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2015年12月

2015年12月31日 (木)

R・シュトラウス 4つの最後の歌 メルベート

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六本木ヒルズのこの冬の夜景。

そして、今年もあっというまに過ぎ去ろうとしてます。

毎年の大晦日、恒例のシュトラウスの作品を聴くことになりました。

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今年後半は、ブログ更新も滞りぎみで、自分でも、音楽を聴く余裕のない日々に、気分が塞ぎ、ままならぬことに、焦りを覚えるほどでした。

おまけに、最近は、かつての映画熱が蘇ってしまい、劇場での映画鑑賞に、不満不安を解消するすべを見いだしたりもしましたよ。

実は、わたくし、学生時代は、かなり映画を観てまして、ちょうど、ロッキーとか、スターウォーズの封切りの頃ですよ。
 そして、今年、そのロッキーの新世代版「クリード」が封切され、さらに、「スターウォーズ」もあらたな物語がスタート。
 なにかの因縁でしょうか、今年から、音楽に加え、映画生活も再スタートです。

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ろくなことのなかった、わたくしにとっての今年。

踏ん切りをつけて、2016年は、新たな気持ちで頑張りたいものです。

そんな思いを込めて、シュトラウスのこの曲をしみじみと聴きます。

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   R・シュトラウス  4つの最後の歌

        S:リカルダ・メルベート

   ミヒャエル・ハラース指揮 ヴァイマール・シュターツカペレ

                      (2006 @ヴァイマール)




   1.「春」(ヘッセ)

   2.「9月」(ヘッセ)

   3.「眠りにつくとき」(ヘッセ)

   4.「夕映えに」(アイヒェンドルフ)


もう、何度も書き尽しましたので、この曲に関してはここで触れることはいたしません。

ともかく、澄み切った境地と、しかしながら清朗で、若々しささえ感じるシュトラウスの筆致は、老いてなお、前を見据えたものに感じます。

詩の内容は、晩節の想いにありますが、シュトラウスは、まだまだ生き続ける意欲を持ち続けていたのでした。


    「休息にあこがれる

       そして、おもむろに つかれた目を閉じる」  

                         (9月)


    「はるかな、静かな、平安よ

       かくも深く夕映えのなかに

       私たちはなんとさすらいに疲れたことだろう

       これがあるいは死なのだろうか」

                        (夕映えに)


メルベートは、わたしの好きなワーグナーとシュトラウス歌いです。

バイロイトでは、ゼンタ、エリーザベト、グートルーネ、フライアなどを歌ってまして、新国では、彼女のエリーザベトに接することができました。
 個性的ではないけれど、その清潔で、端正な歌い口がとても好ましく、独語の美しさも味わうことのできる歌唱です。

加えて、オーケストラがとても雰囲気がよろしくて、ヴァイオリンソロをはじめとして、各奏者の腕もなかなかです。
余白には、アリアドネからオーケストラ作品も収録されていて、オペラのオーケストラとしての力量の確かさも確認できます。

さて、年が変わって、新しいカレンダーの表紙をめくるまで、あと数時間。

このへんで、今年は筆を置きましょう。

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2015年12月26日 (土)

ヘンデル 「メサイア」 オーマンディ指揮

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東京駅丸の内口の商業施設KITTE。

毎冬恒例のWHITE KITTE。

色が変化して、四季を演出。

きれいなものです。

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春夏秋冬を想って並べてみました。

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  ヘンデル  オラトリオ「メサイア」

    S:アイリーン・ファーレル    A:マーサ・リプトン

    T:デイヴィス・カニングハイム B:ウィリアム・ワーフィールド

   ユージン・オーマンディ指揮  フィラデルフィア管弦楽団
                      モルモン・タバナクル合唱団
              合唱指揮:リチャード・P・コンディ
              トランペット:ギルバート・ジョンソン

                      (1958,59 @フィラデルフィア)


ヘンデルの「メサイア」は、なにも、クリスマス・シーズンだけの音楽じゃない。

日本では、この時期に演奏され、聴かれることが多いけれど。

しかし、メサイア・救世主・イエス・キリストの生誕と、その栄光と、死と、その復活を描いた、このヘンデル作品は、思えば、聖書の物語をこと急ぎ過ぎ。

でも、2時間半ぐらいの物語に、イエスの生涯を凝縮しようとしたら、こんな感じになるのでしょうね。
オラトリオというカテゴリーにおいては、オペラと声楽曲の間に位置する、宗教的な作品ということになるのですから、宗教的に疎い日本人には、本来、なかなか取りつきにくいジャンルなのですね。

