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2017年8月15日 (火)

ワーグナー 「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 バイロイト2017

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7月25日より、今年もバイロイト音楽祭、始まっております。

グーグルで、バイエルン州のバイロイトの周辺をいろいろ俯瞰してみましたよ。

バイロイトは、地図で見ると、ニュルンベルクやバンベルクに近く(それでもそこそこ距離ありそう)、チェコとの国境も近い。

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こんな位置関係を頭に置きながらバイロイトからの演奏を聴くのもまた一興。

人口約7万人の町の北方面にあるのが、ワーグナーが辺境伯劇場に目をつけてから、自分の作品専用の劇場を築くにいたったバイロイト祝祭劇場。

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劇場の周辺の通りは、ご覧のとおり、ワーグナー作品の登場人物たちの名前で埋め尽くされてる。

トリスタン通りとか、ウォータン通りとかね!もうたまらんです。

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   ワーグナー 楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」

    ザックス:・ミヒャエルフォレ         
    ポーグナー:ギュンター・グロイスベック

    フォゲルゲザンク:タンセル・アクツィベク 
    ナハティガル:アルミン・コラチェク

    ベックメッサー:ヨハンニス・マルティン・クレンツィル 
    コートナー:ダニエル・シュムッツハルト
 
    ツォルン:パウル・カウフマン  
    アイスリンガー:クリストファー・カプラン

    モーザー:ステファン・ヘイバッハ   
    オルテル:ライムント・ノルテ

    シュヴァルツ:アンドレアス・ヘール    
    フォルツ:ティモ・リッホネン

    ヴァルター:クラウス・フローリアン・フォークト  
    ダーヴィット:ダニエル・ベーレ

    エヴァ:アンネ・シュヴァンネウィルムス   
     マグダレーネ:ヴィーケ・レームクル

    夜警:ゲオルク・ゼッペンフェルト

   フィリップ・ジョルダン指揮 バイロイト祝祭管弦楽団
                     バイロイト祝祭合唱団
                                            エーベルハルトト・フリードリヒ:合唱指揮

                演出:バリー・コスキー

                  (2017.7.25 @バイロイト祝祭劇場)

2017年のバイロイトは、マイスタージンガーがプリミエ。

演出は、オーストラリア出身のバリー・コスキーで、現在、ホモキのあとを継いでベルリン・コミュッシュ・オーパーの芸術監督。
楽しそうな「魔笛」は、どんな演出をする方だろうと、コスキーの名前が発表されたときから、ダイジェストを見ていたが、ベルリンの舞台のトレイラーをいくつかをこの際いくつも確認して、ともかく普通のことはしない、情報過多の舞台に目が回る思いだった。

ともかく細かくて、舞台の人々が主人公以外にも、いろんな動きをしていて、目が離せない。ダンス的な面白い動きを、それこそ音楽に合わせて登場人物たちに取らせるところも、ユニークだ。

オーストラリア出身ではあるが、ネットで調べたら、ヨーロッパのユダヤ系の出自で、同性愛者でもあるという。

まず、バイエルン放送のネット配信を録音し、音楽だけ一度聴いた。

 パルシファルを1年だけ指揮したジョルダンの指揮、前奏曲から明るく軽めの歩調。
やや前のめりになりがちの始めのほうだったけど、だんだんと調子をあげて、豊かな音楽を紡ぎだすようになったのは、さすがジョルダン。
 しかし、なんか変。
そう、パウゼ、間がそこここにあるのである。
ティーレマンと対局にある音楽造りだが、そのティーレマンが当初多用したパウゼともまた違う。

あと、多彩な顔触れの歌手たち、聴いていて、みんなとても上手いし、完璧な歌唱。
そして、誰も、軽妙な歌い口を感じるし、重厚な歌声はどこか排除されているようにも感じた。

BR放送では、動画ストリーミング配信をしているが、日本では観る事ができない。
しかし、探しまくったら、ネット上で、なかなかの高画質で全曲を楽しむことができた。
昔では、冬まで正規音源は待たねばならなかったのに、ほんとに隔世の感ありです。

で、全幕観劇しました。

まったく予想外の舞台に驚きと笑い。

そして、音楽だけ聴いていて、ちょっと気づいた点が、舞台を観て納得。
そう、パウゼの多用は舞台の必然からだし、歌手たちの軽さは、よりいっそうデフォルメ化された動作によって理解できた。

ニュルンベルクのないマイスタージンガーは、今年生誕100年のヴィーラント・ワーグナーの斬新な演出に始まったわけだが、コスキーもニュルンベルクの伝統的な教会や丘はなし。
あったのは、なんとニュルンベルク裁判の法廷だ。
連合軍のMPまでそこには詰めている按配。

この舞台を、最初から事細かに書き始めると、まったくもってキリがないから、おもしろ部分だけチョイスして残しておきます。

画像はいずれも、BR放送局のサイトから拝借しております。
毎年、いち早く、バイロイトの様子をお伝えいただき、感謝に堪えません。

Ich borgte das Bild von der Stelle vom BR, die Station ausstrahlt.

