ブリッジ 狂詩曲「春のはじまり」 グローヴス指揮
3月の終わりには、いきなり春がやってきて、4月に入ったら、冬のような気温に逆戻りして、しかも雨にみまわれました。
寒気が引いたあとは、爆発的にふたたび、春がやってきた。
花は再び開花し、虫たちも活発に、そして、フレッシュマンたちがあふれる街も、明るく活気がみなぎってきました!
今日は、英国の春の一面を描いた曲を。
日本よりも北に位置する英国は、冬が長く、暗い。
人々と、その自然は、冬をじっと耐え、春が来ると、曇り空が一気に晴れたかのような明るさに包まれるのです。
ブリッジ 狂詩曲「春のはじまり」
サー・チャールズ・グローヴズ指揮
ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニック管弦楽団
(1975.7.14 リヴァプール)
<フランク・ブリッジ(1879~1941)は、ロンドンの南、ブライトン生まれの作曲家・指揮者・ヴァイオリニストで、スタンフォードに師事し、室内楽、管弦楽作品を中心に、かなりの曲を残してますが、英国音楽が多く聴かれるようになった今も、ちょっと地味な存在かもです。
弟子筋に、かのブリテンがいて、「フランク・ブリッジの主題による変奏曲」を書いてますので、そちらで有名かもしれません。
後期ロマン派風の作風プラス、ディーリアスのような夢幻的なサウンドも併せ持つ一方で、魅力的な旋律に乏しい面もあって、ちょっと取っつきが悪いです。>
以上は、以前の記事、ブリッジの交響詩「夏」の記事から、そのまま転用しました。
簡潔ですが、まさにブリッジの人と、その音楽を表現しきれたものと思ってます。
師スタンフォードにならい、初期の作風は、ことにその室内楽作品などで、ブラームスや、フォーレなどの香りや雰囲気を感じさせます。
そして、そのブリッジの最充実期、47歳、1926年の作品が、今日の「春のはじまり」です。
生まれ故郷のブライトンの街は、イングランド南東部イースト・サセックス州にある海辺の都市。
いまは、海水浴客であふれる、英国きってのリゾート地でもあるようです。
イングランド南部の海岸線によくあるように、そこには、白い側壁を見せる切り立った崖地が多くあります。
そんな景色を、ブリッジは歩きながら、この曲のイメージとして取り入れたり、また、同市の丘陵地帯のなだらかな光景などにもインスパイアされたとされます。
約20分のラプソディですが、曲の前後は、春の力強いエネルギーにあふれていて、中間部が、鳥のさえずりも聴かれる、とても美しくも抒情的・内省的な場面です。
冒頭は、ミステリアスな感じで、春がうごめきつつも、組成していく雰囲気。
どこか、スクリャービンやシマノフスキのような響きにも感じてしまいます。
そう、もう、この頃のブリッジは、師のドイツロマンティック的な世界から、大きく踏み出し、独特の英国音楽における後期ロマン派的な音楽の世界へと到達していたのです。
それにしても、ここに描かれる(前後の場面)春は、じつにエネルギッシュで、眩しい。
日本の春は、ゆるやかで、うららかですから、音楽もそんな感じですよね。
ヨーロッパの春は、そうした面もありつつも、実にダイナミックな到来なのです。
グローヴスの伸びのびとした指揮に、リヴァプールpoのしなやかな音色。
21分かけて演奏してますが、もうひとつの愛聴盤、マリナーの演奏は、18分。
マリナーは、さりげなく、流れるように、春を迎えた感じですが、グローヴスは、待ちに待った感もありの、喜び爆発の演奏です。
音源は揃えにくい作曲家ですが、調べたらそこそこ持ってます。
また、ご案内できればと思います。
ブリッジの「春のはじまり」を、初夏に近づいた、どこか2度目の春のような陽気の晩に聴きました。
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