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2018年7月22日 (日)

ウェーバー 「魔弾の射手」 二期会公演

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オペラ公演に、スタンド花はよく見る光景ですが、特定の出演者に、ここに写った何倍も。

元宝塚のスター女優、大和悠河さんが出演することで、客層も一部普段と違う感じに。

わたくしの注目は、やはり、コンヴィチュニーの演出。

これで、「タンホイザー」「エフゲニー・オネーギン」「サロメ」に次いで4作目のコンヴィチュニーのオペラ。

ハンブルク州立歌劇場との共同制作だが、1999年プリミエの演出のもの。
DVDにもなっているが、そちらは未視聴。
ザミエルは、男性俳優が演じていて、今回の日本版では、コンヴィチュニーは、女性でやるとしたため、ズボン役もこなす、大和さんのザミエル役がやはり大きな見ものとなったわけだ。
大和さんは、オペラも大変にお好きで詳しいともききます。

「魔笛」や「フィデリオ」のように、セリフも伴う、ジングシュピールだから、原語上演とはうらはらに、セリフ部分は日本語で行われ、逆に英語の字幕が流された。

そして、このセリフ部分で、なんといっても圧巻かつ群を抜いていたのは、やはりザミエルの大和さん。
声の抑揚、声量、客席への届かせ方などなど、まったく見事。
それに対し歌手たちのセリフはまだまだのところもあった。生真面目すぎるというか、あざとく感じてしまったのだ。
思えば、かつてのオペラ録音では、セリフ部分を本業の声優が演じることが多く、歌声との違いにギャップを感じることもあった時代があった。
 ところがいまや、オペラを楽しむ手法に、映像も加わり、歌手たちには緻密な演技力や表情、そして語りも必要になった。
 ほんと、オペラ歌手のみなさんは、たいへんだと思います。

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   ウェーバー  歌劇「魔弾の射手」

    オットカール侯爵:大沼 徹    クーノー:米谷 毅彦
    アガーテ     :嘉目 真木子 エンヒェン:冨平 安希子
    カスパール    :清水 宏樹   マックス  :片寄 純也
    隠者        :金子 宏    キリアン  :石崎 秀和
    花嫁の介添   :田貝 沙織、鳥井 香衣、渡邊 仁美、長谷川 光栄

    ザミエル:大和 悠河      ヴィオラ・ソロ:ナオミ・ザイラー

      アレホ・ペレス指揮 読売日本交響楽団
                   二期会合唱団
                   合唱指揮:増田 宏昭

      演出:ペーター・コンヴィチュニー

                     (2018.7.21 @東京文化会館)


コンヴィチュニーの演出は、当初は読み替えが過ぎて語りすぎ、との印象を持っていましたが、実際に舞台に接するうちに、その印象の受け方が変わってきて、とても楽しめるようになった自分を発見することとなりました。
 知的な遊び心から発して、大胆すぎる解釈などへ、表現の幅に制約がなく自由すぎるところが面白い。
時代設定もいじるが、そのイジリ方には、現在のわれわれの生きる世の中の事象にリンクしていて、その考え方にのっとればおかしくない。
作者が、登場人物たちに与えた行動や感情にもメスを入れ、それを現代の視点で読み替える。
作品の根幹的な意図を決して外したり、崩壊させようとはせず、音楽とちゃんと符合。
また、舞台と客席を一体化してしまうのも、スリリングなところ。
もちろん、作品によっては、わたしは拒絶反応を起こすものもあるかもしれませんが、今回の「魔弾の射手」は、コンヴィチュニーの演出の意図がとてもわかりやすく、意欲的な舞台がほんとうの面白かった。

      -----------------

フランス革命のあと30年。
偉そうで独善的な侯爵と雇われ人、森林官との上下関係、農民、市民のなりと存在、さらには、ドレスを着て死んだように横たわっていた人々は上流の方々か。
そんな人々の存在とあり方も、この演出では垣間見させてくれた。
 また上下するエレベーターは、その階に存する人物や社会を。
通常の村の出来事は4階、最後の場面は6階、もちろん、狼谷は地下、アガーテは神聖的な扱いで最上階の7階。(全部ウォッチしてたわけじゃないけど、エレベーターは劇中動きました)
 さらに、狼谷は、恐怖の怪しい森に囲まれた場所ではなく、もうそこは自然破壊され、壊れたものが散在する雑然とした空間。
そうした空間世界を作り出した人間の心の闇の象徴がザミエルで、彼(彼女)はいろんな姿に七変化する。
さらに、人当たり良く、にこにこした隠者は、われわれ観客の中にいて、舞台に上がっていってはお金を振り撒き、ザミエルすら買収しようとする。
この社会崩壊の繰り返しの無限ループを魔弾に込めた演出と思った次第。

