« 2018年5月 | トップページ | 2018年7月 »

2018年6月

2018年6月26日 (火)

「スカラ座のアバド」 ヴェルディ・オペラ合唱曲集 アバド指揮

Fl_1

 6月26日は、クラウディオ・アバドの誕生の日。

1933年ミラノ生まれ。

父も兄も、ミラノ・ヴェルディ音楽院の院長を務める名門の出自で、幼くして指揮者を夢見たナイーブな少年は、長じて、なるべくしてスカラ座の指揮者となりました。

ちなみに、兄マルチェロの息子、ロベルトも指揮者で、そのお顔も指揮姿も叔父クラウディオにそっくり。
クラウディオの息子ダニエーレは演出家で、生前、「魔笛」にて親子共演を果たしてます。

アバドの誕生日に、録音上のアバド&スカラ座の原点の1枚を聴きます。

P9216775

  ヴェルディ オペラ合唱曲集

 「ナブッコ」~祭りの飾りを
         行け、我が思いよ、金色の翼に乗って

 「トロヴァトーレ」~アンヴィル・コーラス

 「オテロ」~喜びの炎を

 「エルナーニ」~謀反人たちの合唱

 「アイーダ」~凱旋の合唱

 「マクベス」~しいたげられた祖国

 「十字軍のロンバルディア人」~エルサレムへ、エルサレムへ
                     おお、主よ、ふるさとの家々を

 「ドン・カルロ」~ここに明けた、輝かしき喜びの日が

    クラウディオ・アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団
                     ミラノ・スカラ座合唱団
             合唱指揮:ロマーノ・ガンドルフィ

                  (1974.11 ミラノ)


当ブログでは、この音盤について記事にするのは2度目。

アバドの誕生日に、何を聴こうか考えたときに、レコード時代、一番頻繁に聴いたものは何かなと考えたときに、この1枚がそれだった。

ちなみに、聴いた頻度の高いものを列挙すると、あとは、ウィーンでの悲愴、ベルリンとの1回目のブラームス2番、春の祭典、ショパンのピアノ協奏曲1番、ボストンとのスクリャービンとチャイコフスキー・・・・、こんな感じで、CDより、レコードの方が多く聴いてる。
すなわち、レコードが高価なものだったから、そうたくさん買えなかったし、買うならアバドだったから、こんな風になる。

       ------------

1968年にスカラ座の音楽監督に就任したアバド。
アバドのファンになってから、イタリアでのアバドの活動は、レコ芸の海外レポートを通じてしか知ることができなくて、ロンドン響とのロッシーニしかなかったオペラ録音に、いつ、スカラ座とヴェルディをやってくれるのか、それこそ首を長くして待ち望んだ、そんな高校生でした。
そこに登場したのが、この合唱曲集。
オペラ全曲盤ではないが、アバド&スカラ座のヴェルディへの渇望を満たすには充分すぎるほどの1枚で、私は喜々として、日々この1枚を何度も何度もターンテーブルの上に乗せたものです。

オペラ録音の主役はコストの関係もあって、ロンドンが中心となっていたなかでの本場イタリアの純正ヴェルディサウンド。
60年代初頭から毎年続いたDGへのスカラ座の録音も、65年のカラヤンとのカヴァ・パリ以来途絶えていただけに、74年のこの録音は、スカラ座としても久々のレコードとなり、楽員も合唱団も、気合十分。

そんなはちきれんばかりの意欲的な音が、冒頭のナブッコから満載。
みなぎる迫力と、輝かしいばかりの明るさと煌めき。
貧弱なレコード再生装置から、こんな音たちが、滔々とあふれ出してきたのです。
いまでも、あの高揚感をよく覚えてますよ。

いま聴いても、その想いは同じ。
ことに、男声合唱の力強さと、女声も含めた、声の明瞭さは、スカラ座合唱団ならではのもの。
オーケストラの精度も高く、アバドの統率のもと、一糸乱れぬアンサンブルであり、ほんのちょっとしたフレーズでも、雰囲気豊かで、アバドの指揮ゆえに、歌心もたっぷり。
オケも合唱も、ピアノ・ピアニシモの美しさは耳のご馳走でもある。