しかし、そこは、ヘンデル。
しかも、英語の原曲だし、高名なる「ハレルヤ」があるのですから、晴れの日好き、クリスマスのキラキラ好きな日本人には、大いに受けるわけです。

英語圏の国々には、等しく浸透していますね。
英国とアメリカ。そして、クリスマス好きの日本。
ドイツ語圏では、独語バージョンや、モーツァルト編があるにしても、どうでしょうかね。
まして、フランス、イタリア、ラテン系の国々では、この作品、あんまり聴かれないのではないでしょうか。

 アメリカの文化にあこがれた子供時代。

テレビでは、奥さまは魔女とか、ディズニーランド、ルーシーショーなどが土日に放映され、子供心に、アメリカの先進性に、すっかり心を奪われたものでした。
 その思いは、いまも基本で引きずっていると思います。
クリスマス時期における振る舞いとか、アメリカ発の風物への妄信などなどね・・・

 それと音楽では、クラシック音楽に目覚めた時期に、当時、二分してた流れが、カラヤンとバーンスタイン。
すなわち、ヨーロッパ本流と、アメリカ勢力との対抗軸。
DG・EMIとCBS・RCAですよ。
湯水のように毎月、発売される、ヨーロッパ発とアメリカ発のレコードは、いまでは信じがたいほどに勢いがありました。

そんななかの思いでの「メサイア」といえば、オーマンディ盤。

中学1年のことでしたか。
クリスマスも近い頃に、FMで聴いた「メサイア」は、もしかしたらリヒターの旧盤、すなわち独語バージョンによるものだったと思います。
ハイドンより前の、バロック音楽をほとんど聴いていなかったワタクシには、実に新鮮に響いたヘンデルのこの曲。
 すぐさま、レコードが欲しくなり、調べましたが、ほとんどが3枚組で高額なものばかり。
ところが、CBSソニーが出していた、ダブルシリーズというものがあって、主に、オーマンディの指揮による演奏が、2枚組で、2500円という破格値で、そのシリーズに、この「メサイア」があったのです。
 クリスマスプレゼントとして、父親に銀座のヤマハで買ってきてもらって、それこそ毎日、すり減るほどに聴きまくったのでした。

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 安い装置でも、実によく鳴るし、子供心にも、豪華な演奏であることがわかりました。
あと、合唱も歌手も、アメリカっぽくて、ドイツ系の歌唱とはかなり異なることも。
でも、ともかく、この演奏がとても気に入りました。
そして、お気に入りの番号を抜き出しながら聴くようにも。

①前奏曲→Comfort me 、Every valley テノール→And the glory 合唱→And he shall purify 合唱→Behold a virjin アルト・合唱→For unto us a Child is born 合唱→パストラル→He shall feed his flock アルト→His yoke is easy 合唱→②He was despised アルト→And with his stripes 合唱→All we like sheep 合唱→Thou Shalt break テノール→Halleuja 合唱→③I know that mey redeemer ソプラノ→The trumpet shall sound バス→Worthy is the Lamb 合唱

こんな感じの流れで自分なりの抜粋で。

 そして、今年、CD化された当盤を米アマゾンにて見つけて購入。
数十年ぶりに聴く、オーメンディの「メサイア」。
大昔のあの感覚がよみがえった。

ゴージャスなフィラデルフィア・サウンドはそのままに、一方で、大らかでありながらも、オーソドックスな解釈で、意外なまでの落ち着きを感じました。
CD化されて、少しキンキンしてた響きが抑制されたからでしょうか。
とても美しいオーケストラです。
それと、レコードでは、耳に突き刺さるように突出していた、トランペットソロが、実はとんでもなく名人芸で、とても音楽的なこともわかった。さすがに名の知れた名手。

あと、合唱がちょっと荒っぽいのと、怪しいのとが紛れ込んでる感があります。
レコード時代には気にならなかった、声の揺れや、ヴィブラートが独唱陣に感じるのも、時代の流れのなかで、自分の受け止めや、耳が変化してきたからなのでしょう。
 それでも、二人の女声陣は、とても聴き応えのある歌いぶりです。

懐かしさとともに、年齢の積み重ねを、しみじみと感じることとなった、オーマンディの「メサイア」でした。

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2015年12月23日 (水)

コルンゴルト 6つの素朴な歌

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恵比寿ガーデンプレイスの豪奢なツリー。

じゅうぶん大人のワタクシでも、夢の面持ちになってしまいます。

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     コルンゴルト  6つの素朴な歌 op9

        バリトン:スティーヴン・キンブロー

 

