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2015年5月10日 (日)

モーツァルト 「コジ・ファン・トゥッテ」 ベーム指揮

Tomita_a

もう、ここ千葉では、とっくに見ごろを過ぎてしまいましたが、千葉市富田の都市農業交流センターです。

船橋から東金にかけて、徳川家康が造らせた鷹狩のための道筋。
御成街道(おなりかいどう)をずっと下った千葉市若葉区にある農業公園です。

Tomita_b

紫に、赤に白・・・・こうして細かな花がたくさん集積して、一色に。
マスとしての美しさと、ひと花、ひと花の可憐さ。

明るく、陽気もいい。

さぁ、モーツァルトでも。

Mozart_cosi

  モーツァルト  歌劇「コジ・ファン・トゥッテ」

      フィオルディリージ:グンドゥラ・ヤノヴィッツ 
      ドラベッラ:クリスタ・ルートヴィヒ
      フェルナンド:ルイジ・アルバ
      グリエルモ:ヘルマン・プライ
      ドン・アルフォンソ:ヴァルター・ベリー
      デスピーナ:オリヴェラ・ミリャコヴィチ

   カール・ベーム指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
                ウィーン国立歌劇場合唱団
             演出:ヴァーツラフ・カシュリーク

                         (1969年製作)


モーツァルトの名作オペラ、「コジ・ファン・トウッテ」。

1790年作曲の、ダ・ポンテとのコンビの生み出したブッファで、同じ、ダ・ポンテ3大オペラ(フィガロ、ドン・ジョヴァンニ)の中でも、際立つ個性は少なめながら、アンサンブル・オペラとして、形式上も、ドラマ仕立ても、そして歌手たちのあり方も、シンプルでシンメトリーな構成が美しく完結しております。
 そして、その音楽は、ギャラントで、ロココ調な美質と抒情を有しています。

そんな「コジ」のわたくしにとって理想ともいえる映像作品が、ベームの指揮により、映画版。

Cosi_1

 予算上も、演出上も、いまやなかなかありえない、オペラの映画化。
60~80年代前半ぐらいまでが数は少ないけれど、全盛だったように思います。
その代表が、今回のベーム盤。
カラヤンのカルメン、カヴァ・パリ、ラインゴールド、ベームのサロメ、アリアドネ、レヴァインのトラヴィアータ・・・、いくつも名作が残されました。

そして、自分にとって忘れられない憧れのツールが、かつて存在した、「クラシック・イン・ビデオ」という製品です。

Video_1 Video_2

ポニー・ビデオ(いまのポニー・キャニオン)が、ポニー・クラシックという法人を設立して、家庭向けビデオと、カラヤンを中心とするビデオ映像作品をパックにして販売しておりました。
71年頃だったと思いますが、当時の価格で、38万円!
いまでは、その何倍もの感覚の金員ですよ!
子供心に、欲しくてたまらなかったけれど、そんなもの、一般家庭では、高嶺の花。
毎日、憧れと、想像力ばかりが高まるばかりの少年でありました。

それが、いま、映像作品も簡単に手に入るし、はるかに鮮明で、かつ豊かなサウンドで、いとも簡単に、それらの作品が楽しめる世の中になりました。
ほんと、この分野も隔世の感ありありですね。

Bohm

 さて、モーツァルトのオペラでも、「コジ」をもっとも得意にし、愛したベームですから、その音源も、非正規もいれると、ほんと、たくさんあります。
ですが、代表作は、74年のザルツブルク・ライブと、62年のフィルハーモニアEMI盤、そして、この映像版ということになるでしょうか。

理想的な歌手の顔ぶれは、それぞれの全盛期で、ビジュアルも歌声も言うことナシ。
そして、オーケストラがウィーンフィルで、69年当時のこのウィーンならではの芳醇な音色といったらありません。

Wpo

序曲は、オペラ全体に共通する、白基調のロココ風邸宅が、スタジオ内にしつらえられ、そこに懐かしのウィーンフィルの面々が陣取って、高座にいつもの、ニコリともしないベーム。

コンサートマスターは、ウェラー。その横には、やたらと若いヒンク。
フルートには青年のようなトリップ。オーボエはトレチェクかな。
つくづく、この頃から、ベームやアバドとの来日の頃が、ウィーンフィルにとっても、自分にとっても、いい時代だったな、とつくづく思います。

 オペラ本編は、ゴージャスなリアル衣装に、シンプルだけど、写実的な舞台装置に、本物ばかりの小道具。
鮮明な映像で、それらが実に見ごたえあります。
まさに映画ならではのリアル・カットで、往年の歌手たちの若き日々も、アップに耐えうるものです。

