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2014年12月 6日 (土)

バントック 「サッフォ」 ハンドレー指揮

Yokohama_smart

10月の終わりから、11月の始めにかけて行われた、横浜のスマート・イルミネーション。

環境に配慮した、優しいイルミで、創作的な作品も数多く、隣国からもいくつか展示がありました。

こちらは、実はゴミ袋なんですよ。

いまのクリスマスイルミネーションは、煌びやかですが、彩りはあっても、優しいほの暗さがよいですね。

Bantock_sappho

  バントック    「サッフォ」

    ~メゾソプラノとオーケストラのための前奏曲と9つの断章~

          Ms:スーザン・ビックレー

   ヴァーノン・ハンドレー指揮ロイヤル・フィルハーモニック管弦楽団

                          (1997.2 @ロンドン)


サー・グランヴィル・バントック(1868~1946)は、ロンドン生まれの作曲家。

あまり知られてませんが、極めて多彩な方で、その作品数は多いですが、ほぼ演奏されません。
大規模な編成を要するオーケストラ作品や劇作が多いことも、その要因のひとつかもしれません。

以下は、以前の記事を少し編集して、そのまま記載します。

 外科と産婦人科の父のもとに生まれたグランヴィルは、恵まれた環境において、幅広い教養を身に付け、音楽もその教養のひとつでした。

 当初は、化学工業を学ぶものの、20歳にして、南ケンジントン音楽館で、数々の譜面を読んで、作曲を学び、音楽に目覚め、やがてトリニティ・カレッジで本格的に勉強をするようになり、さらに30歳にして、ロイヤル・アカデミーに入学して、さらに指揮者としての活動も行い、同時代を含む自国の作曲家たちの作品に親しんでゆく。
これは、やがて、バーミンガム市響の設立への関与にもつながります。

 あきれるほどの教養人で、ヨーロッパ各国語はおろか、ペルシア語やアラビア語・ラテン語までも体得し、日本をはじめとするアジア文化にも興味大だったバントック。
 その豊富な探究心から、極めて多岐にわたる題材でもってたくさんのオーケストラ作品や声楽作品を書いた。だから表題音楽がたくさん。
日本や中国、アラビアにまつわる作品もあります。

 でもその神髄は、ほかの英国作曲たちが同じく魅せられたケルトの世界。
神秘的であり、ロンドンっ子からしたら心の故郷の世界でもあった。

4歳違いのR・シュトラウスとも相通じるものがあるし、ときに巨大性も発揮するところは、親友ブライアンをも思わせるところがあり、さらに、しなやかさでは、フランスの印象派風の響きにも通じるものがあります。

 その音楽は、シュトラウスと同じく、時代を考えれば、どちらかといえば保守的。

甘味さと自然賛美の大らかさが同居する、世紀末風の音楽でもあり、地味さと派手さも共存してる。

わたくしには、極めて魅力的な存在で、濃厚すぎない官能性がたまらなくよろしくて、そこに自然を感じさせるのもよろしいのです。

以前は、その名もまさに、「ケルト交響曲」を取り上げております。
そちらは、まさに、絶海を思わせる素敵な作品でした。
オケ付きの歌曲と、オペラオラトリオのような長編「オマル・ハイヤーム」も、ただいま挑戦中。

いずれも、亡きヴァーノン・ハンドレーが、ハイペリオンとシャンドスのふたつのレーベルに、これらを含むバントック・シリーズを録音してまして、ほんとうにありがたい指揮者でした。

そのハンドリーの遺作の中から、「サッフォ」を。

Sappho

サッフォ(サッポー)は、古代ギリシアの女流詩人で、紀元前7~6世紀の頃の方です。
途方もない昔ですが、恋愛詩人として、夫と死別してのち、独身をつらぬき、多くの若い女性に様々な芸術を指導したとされます。
 余談ながら、そうしたこともあり、また、官能的な詩作もあることから、彼女は同性愛とも後に噂され、サッフォさんが、レスボス島の出身であることから、レズビアンという言葉も生まれたといいます。

 ちなみに、本CDのジャケットの絵は、その名も「レズビア」。
イギリスの世紀末画家、ラインハルト・ウェッグリンの作品です。
バントックより、20歳上で、同時期に活躍してますので、この絵の雰囲気が、彼の音楽にぴったりと寄り添って感じるんです。
 ハイペリオンのバントック・シリーズは、ウェッグリンの絵が多く使われてます。

 この古代の詩を選択するところが、教養人としてのバントックの見識だと思いますが、英国語への訳詩は、ヘンリー・ウァルトンという人のもの。
それを、バントックの妻である、ヘレン・バントックが校正したもの、9作が選ばれてます。

ヘレンは、もとの名は、ヘレナ・フォン・シュヴァイツァーで、ドイツ系。
Helenaのaを取って、Helenとなりました。
彼女も、才人で、詩人であり、画家でもありました。
夫の作品にも詩を提供しております。

Bantock

 オーケストラによる10分の長い前奏曲のあと、その前奏曲にあらわれる旋律が、さまざまに登場する、9つの歌。

詩のタイトルと、その中身は、正直言って、対訳がないと、さっぱりで、難敵です。

 1.「Hymn To Aphrodite 」

 2.「I Loved Thee Once, Atthis, Long Ago」

 3.「Evening Song 」

 4.「Stand Face To Face, Friend」

 5.「The Moon Has Set」

 6.「Peerof Gods He Seems」

 7.「In A Dream, I Spake」

 8.「Bridal Song」

  9.「Muse Of The Golden Hrone」

これらのタイトルから、なんとなく、その詩の内容と、それに付したバントックの音楽を想像してみてください。

ときに劇的に、そして甘味かつ、官能的で、香り立つような芳しさと、優美さ、夢見心地の切なさ、優しさ・・・・・。

この音楽を聴いていると、こんな言葉が次々に浮かんできます。
すべてのエッセンスは、オーケストラによる前奏曲に集約されております。
1906年の作曲で、初演は、作曲者の指揮で、1911年。

この音盤を手にしてから、4年。
もう、何度聴いたことでしょうか。
すっかり、バントックのこの音楽が心と身体にしみついてしまいました。
なにかの拍子に、ふっと、浮かんでくる旋律たちのひとつともなりました。

透明感と、すっきり蒸留水タイプの英国歌手ならではの声質の、リバプール生まれのスーザン・ビックレーが、極めて素晴らしいです。
それを支える、美麗このうえない、ロイヤル・フィルとハンドレーの指揮でした。

余白には、この作品と音楽的にも関連づけられた、「Sappho Poem」が収録されてます。
こちらは、本作の雰囲気をそのままに、チェロの独奏付きのオーケストラ作品でして、ジュリアン・ロイド・ウェッバーが素敵に弾いておりました。

 過去記事


「ケルト交響曲 ハンドレー指揮」

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