        ピアノ :ダルトン・ボールドウィン

1916年に出版された、早熟のコルンゴルト、14歳から19歳にかけての歌曲集。
それぞれに、短いけれど、歳を追うごとにその作風が充実していくことがわかる作品集。

  1.「まつゆき草」     詩:アイヒェンドルフ

  2.「夜のさまよい人」       〃

  3.「セレナード」          〃

  4.「愛の手紙」      詩:ホーノルト

  5.「庭園の英雄の墓」  詩:キッパー

  6.「夏」           詩:トレビッチ


アイヒェンドルフの詩による最初の3つの作品は、1911年(14歳)。
「愛の手紙」が、1913年(16歳)。
残りのふたつの歌が、1916年(19歳)。

この中で、一番有名なのが、1曲目の「まつゆき草」。
春の初め、まつゆき草は楚々と咲くけれど、まだ残る雪に覆われ、萎れてしまう。
そんな様子を歌を読む詩人に例える。

そんなロマンティックな内容に、早熟のコルンゴルトは、ドイツロマン主義の延長線に立脚しながら、彼ならではの甘味なる旋律をつけました。
ほんとにステキな歌です。

ダイナミックなピアノ伴奏が引き立つ2曲目は、不気味な雰囲気も。
転じて明るいセレナードは、心弾む思いを。
2年後の「愛の手紙」では、あなただけど思い、愛します、と切々と歌い、シュトラウスやウォルフの歌曲の流れを感じさせ、シンプルな表情も好ましい。

そして、19歳の作である2曲は、CD解説にも書いてありますが、すでに2つのオペラを書きあげたあとだけに、ピアノの伴奏もスケールを増していて、歌の方もドラマティックだし、表現の幅、言葉と音との融合も格段に優れている。

音楽の才能とともに、恋多き青春時代を送ったコルンゴルト。
これらの美しい歌曲たちも、そんな恋に後押しされながら書いたのかもしれませんね。

のちに、オーケストレーションも施され、さらにロマンティックに仕立てられました。
B・ヘンドリックスの歌で、一部聴くことができます。

キンブローの誠実な歌いぶりは文句ありませんし、名手ボールドウィンのピアノも素晴らしいものでした。
女声では、ピエチョンカの歌曲全集が出ているので、いずれ聴いてみたいと思ってます。

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クリスマスまで、もうすぐ。

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2015年12月18日 (金)

コルンゴルト 「ヘリアーネの奇蹟」から間奏曲

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丸の内、中通りの恒例のイルミネーション。

今年は、枝ぶりがよくないのか、少しさびしい感じなのと、大規模なビル建て替え工事が、通りの中ほどで行われているので、そこでイルミネーションも途切れたりしてましたね。

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毎年、この時期には、ワクワクしながら、イルミネーション巡りをしていますが、この冬は、ちょっと気分が乗らない。
 いろんな意味で不調が重なっていて、気持ちも虚ろになりがち。
でもキレイなものには癒されますな。
音楽も同じで、音楽を聴く時間が極度に減ってきているし、オペラも聴いたり観劇したりする時間や集中力も不足しがちながら、いざ、少しの間に聴いたら聴いたで、ワタクシの心はすぐさま復調するのです。
 ともかく美しいものは好き。

それと、最近はかつての映画好きの熱が再来してまして、このところ良く観てますよ。
音楽の時間が、そっちへ移動してる、ともいえよう。

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 コルンゴルト 歌劇「ヘリアーネの奇蹟」~間奏曲

   カスパール・リヒター指揮 リンツ・ブルックナー管弦楽団

                     (1999.3 @リンツ、ブルックナーハウス)


今回も、コルンゴルト。
いまだ取り上げてないあと1作品の、オペラ「ヘリアーネの奇蹟」。

全曲は、CD3枚の大作で、ドラマの内容もややこしい。
けれども、その音楽は、超がつくほどに美しく、そしてカッコよく、オーケストラの鳴りっぷりも、歌も全部立派なもの。
年内には、記事をあげようかと思ってましたが、無理っぽいので、この大作のなかから、魅惑的なまでに美しい間奏曲を。

「喜ぶことを禁じた国の暴君。そこへ、喜びや愛を説く異邦人がやってくるが、お縄になってしまい、さらに絶世の美女、王妃のヘリアーネとの不義を疑われ自決。
その異邦人を清純の潔白として、甦えさせろと無理難題の暴君。
本当は愛していたことを告白し、異邦人の亡きがらに立ちあがることを念じるが、反応せず、怒れる民衆は彼女を襲おうとする・・・・、そのとき、奇蹟が起こり、異邦人が立ちあがり、暴君を追放し、民衆に喜びや希望を与え、愛する二人は昇天する。。。。」

