ベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲 ブレンデルの古い盤
日の出直前の竹芝桟橋から。
日の出スポットは、もうちょっと左側だけど、倉庫やマンションが立ち並び、見えません。
あの豊洲も見えましたよ。

ベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲
Pf:アルフレート・ブレンデル
ヴィルフレット・ベッチャー指揮
シュトゥットガルト・フィルハーモニー(1番)
ハインツ・ワルベルク指揮
ウィーン・フォルクスオーパー管弦楽団(2番)
ウィーン交響楽団(3、4番)
ズビン・メータ指揮 ウィーン交響楽団(5番)
(1961、66、67年 ウィーン)
私の、ベートーヴェンのピアノ協奏曲の初聴きは、この1枚。
1970年のベートーヴェン生誕200年の年に出た、ダイアモンド1000のベートーヴェン・シリーズ。
当時はまだ、そんなに有名じゃなかったブレンデルの協奏曲が4枚の廉価盤で登場した。
小学生のこづかいからの千円は、とても痛かったので、ラジオで聴いて、印象的だった1番のみを購入し、すでにスター指揮者だったメータが、なんと廉価盤になっていた5番は、どうしても買えなかった(というか、皇帝をまともに聴いたことがなかった)
ともかく1番の初々しさと、豊富なメロディが好きだった。
ブレンデルの若やいだピアノも、いまもって色あせてなくて、もう48年も前の記憶のまま。
ずっと後年、この全集を揃えたのは、社会人になってから、VOXからCD化されたもので。
目玉だったメータ指揮する5番に、ちょっとがっかり。
いまも変わらないブレンデルの豊かなピアノに、メータ指揮するオーケストラは、せかせかとハイスピードと、音圧の強さでもってがんがん進める。
まさに若気の至り、かと思いきや、2楽章はとても神妙で美しく、そして3楽章は、威勢よく終了、と。
それにしても、この一番古い、いまから半世紀も前の録音に聴くブレンデルのピアノの妙技はいかがなものだろう。
誠実に、一音一音を弾き進めながら、そこに柔和さと、デリケートさ、そして、歯切れのよさも十分。
音が、丸っこく感じるのは、録音のせいもあるが、やわらかい。
オーケストラでは、ワルベルクの指揮するものが、際立った特徴はないが、やはり安定感と、安心感がある。
ウィーン響とあるが、かつてのレコード時代は、ウィーン・プロムジカ管弦楽団とか表記されていたもんだ。
たまに聴くと、懐かしい響きに包まれていて、ホッとする、一番古いブレンデルのベートーヴェンでした。

ベートーヴェン ピアノ協奏曲全曲
Pf:アルフレート・ブレンデル
ベルナルト・ハイティンク指揮 ロンドン・フィルハーモニック管弦楽団
(1975、76、77 ロンドン)
前回は30代半ば、そして10年後、押しも押されぬ中堅ピアニストとなったブレンデル、2度目のベートーヴェンは、専属となったフィリップスレーベルから、ハイティンクとの共演で。
数あるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集で、全体として一番好きなのはこれ。
ソリストと指揮者、それぞれの思いや音楽が完全に一致していて、スタイルが統一されていて、とても凛々しい。
若やいだ1番と2番から、中期の深淵さと、壮麗さのスタイルへと移ってゆく、3、4、5番と聴き進めてゆくと、この演奏の必然性がとてもよくわかる。
それぞれの番号ごとに、とてもいい演奏なのだけれど、全体としてとらえると、こうしたベートーヴェンの音楽の神髄を導き出してやまない感じがする。
とりわけ、素敵なのが、いずれの曲も、その緩徐楽章。
ギャラントだけど、美しい旋律に満ち溢れた1番と2番のそれ。
よりロマンティックに傾いた3番は、オーケストラもほんと美しい。
で、バックハウスが「神への祈り」と呼んだ4番のそれは、神妙なる調和の世界で、深みも。
華麗な楽章に挟まれた「皇帝」の2楽章もまた、神妙なる静的な世界。
ブレンデルの柔らかいピアノの音色で聴く、これらは、ほんとに素晴らしくって、秋の夜長にぴったりです。
2番なんて、もう、泣きたくなるようなピアノに、音楽であります。
もちろん、アレグロやフォルテの楽章もとても魅力的だし、いい音楽に、万全の演奏ですよ。
でも、年を経ると、こんなベートーヴェンの聴き方も、いいなぁと心から思います。
しかし、ブレンデルのピアノって、音が豊かです。