Ich lasse dich sofort einen Staat von Bayreuth vermitteln und danke dir jedes Jahr sehr.

コジマの日記から、ヴァンフリート荘1875年8月13日の出来事が忠実に再現。
前奏曲からもうそれは始まっていて、これじゃぁ、壮麗な前奏曲の演奏なんて、できっこないわな、と思った。

Levilistziwagner  

日記記載のとおりに、ヘルマン・レヴィ、フランツ・リストが訪ねてくる。
ザックスは、最初から3幕の最後まで、ずっと登場しっぱなしで、ワーグナーそのもの。

Bayreutherfestspielediemeistersinge

さらに、ワルターもワーグナーだし、エヴァは、まるきりコジマ。
ダーヴィットもワーグナーで、ピアノのなかから、ミニワーグナーがたくさん出てきて、レヴィやリストの膝のうえに乗っちゃったりしてる。
 親方たちは、なんとピアノのなかから続々と登場。
レヴィは、ベックメッサーに変身し、リストはポーグナーに成り変わる。
音源では、チーン、チーンという音が何だろうと、気になっていたが、それは、親方たちが点呼に応じて、手持ちのティーカップをお互いに乾杯しあってのものだった。
親方たちは、まるで中世の絵画から抜け出してきたようななりをしていて、一番片隅では、ベックメッサーがユダヤ人的な雰囲気の衣装で、ミルクを飲み、種なしパンのサンドを頬張っている。

 ワーグナーやコジマの自画像で囲んだコーナーに隠れ、裁判官の持つ小槌(ガベル)を額縁に叩きつけるベックメッサー。その後ろで、ワルターは、ピアノの上に立ち、資格を問われた歌を披露するが、親方たちは、ばかみたいに首をふったりしているし、ワルターの歌に興奮と動揺を隠せない。なかには、ワルターに惚れてしまったオネエ系の親方がいて笑える。
そんななか、ザックスとポーグナーは喜びを隠せない。

1870年11月27日、月のようにしつらえられ満月のように光る時計は、9:30。
ワーグナーとコジマが芝生で、ピクニック。
そこへレヴィが出てくるが、リュートを渡され追い出される。
ワーグナーはザックスにかわり、コジマ(エヴァ)は、リスト(ポーグナー)に家に戻される。
ザックスの感動的なモノローグのあと、エヴァがワルターのことを探りにくるが、見た目、まるでコジマ。
 ワルターとエヴァとの逢瀬と、親方たちへの怒りの場面では、フォークトはバリトンの声を響かせ驚かせ、さらにいろんな楽器を吹き鳴らしながら背景に人々があらわれ、ワーグナー批判をデフォルメしてみせる。
 パウゼや歌い崩しの加減は、この場面や、続くザックスとベックメッサーの掛け合いの無類の面白さの背景にある。
演出に合わせ、音楽を一体化させている。
 舞台は喧騒に陥り、人々が出てきて、時計は逆回りに。
芝生は片づけられ、連合軍MPがワーグナー像を持ってくる。
ワーグナー批判のベックメッサーは、ダーヴィットを中心にして痛めつけられ、リュートも壊され、ワーグナーの肖像ではがいじめにされる。

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そして、ハンスリックか?いや、ワーグナーか、のデフォルメされたかぶり物を被せられ、ユーモラスなダンスを。でかい、同じ顔の風船がふくらみ、そしてまた徐々にしぼんで行くが、ベックメッサーの頭のてっぺんと、風船のてっぺんには、ユダヤ民族の象徴たる、ダビデの星の印が見てとれる。
のちのパルシファル初演者レヴィもワーグナーが作り出したこと、ユダヤとワーグナーの切ってもきれないことを例えたのだろうか。れそともワーグナーが、ベックメッサーに例えた批判の最先鋒ハンスリックの萎む姿だったのだろうか・・・・・