全曲の記事で、もう少し上手く書ければと思いますが、なかなかに面倒なドラマ内容です。

このオペラで一番有名なアリアが、第2幕のヘリアーネの「Ich ging zu ihm」という歌で、これがともかくふるい付きたくなるほどに素晴らしい。
フレミングが、この曲をよく歌っているので、お聴きになられた方も多いと思います。

それと、その旋律を一部使いながら、全曲を暗示するような流れを持つ間奏曲も絶品なんです。
8分半の長い間奏ですが、緊迫したオペラの中ほど、すなわち第3幕の幕開けにあって、曲のイメージとしては、「カヴァレリア・ルスティカーナ」や、「パリアッチ」の間奏曲のように、甘く、切なく、そして歌心に満ち、さらに清らかさも備えております。
思えば、このオペラ、ヴェリスモ的です。
 このオペラのエッセンスを味わうには、この8分半を、時間のない時には聴くことにしてます。
コンサート・ピースとしても、劇的であり、静謐でもありますので、充分に取り上げられてよい作品かと思いますね。

リンツにあるブルックナーオケの、とびきり美しい演奏で。
モウチェリーの全曲盤における演奏は、全体の流れのなかで存在しているような演奏の在り方ですが、こちらは、これ1曲に全霊を尽したかのような充実の演奏となっております。

1927年、コルンゴルト、30歳のときのオペラ。
同年、ウィーン国立歌劇場でシャルクの指揮により初演されるものの、芳しい評価は得られず、どちらかというと、失敗作との判断を受けることとなってしまった。。。。
ドイツ・オーストリアは、もうすでにきな臭い状況になってきていて、コルンゴルトのヨーロッパでの活動も、あと少しとなっていくのでした。

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2015年12月 4日 (金)

コルンゴルト 「雪だるま」 ウーリー

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鮮やかな色合いで変化する大観覧車「コスモクロック21」。

ちょうど、ブルーな感じのときに撮れましたよ。

前にも書いたかもしれませんが、1989年の横浜博のときに、この場所よりランドマークよりに据えられたものが解体・移築されたもので、同博覧会には、当時結婚したばかりの新婚状態で遊びに行きましたものです。

この年は、昭和天皇が崩御され、平成が始まった年。
3月に新婚旅行で、ウィーンやスイス、パリに行きました。
そのあとは、天安門事件、ベルリンの壁崩壊、東欧諸国の共産政権の崩壊などが連続して起こり、やがてソ連の共産体制も滅んでゆくことになるのでした。
そうそう、旅行から帰ってきたら、消費税制がスタートしていた。

もう昔のことですが、歴史は巡りゆくのでしょうか、世界はまたも激動中です。

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観覧車といえば、ウィーンのプラター公園にも。

あちらは、横浜のほぼ100年前、1897年。

その年、エーリヒ・ウォルフガンク・コルンゴルト(1897~1957)は、生まれているのです。

コルンゴルトの名を神童としてとどろかせた出世作は、11歳のときに書かれた「雪だるま」。
1908~9年にかけての作曲。
ピアノの練習に明け暮れた少年コルンゴルトは、プラター公園に遊ぶ子供心を持っていたでしょうか・・・・。

そんな思いを払拭したくなるような、抒情と遊び心にあふれた「雪だるま」を聴きます。

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   コルンゴルト  パントマイム「雪だるま」 全曲

        ピアノ:スコット・ウーリー

                    (1994.4@シンシナシティ)


             「雪だるま」~序奏、第1場 

        マティアス・バーメルト指揮 BBCフィルハーモニック

 

                    (1997.6@マンチェスター)

作品番号はありませんが、事実上のコルンゴルトの初成功作は、前段にも書いたとおり、11歳の作曲。

幼少よりピアノ演奏に天才的な閃きを見せたコルンゴルトは、5歳の頃からもう、ピアノを弾きながら、思いついた楽想をスケッチしたり、早くも作曲という行為を行うようになった。

父ユリウスが推していたマーラーにも出会い、少年コルンゴルトは自作を披露し、マーラーを感激させたといわれます。
そして、マーラーはコルンゴルトの作曲の師としてツェムリンスキーを紹介する。

そんな環境のなかで書き始めたのが「雪だるま」。
小曲ばかりだったこれまでの作品の情景描写の優秀さを思った父ユリウスは、息子のために、ちょっとしたパントマイム劇を創作してやり、コルンゴルトは、ピアノ独奏用の劇音楽として、1908年のクリスマスから作曲に着手し、翌1909年の春に完成させます。
40分の大作を、11歳の少年がわずか数カ月で書き上げたこと自体が驚きです。