アバドは、マーラーを通じ、その音楽の高みを晩年には、自在さと透明感の頂点に持っていったけれども、一方で、ヴェルディの演奏を聴くと、生来のアバドの根源のひとつをも感じ取らせてくれるように思います。
 アバドのスカラ座との関係は、1986年に終止符を打ってしまいましたが、スカラ座からすると、ムソルグスキーやベルクばっかりに偏重する音楽監督は、芸術性の高さとは別に、大衆受けからは遠く、アバドからしたら、より自分の好きな作品を上演したいし、マーラーを主体としたシンフォニー作品をより探求したかったから、やむを得ない結末だったかもしれません。
 しかし、ファンとすると、こんなに素晴らしいヴェルディ演奏、このあと数年にわたり録音されたものを今もって聴くと、本当に残念なコンビの解消だと思います。
いまは残された、アバド&スカラ座のヴェルディに、ヴェルディ演奏の本物の神髄を味わうことができることに感謝しなくてはなりませんね。

心からありがとうございます、マエストロ・アバド。

Fl_2

CDでは、オペラ全曲盤からのものを含めた1枚が出ておりますが、それらは素晴らしい演奏ながら、全曲録音からの切り抜き。
本来のオリジナル盤の方が求心力高いです!

アイーダで、凱旋行進曲のトランペットが、右と左で、しっかり分かれて録音されているのも、この時代ならでは。
そんなシーンでも興奮しまくりの、若きわたくしでした♪

| | コメント (3) | トラックバック (0)
|

2018年6月10日 (日)

「グリーンウェーブコンサート 20th」

Greenwave2018

初夏の恒例、今年もグリーンウェーブコンサートに行ってまいりました。

20年の節目。

保土ヶ谷の高台、仏向町にあるハンズゴルフクラブで行われる、神奈川フィルのヴァイオリン奏者、森園ゆりさんのコンサート。
相方のピアニストは、こちらもすっかりおなじみになりました、佐藤裕子さん。

梅雨どきに行われるけれど、毎回、晴れ率が高く、ことさら今年は30度越えの暑い一日となりました。
でも、緑に囲まれ、ときおり、ティーショットの心地よい音が漏れ聞こえる、それが音楽の邪魔にならない、そんな爽やかなひと時が、毎年の楽しみ。

Greenwave20th

  1.シューベルト         「アベ・マリア」

  2.ベートーヴェン   ヴァイオリンソナタ第5番「春」  第1楽章

  3.ヴィエニャフスキ    創作主題による華麗な変奏曲

  4.ショパン         マズルカ op.33-4

  5.パガニーニ          「ラ・カンパネラ」

  6.シンディング     プレスト

  7.モリコーネ       ニューシネマパラダイス

  8.ヘス          ラヴェンダーの咲く庭で

  9.ブラームス      ハンガリー舞曲第5番

  9.サラサーテ       ツィゴイネルワイゼン

 10.森園康香       花の香り~アンコール

         ヴァイオリン:森園ゆり

         ピアノ    :佐藤裕子

           (2018.6.9 @ハンズゴルフクラブ)

何度目かの曲もあり、初の曲もあり、そんななかで、ご自身も解説されてましたが、毎回入れる、自分としての勝負曲、そして聴き手にも、聴く覚悟を迫る作品、それが3曲目のヴィエニャフスキ。
攻めの姿勢で、まさに華麗なテクニックも披歴もありましたが、この曲の陰りある部分もしっとりと聴かせてくれました。

毎回、よく練られたプログラム。
ドイツ初期ロマン派の爽やかさで始まり、ついで、ヴィエニャフスキとショパンのピアノ作品(佐藤さんの安定感あるピアノ、素敵でした)でポーランドの憂愁。

イタリアと北欧の、風土異なる作曲家ふたり。
ことにシンディングは、これまで何度も聴いてきたけれど、段々とシンプルに音楽だけがそこに鳴っているような感じになってきたように思うのは私だけでしょうか。

シネマ系の作品ふたつ。
映画好きでもあるワタクシの心に触れるステキな選曲。
望郷さそうニューシネマP、そして、大好きなラヴェンダーの咲く庭では、こちらも切ない主人公の思いが、美しく切々と奏でられました。
この2曲が、この日の一番のわたくしにとっても聴きもの。

