新日本フィルハーモニー定期演奏会 ベルク&マーラー リットン指揮
梅雨明けの暑い夕暮れ、こんな景色が望めるホールに行ってきました。
久々のトリフォニーホールは、ベルクとマーラーの世紀末系、わたくしの大好物が並ぶ、新日フィルの定期でした。
ベルク 歌劇「ルル」組曲
アルテンベルクの詩による歌曲集
マーラー 交響曲第4番 ト長調
S:林 正子
アンドリュー・リットン 指揮 新日本フィルハーモニー交響楽団
(2018.6.29 @すみだトリフォニーホール)
林正子さんを、3曲ともにソリストに迎えた、わたくしにとって魅惑のプログラム。
昨年のマルシャリンが素晴らしかった林さんのソロ、感想を先に言ってしまうと、マーラーよりベルクの方がよかった。
それは彼女の声質や、ホールでの聞こえかたからくる印象かもしれませんが、透明感と、一方で力強さのある声がストレートにわたしの耳に届いたのがベルクの方でした。
マーラーは、よく歌っていたけれど、オーケストラとのバランスや、間がちょっとかみ合わないような気もして、それはリットン氏の指揮にも要因があったようにも感じます。
短い場面だけれど、ファムファタールたるルルを可愛く、そして小悪魔的に、宿命的歌わなければならない「ルルの歌」。幅広い音域を巧みに、でも柔らかさも失わずに聞かせてきれたように思います。
一方のもうひとりの役柄、ゲシュヴィッツ伯爵令嬢の哀しみも、虚無感とともに、とても出てました。
アルテンベルクは短い歌曲集だけれど、いまだに、何度聴いても、全貌がつかめません。
生で聴くのが初めてで、今回、たっぷり大編成のオーケストラが時に咆哮しても、知的に抑制され、歌手もその中で、楽器のように生かされているのを感じました。
そして、イメージやフレーズが、ヴォツェックに親和性があることも、よくわかったし、オペラの形態で追い求めたシンメトリーな構成をも聞き取ることができたのも実演のありがたみ。
林さんの、これまた抑制された歌声は、クールで切れ味も鋭いが、暖かさもただよわす大人の歌唱で、完璧でした。
ベルクは、この歌曲集を、1912年に作曲しているが、作曲の動機は、マーラーの大地の歌を聴いたことによるもの。
時代は遡るが、後半はベルクからマーラーへ。
マーラーを得意にしているリットンさん。
手の内に入った作品ならではの、自在な音楽造りで、もうすっかり聴きなじんだ4番が、とても新鮮に、かつ、面白く聴くことができました。
強弱のつけ方、テンポの揺らしなど、細かなところに、いろんな発見もありました。
新日フィルも、それにピタリとつけて、とても反応がよろしい。
1楽章の集結部、ものすごくテンポを落とし、弱めに徐々に音とスピードを速めていって、にぎやかに終わらせるという、聴きようによってはあざとい場面を聴かせてくれたが、実演ではこんなのもOKだ、面白かった。
2度上げで調弦されたヴァイオリンと2挺弾きのコンマスの西江さん、繊細かつ洒脱でとてもよろしいかった2楽章。こちらも、細かなところにいろんな仕掛けがあって楽しい聴きもの。
で、一番よかったのが、天国的なまでに美しかった3楽章。
美しいという形容以外の言葉しか浮かばない。
よく良く歌わせ、思い入れも、タメもばっちり、わたしの好きな、この3楽章の演奏のひとつとなりました。
終楽章は、先にも書いた通り、歌が入ることで、ちょっとバランスがどうかな、となりましたが、これまた、心がホッとするような平安誘う、静かなエンディングと、大きな拍手までのしばしの間を楽しむことが出来ました。
ルル組曲の最初の方が、エンジンかかりきらない感じはありましたが、愛好するベルクの「ルル」を久々にライブで聴けた喜びとともに、マーラー⇒ベルクという世紀またぎの音楽探訪を、夏の一夜に堪能できました♪
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