私的な慈善演奏会で演奏されたこの曲に、居合わせた聴き手は驚き、さらにそこにいた皇帝ヨーゼフ1世の密使が、皇帝にこの曲や、作曲者のことを報告するという事態になり、「雪だるま」の正式上演への期待がウィーン中に高まることとなるのでした。

ピアノの原曲をそのままに、オーケストレーションを施したのが、師ツェムリンスキー。
その譜面を携え、出版社がマーラーの後任としてウィーン国立歌劇場の総監督に赴任していたワインガルトナーに勧めたところ、ワインガルトナーはとても気に入って、その上演を快諾。
そして、ついに、1910年10月、作曲から1年半で、フランツ・シャルクの指揮によって初演され、未曾有の大成功を収めることとなりました。
このとき、コルンゴルトは13歳。
ウィーンの寵児の誕生でした・・・・・・。

こうして人々から喝采を受けたコルンゴルトが、のちにアメリカに渡り、映画音楽に手を染め、そして戦後クラシック音楽界に復帰しても、ウィーンを始めとするヨーロッパ楽壇は、彼を冷遇し、失意のうちにアメリカに没するコルンゴルトの運命なのでした。

さて、オーケストラ版は、たぶん全曲がまだなくて、一番長く演奏しているのが、バーメルト指揮するシャンドス盤です。
今日は、ピアノ全曲盤と、オーケストラ版の一部を聴きましょう。

この劇の素材は、道化師、コロンビーヌ、パンタロン(意地悪役)の3人の登場するイタリア仮面即興喜劇で、いわゆるドタバタ系のオモシロ劇なんです。

序奏と、第1部、間奏(ワルツ)、第2部からなり、CDでも4トラックに分けられてます。

①雪のクリスマスの街かど、左手にはパンタロンの家で、姪のコロンビーヌがいる。
貧乏なヴァイオリニストのピエロは、コロンビーヌに恋するけれど、パンタロンに追い出されてしまう。
酒好きのパンタロンが酔って、雪だるまに挨拶する姿を見て、ピエロは、雪だるまに扮装して、窓越しに、愛するコロンビーナを見つめることとします。

②そのピエロが扮した雪だるまばかりを見つめるコロンビーヌに嫉妬したパンタロン氏。
その雪だるまを暖かい家の中に、冗談で、招待してみると、本当に動き出してやってきた。
驚いたパンタロンは、家人に雪だるまをやっつけるように命じるが、全然歯がたたない。
悔しくなって、また酒を飲みだすパンタロンの酔った目には、雪だるまが何人も見えるようになり、そのすきに、コロンビーヌとピエロは手を携えて逃げてします。
 目ざめた、パンタロンは顛末を聞き、怒り、広場にあった雪だるまに体当たりをくらわせる・・・・

                 幕

こんな物語につけられたコルンゴルトの音楽が、実にステキなんです。

登場人物たちに付けられたライトモティーフは簡明ながら、おそらく心情に応じて、表情も変化するし、敵役パンタロンの滑稽さや、ピエロの弾くヴァイオリンの優美さとの対比も鮮やか。
聴いていてその情景が思い浮かぶようです。
 若くしてこの才能。
この作品の5年後、コルンゴルトは、初のオペラを作曲しますが、その素材も、「人生で一番、大切なものを捨てる」という、実に大人な物語をユーモアたっぷりに描くわけです。
そんな劇場作品を次々に生み出し、実写のスクリーンに生き生きとした音楽を付けてゆく、今後の作曲活動の原点を、ここ「雪だるま」の音楽に見ることができます!

ツェムリンスキーのオーケストレーションは、そうしたコルンゴルトの優しくて、甘味な音楽を余すことなく反映させていて、これまたステキなものです。
 しかしながら、ちょっとムーディにすぎるかも。

ピアノ版の方が、もう少しメリハリも効いてて、雰囲気に流されないシンプルなよさを感じます。
それにしても、とっても美しいメロディーが。
ピエロの奏でるセレナーデは蕩けるように美しく、オケ版では、当然にヴァイオリン・ソロによって演奏されます。
それと、ワルツ。
劇中と、1と2の場の間奏曲にも使われます。
ウィーンの伝統に則った、煌めくようなワルツに、後ろ髪引かれるようなノスタルジーさえ感じます。
これを聴いた、ウィーンの人々は、胸をかきむしられるほどの想いを抱いたことでしょう。

あと、エンディングの小粋の効いたユーモア。

音楽だけでなく、映像でもいいからバレエ付きで観てみたいものです。

まだあと少し、コルンゴルトを今月は続けます。

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