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2016年12月31日 (土)

ワーグナー 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 ショルティ指揮

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今年の冬の六本木ヒルズ、欅坂。

毎年同じようで、少しずつ違う。

LEDも年々進化し、電気使用量も減少しつつ、輝かしさも増している。

2016年は、あっという間だったけれど、自分にも、内外含めて世間にも、親しい人にも、ともかくいろんなことがあった年だった。
 いろんなものを失い、また失いつつあり、そして得るところ、学ぶところもまたたくさん。

人生は苦しいけれど、またこれも楽し。

2

ファルスタッフは、「世の中、すべて冗談だ!」と歌って、そのヴェルディのオペラの最後を締めるけれど、同じオペラ大家、ワーグナーの「マイスタージンガー」の最後では、ザックスは、「神聖ローマ帝国は滅びても、ドイツの芸術は決して滅びない!」と歌い、民衆もそれに唱和し、ドイツの芸術とその名匠をたたえる。

同じシリアス系の作曲家が書いた喜劇でも、ヴェルディにシェイクスピア原作があるにしても、こうも違う。

ファルスタッフのように笑い飛ばしてしまう、先々、かくありたいと思うけれど、いまは歳とともに、ザックスの心境の域に達しつつある自分も感じるし。

Meistersinger_solti

   ワーグナー  楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

 ザックス:ノーマン・ベイリー         ポーグナー:クルト・モル
 フォゲルゲザンク:アダルベルト・クラウス ナハティガル:マルティン・エーゲル
 ベックメッサー:ベルント・ヴァイクル     コートナー:ゲルト・ニーンシュテット
 ツォルン:マリティン・ションベルク  アイスリンガー:ヴォルフガンク・アッペル
 モーザー:ミシェル・シェネシャル   オルテル:ヘルムート・ベルガー・トゥーナ
 シュヴァルツ:クルト・リドゥル     フォルツ:ルドルフ・ハルトマン
 ヴァルター:ルネ・コロ         ダーヴィット:アドルフ・ダラポッツァ
 エヴァ:ハンネローレ・ボーデ     マグダレーネ:ユリア・ハマリ
 夜警:ヴェルナール・クルムリックボルト

   サー・ゲオルク・ショルティ指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
                      ウィーン国立歌劇場合唱団
                                            ウィーン国立歌劇場少年少女合唱団
                      ノルベルト・ヴァラッチュ:合唱指揮

                  (1975.10@ウィーン・ゾフィエンザール)

久方ぶりに全曲を聴く「マイスタージンガー」。
ワーグナーの作品のなかでも、黄昏やパルシファルと並んで長いものだから、最近ではよほどでないと聴く機会を持てない作品となってしまった。

このショルティ盤で、Ⅰ:85分、Ⅱ:61分、Ⅲ:123分。
合計4時間29分。
思えば、黄昏やパルジファルよりも長いかも・・・・

さて、ふたつあるショルティ盤の最初の方、なんといってもウィーンフィルの豊穣なる響きが魅力的だ。
シカゴ盤は、実は未聴で、ショルティ&シカゴということで、だいたい想像できるので、いまだに聴くことがなく、いまに至ってしまった。
ショルテイの剛直な指揮は、ウィーンフィルの柔らかな音色でもって、相当に中和され、同時期の録音である、シカゴとの「オランダ人」と比べるとかなりの違いがある。
ショルティは、おそらくワーグナーの主要オペラをすべて録音した最初の指揮者だと思うが、オランダ人を除いてそのすべてがウィーンフィルとなされたこと、そして、録音がデッカであったこと、それらが本当にありがたいことだ。

70年代、まだウィーンフィルがオペラのオーケストラであり、その丸っこい響きが独特の味わいを醸し出していた時期で、いまの国際的な存在となったマルチな響きとは違うような気がする。
柔らかなホルンの音色、ウィーンならではのオーボエ、木質の弦。
ことに、3幕の前奏曲や、五重唱の麗しさに陶酔境の想いで浸りきってしまった。
ショルティの切るような指揮ぶりも、ここではまったく想像できない。
ほんとうに、幸せなマイスタージンガーなのだ。

同じ時期に録音された、ヨッフム盤が、主役級を豪華メンバーで固め、ほかはベルリン・ドイツ・オペラの常設メンバーたちを配したのに比べ、こちらは、デッカならではの豪華版で、当時欧米で活躍していた理想的なキャストとなっている。

カラヤン盤から数年がたち、舞台を何度も経たルネ・コロの美声と余裕の安定感は最高の出来栄えのヴァルターだ。
シャープで紳士的なノーマン・ベイリーは普通すぎるけれど、そのブリテッシュな歌声は悪くない。
しかし、このザックスには、男の悲しい背中は感じさせてくれないかも。

あと、ステキなのは、ボーデのエヴァ。この役のスペシャリストの彼女、同時期のバイロイトでもエヴァやジークリンデで大活躍、美人さんだし。

クルト・モルのポーグナーも耳におなじみ、この深い声のポーグナーを聴いちゃうと、この人以外のポーグナーは考えにくくなるから不思議だ。同様の役が、ザラストロかな。
そして、いいんだけど、最初から最後まで自分には違和感のある、ヴァイクルのベックメッサー。
ザックスとのやりとりを聴いていると、どっちがどっちだかわからなくなる。
後年の名ザックスとしてのヴァイクルを聴いてしまっているからか・・・・。

しかし、配役をひとりひとりながめ、そしてその歌声を聴いてると、素晴らしい配役だし、当時は本当によかったなぁ、と思う。
こんなメンバーと大オーケストラをスタジオにあつめて録音できた時代。
いまではライブしかありえないオペラの贅沢な収録。
 そのデッカのゾフィエンザールでの優秀な録音は、ため息がでるほどに素晴らしい。
鮮やかな分離と、一方で溶けあう音の美しさ。
ウィーンフィルの魅力を、こうして録音でも引き立てているし、合唱が加わったときの豊かな広がりも見事。

これを聴いてる大晦日の午前。
いろいろあった2016年を送るに相応しい、そんな晴れやかな「マイスタージンガー」。
ハ調の、調和あふれる響きが、いまわたくしを包み込み、見上げる澄んだ青空も高揚感を増してくれるようです♪

みなさまよいお年を。

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