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2018年6月26日 (火)

「スカラ座のアバド」 ヴェルディ・オペラ合唱曲集 アバド指揮

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 6月26日は、クラウディオ・アバドの誕生の日。

1933年ミラノ生まれ。

父も兄も、ミラノ・ヴェルディ音楽院の院長を務める名門の出自で、幼くして指揮者を夢見たナイーブな少年は、長じて、なるべくしてスカラ座の指揮者となりました。

ちなみに、兄マルチェロの息子、ロベルトも指揮者で、そのお顔も指揮姿も叔父クラウディオにそっくり。
クラウディオの息子ダニエーレは演出家で、生前、「魔笛」にて親子共演を果たしてます。

アバドの誕生日に、録音上のアバド&スカラ座の原点の1枚を聴きます。

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  ヴェルディ オペラ合唱曲集

 「ナブッコ」~祭りの飾りを
         行け、我が思いよ、金色の翼に乗って

 「トロヴァトーレ」~アンヴィル・コーラス

 「オテロ」~喜びの炎を

 「エルナーニ」~謀反人たちの合唱

 「アイーダ」~凱旋の合唱

 「マクベス」~しいたげられた祖国

 「十字軍のロンバルディア人」~エルサレムへ、エルサレムへ
                     おお、主よ、ふるさとの家々を

 「ドン・カルロ」~ここに明けた、輝かしき喜びの日が

    クラウディオ・アバド指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団
                     ミラノ・スカラ座合唱団
             合唱指揮:ロマーノ・ガンドルフィ

                  (1974.11 ミラノ)


当ブログでは、この音盤について記事にするのは2度目。

アバドの誕生日に、何を聴こうか考えたときに、レコード時代、一番頻繁に聴いたものは何かなと考えたときに、この1枚がそれだった。

ちなみに、聴いた頻度の高いものを列挙すると、あとは、ウィーンでの悲愴、ベルリンとの1回目のブラームス2番、春の祭典、ショパンのピアノ協奏曲1番、ボストンとのスクリャービンとチャイコフスキー・・・・、こんな感じで、CDより、レコードの方が多く聴いてる。
すなわち、レコードが高価なものだったから、そうたくさん買えなかったし、買うならアバドだったから、こんな風になる。

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1968年にスカラ座の音楽監督に就任したアバド。
アバドのファンになってから、イタリアでのアバドの活動は、レコ芸の海外レポートを通じてしか知ることができなくて、ロンドン響とのロッシーニしかなかったオペラ録音に、いつ、スカラ座とヴェルディをやってくれるのか、それこそ首を長くして待ち望んだ、そんな高校生でした。
そこに登場したのが、この合唱曲集。
オペラ全曲盤ではないが、アバド&スカラ座のヴェルディへの渇望を満たすには充分すぎるほどの1枚で、私は喜々として、日々この1枚を何度も何度もターンテーブルの上に乗せたものです。

オペラ録音の主役はコストの関係もあって、ロンドンが中心となっていたなかでの本場イタリアの純正ヴェルディサウンド。
60年代初頭から毎年続いたDGへのスカラ座の録音も、65年のカラヤンとのカヴァ・パリ以来途絶えていただけに、74年のこの録音は、スカラ座としても久々のレコードとなり、楽員も合唱団も、気合十分。

そんなはちきれんばかりの意欲的な音が、冒頭のナブッコから満載。
みなぎる迫力と、輝かしいばかりの明るさと煌めき。
貧弱なレコード再生装置から、こんな音たちが、滔々とあふれ出してきたのです。
いまでも、あの高揚感をよく覚えてますよ。

いま聴いても、その想いは同じ。
ことに、男声合唱の力強さと、女声も含めた、声の明瞭さは、スカラ座合唱団ならではのもの。
オーケストラの精度も高く、アバドの統率のもと、一糸乱れぬアンサンブルであり、ほんのちょっとしたフレーズでも、雰囲気豊かで、アバドの指揮ゆえに、歌心もたっぷり。
オケも合唱も、ピアノ・ピアニシモの美しさは耳のご馳走でもある。