前奏曲が始まる前、舞台にはテロップで、1945年1月4日、ロイヤルエアフォースとか、メッサーシュミットとか、ドイツ青年とか、暗号「奇妙な音楽」(たぶんドイツ軍の機銃掃射?)とか、単語しか抽出できない自分には、こんなものしか判明しないドイツ語の文章が流れた。。。。。ちゃんとした識者の解説を待ちたい。

幕が開くと、舞台は裁判所のようである。

3幕の深々とした前奏曲の間中、ザックスは、ずっともの想いに沈んでいて、その前にはワイングラスに赤ワインに、籠のなかには食事が。
モノローグのあと、ダーヴィットが出て、戸書きでは、聖書を思いきり閉じてびっくりするのであるが、ザックスは、テーブルのものを思い切り弾き飛ばすというちゃぶ台返しをする。

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ちなみに「聖ヨハネの日」は、6月24日。
ニュルンベルク裁判は、1945.11.20~1946.10.1

ワルターが起きてきて、ザックスと曲作りでは、まっとうな運びだけれど、やはり大きな休止がからむし、ふたりは顔近すぎだし、表情がとても豊かで、ワルターの曲がどんどん進化してゆく様子が映像ではよくわかる仕組みだ。
ザックスは、ものすごい勢いで詞を書きとめるんだ。
 次は、ベックメッサーのお忍び。舞台の奥には、米英仏ソの連合国の旗。
怪我を負ったベックメッサーは音楽に合わせ踊るが、証言台で、ミニユダヤ人たちに取り囲まれ、まるでダメじゃないかと、非難される様子。
 あとはザックスとの滑稽なやりとり。このふたりは、名優だ。

エヴァ登場し、ザックスへの感謝も件の証言台で。
トリスタンからメルケへと、音楽も、心情の演出描写もなかなか。
麗しい五重唱も、5人の配置がよろしく、フレンドリーな雰囲気もいい。

場面転換の場では紗幕が降りて、またメッセージ。
今度は、ザックスの劇中の台詞で、ベックメッサーが失敗した歌の責任を訴えられ、自らの証言者を紹介するところ。

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さぁ、祭りの場面だが、裁判所で行われ、空は見えない。MP立ってる。
群衆が思いきりストップモーションをかける。時計は思い切り逆流。ジャンプ激しい。
もうむちゃくちゃ。
ダーヴィットのワーグナーが、コジマの肖像の前で踊り、ミニワーグナーが出てきて、コジマに敬意を表する・・・子供たちか。(ジークフリートとふたりの孫かな)
音源のときは、意味不明だったぶつ切れの拍手は、親方たちの入城ごとに起きるものだった。だが可愛そうなことに、ベックメッサーのときは拍手なし。。。

まるきりワーグナーのザックス登場で、逆流時計は11:40で止まり、ザックス=ワーグナーは称賛を受けまくる。
 ガラスに映る無機質な蛍光灯、黒電話、マイク・・・みんな裁判所の再現

小槌の一打で、一同飛びはね、ベックメッサーは、連合国風の女性の奏でるハープにのって、証言台で荒唐無稽に歌う。
親方たちは、ヘッドホンで不怪訝そうに怪しみながら聴く。
やがて、ぐちゃぐちゃになってしまい、みんななにもかも、ザックスのせいとしたあげく、つまみだされてドアをビシャっと閉められちゃった。

証言台で責められるザックスにかわり、証言台の下から上がってきたのは、これまた完璧なワーグナと化したワルター。喜ぶ親方たちと、ことにオネエ親方。
ワルターの歌唱は、親方、群衆を異様なまでに魅惑しつくし、大いなる称賛を得る。
 連合国の旗は折れるようにして消え、ザックスの差配はこれでよかったですか?となる。

ワルターが親方を否定したあとは、全員があっという間に舞台から消え、時計も暗くなり、ザックスひとりが証言台に立ちつくす。
「親方たちをさげすんではならぬ・・・」感動のザックスの最後の証言は、最初はやたらと説明的に、どうしようもなかったんです的な必死の訴えかけに見えるし、ともかくフォレの歌と共に、やたらと説明的。

Diemeistersingervonnuernbergbayre_3  

そして、舞台奥から、オーケストラと合唱がせり出てくる。
よくみると、エヴァ=コジマも片隅に座っている。
ザックス=ワーグナーは、観客に思いきり背を向け、渾身の指揮で、オケと合唱を導き
、最後は大きく手を広げて幕となる。

                   