最後は、エキゾティックなハンガリーもので、お客様も大喜び♪

楽しいコンサートのお開きのお決まりは、ドイツで活躍中の娘さん、康香さんのこの日のための新曲。
チャーミングだけれど、音の進行など、なかなかと思わせる小品でした。

オーケストラの一員としての存在と、こうしてソロコンサートを行うソリストとしての森園さん。
断続的に聴かせていただき、今年は、ことに内省的な音楽の掘り下げを感じました。
わたしのような凡人には、表現者たる芸術家が、とてもうらやましく思ったりもします。
心情や感情を、音楽にその想いを載せて発信できるのですから。

Greemwave2018

絵面はよくありませんが、こちらもお楽しみの軽食。

毎回、おいしゅうございます。

梅雨のひと休み、初夏の1日を楽しみましたよ。

過去記事

 「2011年 第13回」

 「2012年 第14回

 「2013年 第15回」

 「2014年 第16回」

 「2015年 第17回」


 「2017年 第19回」

| | コメント (0) | トラックバック (0)
|

2018年6月 9日 (土)

ブラームス ドイツ・レクイエム シュナイト指揮

Hibiya_1

日比谷公園の中庭。

色濃い新緑が美しく、今年、早かった紫陽花も、この品種はちょうど見ごろ。

日本が梅雨に入る前、5月28日、ハンス=マルティン・シュナイトさんが亡くなりました。

享年87歳。

2009年に引退してドイツで静かにお過ごしだった。

神奈川フィルの音楽監督としてのシュナイトさんをたくさん聴くことができたことは、私の音楽生活のなかでも、とりわけ大きなものを占めるものです。

その神奈川フィルとの音源は、また機会をあらめて取り上げることとして、今回は追悼の気持ちをこめて、ドイツ・レクイエムを。

Brahms_deutsches_requiem_schneidt_2  Brahms_deutsches_requiem_schneidt_3

  ブラームス  「ドイツ・レクイエム」 op.45

      S:平松 英子    Br:河野 克典

  ハンス=マルティン・シュナイト指揮 シュナイト・バッハ管弦楽団
                        シュナイト・バッハ合唱団
            コンサート・マスター:荒井 英治

                     (1999.10.28 東京芸術劇場)

   S:平松 英子    Br:トーマス・バウアー

  ハンス=マルティン・シュナイト指揮 シュナイト・バッハ管弦楽団
                        シュナイト・バッハ合唱団
            コンサート・マスター:石田 泰尚
            協力:神奈川フィルハーモニー

                     (2008.4.25 東京オペラシティ)


ふたつのシュナイトさんのドイツレクイエム。
このうち、2008年の演奏会は、私も聴きました。
さらに、2007年の神奈川フィルの定期演奏会における、この曲の演奏会も聴くことが出来ました。

1997年に、東京フィルハーモニーのメンバーと協力のもと、設立されたシュナイト・バッハ管弦楽団。
毎年、日本にやってきて、この楽団と、バッハ、ヘンデル、モーツァルト、ベートーヴェン、ブラームス、メンデルスゾーンと、独墺系の声楽作品を指揮。
 同時に、神奈川フィルへの客演も2001年頃からスタートさせ、年間2プログラムを指揮。そして、2007年から9年までは、音楽監督として在任。
思えば、音楽監督時代の3年間しか、私は聴くことができなかった。
もったいないことをしたものです。

幼少より聖トーマス教会の合唱団でスタートし、バッハの神髄を身につけ、さらには、カール・リヒターの急逝のあとの、ミュンヘン・バッハ管弦楽団の指揮者となった本物のドイツの宗教音楽の大家。
そればかりでなく、バイエルン国立歌劇場、ベルリン国立歌劇場、ヴッパタール劇場では総監督も、といった具合に、オペラ指揮者としても活躍をしていた。
以前に、幣ブログでも書きましたが、ヴッパタールでは、「ニーベルングの指環」も手掛けているんだ。