     ---------------ーーー

歌手たちでは、ふたりの女声が一番素晴らしかった。
ヒロイン・アガーテの嘉目さんの清潔な歌と、確かな歌唱と美しいそのお姿。
チャーミングなエンヒェンだけど、コンヴィチュニーの演出では独自の存在となる、そんなエンヒェンをしっかりした歌声で届けてくれた冨平さん。
彼女も美人さんです。
 男声陣は、ちょっとお疲れかしら。
なんたって猛暑の中の14時公演。
期待した片寄さんのマックスが意気が上がらず、ほかの低音陣もちょっと冴えなかったかも。
そんな中で、カスパール役の清水さんは、なかなかの全力投球の悪漢ぶり。

大和さんのザミエルは、前述のとおり、スタイル抜群で切れ味満点の演技にお声。
あと、ヴィオラのザイラーさん、わざとダミ音で弾いたりと、なかなかの役者ぶり。
 それと、合唱団の力強さは特筆してよいでしょう。
先週の東響コーラスも絶賛したけれど、日本の合唱団のレベルは、オーケストラとともに、各段に新化していると思う。

ペレスさんは、全体に快速でもたれず、歌手たちにも優しい、オペラ指揮者らしいところを見せてくれました。演出の意図もしっかり汲んでのオーケストラピットでの存在。
迫力よりは、しなやかに歌わせる、それから抒情的な場面を美しく響かせる指揮に思いました。
読響の音色がこんなにキレイに美しく響くなんて驚きでもありました。
チェロのソロもとても素敵でした。

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舞台の様子を。
自分の備忘録ですので。
どんなに強烈な印象を受けても、数年たつと忘れてしまう。
そんなときに、自分の書いたものを読み返してみて、思い出したりもする。

舞台の様子は、産経さんの下記サイトにて画像とともに確認できます・

 ⇒ https://www.sankei.com/entertainments/news/180713/ent1807130010-n1.html

舞台左手には、赤いエレベーターが据えられていて、スポットを浴びている。
7階あって、地下とあるべきところには、「狼」との表示が。
舞台が暗くなって、いつの間にピットの指揮台に立ったのか、序曲が荘重に始まる。
そして、エレベーターの階数表示は6階。
曲の進行とともに、暗い雰囲気となり悪魔の力を思わせる部分になると、エレベーターは急降下を始め「狼」に。
そして最後、長~いパウゼ(ほんとに長かった)のときに、一気に4階(確か)まで駆け上がり、華々しく序曲を終結。

第1幕

マックスの放つ弾が外れるところは、降ろされた斜幕に穴が開く(なんの形か、オウムか?)。キリアンと農民たちに混じって、いや、それを先導するようにしていたのは、長い棒を持ったザミエルと動物の面をかぶった楽師たち。
かれらにそそのかされたかのような農民たちは、ほんとにいやらしく「へっへっへ」と歌う。
ことに女性の農民たちは、ちょっと猥雑な雰囲気。

クーノーとカスパールが加わる場面は、そんなにかわったところはなし。
マックスの有名な苦悩のアリアでは、周辺が真っ暗になり、緑色のスポットがマックス周辺にあたる。
その足元に、舞台したからザミエルが顔を出し、歌の内容に即して、葉っぱでなぞったり、マックスの銃を取り上げて舐めたりと、おちょくる。

そのあと、カスパールと飲む場面でも、給仕としてちょこっと登場のザミエル。
カスパールの邪悪な歌(この歌は、フィデリオのドン・ピツァロ、オテロのイャーゴを思わせる)に続き、銃で巨大な漫画みたいな大鷲の影を打つと、ほんとに漫画みたいな大鷲のぬいぐるみがドカンと落ちてくる。