メモを取りながら見ていたけれど、途中から力が入って、すいません長文となってしまった。
不愉快に思われましたら、読まないでくださいまし。

しかし、どうでしょう、コスキーの「ワーグナーだらけのマイスタージンガー」。
反ユダヤのワーグナーが、その音楽で人々を魅了し、戦時にはプロパガンダにも利用され、ワーグナー一族もその波をうまく乗りこなした。

ユダヤ系たるコスキーの見た、「ワーグナーの夢と、自己弁護」って感じかな。

識者の見解を読んでみたいものです。

このコスキー演出に、歌手も指揮者も完全によりそい、音だけでは誤解を生みかねない、CDになりにくい上演となった。

指揮者ジョルダンに、一部ブーが飛んだのもそんなことだろう。
コスキーにも盛大なブーが飛んでいたが、歌手で唯一ブーされた、シュヴァンネウィリムズはちょっと気の毒だった。
彼女の声はエヴァ向きじゃないし、コジマの見た目もトウがたっていて、あんまり若々しい歌を聴かせることができなかったのでは、と。

技巧を駆使し、自在な歌い回しを見せたフォレのザックスは、それこそ音源だけでは、歌い崩し的に聴こえてしまうかも。
しかし映像で見て、その細やかな表情をともなった演技に付随した歌と見ると、それは称賛に値するし、昨今の映像化を想定した演出優位の舞台では、こういった巧みな歌唱が主流となっているのだろう。
 そういう意味で、完璧で火の打ちようのなかったフォークトのワルター。
あと、びっくりするほど歌も演技も面白かったクレンツィルのベックメッサーが最高!
カーテンコールでは、ザックスに次ぐ2番手でした。

あ~、面白かった。
賛否両論のコスキー・マイスタージンガー、年を追って定着することでしょう。
あと、ジョルダンの指揮も、もっとよくなると。

今年のバイロイトは、あと、「リング」「トリスタン」「パルシファル」でした。
いずれもこれからゆっくり楽しみます。

そして、来年、2018年は、「ローエングリン」が新演出。
ロサンゼルスオペラのユーヴァル・シャローンの演出、ティーレマンの指揮に、なんと、アラーニャのタイトルロールに、ハルテロスのエルザ、マイアーのオルトルート。
「マイスタージンガー」「トリスタン」「オランダ人(再演)」、そしてなんと、「ワルキューレ」のみの上演で、指揮は、ドミンゴ!

まだまだ、世界は、バイロイト、そしてワーグナーに呪縛されっぱなしだ。
あっ、なんたって、自分も!

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コメント

解説ありがとうございました!
めっちゃ面白かったです。家族がヨーロッパに住んでるので縁あって何回かバイロイトに行きましたが今年は行きそびれ、マイスタージンガー見損ないました。これからクラシカジャパンの録画を観る予定です。

投稿: | 2017年9月 5日 (火) 23時41分

コメントありがとうございます。
何回か、バイロイトに・・・、いやぁうらやましいです!
変な演出も増えてますが、やはりかの地には、死ぬまでに一度行きたいです。
今回のマイスタージンガーも、舞台で実際にみたら、ほんと、おもしろいんでしょうね!

投稿: yokochan | 2017年9月 9日 (土) 11時33分

今度のリングは2020年。カテリーナ含むすべて女性の、全部違う演出でやるそうです。来年はワルキューレ単独上演でしょう?ネットでチケット買えるようになったし、映像も配信され、本当にバイロイトも変わりました。確かに生は素晴らしいけど演出がドイツ語字幕で説明されたりすることが多いのでお手上げなことも多く、後で映像も みてなるほど、ってことがほとんどです。一度行くと現場の音を思い出しながら映像見て聴くのが1番かな?とも思います。バイロイトは田舎だから探せば安宿もあり、電車を乗り継げば交通費も安く、最近は頑張ればネットでチケットも取れます。あとは夏休みさえ取れれば…来年も行きたいです。

投稿: | 2017年9月10日 (日) 14時50分

コメントありがとうございます。
そうなんですよね、2020年のリング。それはそれで面白いことになりそうですが、歌手たちはどうするんでしょうね?
東京オリンピックの年だし、熱い夏となりそうです!

そして、劇場の様子もありがとうございます。
昨今の細かな演出では、映像で補完、というのがひとつのスタイルとなりそうですね。
漏れ聞いたり、本で読んで想像をふくらませた昔のバイロイトの様子とは隔世の感があります。

投稿: yokochan | 2017年9月16日 (土) 10時11分

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