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2016年1月11日 (月)

ラヴェル 「ラ・ヴァルス」 ブーレーズ指揮

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1月2日、日の出から間もない、吾妻山山頂。

いつもの帰郷は、今年は川崎大師は行かなかったけれども、この晴れやかな山頂と、箱根駅伝での母校の目覚ましい活躍に、日頃の鬱憤が吹き飛ぶような想いを味わったものでした。

最近、更新が滞りななか、年始からのシリーズ造りとして、ウィーンをモティーフにしたワルツ。
そんなテーマを考えておりました矢先。

ピエール・ブーレーズの逝去の報が、飛び込んでまいりました。

90歳という年齢でしたが、常に、ハルサイを指揮し、自作も次々に作り上げる、圧倒的なパワーの持ち主に、終わりはない、と思いこんでおりました。

その突然の死去に、自分にとって、ブーレーズといえば、コレ!
という曲を、まずは、聴いて、記事にしてみました。

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          ラヴェル  ラ・ヴァルス

   ピエール・ブーレーズ指揮 ニューヨーク・フィルハーモニック

                           (1974 NY)


わたくしが、ブーレーズを聴いたのは、クリーヴランドとのCBSハルサイからで、セルとともに来日した1970年の大阪万博の年だった。

作曲家であり、指揮者としても、近現代と前衛しかやらない、気難しい人との認識が、まず埋め込まれました。

そして、1974年、ニューヨーク・フィルの指揮者として、バーンスタインとともに再度来日。
この時、高校生のわたくしは、文化会館で聴くことができました。
プログラムは、マイスタージンガー前奏曲、メンデルスゾーン・イタリア、クルクナー・管弦楽のための音楽、ペトルーシュカ。
こんなユニークな演目で、いま思えば、ブーレーズのメンデルスゾーンなんて、極めて貴重なものでしたし、これらの曲を、70年の来日のときの写真で見て知っていた、気難しい顔のブーレーズが、腕っこきのNYPOの面々を前に、にこやかに指揮していたのでした。

バイロイトのDG「パルシファル」、CBSから出たNYPOとのワーグナー曲集なども聴き、バイロイト100周年の記念のリングの指揮者に抜擢されたブーレーズに、ワーグナー指揮者として、大いに期待をしたのも、そのすぐあとのこと。

さらに75年に、BBC響とともに来演し、NHKがそのすべてを放送してくれたものだから、ブーレーズのにこやかさ、プラス、本来の、とんがった姿をまざまざと体感できたのでした。
そのときは、自作や、ベルリオーズ、ドビュッシー、ラヴェル、バルトーク、ストラヴィンスキー、マーラー、シェーンベルク、ウェーベルン、ベルクなど、まさに、ブーレーズの顔とも呼ぶべきレパートリーの、オンパレード。
いまだに、当時のエアチェック音源は大切なコレクションとなってます!

そして、76年のバイロイト・リング。
ここからの5年間は、ブーレーズ自身も、さらの演出家シェローのリングとの格闘です。
年々、向上する演奏の質。
ぼろぼろだった初年度と、録音に残された最終年度とでは、演奏の精度と出来栄えには、雲泥の開きがありました。

演奏家としてのブーレーズの凄さを、まざまざと感じさせたのは、実は、このバイロイト・リングでした。

その後の、ブーレーズの亡くなるまでの40年の歩みは、そのすべてを聴いてはおりませんが、概ね、70年代に成し遂げたことの、正確かつ、緻密な繰り返しではなかったでしょうか。
その証左として、2004年のバイロイトでの再度の「パルシファル」で、60~70年代の演奏と変わらぬ鋭さと、新鮮さを保っていたし、何度も指揮をしたハルサイも、若き日のフランス国立放送のものより、ますます若々しくなっていったのを聴くことができました。

作曲家としての評価は、ワタクシは疎い分野なので、言及はできませんが、今後は、バーンスタインの作品のように、多くの演奏家に取り上げられ、スタンダートと化してゆくものと思います。

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クールで正確無比なラヴェルを聴きながら、そう、まさに冷たいうえに、輝くような響きを持ったブーレーズの演奏で、その逝去を偲びたいと思います。

ピエール・ブーレーズさんの、魂が永遠でありますように、ここのお祈り申し上げます。

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1月2日の日の出。

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朝一番の日差しを浴びた水仙。

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コメント

(クリーヴランドで)ブーレーズ/クリーヴランドの演奏会に一度だけ行きました..

投稿: サンフランシスコ人 | 2016年1月12日 (火) 07時51分

  今日は。来るべき時が来たな、と思いました。マエストロの訃報に接して、です。作曲家としての彼には全くと言っていいほど不案内な私ですが、指揮者としては近・現代音楽の面白さと奥の深さを教えてくれた得難い方でした。新ウィーン楽派などをやらせたらアバドとならんで無敵のマエストロでしたよね。近・現代以外だと伝説のバイロイト・リングのDVDは一生ものの宝物です。マエストロ・ブーレーズ、安らかに。

投稿: 越後のオックス | 2016年1月12日 (火) 13時31分

サンフランシスコ人さん、こんにちは。
ご返信、すっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。
クリーヴランドとの相性は、ばっちりでしたね。

投稿: yokochan | 2016年1月24日 (日) 20時46分

越後のオックスさん、こんにちは。
ご返信、すっかり遅くなってしまい、申し訳ありません。
ブーレーズの訃報は、わたくしもショックでした。
ひとつの時代の終焉とも思われます。
そして、親しんだ演奏家の死は、いつも寂しいものです。

投稿: yokochan | 2016年1月24日 (日) 21時02分

ご無沙汰しています。
ブーレーズは、マーラーの交響曲全集が好きでした。【半分くらい持っています)抽象画で統一されたデザインもブーレーズやマーラーに合っている感じでした。好みは分かれると思いますが、私はブーレーズの指揮するマーラーを聞いて、初めて、理解できた曲もいくつかありました。音の洪水のようなスコアが整理されて演奏されることにより、曲自身の魅力や構成が理解できたように思います。マーラーは曲自体が大袈裟なので、淡々と演奏するくらいで丁度よい気がしました。もちろん、意外?にも演奏にパッションを感じることもありました。

 ラ・ヴァルスについては、大好きな曲です。(ラヴェル全般も好きなのですが)最近は、ユジャ・ワンのピアノ独奏によるラ・ヴァルスをyoutubeで聞いて感動しました。テクニックとパッションと音楽性のバランスが良い演奏はなかなか無いと思います。見た目が話題のピアニストですが、演奏の凄さあってだと思っています。

投稿: udon | 2017年8月31日 (木) 08時47分

udonさん、こんにちは。
ブーレーズのマーラーは、40年前のBBCとの4番を聴いて、その解像度の高さに驚きましたが、DGへの録音は、恥ずかしながらまったく聞いてません。
全集も安くなってきたようですので、いずれは挑戦してみたいと思ってます。
 ラヴェルの音楽は、ピアノの原曲を聴いても、色彩豊かで、オーケストラとはまた違う艶やかさがありますね。
ユジャ・ワンの超絶技巧派、そのすさまじさが、誤解を生むのかもしれませんが、彼女のラフマニノフやチャイコフスキーなど、なかなか聴かせる味のあるものでした。

投稿: yokochan | 2017年9月 3日 (日) 18時40分

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