ディーリアス 北国のスケッチ グローヴス指揮
既出写真ですが、岩手県の雫石あたりの風景。
いかにも、北国の雰囲気がたっぷり。
春近い頃でしたが、いまの冬真っ盛りのこの地は、こんな場所に足を踏み入れることさえできないでしょうね。
季節に応じて、いろんな音楽がありますし、ことに四季のめりはりが鮮やかな日本には、美しい言葉の芸術もたくさん。
同じ島国の英国も、夏はやや短いながらも、その四季はくっきりしてる。
そんな機微を英国の作曲家たちは、詩的なタッチでもってたくさんの作品を残してきました。
そんななかのひとり、大好きなディーリアスを。
ディーリアス 「北国のスケッチ」
サー・チャールズ・グローヴス指揮ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
(1974.12.22@ロンドン)
この素敵な曲を、弊ブログにて取り上げるのは2回目。
前回は、ハンドレー指揮のアルスター管によるシャンドス録音。
「フロリダ」組曲とのカップリングで、北国と南国の鮮やかな対比による、ナイスな1枚でした。
そして、今回は、レコード時代から親しんできた、グローヴスの演奏で。
社会人となって、ひとり暮らしを始めたころに、シリーズ化された、音の詩人ディーリアス1800。
そのすべてを、石丸電気で購入して、ディーリアス漬けの日々。
寂しい侘び住まいが、なおさらに切なく、それから故郷の山や海が懐かしく、人々が愛おしくなる想いで満たされた。
そんな望郷とノスタルジーが、わたくしのディーリアス愛。
4つの部分からなる、北国の四季を模した組曲。
Ⅰ 「秋」・・・秋風が木立に鳴る
Ⅱ 「冬景色」
Ⅲ 「舞曲」
Ⅳ 春の訪れ「森と牧場と静かな荒野」
どうでしょうか、このいかにもイギリスの北の方の景色を思わせる素敵なタイトル。
日本なら、さながら、北海道か、信州あたり。
三浦淳史さんの解説によるE・フェンビーの言葉によれば、若き日は放蕩の限りを尽くしたディーリアスも、歳を経ると、寡黙となり、「人間は空しい、自然だけがめぐってくる!」という思考を持って過ごしていたという。
まさに、この言葉を思わせる、めぐりゆく四季、自然を、そのまま感覚的にあらわしたような音楽なのです。
ここでは、おおむね、静かなタッチの音楽が続き、唯一、舞曲では、フォルテが響く。
春がやってくる前の喜びの爆発。
しかし、それまでの、秋と冬の心に沈みこむような静けさと、幻想的な沈鬱ぶりは、いかにもディーリアスらしいし、夜のしじまに映える、あまりにも美しい音楽だ。
で、それを打ち消す明るい舞曲。
そして最後は、めぐり来た春。
ソフト・フォーカスで、若干の曖昧さも保ちながら、ふんわりとした音楽となっている。
これもまた、ファンタジーである。
ビーチャムの育てたディーリアス・オケ、ロイヤルフィルを指揮したグローヴスの演奏は、わたしにとっては、懐かしくも、完全なるものです。
デジタル時代の、ハンドリーと、少し鄙びたアルスター管もいいが、こちらは、アナログのぬくもりを感じさせてくれる。
こちらは、初出時のオリジナル・ジャケット。
ターナーの絵画をあしらったシリーズもいいけど、この写真もいい。
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