神奈川フィルハーモニー第314回定期演奏会 サッシャ・ゲッツェル指揮
横浜、みなとみらい地区は、今年も華やかなイルミネーションに彩どられる季節となりました。
そして、それに相応しい、ステキで煌びやかなコルンゴルト・サウンドを堪能できました。
ブラームス ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調 op83
ピアノ:ゲルハルト・オピッツ
コルンゴルト シンフォニエッタ op5
J・シュトラウス ポルカ「雷鳴と電光」 ~ アンコール
サッシャ・ゲッツェル指揮 神奈川フィルハーモニー管弦楽団
(2015.11.27 @みなとみらいホール)
今シーズン、もっとも楽しみにしていた演奏会のひとつ。
そう、ワタクシは、コルンゴルト・ファンなのであります。
忙しいせいもありますが、この1ヶ月ぐらい、コルンゴルトの音楽以外は聴いてません。
ですから、オピッツという日本贔屓の世界的大家をソリストに迎えるという豪華なブラームスのことは、あんまり眼中になかったという不届きものです・・・・。
ブラームスの2番の協奏曲。
この大曲は、レコード時代からすり減るほどに聴いてきたけれど、演奏会で聴くと、何故か、いつも虚ろに聴いてしまい、途中から覚醒するということが多い。
実は、今回もそうなってしまった。
おまけに、オーケストラがどうもいつもの冴えがなかったように思いましたし、ちょっとした乱れもありました。
大好きな神奈川フィルに対し、ちょっと辛口の評価です。
そんな流れに、ピリッと引き締めが入ったのが、3楽章のチェロ・ソロでした。
ピアノに隠れてしまって、そのお姿が見えませんが、その優しいけれど、しっかりした語り口のチェロの音色は、山本さんと、すぐにわかります。
そう、ここから、わたくしも音楽に集中できたし、演奏もキリッと締ったような思いがしました。
実は、以前聴いた、ポリーニとアバド&ルツェルンの同曲の演奏会でも、前半は冴えず、しかも、あのポリーニがミスを連発するなどでしたが、3楽章でのブルネロのチェロがすべてを救い、その後は迫真の名演となりました。
そもそも、この曲が難しい存在なのでしょうか・・・。
それと、ゲッツェルさんの指揮が、ちょっと飛ばしすぎた場面もあるかもです。
このコンビの適性は、コルンゴルトや、マーラー、シュトラウスあたりにあるのかもしれません。
オーケストラのことが先行しましたが、しかし、オピッツさんのピアノは、抜群の安定感がありました。
まったくぶれがなく、滑らかかつ力強く、でも音には透明感すら漂う無為の域に達した凄さを感じました。
丸みと、強固さ、ともにブラームスに相応しい音色。
お姿どおりのピアノでした。
そして、いつも思うのは、サンタさんみたいだし、シュークリームのオジさんみたいだと(笑)
さて、後半のコルンゴルト。
神奈川フィル応援のFBページに書きましたが、そこから一部転載します。
神奈川フィルでコルンゴルトを聴くのは、これで4回目。
2014年10月 ヴァイオリン協奏曲 (1945)
2015年 1月 チェロ協奏曲 (1946)
〃 「シュトラウシアーナ」 (1953)
2015年11月 シンフォニエッタ (1913)
ヴァイオリン協奏曲以外は、ゲッツェルさんの指揮。
作曲年代をみてわかるとおり、これまでの3曲は、いずれも、ナチスの台頭により、コルンゴルトがヨーロッパを去り、アメリカに渡り、映画音楽の世界で活躍し、戦後ふたたび、本格クラシックのジャンルの作品に回帰した時期のもの。
そして、それより遡ること3~40年。
今回の「シンフォニエッタ」は、神童と呼ばれ、ウィーンの寵児としてもてはやされた時期、コルンゴルト16歳のときの音楽なのです。
このように、横断的にコルンゴルトの音楽を1年間で楽しめたことに、まず感謝したいです。
複数の音源で、徹底的に聴きこんで挑んだだけあって、大好きなコルンゴルトに思いきり浸ることができました。
冒頭の「陽気な心のモティーフ」が、4つの楽章それぞれに、いろいろと姿・表情を変えてあらわれるのが、これほど明快にわかったのは、やはりライブで、演奏者を見ながら聴くことによる恩恵でありました。
キラキラのコルンゴルトの音楽を、神奈フィルの奏者の皆さんが、楽しそうに、そして気持ちよく演奏しているのもよくわかりました。
そしてゲッツェルさんも、この曲を完璧に把握して、いつもながら縦横無尽の指揮ぶり。
それはもう、音楽が楽しくて仕方がない、といった具合でした。
オーケストラから、もっともっとと、音楽をどんどん引き出す、そんな積極果敢の指揮。
この積極的音楽がゲッツェルさんの魅力です。
それが、われわれ聴衆にズバズバと伝わるわけです。
優しく羽毛のような軽やかさも楽しめた第1楽章。
強靱な響きと、文字通り夢見るような中間部の対比をダイナミックに描いた第2楽章。
そして、神奈川フィルならではの繊細さと、音色の美しさを堪能できた魅惑の第3楽章。
この楽章は、わたくし、大好きなんです。
イングリッシュホルンが素敵だったし、第1ヴァイオリンがボーイングを変えて弾く場面も興味深く拝見しました。
不安と狂喜の交差する、ちょっとややこしい終楽章も、ゲッツェルさんは、しっかりと整理しながら、大いなるクライマックスを築き、華麗なるエンディングとなりました。
軽くひと声、ブラボ進呈しました。
屈託ない若いコルンゴルトの音楽ですが、後年は辛酸をなめ、郷愁をにじませ、その音楽は、ほろ苦さを加えてゆくのでした。
今宵は、甘味で、とろけるような、ウィーンのお菓子をたっぷりといただきました。
ゲッツェル&神奈川フィル、最高っ
アンコールは、ウィーンっ子大爆発。
自分的には、コルンゴルトのあとに、ウィーンものを持ってくるんだったら、もうちょっとおとなしめのポルカやマズルカを所望したかったけど、聴衆は沸きにに沸きましたね
縦横無尽・上下左右の軽やかなゲッツェルさんの指揮姿は、かのカルロス・クライバーを彷彿とさせました。
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コメント
本当は聴きにいきたかったのですが、23日に川崎にいったばかり)で、さすがに仕事のローテーションは崩せませなんだ・・・。
スコアを眺めると、本当にシェーンベルクの「グレの歌」そっくりで、分裂派の美学そのもの。きっと「蕩ける」ような音楽が鳴っていたのでしょうねぇ。それに神奈フィル独特の美音-。ウラヤマシイ!
投稿: IANIS | 2015年11月28日 (土) 20時55分
IANISさん、まいどです。
ほんと、まさに「とろける」音楽に、美演でした。
グレの歌の冒頭、それから甘味な間奏曲、あんな感じを思い起こしますね。
あとは、大「交響曲」が聴きたいです!
投稿: yokochan | 2015年12月 5日 (土) 10時47分