ディーリアス 去りゆくつばめ デル・マー指揮
8月も終わり。
お盆を境に、夏の力は急速に弱まって、熱帯夜もなくなりました。
あんなに、暑い暑いと連呼していたのに、ずっと曇り空や、そこから落ちてくる、弱い雨の日々ばかりで、この月は終了。
残暑のない夏なんて・・・・。
セミたちや、夏の虫たちも可哀そう。
今日は、秋を先取りした小さな音楽を。
ディーリアス 去りゆくつばめ
~Late Swallows~
ノーマン・デル・マー指揮 ボーンマス・シンフォニエッタ
(1975 ボーンマス)
ディーリアス(1862~1934)ほど、季節の移り変わりの機微を、その自然の描写にのせて、静かに優しく我々に語りかけてくれる作曲家はいません。
そして、四季が明確にある日本の風景や事象、そして、われわれの心情にぴたりとくるんです。
「去りゆくつばめ」とは、また、なんて素敵で、そして、儚いタイトルなんでしょう。
邦訳がともかく美しい。
フランスのパリ近郊の小村、グレ=シュール=ロワンを永久の住みかとしていたディーリアスとイェルカ夫人。
しかし、第一次大戦の影響で、イギリスに一時的に帰らざるをえなくなった頃に書かれていた、弦楽四重奏曲の緩徐楽章が、この「去りゆくつばめ」です。
その四重奏曲は、1916~7年の作品ですが、1962年に、ディーリアスの晩年、献身的にその補佐をつとめたエリック・フェンビーによって、弦楽オーケストラ用に編曲され、単独の小品として残ることになりました。
弦楽四重奏の原曲の楽章に、ディーリアスは、Late Sawllowsと、確かに命名してます。
10分たらずの静かな音楽。
旋律的な要素は少なく、各セクションが上下するモティーフを儚げに繰り返すのみ。
夏に行って欲しくない、もう少し季節がとどまって、あの煌めきを味わっていたい・・・・、
そんな心情が見事に反映されたかのような、後ろ髪引かれる、ちょっと寂しい音楽。
夏は去り、秋が静かに訪れる風情を感じます。
ディーリアスは、グレの邸宅を去るときに、つばめたちと別れるのが辛いと、夫人にもらしたそうであります。。
隠れたる名指揮者、ノーマン・デル・マーのディーリアス小品集は、瀟洒で、全体が静かなつぶやきや囁きに満ちた桂曲・桂演揃いです。
過去記事
「去りゆくつばめ バルビローリ指揮」
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