« お知らせ、そして、しばしさよなら | トップページ | マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」 ハーディング&新日フィル »

2016年6月26日 (日)

シェーンベルク、ウェーベルン、ベルク アバド指揮

Ajisai_shiba

関東は、梅雨まっさかり。

そして、ほぼ3ヶ月ぶりの投稿となりました。

幾多の皆さまから、暖かく、そしてご配慮にあふれたコメントを頂戴しながら、まったくご

返信も、反応もしなかったこと、ここに、あらためまして、お詫び申し上げます。

 ともかく、辛く、厳しい日々は、ブログ休止時と変わりなく続いてます。

しかも、予想もしなかったところから、いろんな矢が飛んできたりもします。

やぶれかぶれの感情は、そこから生まれ、音楽なんて、聴くゆとりも、受け入れる感情もありません。

そんな3ヶ月。

 しかし、でも、めぐってきた、「クラウディオ・アバドの誕生日」

存命ならば、今年は、この26日が、83回目。

そんな日に、アバドが生涯愛した、新ウィーン楽派の3人の作曲家を、いずれもウィーンフィルの演奏で聴きます。

Schoenberg_gurre_lieder_abbado

  シェーンベルク  「グレの歌」から 間奏曲、山鳩の歌

長大なグレの歌、全部を聴けないから、この作品のエッセンスとも呼ぶべき、中ほどにある場面を。
1900年に作曲を始め、第3部だけが、オーケストレーションが大幅に遅れ、最終完成は、1911年。
1913年に、シュレーカーの指揮によって初演。

後期ロマン派真っ盛りの作品ながら、最終完成形のときのシェーンベルクは、無調の領域に踏み込んでいたところがおもしろい。
1912年には、ピエロリュネールを生み出している。

むせかえるような甘味で濃厚な間奏曲、無常感あふれる死と悲しみの心情の山鳩の歌。
アバドのしなやかな感性と、ウィーンフィルの味わいが融合して、何度聴いても心の底からのめり込んでしまう。
久々に、音楽に夢中になりました。

アバドのこのライブ録音は、1992年。
88年には、マーラーユーゲントとECユースオケとで、何度も演奏していた。
そして、最後のルツェルンとなった、2013年に、この間奏曲と山鳩を取り上げた。
この最後の演奏が、掛け値なしの超絶名演で、まさに陶酔境に誘ってくれるかのような、わたくしにとってとても大切な演奏となってます。

Abbado_lu

ルツェルンでの最後のアバド。

Abbado_webern_3

  ウェーベルン  パッサカリア

ウェーベルンの作品番号1のこの曲は、1908年の作。

シェーンベルクの弟子になったのが、1904年頃で、グレの歌の流れを組むかのような、これまた濃厚な後期ロマン派的な音楽であり、グレの歌にも増して、トリスタン的でもある。

パッサカリアという古風ないでたちの形式に、ウェーベルンが込めた緻密さとシンプルさが、やがて、大きなうねりを伴って、巨大な大河のようなクライマックスとカタストロフ。

この濃密な10分間を、アバドは、豊かな歌心でもって静寂と強音の鮮やかな対比を見せてくれる。
むせぶようなホルンの効果は、これはまさにウィーンフィルでないと聴けない。

1974年、シェーンベルク生誕100年の年、ウィーンでは、新ウィーン楽派の音楽が数々演奏されたが、そのとき、アバドは、ウィーンフィルとこのパッサカリアや、5つの小品を取り上げ、NHKFMでも放送され、わたくしはエアチェックして、何度も何度も聴いたものだ。
 その音源は、いまも手元にあって、あらためて聴いてみても、若々しい感性が燃えたぎり、ウィーンフィルも、今とはまったく違う、ローカルな音色でもって、それに応じているところが素晴らしい。

Berg_lulu_abbado

  ベルク  交響的組曲 「ルル」

新ウィーン楽派の3人のなかで、一番若く、そして一番早く死を迎えてしまったベルク。

ウェーベルンと同じく、1904年に、シェーンベルクの弟子となり、以降、ずっとウィーンで暮らすことになるベルクだが、ユダヤの出自であった師がアメリカにのがれたのに対し、ベルクはユダヤではない代わりに、その音楽が退廃音楽であるとして、ナチス政権成立後は、その活動にかなりの制約を受けることとなった。

