バイロイト2016 妄想聴き
今年のお盆は、曇天続きで、どうもすっきりないまま明け、そして台風が襲来した関東。
そしてまた、次の台風がやってきそうだ。
異常な天候続きと、不気味な動きを見せる近くの国々が気になって、オリンピックロスもさほどに感じなかった。
そんな夏も、もう終盤。
海外の音楽祭も次々に終了。
ネットでリアルタイムで聴ける幸せだけど、今年は、ばたばたしてて、気もそぞろのながら聴き。
全部PC録音しましたよ。

(以下画像はバイエルン放送局のサイトから拝借してます)
バイロイトでは、「パルシファル」がプリミエ。
演出は、危なそうだったヨナタン・ミーゼに替わり、安全そうなラウフェンベルクに変更。
ラウフェンベルクの舞台は、数年前、ドレスデンの来演で、「ばらの騎士」を観たけれど、時代の移し替え以外は、穏当な演出だった。

今回の「パルシファル」は、画像を拝見すると、アンフォルタスはイエスのようだし、当然、現場は、中近東風。
花の乙女たちは、ヒシャブをまとっているわけで、米軍の戦闘服を着たように見えるパルシファルは素顔の彼女たちとお風呂入っちゃってる。
クリングゾルは、武器商人かな?グルネマンツは、アラブの解放戦線の指導者風。

想像と勝手な妄想は止まらないけれど、映像の放映を期待したい。
こんな演出だから、テロが続発したドイツ当局も、かなり警備に力をいれたそうだ。

音楽面でも、大きな話題を呼んだのが、直前のネルソンスの降板。
ティーレマンとの不仲説や、演出の問題などなど囁かれているけれど。。。。
急遽、指揮台に立ったのは、ハルトムート・ヘンヒェン。
ドレスデン生まれの、叩き上げのオペラ指揮者の登場は意外な感じもしたけれど、その音楽は安定していて、聴いていて、大きな驚きはないものの、まったく自然かつ豊かなものでした。
フォークトのパルシファルは文句なく素晴らしくクリアな声は存在感抜群。
ゼッペンフェルトのグルネマンツは、もう少し深みと重さが欲しいけど、これから変わっていくかも。
音だけ聴けば、無難なプリミエを迎えたパルシファル。

4年目のカストルフの「リング」
石油争いと、社会主義と資本主義のせめぎ合いをからめた、ごった煮的演出も、これまでの5年のリング暦にあわせると、あと1年。
次のリングの指揮には、ネルソンスと言われていたけれど、難しいことになったね。
ペトレンコ、ヘンゲルブロックも含め、バイロイトから去った実力者が抜けたあとは、小粒化が否めない指揮者陣。
そんななかで、ヤノフスキの初登場、しかもリング全3サイクルを完璧に仕上げた実力はさすがとしか言いようがないと思う。
速めのテンポで、聞かせどころのツボを、しっかりと押さえ、メリハリの効いた力強い指揮は、ワーグナーの音楽に安心して身を委ねることができるものかもしれない。
ただ、ペトレンコの指揮にあった、いろんな発見は、ここでは少なめ。
そして、サラっと通り過ぎてしまうところが、意外なところにあったりするのも、職人ヤノフスキらしいとこかも・・・・・
歌手も年々替わるのも、このリングサイクルの特徴かも。
しかも、一進一退か。
ウォータンがひとりで全部歌わずに、ラインと、ワルキューレ・ジークフリートとでふたり。
若々しいウォータンであるはずのラインゴールドだから、それは一理あるけれど、なんとなく統一感がないね。
ワルキューレとさすらい人を歌ったのが、ルントグレン。
どこかで聴いた名前、聴いた声だと思ったら、以前に新国でスカルピア役を観ていた。
ちょっとアクの強い声質で、ばかでかい声だけど、これは今後よくなりそうなウォータンに感じましたよ。
歌手たちのなかで、一番よかったのが、フォスターのブリュンヒルデで、優しさと気品を見事に持ち合わせた歌唱かと。
あと2年目の、フィンケのジークフリートも、とてもよかった。
この人も、よくよく調べたら手持ちの「死の都」のDVDでパウルを歌っていた人だった。
よいヘルデンテノールになってきたね。
あと舞台を引き締めていたのは、ベテラン、ドーメンのアルベリヒ。
しかし、ジークフリートと黄昏が終わったあとのブーイングはすごいものがあった。
やはり、カラシニコフをぶっぱなす共産かぶれのジークフリートとかウォール街には我慢がならんのか。。。。
このリングは、映像化されるのだろうか。
スケジュールを見てたら、3サイクル上演だったけど、神々の黄昏だけ、4度上演してんのね。これだけ録画したのかしら・・・・
観てはみたいけれど、どっちでもいいや(笑)

あとは、まだやってる「さまよえるオランダ人」。
テレビで何度も観たけれど、扇風機工場がわけわからんし、全体のムードが陳腐な感じで好きじゃない。
なんか使いまわしをされている、便利な存在になりつつあるA・コバーのキビキビした指揮はよい。
メルベートのゼンタはとても好きだけど、新国お馴染みのトマス・マイヤーがついにオランダ人として登場したけれど、声の威力がいまひとつ、でも美声です。
このオランダ人は、今年で終わり(たぶん)。

2年目のカタリーナとティーレマンのトリスタン。
映像化もされ、まだ全部を見てはいないが、ブルーな雰囲気と無限ループのような無機質な舞台は、悪くない感じ。
ティーレマンは、あいかわらず、どっしり、がっしりやってるけど、もすこし、しなやかに柔らかな響きも聴きたい感じもする。
グールトのトリスタンは文句なし。
問題はイゾルデが、このプロダクションでは定まらないところか。
アニヤ・カンペが昨年は最初から降りてしまい、ヘルツィウスが歌ったが、今年は、ペトラ・ラングで、彼女はもともとメゾの音域のひと。
ブランゲーネとオルトルートのイメージが強い彼女だけど、ちょっとキツかったかも。
不安な歌い回しも散見されたが、来年も彼女の名前がノミネートされているので、いろんなものを克服して登場することでしょう。
演出も、歌手も指揮者も、年々よくなっていくのが、だいたい5年サイクルのバイロイトの上演。
そうならなかった演目もいくつかあって打ち切りの刑に処せられたものもあったけれど。。
来年は、「マイスタージンガー」が新演出上演。
ベルリン・コーミシュオーパーのバリー・コスキーの演出。
こんな「魔笛」の舞台を作っちゃうひとで、おもしろそう。
指揮は、フィリップ・ジョルダンに、ザックスは、フォレ。
なんだかんで、バイロイトは気になるし、面白いのだ。
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