ドイツ音楽の伝統を受け継いだシュナイトさんの日本への思いは、暖かく、そして、日本人への見方もある意味的確だった。
いろんなもので読んだことの集約ですが、仏教が中心ではあるが、八百万の神がいる日本では、日本人はキリスト教もそのなかの一つ的なところもあって、宗教音楽への一次的なフィルターがなくまっさら、ゆえに指導のしがいがあった。
最後の演奏会で、シュナイトさんが語られました、世界は争いが絶えないが、日本人の仏教の心が平和を実現するのではないか。。。という言葉が印象に残る。
 そんな風に、日本を愛してくれたシュナイトさん。

氏の音楽には、「歌」と「祈り」が必ずその基本としてありました。
きれいなピアニシモにもこだわり、そこにも歌心が。
そして南ドイツ人らしい、明るい音色を好みました。
そして、指揮する後ろ姿には、いつも祈っているような、そんな印象が。

   ---------------

ルター訳の聖書からの聖句を用いたブラームスの「ドイツ・レクイエム」に、ルター派のシュナイトさんはとりわけ大きなシンパシーを感じていました。

99年の演奏と、08年の演奏、真摯な音楽への取り組みと、言葉ひとつひとつを大切に、そしてその意味をよくよく歌いこむ丁寧さ、さらに全体の明るい基調など、ともに共通したすばらしさです。
ただし、ふたつの演奏で、大きく違うのは、演奏時間。
99年(68分43秒)、08年(75分31秒)。
わたしの聴いた3年間は、シュナイトさんのとるテンポは、いずれも遅めで、この2つの演奏タイムを見ても、後年の演奏スタイルであったわけだが、年を経て、テンポが遅くなることは多くの指揮者にあること。
しかし、シュナイトさんの音楽は、掘り下げが、より入念に、より緻密になり、結果として、音のひとつひとつが、祈りの中に凝縮されるような感じが、いつもしていました。

99年盤は、全体に覇気もあり、張り詰めたような厳しさがあるが、08年盤の方は、合唱とオーケストラの精度がさらに向上。ホールの違いもあって、録音も素晴らしい。
そして、聴いていて音楽と自分の呼吸感が、次第に同化していって、いつしか清らかな気分に満ち溢れる、そんな感動に包まれるのが08年のシュナイトさんの優しいまなざしの「ドイツ・レクイエム」。

日本を、横浜を愛してくれてありがとうございました。
シュナイトさんの魂が永遠でありますこと、お祈りいたします。

演奏会観劇記録

神奈川フィル

「ブラームス ドイツ・レクイエム」
「ブラームス ヴァイオリン協奏曲、交響曲第2番」
「ブリテン シンプルシンフォニー、プルチネルラ、ベートーヴェン1番」
「ベートーヴェン ヴァイオリン協奏曲、ブラームス 交響曲第4番」
「未完成、4つの最後の歌、死と変容」
「ハイドン 熊 、田園交響曲」
「ブルックナー ミサ曲第3番」
「ブラームス セレナード第2番 、シューマン 交響曲第2番」
「ブラームス 交響曲第3番 、ヒンデミット 画家マティス」
「ブラームス 二重協奏曲 、交響曲第1番」
「ブラームス 悲劇的序曲、哀悼の歌、運命の歌、ブルックナー テ・デウム」
「ブラームス ハイドン変奏曲 シューマン チェロ協奏曲 ライン」
「シューマン マンフレッド、ピアノ協奏曲、交響曲第4番」

その他のオーケストラ

「魔笛、トルコ風、シューベルト 交響曲第9番」 仙台フィル
「ブラームス ヴァイオリン協奏曲、田園」 札幌交響楽団
「ブルックナー 交響曲第7番」 ジャパン・アカデミーフィル
「ドイツ・レクイエム」 シュナイト・バッハ管弦楽団
「ヨハネ受難曲」 コーロ・ヌオーヴォ
「ミサ曲 ロ短調」 シュナイト・バッハ管弦楽団

どのコンサートも、ひとつひとつが忘れがたい演奏。
神奈川フィルには、私が聴けなかったものが10回以上。

わたくしにも、神奈川フィルにも、ひとつの時代でした。

| | コメント (2) | トラックバック (0)
|

« 2018年5月 | トップページ | 2018年7月 »