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2015年6月16日 (火)

サン=サーンス 交響曲第3番「オルガン付き」 ロト指揮

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梅雨来たれども、首都圏は、中休み多し。

そして、雨でも、晴れでも、曇りでも、気温は高く、湿気が多い。
しかし、スポット的な豪雨や、九州の大雨は心配です。

 花々の咲きごろを、人間がコントロールしてしまう商業用のお花屋さんですが、野辺の花々は、あくまで、異常気象といえども、自然のままにあって欲しいもの。

音楽の演奏スタイルも、ゆっくりとですが、変化しつつあり、そして、それはそのまま多様化へとつながってます。
 そして聴き手も、さまざまなあり方で、受容の多様化を生んでますね。

楽器の仕組みそのものの問題は置いておいて、いまや、世界のオーケストラは、指揮者の要望に応じて、好むと好まざるをえずして、ピリオド奏法・ヴィブラート少なめの演奏スタイルを供出しなくてはなりません。
 それが、指揮者によっては、虚しい結果を呼ぶことともなりますが、いまや、ルネサンス・バロックを指揮する人が、同じコンサートのなかで、古楽ジャンルの音楽とともに、近現代音楽を普通に取り上げる、そんな世の中になってきたのです。

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  サン=サーンス 交響曲第3番 ハ短調 op78 「オルガン付き」

    フランソワ=クサヴィエ・ロト 指揮 レ・シエクル

              オルガン:ダニエール・ロト

             (2010.5.16@サン・シュルピース教会、パリ)


先日に、愛する神奈川フィルの圧倒的だけど、繊細かつ自在な演奏で、この曲を楽しみました。

オルガンが堂々と入ることで、この交響曲は、華々しい演奏効果を生み出す、コンサートの人気プログラムのひとつとなりましたね。

レコードでも、80年代のデジタル移行後は、各社が、こぞって、この曲を録音しましたが、それは、デジタル録音の恩恵で、重厚なオルガンと、軽やかなピアノ連弾、分厚いオーケストラが混濁せずに、すっきり・きれいに再生できるという強みが生まれたためでした。

でもしかし、わたくしは、入門時代にメータの豪華な演奏を経てからというもの、ずっとずっと、遠ざかっていて、ちょっと苦手な存在として、距離を置いてきたのです。
 大きな音響に、華美なまでの賑やかさは、聴いていて心すく快感と、解放感を呼び覚ましますが、はて、それでいいのか、そこに何があったのかと、疑念を抱くようになりました。

そんななかで、昨年、久しぶりに手にした新しい録音が、ロト指揮によるものです。
とはいっても、いまから5年前のものですが・・・

まだ45歳のロトさんは、生粋のパリっ子で、手兵のハイブリット・オーケストラである、レ・シエクルを創設してから12年。
ブールやギーレン、カンブルランの南西ドイツ放送響の指揮者を請け負ったことからわかるように、現代・前衛音楽にも、その適性を示すヒトでありました。
 そのバーデン・バーデン&フライブルクの放送響は、2016年には、シュトットガルトのオーケストラと統合されることが発表されていて、とても寂しい思いを呼び覚ましてます。
 で、その統合後のオケの指揮者は、ロトさんということになるのでしょうか。

そんな、登り調子のロトさん。
N響に続いて、読響にも客演しますね。

ロトさんと、彼のフランスのハイブリット古楽集団、レ・シエクルによる、サン=サーンス。

これが予想外に、渋くて落ち着いた演奏でした。
古楽器による演奏ですから、ピッチも低めに抑えられ、華やかさは抑制されて聴こえます。
 初めて聴いたとき、大人しめに聴こえ、面白みも薄く感じました。
でも、何度も繰り返し聴き、そしてロト指揮によるほかの演奏を、新しいものから逆に聴きだした自分、そんな耳からすると、新鮮な味わいが、このサン=サーンスの、そこかしこに発見できるのでした。

幻想やハルサイにおける斬新な切り口は、控えつつ、ロトさんの指揮は、各旋律を丹念に、じっくりと扱い、そして、敏感なリズム感でもって、従来の演奏とは異なるダイナミズムと柔軟性、そしてピリオド奏法なのに、歌心を持った演奏が出来上がりました。
 その緩徐楽章では、弦楽器が繊細に、古楽奏法らしく、ツィー、ツィーっと、弾きますが、それがときに、共感を込めて、ほどよいヴィブラートも加味して奏されるシーンは、本当に美しく、儚いです。

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この録音は、17世紀前半に建てられたパリのサン・シュルピース教会でのライブ録音で、そちらのカヴァイエ=コル作のオルガンが、そのまま演奏されてます。
このオルガンは、1862年の製造で、サン=サーンスがこの曲を完成したのが、1886年ですから、きっと作者存命中に演奏されたこともあったかもしれません。
 ともかく、豪快な音色で、教会の広い空間が圧倒的にオルガンの音色で満たされるのを感じることができます。
コンサートホールのオルガンと、教会のオルガンとの違いは、この天に突き抜けるかのような広大な空間を感じることでしょう。

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軽やかさや、音色の美しさも持ちつつ、オルガンの凄まじさに引っ張られ、このロト盤は、教会という格別な場所の強みを味わうことができる、面白い演奏となってます。
ハルサイで、小股の切れあがったような演奏をしたかと思うと、こうした壮麗な演奏も、こともなげに成し遂げるロトさん、やはりただモノではありません。