そんななかで、生まれたのが「ルル」。
破天荒な青年時代を送り、ぜんそくに悩まされ、病弱であったベルクは、文学好きということもあって、オペラの素材には、生々しい死がからむ、いわばヴェリスモ的な内容を選択した。
それが「ヴォツェック」であり、「ルル」である。
さらに、晩年の不倫も、「ルル」の背景にはあるともされる。

人生の落後者のような軍人と、魔性の女、ファム・ファタール。
それらが、悲しみとともに描かれているところが、ベルクの優しさであり、彼独自の問題提起の素晴らしさ。

ことに、「ルル」の音楽の運命的なまでに美しく、無情なところは、聴けば聴くほどに、悲しみを覚える。
自分の苦境に照らし合わせることで、さらにその思いは増し、ますます辛く感じた。
そんな自分のルルの聴き方が、また甘味に思えたりするのだ。

「ルル」は、1928~35年にかけての作品。
間があいているのは、アルマの娘マリーの死に接し、かのヴァイオリン協奏曲を書いたためで、ベルクは3幕の途中で亡くなり、未完のエンディングを持つ「ルル」となった。

アバドは、ベルクも若い頃からさかんに指揮していて、70年のロンドン響との作品集に続き、ウィーン時代の94年に、ウィーンフィルといくつもの録音を残している。
ニュートラルなロンドン盤もいいが、やはり、より濃密で、ムジークフェラインの丸みのある響きも捉えたウィーン盤の方が素晴らしい。

ロンド→オスティナート→ルルの歌→変奏曲→アダージョ

オペラの場面をシンフォニックにつないだ組曲に、アバドは、オペラの雰囲気も感じさせる迫真性と抒情をしのばせた。
「ヴォツェック」は何度も指揮したのに、「ルル」は、ついに劇場では振ることがなかった。
ウィーン国立歌劇場時代、上演予定であったが、辞めてしまったため、その計画を実現しなかったから、この組曲盤は、アバド好きにとっては貴重なのであります。

さてさて、暑いです。

まだ梅雨だけど、そぼ降る雨はなくて、晴れか土砂降りみたいな日本。
熊本の地震もあったし、大きな地震への不安は尽きない

ばかな都知事や辞めたけど、疑惑は消えないし、消化不良のまま参院選と、まもなく都知事選が始まる。
矛盾だらけの政治に社会。
 そして、海外へ眼を転ずれば、どこか某国が、偉そうに軍船で領海侵入を繰り返し、虎視眈々と長期計画で持って、ねらってきているし、さらに英国のEU離脱が、世界規模でもって、政治経済に影響を与える流れが進行中。

今後もトピックは、まだまだ続出するでしょうが、ブログ休止してた間に、こんないろんなことが起きてしまう2016年。
「ルル」の原作ではありませんが、「パンドラの箱」が次々に開いてしまうのか・・・・

しばらく、また消えますが、もう事件事故災害は勘弁してください、神様。。。

それでは、また、いつか。

Shiba_8
    

|

« お知らせ、そして、しばしさよなら | トップページ | マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」 ハーディング&新日フィル »

コメント

ブログ再開!おめでとうございます。
このペースでもいいので是非とも継続してください。
さまよえる様、大きな事故が起きていたのですね。
何も知らずに失礼しました。
カウフマン!そうなんですね。ローエングリン!イメージにぴったりです。パルチファル、なるほど!
しかも、ジークフリートとトリスタンはまだ先とのこと。分かります。さまよれる様の説明で納得しまくりです。
アバドの後継者というか指揮者をベルリンフィルのメンバーが会議(けっこうエゲツない議論でした^^;)を重ねて投票で選んでいる様子をBSで見ました。楽しい!