中庸の美でありながら、じっくりと聴くと、音が弾み、輝き、優しく語りかけてくる。
でもそれ以上に主張してこないから、安心して聴いていられる。
それとまったく同じことがハイティンクとロンドンフィルの、いぶし銀でありつつ、ちょっとくすんだ渋さのオーケストラと、ふくよかで、恰幅もほどよいハイティンクの作り出すサウンドがとても素晴らしい。
ハイティンクとロンドン・フィルは、この時期にロンドンで、これら協奏曲も含めた交響曲チクルスをやっていて、そちらもコンセルトヘボウとはまた、一味違った名演になっていることはもう、みなさま、ご存じのとおりです。
そして、「皇帝」におけるスケールの大きさは、若きメータのものと比べると、まるで大人と子供くらいに感じます。
そして、アナログ最盛期のフィリップスの深みのある名録音も、わたくしには最良のものでありました。
秋の夜、暮れ行く空を眺めながら、二日間にわたり、ブレンデルのベートーヴェンを堪能しました。
ちなみに、ブレンデルのあとふたつ(レヴァインとラトル)は、聴いたことがありません。
あと、ハイティンクの指揮では、アラウ、アシュケナージ(映像)、ペライア、シフがありますが、いずれも未聴・・・・。
ともかく、この歳になっても、あれこれ気になるもの、欲しいものが尽きませぬ・・・・
聴く時間は有限なのに。。。。
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コメント
おー、ダイヤモンドのブレンデル
ありましたねぇ
ガキなもんだったから銭からっけつ
大人買いはできないから、カタログ舐めるように思案しましたねぇ
ブレンデルはたしかフォルクスオバー管、指揮者だれだっけか 週末にLPがある自宅に帰るので確認できせんがワルベルクだったかなぁ モーツァルトのピアノ協奏曲24番26番の盤 サンサーンスのバイオリン協奏曲3番とラロのスペイン協奏曲の盤 奏者指揮者だれだっけかなぁ
あとモーツァルトのバイオリン協奏曲4番5番 これも名前浮かんでますが、お家にかえんないとはっきりいえませんねぇ
ま、いずれは楽譜で楽しみますがね 知人がかなりふるいピアノ版の23番のスコアくれましてねぅ 時々眺めてますよ
ベトの一番はリヒテル・ミュンシュ・ボストン響の1000円番が最初でしたね もちろんこれもまだお家にあります
第一次お耳危機の時は ベームのモーツァルト・ポストホルンを神田の中古屋にうったですがねぇ あ、ワルターの巨人も売ったな
CDは最近のお耳ノックダウンの時にほぼ神田の中古屋にうりましたがね LPは結構残ってて時々眺めておりまする。
投稿: 真坊 | 2017年10月 9日 (月) 21時38分
真坊さん、こんにちは、コメントどうもありがとうございます。
わたくしも、レコードに内包されていたカタログを日々眺めて、あれこれ妄想してました。
今思えば、音楽に即した世界各地のジャケット写真は、とてもセンスがあって素晴らしいと思います。
モーツァルトのピアノ協奏曲は、ワルター・クリーンだったかと記憶します。
リヒテル・ミュンシュのRCAの廉価盤も懐かしいです。
ミュンシュやライナーが格安になったのも驚きでした。
なかなか時間が取れず、音楽に向き合うことが少なくなってますが、それでも音楽を聴ける喜びをかみしめなくてはなりませんね。
申し訳なく思ったりもします。
投稿: yokochan | 2017年10月15日 (日) 13時00分
政治評論家で大のクラシック音楽愛好家の俵孝太郎さんは、ベートーヴェンのソナタはフィリップスに録れた物より、ヴォックスへの若い頃の演奏の方が好きだ‥と御著書の中でおっしゃってましたね。愚生もたまたまFMで、アンゲラー指揮ウィーン-フォルクスオーパー管弦楽団共演の、モーツァルトの第17番ト長調を耳にして、音色の美しさとフレーズの巧みな歌わせ方に、驚かされた事がございました。メータ、これがデビュー録音だったのでは?ひょっとして、御本人にしたら『消したい録音』かも、知れませんね(笑)は
投稿: 覆面吾郎 | 2019年5月19日 (日) 10時21分
ブレンデルの初期のベートーヴェンは、まさにダイヤモンド1000シリーズで入手し、それがベートーヴェンのピアノ協奏曲デビューでした。
もやもやした録音ですが、やわらかなブレンデルのピアノはこの頃から健在です。
メータさん、わかすぎ(笑)
投稿: yokochan | 2019年5月20日 (月) 08時47分