第2幕

斜幕を下ろして、巧みに場面転換。裏方さんたちも大活躍するさまが見える。
エレベーターは6階。
大きなテーブルで編み物をするアガーテ、エンヒェンは、左手の階段から降りてくる。
階上の先祖の絵が落ちた設定となっている。
テーブルに乗ったエンヒェンの快活で可愛いアリエッタが終わると、会場の最前列にいた完璧なスーツ姿の紳士が立ち上がり、ブラボーとともに、花束を舞台の彼女に投げつける。
エンヒェンは、それを花瓶に生ける。
この二重唱の場面での、ふたりの女性の描き分けの対比は、衣装も含めてじつに見事。
やんちゃなエンヒェンは、イケメンの載った雑誌を眺めてきゃぴきゃぴしてるし、アガーテは花嫁衣裳を広げて繕い中。

アガーテの美しいアリアの場面は、それこそ、この日、一番雑念がなく美しかった。
舞台の4本の蝋燭、降りた斜幕に輝く星たち、そこから窓から顔を出すようにして、マックスを待ち受けるアガーテ。

マックスがやってくると、行くぞ、行かせない、気をつけていってらっしゃいの、ややこしい三重唱になるが、倒れた衣装ケースからザミエルも登場し、マックスを誘導。

 さて、エレベーターが「狼」まで下り、舞台転換。
舞台中央にはテレビ。そのうえにはデカいフクロウがいて目が光ってる。
ザミエルを呼び、探すカスパールはテレビのブラウン管の中。
疲労困憊の様子。
現れたザミエルは、今度は白いスーツ姿で、大きなファイルを持ってテレビの横の椅子に腰かけ、画面内のザミエルの交渉に受け答えするが、そのときにきりりとした身のこなし、足の組み替えのキレのよさなどお見事。
 テレビを強制終了して去るザミエルと入れ違いにカスパール、そしてまたお面をかぶり動物化した悪魔の手下たち。
そして恐る恐る登場のマックスだが、この場面になかなか入れない。
しかも、自分の母の霊(子役)や、入水自決しようとするアガーテの姿が見えて戸惑う。
このとき、悪の手下たちは、顔を覆って、聖なるものには弱いところを見せたりする。
 いよいよマックスも加わり、弾丸の製造に入るが、テレビの上の鍋に、いろんなものを仕込み、1弾ずつ数えるカスパールに、横のフクロウは反応し、そして不気味な濁り声で反復して数が読み上げられていく。
 最後の方になると、舞台奥から雑多な人物たちがうようよ出てきて、ゾンビのようにダンスする。
そして、最後の7弾目が出来上がり、読み上げられると、カスパールもマックスも、そしてゾンビたちも一斉にぶっ倒れ、会場内から、それかた会場へと向けて強力な照明が照らされ、わたしの周辺も白昼のような明るさ。
そこへ、舞台奥からザミエルが、今度はバスタオルルックで、アタッシュケース片手に登場し、倒れている人の間をすり抜け、舞台脇のエレベーターへ消えて行った。
舞台天井近くには、デジタルクロックが時を刻み始めた。

 休憩・・・・25分間の休憩中も、ロビーやトイレ、いたるところで、時間を刻む音が



第3幕

4階。マックスとカスパールの会話は、幕を下ろしたまま、スピーカーを通じて。
幕が上がると、大きな壁の前に、客席に背中を向けたまま、ドイツの、民族衣装的な可愛いいでたち。そのまま祈りと安寧を求めるカヴァティーナを歌う。
正面を向き歌ううちに、紳士が投げた花束が、ポロリポロリと一輪ずつアガーテの手から抜け落ちてしまいにすべてを落としてしまう。
先の紳士も、指差しで注意するものの・・・・

エンヒェンがやってきて、怖い夢を見たという従姉を慰める、そして可愛いロマンツェを歌う。
ここで、大きな壁の横から出てきたのが、赤い角を付け、大きなスリットの入ったドレスを着た悪魔(ザミエル)が舞台上でヴィオラソロを演奏。
彼女、歌に合わせ、エンヒェンの意志かのように、アガーテの心の隙に入り込もうとする。
歌の中で、十字を切るとか言葉が出てくると、楽器で顔を覆ったりもするし、いろいろといたずらも。

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                                (ハンブルグの舞台から)

 

村の付き添いたちは、さきの壁の上にのぼり、かわるがわるに花嫁にまつわる歌を歌う。
エンヒェンが、下の階から花嫁の花冠を受け取って戻ってくる。
緑色の箱を置いて、目を離した隙に、階下から手が伸びてきて、箱をすり替えてしまう。
それを見ていた、先ほどの観客の紳士は、ダメダメ、気が付いてと、舞台に促す。
死の花冠に動揺し、泣きそうになってエンヒェンだけど、介添え人たちと、落ち散らばった花を集めて、冠を編みアガーテにかけてあげる不安が一杯の表情と舞台。