投稿: モナコ命 | 2016年6月26日 (日) 15時41分

ご無沙汰しております。

再開おめでとうございます。

私もモナコ命様や皆様と同様待ちかねておりました。

本当に世の中いろいろなことが起こって

目が回りそうですね。

アバドは、~いまさら申し上げるまでもありませんが~

この三人の曲を降らせたら無敵のマエストロでしたね。

私もこれらの音盤は愛聴するものです。

私事で恐縮ですが、

最近、ゲバントハウス管弦楽団時代の

シャイーの演奏にハマっています。

ベートーヴェン、ブラームス、マタイ等々。

ベートーヴェンなどは厳しいリアリズムと

渋い音色で「ベートーヴェンなんか聴きあきたぜ」

とか「最近のピリオド系は嫌だ」

なんて人にも強くアピールする演奏だと思います。

とにかく今日は、

新記事が拝読できて本当に嬉しかったです。

投稿: 越後のオックス | 2016年6月26日 (日) 16時38分

さまよえる様ファンの私は、3カ月以上待って待って待って。。。何あれブログが再開されたことは本当にうれしいのです。クラシック系のブログも沢山あるのですが、私にはこちらのブログが一番なのです。再開は本当にありがたい。。。
全く違う話題で恐縮です。20代後半の頃、小沢&ボストンのグレの歌のレコードに小沢氏にサインをしてもらった思い出があります。サインしてもらおうと思って持っていったレコードが3枚だったので、近くにいたマネージャー氏に「ああ、キミね、サインは1人1枚だからね」と怒られたのですが、小沢氏はかまわず3枚ともニコヤカにサインしてくれたのです!おお^^小沢氏!さすがに世界をかけめぐる男は器が大きい!
そんな想い出もあり、グレの歌は今でも大好きな1曲なのです。サインをもらったレコードも大切なコレクション。

投稿: モナコ命 | 2016年6月26日 (日) 23時00分

私の町はまだまだ梅雨が続きます。苦手な季節です。
7月の今頃になると仕事も落ち着き、レコードを心ゆくまでゆっくり楽しめるのですが、今しばらくは激動の毎日です。
さまよえる様のブログで幾多の「食べてみたいメニュー」がアップされていました。私はビール党なのですが、お酒の友に恵まれていません。。ナッツがあったら上等、エダマメは贅沢、から揚げはお正月とお盆に、刺身は貴賓室の食べ物という認識です。
ビールに合いそうな、何かレシピを教えてもらえたらうれしいです。私でも作れる簡単なものをリクエストします^^

投稿: モナコ命 | 2016年6月28日 (火) 16時02分

初めて「ルル組曲」を聞いたときはヴィヴラフォーンの響きに驚いたもんです。

色々と大変な時期ですけれども元気でいてください。

投稿: 通りすがり | 2016年7月 2日 (土) 11時37分

yokochanさんへ
 
 大変な重荷に捉われていらしたのですね。心から御察し申し上げます。あの記事を拝見しても、私からは何も投稿できなくて誠にすみませんでした。
 実は私も、6月下旬に、全国規模の催しを自分の職場で開催せざるを得ず、しかも担当者は私一人、「一人12役」で「突撃状態」でした。ただ、遂に、何とか終えることができて、80人ほどのお相手を務め切りました!、この半年の過労鬱は大変なものでしたが。
 でも、これでもうこれからはこういう重荷は永遠に負うことはなくなり、自分がやりたいことだけで過ごして行けます。新しく持ってくる奴はすべて「排除」ですのでね。
 yokochanさんは、まだまだ大変なようで、ご苦労が続くと思うのですが、もしクラヲタ会がありましたら是非お会いして、お話しできることを期待しております。
 因みに新ウィーン学派は私も、この春思いついて新宿のディスクユニオンで買い込んだのですが、6月の仕事の気の重さに負けて、未だに聴いていません!、これから少しずつ聴いて行きましょう。ただし演奏はシノポリですが。

投稿: 安倍禮爾 | 2016年7月 4日 (月) 18時30分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: シェーンベルク、ウェーベルン、ベルク アバド指揮:

« お知らせ、そして、しばしさよなら | トップページ | マーラー 交響曲第8番「千人の交響曲」 ハーディング&新日フィル »