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コメント

何故か食べ物の方に先に行ってしまいましたm(_ _)m
昼食前だったからでしょうか・・・
ともかく、本館に辿り着きましたが、私は千葉(船橋)育ち、今は神奈川県民なので管理人さんとは逆ですね。

クラシックに限らず、ハードコアからパンクから人が降ってくるROCK系のコンサートに行ったり、あとは両親が日本民謡を長くやっていたため勝手に覚えてしまったそちら系の濃いもの。叔父が好きだったタンゴetc...
基本雑食ですが、初めて買ったレコードがバレエを習っていたのでベタなカラヤン指揮の「白鳥の湖」そして、何故か「ハチャトゥリアンのヴァイオリン協奏曲」(ハチャトゥリアン指揮:ヴァイオリンはオイストラフ)。小学4年の時の事です。
クラシック、今になってからどこから手を付けていいものやら迷路に入り組んでいるような気がします。
こちらの記事がとても素晴らしかったので、自分へのご褒美の時に参考にさせていただかせてよろしいでしょうか。
ちょっとした宝箱を見つけた気分です。

つい、長々と失礼いたしました。

投稿: mimi-neko | 2015年6月17日 (水) 23時12分

久しぶりにトラックバックという機能を使ってみました。すいません。
ところで、この曲を教会のオルガンでと言うのは魅力的な話で、おっしゃるようにコンサートホールにあるオルガンとはひと味響きが違いますね。私が持っているものではカラヤンとかメータの古いのとか、教会でとったものを重ねるのはよくありますが、やはり雰囲気がいいです。オーケストラの録音まで教会で一発録りしたのはオーマンディーの最晩年のしか私は持っていませんが、これはオルガンの響きとオーケストラの響きの自然な絡み合いがなかなかです。
この曲のイメージが変わったのが、横浜フィルというアマオケの演奏会だったのですが、厳かで敬虔なまるでミサのような演奏で、あの311の後という事もあり、この曲の宗教的な意味を強く感じてしまいました。

ところで、今回初めて神奈川フィルの演奏会のパンフレットを見ましたが、曲目解説が随分充実しましたね。2,3年前、かつてとは大違い。お勉強、まねされましたかね。

投稿: yurikamome122 | 2015年6月18日 (木) 05時47分

mimi-nekoさん、こんにちは。
ご覧いただき、そしてコメントまで頂戴いたしまして、ありがとうございます。

別館の方は、われながら、よくよく見たら、かれこれ1年も更新してませんでした。
ネタはないわけではありませんが、少しばかりサボってしまいました。
そちらも折りをみて手を入れたいと思ってます。

さて、いろんな音楽をお楽しみですね。
わたくしも、これまで、いろんなジャンルの音楽に親しんできましたが、歳を経るにしたがい、ほぼクラシック1本と、あとは、大好きな歌い手さんの歌だけに、収斂されてまいりました。
 しかし、小4で、ハチャトリアンのヴァイオリン協奏曲とはまた、マニアックなところにいかれましたね。

わたくしは、いわゆるヲタクと呼ばれる存在になってますが、気がつくと、いつも同じようなものを繰り返し聴いているような気がいたします。
そして、ネットでFMや海外のラジオを垂れ流していて、ふっと気にいった曲を見つけては、つきつめてしまうという、探究心もあったりします。
 
お誉めいただき、こそばい思いでいっぱいですが、なにかの手引きになれば、幸いに存じます。
どうぞ、よろしくお願いいたします。

投稿: yokochan | 2015年6月18日 (木) 21時39分

yurikamomeさん、こんにちは。
TBもありがとうございました。

教会での演奏・録音。
オーマンディの確かデロスというレーベルでしたか、あちらも、そうなのですね。RCA盤は持ってますが、このコンビにそぐわない落ち着いた演奏に記憶しますから、きっといい雰囲気の演奏になっているのでしょうね。

わたくしも、この前の神奈川フィルの演奏での第2楽章に、ホロリとしてしまい、こちらのロト盤でも、同じような感銘を受けました。
サン=サーンスの音楽は、他曲でもそうですが、静かな抒情性に、味わいを見つけるようになりました。

今シーズンから、パンフレットの内容がおっしゃるように変わり、解説の執筆も、一般的な曲目解説から、大きなくくりへと変化しましたね。
我が方も、筆に力が入りますね!

投稿: yokochan | 2015年6月18日 (木) 21時49分

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» ムッシュ・ジョルジュのサン=サーンスの交響曲第3番と、この曲の周辺 [みなと横浜、音楽・オーディオ三昧]
 サン=サーンスのオルガン交響曲と言えば、しゃれたセンスの響きに満ちて、大編成の快感を感じることができる曲として人気曲。  でも結構録音というと厳しいものがあると思う。演奏のショウピースとしては、最晩年のオーマンディーやバレンボイムあたりが個人的には好きだし、フランス風のしゃれた洗練ではムッシュ・ジョルジュのパリ・コンセルバトワールの演奏はやはり捨てがたい。  響きが交錯して、それが陰影をもち、そのコントラストと色彩の多彩さ。それでいてどこか洒落たセンスが香水のように漂う。当時のコンセルバトワー... [続きを読む]

受信: 2015年6月18日 (木) 05時39分

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