幕が降り、舞台転換の合間、今度は赤いネクタイにスリムなダークスーツのザミエルが出てきて一席ぶつ。ヨーホー・トララララと。
1階前列正面にたくさん陣取ったファンの皆さんに投げキッスをすると歓声が。
勇壮なホルンに乗って幕があがると、ザミエルはスーツのまま狼。
口からは、赤いネクタイが舌のようにベロンと出てる。
舞台には、ドレス姿の男女が死んだように横たわっていて、「狩人の合唱」の合間、その日地たちの間を縫うようにザミエルは動き、踊る。

そして、狩りの供宴の終盤、村人総出。
オットカール様に、むちゃくちゃ恐縮して呂律が回らないクーノー。
され、マックスが最後の4発目を狙う先は、上空で小さく光る電球。舞台は暗くなり、動く電球のみ。低くなったところを射撃。
明るくなると、カスパールとアガーテが倒れている。
動揺する一同だが、しばらくするとアガーテが息を吹き返し復活。
虫の息のカスパールは、約束が違うぞ、天を呪うと、そこにザミエル登場。
恐ろしがる人々の前で、カスパールの胸元から緑色の長いスカーフのようなものを引っ張りだし去っていく。
狼谷の突き落としてしまえとの命令一下、人々はエレベーターにカスパールを運び込み下りボタンをオン。
 さてさて、真相を語らざるを得ないマックスが口を開き、オットカールは見た目も露骨に腹立たしくあたり、追放令を出そうとする侯爵にとりなしをする人々も。
 そこで、ご意見を、ということで、客席の紳士が登場。
最初は、遠慮がちに、でもだんだんと当たり前のようにして。
氏の登場に驚く舞台さんや、エンヒェンら登場人物たち。
まるで、ハンス・ザックスのように、最後のいいとこ、かっさらう勢いで、舞台中央に進行。
やがて、侯爵と、そしてクーノーに、懐から名刺入れのようなものを出して、金色の名刺大のものを渡す。それを見ていた他の登場人物たちも、次々にそのカードを欲しがり、あっという間に全員に行きわたる。
 さあ、オペラも大団円。
祈りを中空を見て簡単に捧げた後は、紳士、すなわち「隠者」の合図で、舞台両脇からシャンパングラスの乗った盆を持って、アテンダントのお姉さんたちがぞろぞろ登場して皆にグラスを。
さらに、「隠者」は、エレベーターから、「狼谷」のふたり、カスパールとザミエルを呼び出し、コミカルな動きで登場したふたりにもシャンパングラスをふるまう。
一同、キラキラした雰囲気にて、にこやかに舞台は終了。

                   幕

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夏らしいスタンド、でもって、え?美樹ちゃん!

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夏はユリだなぁ、って、増田恵子って、ケイちゃん!

ワタクシのようなオジサンにもうれしい大和さんのオペラデビューにございました!

オペラって、ほんとに素敵。

楽しかった。

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コメント

yocochan様、行ってきました、観てきました、演出だけで鳥肌立ちました。
「フィデリオ」のワーグナーひ孫様と違って、いろんなことしても、やっぱり「オペラ演出家」です、ペーターさんは。
それと、大和悠河さん、かっこよすぎ!オペラグラス持ってけばよかったですヨ!
その“分身役”のナオミ・ザイラーさんも美しくって目が奪われ・・・(おじさんだぜ)。
舞台に感激したの、「軍人たち」以来。セリフで色々な意見がありますが(僕はちょっと否定派)、歌はマックス役以外優れていましたし、オーケストラも多少鳴り過ぎの感はあれ、セーフでした。

ほんと、観るまでは分からんものです。

投稿: IANIS | 2018年7月22日 (日) 22時44分

IANISさん、毎度です。
千秋楽でしたか!
この度もお世話になりました。
ほんと、手の込んだ演出ではありますが、冗長にもならず、ユーモアをたたえつつも、緊張感のある舞台でした。
ワタクシも大和さんとザイラーさんにドッキリでした!
オペラの楽しみを今回もまた味わいつくし、さらなる観劇へと意欲が高まります。直近ではバイロイトの放送を楽しみます。

ブログの開始もおめでとうございます。
なかなか充実してますね。

投稿: yokochan | 2018年7月23日 (月) 08時16分

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