場面の転換ごとに、インターバルがあって、字幕による簡単なト書きや、場面説明があって、オペラの流れが無味乾燥にならず、とてもいい効果をあげております。
 さらに、ときおり、シルエット影絵も挿入され、登場人物たちの心象や、よからぬ妄想(ちょっとエッチだったり・・・笑)をあらわしたりもしてますよ。

ユーモラスな仮面を装着した、背景人物たちも含め、主役の歌手たちの演技は、今風でないことは事実ですが、モーツァルトの音楽の懐の深さは、これこそが、ぴたりと符合するように、ことに、わたくしのような世代の人間には、そう思われます。
同時に、昨今の時代考証を自由に動かし、いろんな意味合いを込めた現代演出にも、モーツァルトの音楽は、しっかりと似合ってしまうところが、すごいところなのですね。

ベームの「コジ」に、必須の歌手。
ヤノヴィッツ、ルートヴィヒ、プライ、ベリーの4人は、もう完璧で、愉悦と軽やかさ、そして軽妙さに加えて、しっとりとしたモーツァルトの品位を歌いだしていて、文句なし。

Cosi_3

ことに、揺れ動く心を、そのクリスタルな美声でもって聴かせるヤノヴィッツは素晴らしいと思います。
 ルートヴィヒもそうですが、声の揺れが気になる、方もいらっしゃるでしょうが、後年のよりも、声はハリがあって若々しくていいですね。

もちろん甘い美声に、しっかりとしたフォルムを持ったルイジ・アルバのモーツァルトは、ロッシーニ以上にステキなものだし、セルビアの名花ミリャコヴィチの狂言回しも楽しいですよ。

Cosi_2

ほのぼのと、モーツァルトのよさ、ウィーンフィルの味わいのよさ、そして往年の耳にすっかり馴染んだ歌手たちのよさ。
そしてベームのオペラの素晴らしさを堪能した土日でした。

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コメント

またまたドエライ商品を見つけましたね^^;
確かに私たちの少年時代に動画を個人で所有して鑑賞することは夢でした。それにしても38万円とは!すごいよ。。。
果たしてこの機材を実際に購入した人物は存在するのだろうか?
無知を地でゆく私は(今も変わりませんが)ビデオ録画をしている時はTVの画像をつけなくていいのか、録画している時のTVの音量はどうするのか、疑問は尽きませんでした。今の小学生以下だったのです。
録画することは当時は全く不可能だったので、オーケストラの番組も巨人の星も1回だけの視聴でした。ですから家族全員、全力で「消える魔球」を見守りました^^
ああ昭和40年代。私には輝かしい時代です。何を見るのも聴くのも初めてで日本中がどきどきワクワクした時代。ようこそ38万円の商品の広告をみつけてくれました。当時の空気感をありありと思い出しました。今の便利に感謝します。

投稿: モナコ命 | 2015年5月12日 (火) 17時56分

モナコ命さん、こんにちは。
このカタログは、同時代の貴重なレコードパンフなどとともに、机のなかに秘蔵しております。
子供時代、毎日眺めてましたね。

ラジオ録音は、イヤホンジャックから接続を知らずに、テレビやラジオのスピーカーにマイクを近づけて、家族には音を立てるなと命じていた小学生でした(笑)
映像の録画など、夢のまた夢のような時代でしたね・・・

その憧れの映像作品「ベームのコジ」が、いとも簡単に、好きなときに、寝そべりながらでも再現できる・・・・これまた夢の実現でしょうか・・・・

投稿: yokochan | 2015年5月15日 (金) 08時55分

yokochanさん
 いやあ、誠に昔懐かしい「オープンリール」!、ホントに久しぶりに見ましたよ!
 1971年で38万円?、当時月給として38万円とってた人は、サラリーマンにはどれくらいいたんでしょうかね。ボーナスが38万円でも多かったはずですから。
 「コジ・ファン・トウッテ」は去年ベルリン・ドイツ・オペラで観ましたが、ワーグナーなどとは違って、あまり壊されてなくて良かったです。衣装や舞台も現代オフィスではなかったし、筋も壊されていませんでした。ただ、yokochanさんのこのDVDは、歌手陣が流石ですね。もう今はこういうクラスを揃えるのは不可能ですね。これなら本当に楽しめると思います。お宝ですね。

投稿: 安倍禮爾 | 2015年5月17日 (日) 11時22分

安倍禮爾さん、こんにちは。
いかにも昔の家電って感じの角ばった装置ですね。
でもきっと、あのぶっといビデオは、いまでも通用するくらいに、画質も音もいいのでしょう。
 ともかく、映像でオペラやベーム、カラヤンが自宅で観れるという、夢のような仕掛けでした。

この安心安全のコジ。
もう二度と味わうことのできない、理想郷です。
新しい演出も、ときには刺激的でいいのですが、わたしには、やはり、この世界でしょうか・・・

投稿: yokochan | 2015年5月21日 (木) 20時29分

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