そんな中での、日本のオペラ界は、極めて穏健で、どんな方が観ても安心の舞台が約束されております。

今回の「アラベラ」上演も、まさにそう。
もう少し、ひねりが欲しいとも思ったけれど、よけいなことを一切していなかった点と、あとは観劇者の想像力で補えばいいという、シンプルぶりがよかったと思います。

Arabella

  (公演パンフレットより拝借の舞台模型画像)

舞台は、3幕を通じて、上褐の階段が据えられ、1幕では、仕切り壁があって、ホテルの部屋を作りだしていたほかは、このままの簡潔ぶり。
階段には、よく見ると、オーケストラピットに折り返し描かれた、クリムト風の金の模様がアクセントになってます。

あとは、カラフルな照明の効果が印象的で、光りは、ときに青く、赤く、ピンクになったりして、舞台の進行と、人物たちの心情を裏付けております。
 ことに、美しかったのは、2幕のアラベラとマンドリーカの二重唱の場面。
無数の星がまたたくような背景に、シュトラウスの甘く切ない音楽がばっちりとかみ合った美しいシーンでした。

ただ、このオペラを初めて観る方、オペラ自体がもしかしたら初の方には、ちょっと説明不足にすぎる舞台であったかもしれません。
その点では、可も不可もない舞台でもあり、演出でありました。
 加えて、各幕ともに、幕の下ろし方が、音楽の急転直下の洒脱さの素晴らしさに、まったく相容れなくて、もたもたした感じで、後述のオケが、さばさばなものだから、いらいら・もやもや感が残りましたこと、声をあげておきます。

 海外組が主体の新国立劇場にも、オール日本人のダブルキャストの時代もありました。
そして、プロでもアマでも、難しいオペラに果敢にチャレンジすると、同胞として、大いに応援したくなります。
 まして、ドイツ語垂れ流し、言葉の洪水みたいなシュトラウスのオペラとなると、さぞかしたいへんと思います。

ですから、基本、日本人歌手のことは、いつも褒めちゃいます。

そんなひいき目を度外視して、アラベラとズデンカの、津山さんと山口さんは、実に素敵な姉妹となりました。
夢見るお嬢様アラベラを気品よく凛とした明快な歌唱で歌った津山さんは、そのお姿も美しかったです。、
そして、現実的な一方、姉にも、友人で愛する人にも献身的な愛を尽くすズデンカ。
少年であり、妹であり、最後には、ひとりの愛する自立する女性という多面的な役柄です。
山口さんは、ほんとに、可愛く、素直で優しい歌唱でもって、演じ歌いました。
最後のふたり姉妹の許し合いのシーンには、涙が出ましたよ。

若々しい月野さんのマンドリーカは新鮮な発見。
何度も接してる内山さん。そのマッテオも伸びのあるテノールでよかった。
コミカルさも、味わいあった佐藤さんの親父伯爵に、母アデライーデ佐伯さんは、声の艶よく貫録すら漂わせてます。

フィアッカーミリ、3人の伯爵は、ちょっと弱かったけれど、それぞれ熱演でした。

 指揮の中橋さん、初めて聴きました。
そのお名前のインパクトに気おされてしまいますが、地道にオペラを極めてられるお方とのこと。
指揮ぶりを拝見していて、その的確なる指揮ぶりはよくわかりました。
ですが、快速ぎみで、てきぱきと進むばかりで、音楽の情緒や情感が置き去りにされた感が強く、せっかくの神奈川フィルの美音が、さっぱりと活かされていないように感じました。
あまりの職人ぶりが過ぎるとでもいいましょうか・・・。
シュトラウスの音楽は、もっとたっぷりと、なみなみと演奏して欲しいもの。

でも、ピットのなかは、わたくしにはお馴染みの神奈川フィルで、その音色はいつものかなフィルに間違いなく、安心感すら覚えるのでした。
そうした意味では、きらめくシュトラウスサウンドは、神奈川フィルのもので、このオーケストラに助けられたといっても過言じゃありません。

首都オペラさまには、毎度、意欲的な上演をありがとうございます。
来年は、トゥーランドットとのこと。
さらに、きっと神奈川フィル向きの作品であります。
1年先ですが、わたくしもきっと観劇します、神奈川フィル2度目のトゥーランドットです。

最後に、シュトラウスのオペラ好きのみなさま、朗報です。
来年のやはり同じころ、二期会が、「ダナエの愛」を上演いたしますよ!

さらに最後に、マンドリーカには、お水を飲みほしてあと、空のグラスを投げすてて、かち割って欲しかった。
今回は、それらは、エアでしたので・・・・

 過去記事

 「ショルティ&ウィーンフィル」

 「ハイティンク&ロンドンフィル」

 「新国立劇場公演 シルマー指揮」

 「サヴァリッシュ&バイエルン国立歌劇場」

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コメント

「アラベラ」意外と上演が難しいですね。読んでいると、オーケストラのソノリティを活かしきれていない「モヤモヤ」が感じられ、随分“苦しんで”コメントした感じ?いつものyokochanさんの切れがないなぁ。「ダナエの愛」、ターゲット・ロック・オンです。

投稿: IANIS | 2014年10月14日 (火) 03時03分

IANISさん、新国の演出でもおなじく、どこまで踏み込むか、なかなかその舞台は難しいものがありますね。

そして、かなフィルファンとしては、せっかくのオーケストラなのに・・という思いが拭いきれず、まさに、モヤモヤ。。。。

来年の「ダナエ」、はやくも、よろしくお願いします!

投稿: yokochan | 2014年10月16日 (木) 07時58分

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