アバドは、マーラーを通じ、その音楽の高みを晩年には、自在さと透明感の頂点に持っていったけれども、一方で、ヴェルディの演奏を聴くと、生来のアバドの根源のひとつをも感じ取らせてくれるように思います。
 アバドのスカラ座との関係は、1986年に終止符を打ってしまいましたが、スカラ座からすると、ムソルグスキーやベルクばっかりに偏重する音楽監督は、芸術性の高さとは別に、大衆受けからは遠く、アバドからしたら、より自分の好きな作品を上演したいし、マーラーを主体としたシンフォニー作品をより探求したかったから、やむを得ない結末だったかもしれません。
 しかし、ファンとすると、こんなに素晴らしいヴェルディ演奏、このあと数年にわたり録音されたものを今もって聴くと、本当に残念なコンビの解消だと思います。
いまは残された、アバド&スカラ座のヴェルディに、ヴェルディ演奏の本物の神髄を味わうことができることに感謝しなくてはなりませんね。

心からありがとうございます、マエストロ・アバド。

Fl_2

CDでは、オペラ全曲盤からのものを含めた1枚が出ておりますが、それらは素晴らしい演奏ながら、全曲録音からの切り抜き。
本来のオリジナル盤の方が求心力高いです!

アイーダで、凱旋行進曲のトランペットが、右と左で、しっかり分かれて録音されているのも、この時代ならでは。
そんなシーンでも興奮しまくりの、若きわたくしでした♪

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コメント

また失礼いたします。列挙されていたアバドの音盤、小生も全てLP時代に購入し愛聴しておりました。とりわけVPOとの悲愴はムジークフェラインの響きを見事に捉えた名録音と、過度に感傷的にならずかつ若々しい情熱に満ち溢れた指揮(当時アバド40歳だったのですね)で思い出深い一枚でした。先年タワーレコードがCD復刻した際にすぐ購入しましたが。
「春の祭典」はリズムの鋭敏さで今日なお第一級かと。ただBPOとの最初のブラームス2番は歌心に満ち溢れているもののいささか横に流され過ぎで、いささか締まりに欠けるかなと感じた記憶が。当時カラヤンが聴いて激怒し、それを承けてかアバドもまた絶対に再録はしないと語ったとか(まあしましたが)。
思い返せば意外ですが、アバドが日本で振ったヴェルディ全曲は'81年スカラ座の「シモン」だけなのですね。当時は「セビリア」とクライバーの「オテロ」に初任給の半分ほどをつぎ込んでしまい(残りの半分は呑んでしまいました!)未聴で。
その後'89年VPOとの「ロマンティック」'94年「フィガロ」「ボリス」'96年BPO「復活」かねてからお書きの'00年「トリスタン」と実演に接し得ましたが、やはりいずれも我が生涯のかけがいの無い想い出のひとこまです。
ところで近々よんどころない事情で、旧蔵のLPの処分を余儀なくされております。ささやかな蔵書とともに近隣のトランクルームに数年間放り込んであったのですが「断捨離」などという人の心根に唾するような言葉は忌み嫌っていたにも拘わらず、還暦過ぎてそれを余儀なくされることで己の不甲斐なさを痛感させられております。
手前勝手な内容ばかりのコメントで失礼しました。今後も更新、期待しております…。

投稿: Edipo Re | 2018年6月27日 (水) 05時32分

追記いたします。「アバドが日本で振ったヴェルディ全曲」のくだりは「~オペラ全曲」でした。'81年にはレクイエムも演奏していましたね。失礼いたしました。

投稿: Edipo Re | 2018年6月27日 (水) 06時46分

Edipo Re さん、こんにちは。
きっと同期生と推察いたしますが、わたくしも、スカラ座とのシモンのS席に、新入社員の薄給を使い果たしてしまったクチです。そして、アバドの観劇歴もほぼ同じです。

さらに、現在、わたくしも断捨離中でして、LPはオペラ以外は完了。CDの解説書ではリブレットが見えないからです(笑)。あと書籍にVHS,カセットと進行中です。
やたらと重量があり、週末はクタクタになります。
そういう年代というか、決断の時期なのかもしれませんね。
コメントありがとうございました。

投稿: yokochan | 2018年7月 1日 (日) 11時21分

スカラ座の録音が、カラヤンが振った『Cav&Pag』以来との事で、話題盤でしたね。以後活発化するアバド&スカラ座の録音活動の、アドバルーン的アルバムでも、ありました。

投稿: 覆面吾郎 | 2019年6月 2日 (日) 11時48分

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