R・シュトラウス 「影のない女」 ショルティ&コヴェントガーデン
小田原の石垣山にあるYoroizuka Farmに、お正月、行ってきました。
パティシェの鎧塚俊彦さんのお店。
そう、亡き、川島なお美さんの旦那さんです。
相模湾を見下ろす絶景にあるこちらのお店では、カフェがあって、その絶品スゥイーツを楽しめるし、店舗ではたくさんのプチガトーや、地場野菜や果実が売られてます。
ともかく、その景色が素晴らしい。
西から見た相模湾は、江の島や、遠く、三浦半島・房総半島も見渡せる。
川島なお美さんの直筆の碑。
大学の先輩だったし、近くでお目見えしたこともあったし、そして、小田原は、高校時代過ごした街だし・・・、で、なんだか哀しくなってしまった。
でも、この場所を愛した妻への旦那さんの、優しい思いも感じとれ、この場所が、わたくしの愛する吾妻山のように、すてきな場所となって、自分のなかに記憶されることとなりました。
そんな、暖かな夫婦愛を最後には謳歌することとなる、R・シュトラウスのオペラ「影のない女」を連休から聴いておりました。
R・シュトラウス 「影のない女」
皇帝 :ジェイムズ・キング 皇后 :ヘザー・ハーパー
バラク:ヴァルター・ベリー バラクの妻:ヘルガ・デルネッシュ
乳母 :ルート・ヘッセ 霊界の使者:フォービス・ロビンソン
宮殿の門衛:ジュディス・ハワース 若い男 :ロバート・ティアー
鷹の声:エイドゥイン・ハーリィー
バラクの兄弟:ウィリアム・エルヴィン、ポール・クルック
ライモンド・ヘリンクス
サー・ゲオルク・ショルティ指揮
ロイヤル・コヴェントガーデン管弦楽団/合唱団
(76.4.5 @コヴェントガーデン)
ネット見つけたこの音源。
どーです、シュトラウス好き、影なし好きをも唸らせる、素晴らしいキャスト。
鉄板の、J・キングの凛々しい皇帝にはしびれるような感動と、官能を覚えます。
そして、高貴な英国歌手のハーパーの、全霊をかけたかのような皇后の熱さは、まったくもって以外ともいえる素敵さ。
お馴染み、ヴァルター・ベリーのバラクは、ここでも、いい人、全開で、FDの知的なバラクもいいけど、やっぱり純朴かつ熱烈なバラクもいい。
あと、あとですよ!!、今回、この音源を見つけて狂喜乱舞したのは、ヘルガ・デルネッシュ様のバラクの妻。
ショルテイさま、よくぞ、彼女を起用してくれた。
カラヤンとのブリュンヒルデ、トリスタン、レオノーレを歌い終えたデルネッシュ、その声域をメゾに移行しつつあった、その時期の上演。
皇后は、ワーグナーに例えると、ジークリンデ級。
バラクの妻は、ブリュンヒルデ級で、メゾの音域も要求される難役。
デルネッシュはメゾに移行後、ハンブルク・オペラの来日公演で、ドホナーニの指揮による「影のない女」の上演で、乳母役を演じ、わたくしも、憧れの彼女の歌の、最初で最後の実体験となりました。
そんなデルネッシュのバラクの妻。
2幕における、妻としての節度と、皇后の乳母が影を狙ってしかける若い男の妄想や、真面目すぎる夫や、不具合のある夫の兄弟たちの面倒をみる不合理さへの葛藤を歌いこむ、切実たるシーンには、ほんと、心から感動します。
G・ジョーンズや、ルートヴィヒ、ニルソンとならぶ名唱だ!
主役級以外は、コヴェントガーデンの常連・常設歌手だけれども、当然にバランスがよろしい。
かつて、音楽監督をつとめたコヴェントガーデン、ロイヤル・オペラに76年に客演したショルティ。
後年のウィーンやザルツブルクでの指揮よりも、とんがってる。
切れ味もいいし、オペラとして、劇的な流れも間断なくすばらしく、テンポも快適。
全曲が3時間と数分。
おとぎ話としてのファンタジー感は不足するものの、登場人物たちの、切実な歌や背景は見事に捉えているように感じる。
惜しむらくは、音源がモノラルなところ。
聴きやすい明瞭な音だけれど、オーケストラ・ピットが劇的にすぎて聴こえてしまう、そんなONすぎる録音。
こんな、おそらく放送音源も、世の中にはたくさんあるんだ。
最近のつまらん録音より、こうした音源の掘り起こしや、各種権利の調性に邁進してほしいものだよ、まったく。
麗しきかな夫婦愛・・・・・・・
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コメント
いつもありがとうございます。
ショルティ。日本ではあまり人気がないですね。
あの独特の角張った指揮振りが影響しているのでしょうか?
ショルティのオペラ録音。素晴らしいです。
もっとも往年の名指揮者は練習ピアニストとして経歴が始まるので、
ショルティに限らず、皆オペラの指揮がうまいのは
当然と言えば当然です。
それに比べて、最近のオペラ音源や映像は
指揮もオケも録音も技術が格段に進歩しているのに、
なぜか面白くない。
それだけ過去の名演奏を越えることが出来ないと言うことですね。
投稿: よしお | 2018年12月 5日 (水) 18時35分
よしおさん、こんにちは。コメントどうもありがとうございます。
ショルティは根っからのオペラ指揮者ですが、同じくしてオペラ指揮者のカラヤンが、歌手も楽器のようにして、すべて自分の指揮のもとに統率したのに対し、歌とオーケストラがそれぞれのありようで、存在するようなバランスの良さを感じます。
若いころの血の濃い激しい演奏にあっても、歌手たちはちゃんと歌っているところが面白いと思います。
昨今は、へんてこな演出に引っ張られてしまうので、指揮者たちはある意味気の毒ではありますね・・・・
投稿: yokochan | 2018年12月 6日 (木) 09時13分